2013年12月15日日曜日

開心術後の低リン血症

ICU勉強会  担当:Y先生

「低リン血症」

・Pは体内に600g存在する。
  ・85%→ハイドロキシアパタイトとして骨に蓄積
  ・14-15%→ATPなど代謝産物の構成要素として主に細胞内に。
  ・1%未満→細胞外液に存在。500mg程度。
     →細胞外から細胞内へのシフトにより容易に血清P↓
・血清P(「無機リン」という項目になっていることが多い)
  ・正常値2.5-4.5mg/dl
  ・1.0mg/dl未満を高度低P血症とする。
・生体内でのPの役割
  ・ATPの産生
     →ADP+P=ATP
  ・2,3-DGPの産生
    ・解糖系の側副路:Rapoport-Luebering Pathway
    ・2,3-DGP復習
      ・赤血球におけるATP産生エネルギー
      ・HbとO2の親和性調節
        ・2,3-DPG増加
          →Hb酸素解離曲線の右方移動
        ・2,3-DPG低下
          →Hb酸素解離曲線の左方移動
          →赤血球からの酸素放出低下
          →組織低酸素血症
・低リン血症の鑑別
  ・消化管からの吸収減少
  ・消化管・腎からの排泄増加
  ・細胞内への移動
・消化管からの吸収
  ・1日のP摂取量は800-2,000mg。
  ・タンパク質、乳製品、肉類に多く含まれる。
    →牛乳1Lに1,000mgのP含む。
  ・消化管吸収量=腎排泄量
  ・腸管からの吸収
    ・濃度勾配に従った吸収(受動輸送)
    ・Na/P共輸送体による能動的吸収
       ↑Vit.Dにより亢進する。
・腎での排泄と再吸収
  ・NTP2について
    ・再吸収促進→P↑
      ・低P食
      ・成長ホルモン
      ・甲状腺ホルモン
    ・再吸収阻害→P↓
      ・高P食
      ・PTH
      ・Vit.D
      ・Steroid
      ・利尿薬 
      ・細胞外液量増加
・細胞内への移動
  ・インスリン
    ・glucose+Pで細胞内取り込み。
    ・アルコール依存症、低栄養Pt.では低Pに注意。
  ・呼吸性アルカローシス
    ・phosphofructokinase 活性化→細胞内解糖促進
    →ブドウ糖リン酸化促進→細胞内P低下
    →細胞外からPの移動
  ・カテコラミン
    ・DOA, DOB, 吸入薬(procaterolなど)
  ・白血病、悪性リンパ腫、sepsis(主にGNR感染)
・臨床症状
  ・高度急性低P血症(P<1.5 mg/dl)
    →2,3DPG低下、細胞内ATPレベル低下
    →組織低酸素血症
  ・筋力低下が全面に出ることが多い。
   ・横隔膜運動低下→呼吸不全、weaning困難
   ・心収縮力低下→血圧低下、心室性不整脈、
  ・末梢・中枢神経症状
   ・脳症→convulsion, epilepsy, comaなども。


・開心術後の低Pに関する論文
  ・術後低P群(<1.5 mg/dl)はcontrol群と比較して、
    ・血液製剤の使用
    ・ICU入室時2種類以上の循環作動薬使用
    ・術後人工呼吸期間
    ・術後循環作動薬使用期間
    ・in-hospital stay
        が有意に長かった。
  ・心臓手術術後、Pはルーチンに計測し低Pはすぐに補正すべき。

・開心術後の低Pに関する症例報告
  ・P補正でカテコラミンウィーニングが進んだ。
・その他
  ・心臓血管手術後の低Pは術後2日目に多い。
    →否定的な報告も
    →refillを見ている?
  ・肝臓切除後の低P。
    ・肝増殖によるPの消費?
    ・むしろ腎からのP排泄(FEP増加)によるものが多い。
  ・頭部外傷後の低体温療法(32-33℃)
    →reversibleな低P血症をきたす。
  ・低Pは耐糖能異常、インスリン感受性の低下をもたらす。

空気塞栓症

ICU勉強会  担当:Y先生

「空気塞栓症」

・Air embolism発症に必要な2つの因子
 ・血管と空気の接触箇所
 ・空気源から血管内へのpressure gradient
・Air embolismが起こりうる主なsetting
 ・Surgery and Trauma
 ・血管内留置カテーテル
 ・barotrauma
・手術因子
 ・脳神経外科手術、頭頸部外科手術
   →CVP陰圧でair引き込み
 ・YAGレーザー使用気管支手術
   →coolant gas引き込み
 ・その他いろいろ。
   →肺生検、肺切除、腹腔鏡手術、
    帝王切開、CPB、静脈手術、・・・
・外傷
 ・Arterial air embolismも起こりうる。
   →頭頸部外傷、穿通性胸部外傷、鈍的腹部外傷など
 ・穿通性胸部外傷で左心系airを認めたcasesでは死亡率66%と。
・カテーテル挿入時の空気塞栓リスク
 ・connection部分の外れ、破損
 ・挿入、抜去の際に回路ロックを忘れる。
 ・カテーテル抜去後に刺入孔が閉じてない。→抜去後も注意。
 ・挿入、抜去時の深呼吸(吸い込み)
 ・head up position。
・Barotrauma
  →陽圧換気がリスクとなりうる。
   ・成人ARDS
   ・hyaline menbrane diseaseの新生児
  ・ダイバー
   ・100,000 diveに7例のリスク。
   ・PVに溶解していたgasがいきなり左心系に出現することも。
・合併症
 ・Large bubbles
  →pulmonary outflow tract閉塞(”air lock”)。
  →CVP上昇、PAP低下、ABP低下。
 ・Smaller bubbles
    →肺の細動脈閉塞→肺血管収縮→PAP上昇→RVP上昇
  ・頻脈により一過性にCOは上昇、その後低下。ABPも低下。
 ・肺の微小循環系airは血管内皮細胞障害を引き起こす。
    →肺水腫、気管支攣縮、VQ-mismatch、
     死腔増加、気道抵抗増加など
・臨床症状
 ・minor caseでは無症状
 ・severe caseでは血行動態破綻、臓器不全も。
  ・呼吸苦はほぼ必発(呼吸促迫、傍胸骨の疼痛、浮遊感を伴う)。
  ・息切れ、咳嗽
  ・頻呼吸、頻脈、低血圧、wheezing、crackles、呼吸不全、・・・
  ・精神状態の変化、巣症状、網状皮斑なども。
  ・arterial air embolismでは塞栓による臓器障害。
・鑑別診断
  ・呼吸不全、循環不全、中枢神経疾患の鑑別を。
・治療
 ・Venous air embolism
   →すぐに左側臥位に
    ・left lateral decubitus position
    ・Trendelenburg position
    ・Left lateral decubitus head down position
 ・Arterial air embolism
   →すぐに仰臥位に。
    ・動脈系は高圧系
       やjりう氏どんなpositionでもairは飛んで行く。
    ・頭蓋内圧を揚げるhead down positionは避けるべき。
 ・目標はRVOTから細動脈へairを追い出すこと。
 ・右心系airの場合は体位変換が効果的。
    →airの場所が変わりRVOTから外れる。
 ・それでも血行動態破綻が続くのであれば・・・
    →側臥位で胸骨圧迫開始。
     ・空気塞栓のcaseでは動物実験で有効性が示されている。
 ・CVカテーテルから脱気する。
    ・20ml程度しか引けない。
    ・CVカテ入ってる場合にのみ試す価値あり。
 ・高濃度酸素吸引
    ・血中酸素分圧増加→血中窒素分圧低下→airの血中吸収促進
 ・高圧酸素療法(HBO)
    ・循環動態が安定しているなら有益かもしれない。
    ・早期開始(6h以内)で予後改善の報告。
・予後
 ・Severe caseでは死亡率30%との報告。
 ・HBOを施行した119例の報告(venous and arterial)。
  ・ICU死亡12%、病院死亡16%、半年死亡18%、1年死亡21%
  ・ICU死亡のリスク因子
     →発症時心停止、ICU入室時SAPSⅡscore>33
  ・1年死亡のリスク因子
     →高齢、Babinski反射陽性、AKI
  ・生存者のうち43%がICU退室時神経学的後遺症あり
     →視野障害、植物状態、運動麻痺、認知障害、てんかん
     →しかし75%は退院時症状軽快。


Journal超ななめ読み10月

「Journal超ななめ読み10月」


Cardioprotective and prognostic effects of remote ischaemic preconditioning in patients undergoing coronary artery bypass surgery: a single-centre randomised, double-blind, controlled trial.
CABG患者において遠隔リモデリングが心保護および予後に与える影響
Lancet. 2013 Aug 17;382(9892):597-604. doi: 10.1016/S0140-6736(13)61450-6.

Dabigatran versus warfarin in patients with mechanical heart valves.
機械弁に対するダビガトランVSワーファリン
N Engl J Med. 2013 Sep 26;369(13):1206-14.

Randomized comparison of the Pentax AirWay Scope and Macintosh laryngoscope for tracheal intubation in patients with obstructive sleep apnoea.
閉塞性睡眠時無呼吸症候群患者の気管挿管に対するエアウェイスコープとマッキントッシュ型喉頭鏡の無作為比較
Br J Anaesth. 2013 Oct;111(4):662-6.

In-hospital and 1-year mortality in patients undergoing early surgery for prosthetic valve endocarditis.
人工弁感染に対する早期手術施行された患者の院内死亡率と1年生存率
JAMA Intern Med. 2013 Sep 9;173(16):1495-504.




・遠隔プレコンディショニングによりCABGの予後が改善する可能性。
・機械弁の術後抗凝固療法、WFと比較してダビガトランは血栓も出血も増やす。
・OSAS患者の挿管は喉頭鏡よりAWSが優れる。
・バイアス調整すると人工弁感染、早期手術は内科的治療と比較して生存率を改善せず。



2013年10月1日火曜日

第18回日本心臓血管麻酔学会@北九州

第18回日本心臓血管麻酔学会が北九州・小倉で開催されました。
当院からは7名の先生が発表されました。
















発表された先生方、お疲れ様でした。

Journal超ななめ読み9月

「Journal超ななめ読み9月」


Timing of surgical antibiotic prophylaxis and the risk of surgical site infection.
外科手術の予防的抗菌薬投与のタイミングとSSIリスク
JAMA Surg. 2013 Jul;148(7):649-57


Positive end-expiratory pressure aggravates left ventricular diastolic relaxation further in patients with pre-existing relaxation abnormality.
左室拡張障害がある患者においてPEEPは拡張障害をさらに増悪させる。
Br J Anaesth. 2013 Sep;111(3):368-73.


Intraoperative epiaortic scanning for preventing early stroke after off-pump coronary artery bypass.
OPCABG後のstrokeを防ぐための術中epiaortic echo
Br J Anaesth. 2013 Sep;111(3):374-81.


Relationship between Intraoperative Mean Arterial Pressure and Clinical Outcomes after Noncardiac Surgery: Toward an Empirical Definition of Hypotension.
非心臓手術における術中平均血圧と術後アウトカムの関係
Anesthesiology. 2013 Sep;119(3):507-515.


Cricoid pressure training using simulation: a systematic review and meta-analysis.
シミュレーションを用いたクリコイドプレッシャー訓練のレビュー
Br J Anaesth. 2013 Sep;111(3):338-46.



・予防的抗菌薬投与はタイミングよりも種類が大事かも。
・左室拡張障害がある患者は前負荷によらずPEEPで拡張障害さらに増悪。
・Partial clampを行う患者では術中epiaortic echoはstroke予防に有効。
・術中MAPは55 mmHg以上に維持しよう。
・シミュレーションを用いた練習&フィードバックでCPの効果は上がる。




2013年9月30日月曜日

傾向スコアについて

麻酔科勉強会  担当:S先生

「傾向スコアについて」

・臨床研究の目的は、因果推論にある
・そのツールとして統計を用いる
・観察研究と介入研究(実験研究)
  ・観察研究:研究者は介入せず観察する
    →コホート研究 ケースコントロール研究
  ・介入研究:研究者により、治療法が決められるなど
   ある種の実験的介入
    →ランダム化比較試験など
・コホート研究
  ・定義した対象集団から抽出した標本(コホート)を追跡。
  ・観察して事象の発生を記述する。
     ・リスク要因に曝露している群と曝露していない群に分ける。
     ・両群をある期間にわたって追跡する
     ・アウトカムが発生するかどうかを観察する。
     ・曝露群と非曝露群で発生頻度や累積発生率を比較する。
     ・相対リスク、寄与リスクを求めることができる。
・ケースコントロール研究
  ・アウトカムを発生した群(ケース群)を特定し、
   発生しなかった群(コントロール群)を選択する
・バイアスと交絡
  ・観察研究では以下の因子が問題になる
    ・因果関係(研究要因とアウトカムとの関係)
    ・偶然誤差(データ数が小さい場合など)
    ・系統誤差(バイアス、交絡)
  ・因果関係を主張するには・・・
    →偶然誤差、系統誤差の程度を評価する必要がある。
  ・特に交絡が問題
・介入研究
  ・研究者の介入による群間比較
  ・ランダム化を行うと研究の質が上がる。
  ・ランダム化比較試験はバイアスや誤差が入りにくいデザイン
・因果効果の定義と 無作為割り付けの重要性
  ・集団で考えると・・・
  ・E(Yt=0)=ΣYt=0(個体i)/n=処置t=0を与えたときの反応の期待値
  ・E(Yt=1)=ΣYt=1(個体i)/n=処置t=1を与えたときの反応の期待値
    →集団の因果効果の定義は
    →E(Yt=1)ーE(Yt=0)
  ・ただし、同じ集団に異なる処置を同時に行うことはできない
    →因果推論は原理的に不可能
・因果推論の根本問題=欠損値の問題
  ・欠損値問題として捉えれば・・・
     →ランダム割付けにより根本問題を解決
・共変量の調整法
  ・マッチング・層別化
     ・共変量の似ている物を比較
     ・ただし”似ている”の定義はあいまい
     ・共変量が多いと類似するデータが少なくなる
  ・共変量を含めた回帰モデル(共分散 重回帰)
     ・回帰モデルで共変量の影響を調整
     ・モデルの依存度が高い(ロバストが低い)
・傾向スコア(propensity score)
  →両者の良いとこ取りをする
・傾向スコアとは
  →割り付けられやすさの指標
    ・ei = p(t=1|ci)
 ・共変量ベクトルがciの時に処置群に割り当てられる条件付確率
 ・この式は“割付け”と共変量の関係を示す。
    →説明変数と結果変数はでない
 ・一般的にはロジスティック回帰で求める
・傾向スコアでは「割付け」をモデル化
・同じ傾向スコアを持つ患者
  →実際どちらの群に割り付けられたかは偶然による
  →処置以外の効果は無作為化されている
・傾向スコアが一致しているペアをマッチングすると
  →差の平均が因果効果の不偏推定量になることが証明できる。
  →ちょっと難しいけど。。。
・傾向スコアの具体的方法
  ①傾向スコアの計算
    →ロジスティック回帰などから共変量を用いて計算
  ②算出された傾向スコアで調整
     →マッチング、層別解析、IPW推定量
・傾向スコアが共分散分析に比べて優れている点
  ①次元の縮約
   ・傾向スコアは共変量を一次元に縮約している
      →共変量の重なりが少ない場合でも使用できる
  ②モデル依存度の低さ 解析のロバストさ
   ・共変量と結果変数の関係をモデリングしなくてもよい
   ・回帰モデルよりもモデルの誤設定に強い
・傾向スコアの前提条件
  ・「強く無視できる割当て」条件
  ・どちらの群に割り当てられるかは共変量の値にのみ依存
    →結果変数に依存しない
  ・どの対象となっている共変量が上記を満たしているかは
   はっきりしないことが多い。
・前提条件の確認法
  ・割り付けを共変量が説明していることを示す。
    →C統計量など
  ・共変量自体の分布が調整されていることを示す
    →群間での共変量の差がないこと
  ・逆に説明できないor調整されない場合
    →見逃している共変量があることが示唆される
  ・従属変数との因果関係を考えて共変量を選択
    ・処置前かつ結果変数に先行→共変量
    ・処置後かつ結果変数に先行→微妙
    ・処置後かつ結果変数の後になる→共変量ではない
・傾向スコアの限界
  ・2群以上の比較を行う場合
   →2群ごとに傾向スコアを計算することになり母集団がかわる。
  ・マッチング・層別解析では因果効果の推定値は計算できるが、
   標準誤差が計算できない。
  ・マッチングでは「同じ傾向スコア」を持つものをペアにするが、
   連続変数のため完全に一致することは少ない。
   そのためペア選択に恣意性が残る。
  ・マッチングでは多いデータの群で多くのデータが無駄になる。
  「対象者の少ないほうの群の共変量」上での期待値が
   因果効果の推定量になる。


気管支喘息と麻酔

初期研修医勉強会  担当:M先生

「気管支喘息と麻酔」

・気管支喘息とは
  ・気道の慢性炎症性疾患
  ・気道の狭窄、過敏性亢進
・術前評価するポイントは?
  ・発症年齢
  ・最近の発作
  ・内服加療や吸入薬使用の有無
  ・季節性
  ・睡眠障害
  ・入院歴(時期、回数)
  ・アスピリン喘息
  ・喫煙の有無
・喘息の既往があると言われたら・・・
  ・過去数年間発作なし
  ・内服薬や吸入薬なし
  ・身体所見や呼吸機能検査にて異常なし
    →術前処置は不要
・今でもゼーゼーいってる場合は・・・
  ・緊急でないのであれば手術は延期
  ・緊急を要するなら
    →吸入薬で改善してから手術 
    →術中も吸入でコントロール
・アスピリン喘息
  ・好発年齢は30~40歳代
  ・慢性副鼻腔炎や鼻茸を合併
  ・NSAIDsの使用により発作が誘発
    →時に致死的
  ・コハク酸エステル型ステロイドの使用を避ける
・麻酔導入
  ・プロポフォールは実はアレルギー反応を誘発しやすい!
   →注意が必要な患者
    ・喘息のコントロールが悪い
    ・アトピー患者
    ・多数の薬剤にアレルギーあり
・挿管
  ・気管への刺激により発作が誘発される率が上昇
  ・可能な限りマスクで維持することが推奨される
  ・長時間の手術、full stomach
   手術部位が気道の確保を難しくするなどの場合
    →躊躇せず挿管する
・吸入麻酔薬
  ・吸入麻酔薬には気管支拡張作用あり
  ・セボフルランは粘膜への刺激性が弱く好んで用いられる
・術中喘息発作について
 ・カプノグラムで呼気が延長
 ・1回換気量の減少
   →これらの所見で疑えば聴診で確認
・術中発作が起こったら?
 ・麻酔を深くする
   →吸入麻酔薬の濃度を上げる
 ・β2刺激薬の吸引
 ・ステロイド静注
 ・吸引は麻酔深度が十分に深くなってから!
・リドカインの静脈内投与は気管支痙攣を抑制しうる
・β2刺激薬との併用により、更なる効果が期待できる

2013年9月15日日曜日

監察医制度と解剖のお話

「麻酔科勉強会」 担当:S先生


「監察医制度と解剖のお話」


・監察医制度
  ・1946年:戦後のGHQによる占領政策で導入された制度。
    →米国の「Medical Examiner‘s System 」に基づき、
     東京都変死者等死因調査規定を制定。
  ・1947年:監察医制度を制定
    →人口上位7都市に。
    →東京23区・大阪市・京都市・名古屋市・横浜市・神戸市・福岡市。
  ・1949年:死体解剖保存法が制定
    →伝染病、中毒、災害で死亡した疑いのある死体、
     その他死因の明らかでない死体について、
     死因究明と公衆衛生の向上を図る。
  ・1985年:京都、福岡は自治体の財政上の都合により同制度は廃止。
・監察医制度の役割
  ・サンプリング地域内の正確な死因統計作成
  ・残された家族のために
  ・県民の安心安全のために
  ・医療へのフィードバック
・兵庫県監察医務室の紹介
・多数の地域は監察医制度はない。
  →CPAOAを見た担当医が検案
  →問題となる事案も。
    ・北見市ガス漏れ事故
    ・犯罪死の見逃し
・心肺蘇生について
  ・胸骨圧迫の合併症
    ・全合併症:21-65%と高率に発生
    ・肋骨骨折:13-97%
    ・重篤な合併症:大動脈破裂、心破裂、胃破裂、
            肝損傷、脾損傷、内胸動脈損傷
  →解剖すると胸骨・肋骨骨折は必発。
  →時々、肝損傷や心外膜出血のケースも。
・CPAOA症例、CPR外傷が致命的となるケースもあるかも。。



2013年9月13日金曜日

脳動脈瘤クリッピング術とMEP

「麻酔科勉強会」 担当:Y先生


「脳動脈瘤クリッピング術とMEP」


・MEP
  →運動誘発電位:Motor evoked potential
・脳動脈瘤の好発部位
  ・内頸動脈後交通動脈分岐部 (IC-PC)
  ・前交通動脈 (A-com)
  ・中大脳動脈第一分岐部 (MCA)
  ・脳底動脈終末部 (basilar top)
・重要な穿通枝
  ・前脈絡叢動脈(AChA)
    ・内頚動脈の後交通動脈分岐部より末梢で分枝
    ・灌流領域:内包後脚。外側膝状体、視床など
    ・片麻痺、半身感覚障害、半盲
      →Abbie症候群 or Monakow症候群
  ・レンズ核線条体動脈(LSA)
    ・中大脳動脈の水平部分(M1)から分枝
    ・M1以外から分枝することも。
    ・BAD、被殻出血など
    ・灌流域は線条体、内包、視床など
    ・閉塞で錐体路障害
  ・Heubner反回動脈
    ・前交通動脈分岐近傍の前大脳動脈A1
     ないしはA2近位側から分岐し外側方向に反回して走行
    ・灌流域:尾状核や被殻、淡蒼球の前下部および低位内包前脚
    ・閉塞で対側の上肢に優位な麻痺、
     顔面・口蓋・舌の障害
・MEP
 ・頭蓋または脳表を電気刺激
 ・短母指外転筋、前脛骨筋の電位を記録
・麻酔薬は脊髄前角においてシナプス伝導を抑制する。
  ・興奮性シナプス後電位(EPSP)
      →7-10 msec持続する
  ・EPSP持続している間に連続刺激を与えると閾値に達する。
      →Temporal Summation:時間的加算
  ・5連発高頻度(500Hz)矩形波電気刺激
      →麻酔中のMEPが可能となった。
・刺激方法
 ・脳表直接電気刺激(d-MEP)
    ・刺激部位
      ・中心溝上で正中から7cm外側位置
       →手指運動野
    ・グリッド電極(陽極)を硬膜下腔に挿入する。
    ・陰極は前頭部針電極。
    ・筋電図記録用電極
       →反対側母指球筋
  ・利点 
   ・脳表を直接刺激するので低い刺激エネルギーでの刺激が可能。
   ・皮質、皮質脊髄路の血流不全に鋭敏に反応する。
   ・t-MEPと比較してfalse nevativeが少ない。
  ・欠点
   ・開頭された状態でなければ使用できない。
   ・硬膜癒着例、脳腫脹の強い例では使用できない。
   ・前交通動脈、前大脳動脈付近の手術では使用できない。
   ・脳脊髄液吸引により電極が浮き上がり反応が消えることがある
 ・経頭蓋電気刺激(t-MEP)
    ・刺激部位:C3,C4にスクリュー電極
    →患側:陽極、健側:陰極
  ・C3-C4で刺激すると上肢・下肢ともに刺激される場合が多い。
  ・利点
   ・開頭されていない場合でも施行可能。
   ・硬膜癒着例、脳腫脹の強い症例でも使用可能。
   ・設置が簡便。(清潔野を必要としない)
  ・欠点
   ・強い刺激エネルギーを必要とする。
   ・False nevativeの可能性。
      ・経頭蓋電気刺激
        →皮下組織を通電、大孔から延髄刺激に
        →MEPは正常
・MEP変化の基準に関して、明確な基準はない。
・MEPの消失、振幅の50%以上の低下をMEP変化とする施設が多い。
・MEPの報告をいろいろと見てみると…
  ・d-MEPの反応消失は皮質脊髄路の虚血が疑われる。
  ・t-MEPはやはり一定のfalse negativeが発生する可能性。
  ・MEP変化が5分以内に回復
     →術後運動麻痺を起さない可能性が高い。
  ・穿通枝血流不全
     →MEP変化は直ちに生じる。
  ・皮質枝(特にMCA分枝)は10分ほど観察が必要。
・MEPと麻酔
  ・吸入麻酔薬、静脈麻酔薬いずれもMEPを抑制する。
  ・静脈麻酔薬は吸入麻酔薬よりもMEP抑制が少なかったという報告が多い。
  ・Rapid trainpulse法によるMEP
     →麻酔薬による抑制をあまり受けなかったという報告も。
     →吸入麻酔薬を使用してもいいかも。
  ・筋弛緩薬をT1 twitchが30%程度になるよう調節
     →体動を抑制しかつMEPモニタリングも可能。
・術中誘発電位モニタリングの現状:アンケート調査による検討
  ・吸入麻酔派2%、TIVA派80%
  ・筋弛緩薬は導入のみ使用が73%
・当院における症例の紹介





2013年9月5日木曜日

食道術後の合併症

「ICU勉強会」 担当:U先生

「食道手術後の合併症」

・食道癌手術は困難な手術である。
・再建術式
  ・後縦隔再建・胸骨後再建・胸骨前再建
・合併症:20-80%
  ・肺炎:16-67%
  ・心筋梗塞
    ・急性心不全
  ・吻合部リーク
  ・心房細動
  ・反回神経麻痺
  ・UTI
  ・無気肺
・死亡率:0-22%
  ・30日死亡率:0-6%
  ・合併症が多くなれば死亡率が上がる。
・リスク因子
  ・morbidity、30日mortalityいずれもリスク因子なのは
    →インスリン使用のDM、高齢、ALP>125
・術後合併症として
  ・肺合併症
  ・導管不全
  ・横隔膜ヘルニア
  ・心臓合併症
  ・反回神経麻痺
  ・乳び胸
  ・・・
・縫合不全
  ・5-18%に生じる。
  ・死亡率12%
    ・大網充填が行われる。
  ・適切な組織灌流を保つ。
  ・CTガイド下ドレナージ
  ・低血圧、無尿、アシドーシスなどが予測因子
  ・抗生剤使用
・導管血流不全
  ・外科的介入を必要とするのは1-2%
  ・大腸導管より胃管つり上げのほうが多い。
  ・30日死亡率を上げる。
  ・内視鏡観察すると、灰色、白色、黒色の粘膜を呈する。
  ・septic shockとなり急性の経過を呈する。
・機能的導管障害
  ・胃内容排出遅延、ダンピング症候群、低血糖、食道反射など
・食道切除後症候群
  ・早期:ダンピング症候群、晩期:低血糖
・胃内容排出遅延
  ・ボツリヌス毒素両方が効果がある場合がある。





Journal超ななめ読み8月

「Journal超ななめ読み8月」


Effect of Intraoperative High Inspired Oxygen Fraction on Surgical Site Infection, Postoperative Nausea and Vomiting, and Pulmonary Function: Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Controlled Trials.
術中高濃度酸素吸入が創部感染、PONV、術後呼吸機能に与える影響
Anesthesiology. 2013 Aug;119(2):303-16.


Vocal cord paralysis after aortic surgery.
大動脈手術後の声帯麻痺
J Cardiothorac Vasc Anesth. 2013 Jun;27(3):522-7


Systemic vascular resistance has an impact on the reliability of the Vigileo-FloTrac system in measuring cardiac output and tracking cardiac output changes.
体血管抵抗はFloTracによる心拍出量および心拍出量変化追跡に影響を及ぼす
Br J Anaesth. 2013 Aug;111(2):170-7


A trial of intraoperative low-tidal-volume ventilation in abdominal surgery.
腹部手術における術中低容量換気に関する試験
N Engl J Med. 2013 Aug 1;369(5):428-37


Efficacy of intraoperative dexmedetomidine infusion on emergence agitation and quality of recovery after nasal surgery.
鼻手術後の覚醒時興奮と回復の質に対する術中デクスメデトミジンの効果
Br J Anaesth. 2013 Aug;111(2):222-8



・術中高FiO2は創部感染、PONVをおそらく減らし呼吸合併症は増やさない。
・長い人工心肺時間と下行置換は術後声帯麻痺のリスクとなる。
・FloTracの心拍出量は体血管抵抗がnormalでないと信頼できない可能性。
・呼吸器リスクのある患者で術中肺保護換気は合併症を減らす。
・術中プレセデックス持続投与により覚醒時興奮を減らせる可能性。





2013年8月22日木曜日

局所麻酔と術中出血

「麻酔科EBM勉強会」 担当:M先生

「局所麻酔薬と術中出血」

・周術期の輸血
  →ウイルス感染、細菌混入、TRALIなどのリスク
  →免疫抑制の可能性、癌の再発リスク、創部感染リスク
・最近はChagas病の話題が。
  ・Chagas病の豆知識
     →もともとバチスタ手術はChagas病による
      心肥大を縮小する目的で考案された
・周術期の輸血予防策
  ・薬剤
    →エリスロポエチン、アミノカプロン酸、代用血液
  ・テクニカル
    →低侵襲手術、自己血輸血、希釈式自己血輸血法
  ・デバイス
    →セルセーバー
  ・局所麻酔
・整形外科領域
  ・THAと局所麻酔
    ・1966年以降少なくとも29のRCT
      →局所麻酔での手術により有意に出血量が減少
  ・脊椎固定術においても出血量、輸血患者の減少効果
  ・TKAと局所麻酔
    ・術後痛、オピオイド関連有害事象、モルヒネ使用量、在院日数
     →局所麻酔群で有意に改善を認めた
    ・死亡率、心血管合併症、DVT・PE、手術時間、認知機能障害
     →有意差はなかった
・泌尿器科と局所麻酔
  ・TURPでは脊髄くも膜下麻酔は出血量を減少する
  ・前立腺手術
    ・麻酔法(脊麻、全麻)による出血量の差はない
    ・出血量は切除した前立腺組織量に相関がある
    ・切除量の多い患者→無症候性の血管内凝固障害あり。
  ・根治的恥骨後式前立腺摘除術
    ・出血量は脊麻群で有意に少なかった
・消化器外科と局所麻酔
  ・結腸手術
    ・出血量は両群で有意差を認めなかった
    ・術後24時間の痛みは全硬麻群で有意差に小さかった
    ・術後の排ガスの早さも全硬麻群で有意差をもって早かった
・血管外科領域
  ・AAA 
    ・出血量に関しては全麻群と全硬麻群で有意差を認めず。
・局所麻酔が出血量を減少させる機序
  ・動脈血圧を下げる?
  ・末梢静脈圧を下げる?
  ・自発呼吸だと出血量が減る?


2013年8月19日月曜日

医薬品添付文書の読み方

「ICU勉強会」  担当:F薬剤師さん

「医薬品添付文書の読み方」

・医薬品添付文書とは
 ・薬事法第52条に従って記載された公的文書
 ・原則A4用紙4枚まで
・最近は添付文書の改訂の頻度が高くなっている。
  →改訂年月が古い添付文書は改訂されていないか注意
・日本標準商品分類番号
  →5-6桁の数字
    ・医薬品の場合は最初の2桁が87
   ・3-5桁目は薬効分類番号
・新規薬価収載された医薬品は注意!
  ・薬価収載の属する月の翌月から1年を経過していない場合
   →投与期間は14日間が限度となる。
・貯法、使用期限
  ・使用期限が3年以上の薬品
    →使用期限の表示義務なし。
    →使用期限表示がある薬品は不安定な薬剤と考える。
・薬効分類名
 →表示が統一されていない。
   ・適応疾患名で記載される「疾患派」
      ex)「高血圧・狭心症治療剤」
   ・作用機序を記載する「機序派」
      ex)持続性Ca拮抗剤
   ・両方書いてあるものも。
・処方箋なしでも買えるOTC
  ・OTC:Over the Counter:薬局、ドラッグストアで買えるお薬。
  ・医療用医薬品がOTC化することを「スイッチOTC」と呼ぶ。
    →最近はロキソニンのスイッチOTCが話題に。
  ・エパデールのスイッチOTCには厳しい制約がついた。
・名称
  →販売名、一般名、欧文名の3つがある。
・警告
  →警告がある添付文書は、用紙の右肩が赤く塗ってある。
 ・不思議な警告
   「ペンタジン錠25mg」には「静注しないこと」との記載が??
    →麻薬依存患者の乱用を防ぐ目的。
      ・ペンタジン錠25mgにはナロキソンが入ってる。
      ・経口摂取した場合
         →ナロキソンは初回肝通過効果を受ける。
         →ナロキソンの効果は消失。
         →ペンタジンの効果だけが残る。
      ・無理やり溶かして静注した場合
         →ナロキソンも同時に静注される。
         →ペンタジンは拮抗されて効果なし。
・禁忌
   →治療上必要であれば医師の判断で投与可能。
   →ただし薬剤師からは確認の連絡が入る。
  ・製剤によっても禁忌が変わる場合がある。
    ・フェノバール散は妊婦には有益性投与。
    ・ワコビタール坐剤は妊婦には禁忌
・薬剤の組成はよく見てみよう。
  ・アリナミンF50mg
    →1A中にブドウ糖4g入ってる。
    →ウェルニッケ脳症の時などアリナミンF大量投与すると・・・
    →知らないうちに糖負荷してることに。
・用法及び容量
  ・適宜増減:適宜増減の範囲は明示されている。
・製剤形態によっても変わる併用禁忌
  ・フェノバール
    →原末、散、錠、エリキシルの形態が。
      ・エリキシルはエタノールを含む。
        →ジスルフィラムやシアナミドと併用禁忌となる。
・ちょっとここで薬物動態学
  ・分布容積
    →数値が大きいほど体内に薬剤が分布していることに。
  ・半減期とクリアランス
    ・クリアランスが大きければ体内から早く消失?
      →分布容積が大きければそうとも限らない。
      →消失速度定数を見る。
・肝代謝か、腎代謝か?
  ・添付文書に直接記載がない場合はどこを見たらいい?
    →「有効成分に関する理化学的所見」
    →「分配係数」or logPを見る。
       ・分配係数が1以下なら腎排泄、1以上なら肝代謝
       ・logPがマイナスなら腎排泄、プラスなら肝代謝


2013年8月14日水曜日

頭蓋内圧亢進患者の管理

「麻酔科EBM勉強会」  担当:O先生


「頭蓋内圧亢進患者の管理」


・ICP:頭蓋内圧 CCP:脳灌流圧
・ICPとCCPに影響を与える因子
  ・麻酔
  ・過換気
  ・人工呼吸管理
  ・高浸透圧製剤の使用
  ・体位
  ・減圧術
・CCP=MAPーICP
・ICPとCCPはどの程度に管理すべきか。
  ・ICPは20mmHg以下にすべき。
  ・CCPは70mmHg以上にすべきではない。
・麻酔の影響
  ・吸入麻酔薬
    ・CMRO2(cerebral metablolic rate of oxygen)下げる。
    ・脳血管を直接拡張させる 
      →脳血流量は増やし、ICPは上昇
    ・CMRO2減少による脳血管収縮作用 vs 血管拡張作用
      →CBFは変化しないかむしろ減少との報告も
    ・steal phenomenon
      ・吸入麻酔薬による血管拡張と血流増加
        →正常脳血管のみで生じる
        →虚血脳組織への血流がさらに低下してしまう
      ・2MACまでのsevflurane
        →脳血流速度には変化がないという報告も。
  ・静脈麻酔薬(propofolとかetomidateとか)
        ・脳血管を収縮させる
      →CBF↓、CBV↓、ICP↓
      →CMRO2↓
    ・ただし正常脳組織ならoutoregulationは保たれる。
    ・プロポフォール麻酔+過換気の併用
      →SjO2値が脳虚血レベルの50%を切る頻度が増加する。
  ・オピオイド
    ・オピオイドガICPに与える影響はcontroversial
    ・remifentanylはICP、CBF共に変化させないという報告
・過換気の影響
  ・動脈血低CO2血症は脳血管を収縮させる
    →脳血管抵抗↑
    →CBF↓、CBV↓、ICP↓
  ・病変部位では酸素とグルコースの運搬に影響をあたえる可能性。
  ・一時的効果はあるが長期間では悪影響
・人工呼吸(+PEEP)の影響
  ・胸腔内圧の上昇
    →静脈灌流の阻害によりICP↑
    →血圧低下によりCPP↓
・高浸透圧療法
  ・マンニトール
    ・マンニトール(0.25-1.0g/kg)がICP上昇の治療薬の基本
    ・マンニトールの予防投与はすべきでない。
  ・高張食塩水
        ・有効である可能性。
      →大きな合併症なくICPを下げる。
    ・副作用に注意。
       ・血小板凝集障害による出血
       ・PT、APTT延長
       ・高クロール性アシドーシス
       ・橋中心髄鞘崩壊症
         →頭部外傷では極めて稀だが。。。
・体位
  ・MAPが維持されている限り・・・
    →30-40度のヘッドアップはICPを下げる。
・開頭減圧術
  ・内科的治療と比較したstudy
    →人工呼吸器装着、ICU滞在は開頭術のほうが短かったとの報告。


NAVAについて

「麻酔科勉強会」  担当:M先生

「NAVAについて」

・NAVA
  ・Neurally Adjusted Ventilatory Assist
   →神経調節補助換気
  ・横隔膜の電気的活動を利用
  ・呼吸補助のタイミングや吸気圧、換気量を制御
  ・NIVでも使用可能、同調性が良い
・横隔膜電気的活動(Edi)
  ・Electrical activity of the diaphragm:Edi
  ・Edi測定用の電極のついた特殊な胃管を挿入し測定
・Ediカテーテル挿入方法
  ・身長、体重からチューブサイズを決める
  ・鼻梁、耳たぶ、剣状突起間距離を測定(NEX値)
  ・NEX値を基に挿入距離を決定
・Ediトリガーの設定
  ・換気補助開始のトリガーであるEdiトリガーを設定
  ・Ediトリガー:μV
     (0.0~2.0μv、初期値0.5μv)
・NAVAlevelの設定
  ・換気補助の割合を決定する因子
  ・患者のEdi信号に比例して換気補助が行われるため生理的
・呼吸器疾患を持つ患者
  →Ediは健常者よりも高値
・呼気トリガー
  →Ediが最大値(Edi peak)の70%に低下すると呼気相となる
・患者呼吸器間の同調性
  ・過剰な補助しない
  ・Trigger delayが少ない
  ・Air trappingを防ぐ
  ・呼吸サイクルの非同期を防ぐ
     →患者-呼吸器間の同調性が良い
・NIVでも良好な同調性との報告
・より生理的な呼吸との報告
・小児に対しては?
  ・小児、新生児でも同調性は良好
  ・エアーリークがあっても同調性は良好
  ・低出生体重児にも使える
  ・酸素化は改善したりしなかったり
  ・最大気道内圧も低下したり変わらなかったり
・呼吸vitalとしてのEdi
  ・最適なPEEP値を決定するのに有用
  ・呼吸器離脱の際にも参考になる
  ・他の換気モードで非同期を検出するのに有用
  ・再挿管した患者ではEdiが有意に高かった
  ・進行した筋ジストロフィ患者で横隔膜機能の評価に有用




2013年8月10日土曜日

心臓手術とノボセブン

麻酔科勉強会  担当:H先生

「心臓手術とノボセブン」

・ノボセブン
  →遺伝子組換え活性型血液凝固第VII因子製剤
 ・適応
   ・血液凝固第VIII因子又は第IX因子に対する
    インヒビターを保有する先天性血友病患者の出血抑制
   ・後天性血友病患者の出血抑制
   ・先天性第VII因子欠乏症患者における出血傾向の抑制
   ・血小板に対する同種抗体を保有し、
    血小板輸血不応状態が過去又は現在みられる
    グランツマン血小板無力症患者の出血傾向の抑制
・止血メカニズム
  ・内因系凝固カスケードを介さず直接第Ⅹ因子を活性化
    →トロンビン産生を促す。
  ・十分なフィブリノーゲンがないと凝固系は機能しない。
  ・もちろん正常機能を持つ血小板は不可欠。
・ノボセブンの適応外使用
  ・外傷
  ・血小板数・機能低下時の出血
  ・吐血、下血
  ・心臓大血管手術
  ・肝移植
  ・その他の大量出血手術など
・2000年、Al Douriら
  →CPB離脱後の出血に対してrFⅦa 30μg/kgの投与
  →出血量が劇的に減少した。
  →ここから心臓血管手術におけるrFⅦaの使用報告が急増。
・米国での使用状況
  ・2008年には17813症例でrFⅦaが承認適応外使用
    →全使用症例の97%
  ・心臓血管外科手術の使用が急激に増加
    →適応外使用の1/4を占める。
・ノボセブンの安全性
 Safety of Recombinant Activated Factor VII in Randomized Clinical Trials.
   ・rFⅦaにより血栓塞栓系の有害事象は増えそうである。
   ・特に動脈血栓塞栓が増えるらしい。
   ・動脈の中では冠動脈イベントがより増えるらしい。
   ・頭蓋内出血に対するrFⅦaの使用
     →有意に有害事象を増やしそうである。
   ・有害事象はdose-dependentに増えていくのであろう。
・投与量
   ・最近の報告になるに従ってlow-doseになる傾向?
   ・10-20μg/kg程度のボーラス投与でも有効との報告も。
・心臓大血管手術におけるノボセブンの適応外使用
 The role of recombinant factor VIIa in on-pump cardiac surgery: Proceedings of the Canadian Consensus Conference. 
  ・(心臓手術における)prophylactic use
  ・人工心肺離脱し、プロタミンリバース後投与
    ・全例投与
       or 大量出血が見込まれる、または輸血拒否患者
  ・輸血が遅れてしまう可能性あり。
  ・有害事象に有意差なし。
  ・全患者に投与することは避けるよう強く推奨。
  ・大量出血のリスクのある患者には有効かも。
 The role of recombinant factor VIIa in on-pump cardiac surgery: Proceedings of the Canadian Consensus Conference.
  ・routine use
  ・凝固異常のある、または見込まれる出血患者
  ・通常の止血療法の併用または代替として行う
  ・有害事象の頻度に有意差は認めないが、
   有意に良いエンドポイントが得られているわけでもなく、
   今のところ推奨できるものではない。
 The role of recombinant factor VIIa in on-pump cardiac surgery: Proceedings of the Canadian Consensus Conference.
  ・rescue use
  ・標準的な止血療法を最大限に行っても反応しない大量出血
  ・rescue useとしてのrFⅦaの使用
    →ベネフィットがリスクを上回ると考えられるため推奨
    →推奨度は弱く、制限もある。
  ・脳血管障害をもつ患者に使用すると有害事象が起こりやすい。
  ・“refractoriness”の判断
    →できるだけ出血の早期に、アグレッシブに行う。
    →rFⅦaの効果が最大限に出やすい。
・ノボセブンとPint of Care
 The Utility of Thromboelastography for Guiding Recombinant Activated Factor Ⅶ Therapy for Refractory hemorrhage After cardiac Surgery.
  ・rFⅦaを投与した患者をresponder(28人)vs nonresponder(10人)で比較。
  ・投与前のTEGデータがresponderの予測因子となりうるか。
  ・rFⅦa投与前のTEGデータが4つ中2つで異常値
     →nonresponderとなる確率が高い。
 Change in Hemostatic Intervention After Implementation of Thromboelasto- metry.
  ・2008年12月にROTEMを導入した施設での研究。
  ・2008年の心臓手術(811件)と2009年(865件)で、
   輸血必要量、rFⅦa使用量、フィブリノゲン製剤使用量を比較。
   ちなみに2009年のうち146症例でROTEMを使用。
  ・結果、輸血量は有意差なし、rFⅦa使用量は有意に減少、
   フィブリノゲン投与量は有意に増加した。
・まとめ
  ・ノボセブン使用前に確認すべきこと
    ・適正なHb
    ・適正な血小板数と機能
    ・適正な凝固機能(PTやAPTTよりもROTEMを使用した方が良い?)
    ・抗線溶薬の投与
    ・(術後ICUで・・・)術者に再開胸の意思確認
  ・CABGでは入れない方がいいかもしれない。


2013年8月8日木曜日

感染性心内膜炎

ICU勉強会  担当:N先生

「感染性心内膜炎」

・感染性心内膜炎(IE)とは
 ・弁膜、心内膜に細菌集蔟を含む疣腫(vegetation)を形成
   →菌血症、血管塞栓、心障害など
    多彩な臨床症状を呈する全身性敗血症性疾患
・IE発症の流れ
 ・異常血流の影響:弁膜症、先天性心疾患など
 ・異物の影響:人工弁など
   →NBTE(nonbacterial thrombogenic endocarditis)
   →菌血症
   →vegetationの形成
・症状・身体所見
  ・発熱:80~85%で認める
  ・心雑音:80~85%で聴取
  ・末梢血管病変:点状出血、Osler結節、Janeway発疹、Roth班
  ・関節痛、筋肉痛:全体の15~50%
  ・全身性塞栓症:脳・腎・脾・心筋梗塞、腸管虚血など
  ・神経学的症状:脳塞栓・頭蓋内出血
  ・うっ血性心不全 
  ・腎不全:糸球体腎炎・血行動態の障害・抗菌薬の腎毒性
・DUKE基準について
・治療方針
  ・心内膜、弁に形成された疣腫から
    原因となった病原微生物を死滅させる
  ・原因菌が判明しているかが重要。
  ・菌が分離されたらMICを測定する
・streptococci:ペニシリンG感受性連鎖球菌
  ・静脈炎を合併する場合ABPCに変更
  ・ペニシリンアレルギーでは即時型でなければCEZやCTRXの投与も可
  ・病状の進行は数週間~数か月
  ・PVEでは腸球菌(後述)と同様4~6週の治療期間
・streptococci:ペニシリンG低感受性連鎖球菌
  ・基本的にPCGとGMの併用療法
  ・VCMを使用する場合GMの併用はなくてもよい
  ・PVEでは腸球菌(後述)に準じた治療
・Enterococci:腸球菌
  ・60歳以上の高齢者に多い
  ・脳合併症を除けば臨床的には亜急性の経過をとる
  ・併用療法が原則
  ・ペニシリンアレルギーではVCMかTEICを使用
  ・GMの併用を4週間。PVEでは4~6週間併用
・Staphylococci:メチシリン感受性ブドウ球菌
  ・急性の経過をとる
  ・PCGやABPCは多くの場合無効
  ・PVEの場合、治療期間は6~8週でGM併用期間を2週間。
  ・RFP併用することもある
・Staphylococci:メチシリン耐性ブドウ球菌
  ・代表的菌種はMRSA
  ・MRSEもMRSAに準じて治療する
  ・PVEの場合、VCMの投与は6~8週、
   アミノグリコシド系を2週間併用。
   さらにRFPを2~6週間併用することもある
・グラム陰性菌(HACEK群を含む)
  ・頻度は数%~10%程度
  ・CTRXまたはCTMを4~6週間投与
    (その他の第3・4世代セフェム系も可)
  ・腸内細菌や緑膿菌では感受性のある第3・4世代セフェム系と
   アミノグリコシド系の併用
・Fungi:真菌
  ・カンジダ属が大部分を占める  
  ・抗真菌活性の高いリポソームアムホテリシンBが選択される
  ・フルシトシン(5-FC)を併用することもある
  ・ミカファンギンも今後の検討が待たれる
  ・真菌性IE
    →まず外科的治療を考慮したうえで抗真菌薬投与を行うべき
・外科的治療の適応
  ・うっ血性心不全
   ・NYHA分類Ⅲ~Ⅳ度の心不全、Ⅱ度でも心不全・肺高血圧がある
  ・抵抗性感染
   ・適切な抗生剤の投与後も感染所見が持続する
   ・薬物治療が奏功しがたい真菌・グラム陰性菌・MRSAなど
   ・弁輪膿瘍・房室ブロックなど感染巣の弁輪への波及
  ・感染性塞栓症
   ・可動性のある10㎜以上の疣腫が増大傾向にある
   ・重篤な心不全を認める脳合併症患者
・外科手技
  ・僧帽弁置換術
  ・僧帽弁形成術
  ・弁輪部再建
  ・基部置換術(ホモグラフトが推奨される)
・合併症
  ・うっ血性心不全
    ・IEの最大の予後規定因子
    ・炎症による弁破壊による弁閉鎖不全の増悪が原因
       →弁尖の穿孔、腱索断裂、
        弁周囲感染からの裂開・シャントなど
  ・自己弁IEの場合の発症率
    ・大動脈弁29% 僧帽弁20% 三尖弁8%
  ・頻度の高い起因菌
    ・Staphylococcus aureus が最多
    ・Enterococci, S,pneumoniae, なども合併率高い
  ・基本的には外科手術が必要
    ・活動性IE時の置換弁再発率は2~3%
・弁周囲感染
  ・感染が弁輪部を超えて周囲組織に広がり、膿瘍を形成
    ・瘻孔、心内シャント
    →血行動態の突然の悪化もの可能性
  ・自己弁IEの10~14% 
  ・大動脈弁IEに多い →  AVblock・LBBBが続発
  ・人工弁IEの45~60%に合併
    ・僧帽弁IEにも高率に生じる
    ・機械弁では初期感染巣は弁輪部が多い(56~100%)
  ・診断にはTEEが有用(感度87% 特異度95%)
  ・うっ血性心不全の合併に関わらず、基本的に外科手術の適応
・塞栓症
  ・IEに全身性塞栓症を発症する頻度は27~45%
  ・中枢神経系が60~70%の頻度 
     その他、脾臓・腎臓・肺・冠動脈・
     肝臓・腸管膜動脈・末梢動脈など
  ・疣腫>10mm(odds比 2.80)、可動性が大きい と頻度が高くなる
  ・塞栓発症の予測にTEEが有用
・脳合併症
  ・頻度は20~40%
  ・64.6% 脳梗塞
  ・31.5% 脳出血(出血性梗塞・感染瘤破裂によるクモ膜下出血)
  ・2.8%  脳膿瘍
  ・1.1%  髄膜炎
  ・神経系合併症の原因菌はStaphylococcus aureusが多い

Journal超ななめ読み7月

「Journal超ななめ読み7月」


Effects of patient-directed music intervention on anxiety and sedative exposure in critically ill patients receiving mechanical ventilatory support: a randomized clinical trial.
音楽がICU人工呼吸患者の不安と鎮静薬使用に与える影響についてのRCT
JAMA. 2013 Jun 12;309(22):2335-44.


Trendelenburg Position Does Not Increase Cross-Sectional Area of the Internal Jugular Vein Predictably.
頭低位にしても内頸静脈径は変わらない。
Chest. 2013 Feb 7. doi: 10.1378/chest.11-2462.


Symptomatic local anaesthetic toxicity and plasma ropivacaine concentrations after transversus abdominis plane block for Caesarean section.
帝王切開術に対するTAPブロック後の症候性局所麻酔薬中毒と血中局所麻酔薬濃度
Br J Anaesth. 2013 Jun;110(6):996-1000.


A salty taste to autoimmunity.
塩分と自己免疫疾患
N Engl J Med. 2013 Jun 27;368(26):2520-1


Outcomes of Morbidly Obese Patients Receiving Invasive Mechanical Ventilation: A Nationwide Analysis.
人工呼吸を受ける病的肥満患者のアウトカム
Chest. 2013 Jan 24. doi: 10.1378/chest.12-2310


Targeted versus universal decolonization to prevent ICU infection.
ICUでの感染予防における標的除菌vs全例除菌
N Engl J Med. 2013 Jun 13;368(24):2255-65.


Rapid blood-pressure lowering in patients with acute intracerebral hemorrhage.
急性期脳出血患者に対する急速降圧療法
N Engl J Med. 2013 Jun 20;368(25):2355-65.


Protective mechanical ventilation during general anesthesia for open abdominal surgery improves postoperative pulmonary function.
全身麻酔開腹手術における肺保護換気は術後呼吸機能を改善させる
Anesthesiology. 2013 Jun;118(6):1307-21.


Prone positioning in severe acute respiratory distress syndrome.
重症ARDSに対する腹臥位療法
N Engl J Med. 2013 Jun 6;368(23):2159-68.



・音楽聴かせると不安と鎮静薬使用頻度、使用量が減らせる可能性。
・頭低位にしても内頸静脈径は大して変わらず、むしろ減る人も。
・妊婦のTAPブロックでは30分後に血中局所麻酔薬濃度が最高値になる。
・塩分誘発のTh17発現を抑えれば自己免疫疾患の増悪を防げるかも。
・病的肥満患者も非肥満患者も病院死亡率は変わらなかった。
・全例除菌は血流感染症の減少およびMRSA株分離に有効。
・脳出血患者に対する急速降圧療法はoutcomeを変えなかった。
・やや低tidal+PEEPで術後呼吸機能上昇、合併症低下する。
・重症ARDS、早期に腹臥位で生存率が上がる。


2013年7月24日水曜日

緊急時の麻酔導入・気管挿管

麻酔科EBM勉強会  担当:O先生

「緊急時の麻酔導入・気管挿管」

・緊急の麻酔導入がなぜ困難か。
  ・既往がわからない
  ・気道系の評価が十分にできない
  ・血行動態の不安定さ
  ・外傷後の頸椎損傷
  ・フルストマック
  ・不慣れな環境(手術室外での場合)
  ・不慣れな介助者
  ・不十分な設備、モニタリング
・患者評価
  ・何故緊急なのか?
  ・患者にどういった医学的な問題があるか?
  ・最近どういった治療がなされていたか?
  ・アレルギーはあるか?
  ・麻酔に関してこれまで何か問題があったか?
  ・神経学的な問題はあるか?
  ・最終の食事は何時間前か?
  ・ラボデータでの異常はあるか?
  ・心電図の評価はどうか?
  ・その他の陽性所見は?
・緊急時の麻酔導入
  →様々な危険が伴う
   ・喉頭痙攣
   ・疼痛
   ・血行動態の不安定化
   ・攻撃的な振舞
   ・誤嚥
  →素早い気道の確保・麻酔導入が必要となってくる
・ミラー麻酔科学に載ってるフローチャート
  ・挿管の必要性あり
    →前酸素化
    →誤嚥防止のため輪状軟骨を圧迫
    →麻酔薬・筋弛緩薬を投与
    →喉頭鏡を用いた挿管、迅速導入
    →だめだった場合、もう一度挿管
    →それでもだめな場合はラリマで気道を確保
    →それも不可能な場合、輪状甲状膜切開。
・古典的な迅速導入法
  ・3〜5分の前酸素化
  ・麻酔導入薬・筋弛緩薬を予定量を一気に注入する
  ・誤嚥防止のため輪状軟骨圧迫
  ・マスク換気をせずに薬が効くのを待つ
  ・挿管
・挿管のためだけの筋弛緩投与なら
   →ロクロニウム+スガマデクスはいい選択肢
・挿管前の鎮静について
  ・欧米ではエトミデートが主流
    →日本では未発売
    →作用時間が短く血圧低下もない。脳保護作用(+)
  ・プロポフォール、イソゾール
    →血管拡張によるBP低下に注意
    →状況によって使い分ける、慣れた薬を使う
  ・多くの場合、最低限の投与での鎮静が好ましい
・最近の迅速導入について
  →論文読んできました。
  →A&A:Rapid Sequence Induction and Intubation:Current Controversy
・クリコイドプレッシャーは?
  ・1961年にSelickにより提唱された。
  ・44N(4.45kg)で押し続ける
    →覚醒下で10N(1kg)、麻酔下で20〜30N
  ・科学的な根拠にかける
  ・逆に挿管の妨げになって危険である。
  ・逆流を防ぐには有用だが、気道確保の妨げになる、
  ・バッグマスク換気中に関してはエビデンスがありそう。
  ・軟部組織損傷の報告も。
・挿管困難デバイスについて
 ・AWS
 ・ビデオラリンゴスコープ
 ・トラキライト、など。
・迅速導入以外の選択
 →意識下挿管
  ・気道確保が困難、上気道の外傷、頸椎が不安定である
    →軽度の鎮静後に局所麻酔し挿管
    →気道を安全に確保できる。
  ・気管支鏡を用いると診断の手がかりを得られる
  ・血行動態が不安定な患者、非協力的な患者には向いてない



    MEさん主催の人工心肺ハンズオン


低流量麻酔

麻酔科勉強会  担当:O先生

「低流量麻酔」

・低流量麻酔
 →分時換気量以下の新鮮ガス流量で行う麻酔
・麻酔器の種類
 ・開放式
 ・半開放式
 ・半閉鎖式:低流量麻酔は主にこれ
 ・閉鎖式
・閉鎖式循環式回路の歴史
  ・1850's:再呼吸回路
  ・1917:ソーダライムの発明
  ・1980's:イソ、デス、セボ。環境問題への関心の高まり
  ・1986:カプノモニターの発明
・循環回路の仕組
  ・新鮮ガス流入
    →麻酔ガスが添加され呼吸回路へ
    →呼気回路から一部は余剰ガス排出装置へ
    →一部はカニスタを通り新鮮ガスと再び合流、呼吸回路へ。
・吸入麻酔薬の取り込み
  →肺胞内で平衡に達するまでは吸入麻酔薬それなりに必要
  →それ以降は代謝されないため必要量は減る
・低流量麻酔の利点と欠点
  ・利点:経済的、環境にやさしい
  ・欠点:回路内への有害物質の蓄積
      FGと吸入ガスの組成の不一致
・有害物質の蓄積
  ・窒素:大気から迷入する可能性
      ・FGと回路内ガス濃度の乖離が見られたら?
        →高流量に切り替えてみる
  ・メタン:消化管から発生、安全限界に達することはない。
  ・アセトン:飢餓状態に発生。安全限界にはまず達しない。
・ソーダライム関連
  ・乾燥したソーダライムと吸入麻酔薬で一酸化炭素の発生
    →デス>エン>イソ>ハロ>セボの順
    ・温度が高いと一酸化炭素発生しやすい
    ・高流量だと回路内が乾燥しやすいため起こる可能性。
      →低流量なら呼気の再利用が多く回路は乾燥しにくい。
・FGと吸入ガスの組成の不一致
  →ドレーゲル社の資料より
・麻酔科学サマーセミナーでデスの低流量麻酔特集してました。
  →紹介


デスフルランいろいろ

初期研修医勉強会  担当:T先生

「デスフラランいろいろ」

・麻酔薬の歴史
  ・1722:Joseph Priestleyが亜酸化窒素を発見
  ・亜酸化窒素がパーティーで流行
  ・1795:Sir Humphry Davyが鎮痛作用、二日酔い治療効果に気づく。
  ・1844:Gardner Quincy Colton, Horace Wells笑気で抜歯
  ・William Mortonがエーテル麻酔下に頸部腫瘍摘出術
    →1842:Crawford Longが同様の手術
  ・Sir James Simpsonがクロロホルム麻酔下に分娩
  ・1853:John Snowがクロロホルム麻酔下にヴィクトリア女王の分娩
  ・1929:Hendersonがシクロプロパンの麻酔作用を発見
  ・1950's:ハロタンの開発、臨床応用開始
  ・1960's:エンフルラン、イソフルラン、セボフルラン、
       デスフルランの合成
・歯科医師Horace Wellsの生涯
  ・1815:コネチカット州で出生
  ・1844:Coltonの抜歯ショーを見学する
  ・同年:友人の歯科医John Riggsを笑気麻酔下で抜歯
  ・1845:MGHでの公開実験失敗
  ・セールスマンになる
  ・1848:売春婦に硫酸をかけるなで異常行動あり収監
  ・1848:クロロホルム麻酔下に足を剃刀で切り自殺
・デスフルランの歴史
  ・1987:動物における安全性・有効性確認
  ・1988-91:欧米で第1-3相臨床試験
  ・1992:FDAが認可
  ・2007-8:日本で臨床試験
  ・2011:日本で認可
・物理化学的性質
  ・沸点22.8℃
    →室温で沸騰してしまう
    →特別な気化器が必要
      ・加圧機能付き、加温機能付き
  ・脂肪-血液分配係数が低い
・40分程度の手術だと・・・
  →開眼、従命、orientationつくまでの時間は明らかに早い。
・手術時間が長くなると?
  ・セボフルランは嚥下できるまでの時間が延長する
  ・デスフルランは延長しない
・気道刺激性の問題
・喘息患者では?
  ・犬の気管支平滑筋を弛緩させる
  ・モルモットの気管支平滑筋を弛緩させる
  ・摘出灌流ラット肺、アセチルコリン誘発気管支攣縮
・気管支拡張作用
  デス>セボ>ハロ=イソ
・PONV、コスト、地球温暖化への影響、環境半減期など  



2013年7月9日火曜日

周術期の血糖コントロール

「麻酔EBM勉強会」  担当:K先生

「周術期の血糖コントロール」

・高血糖と易感染性
  ・FBS>200㎎/dlを超える高血糖
   →多角白血球の粘着能・走化能・殺菌能・貪食能の低下
・血糖コントロールについての時代の流れ
   ・重症患者に血糖管理を厳密に行うと予後が改善。
     ・DIGAMI study(1995年)
       →以降血糖値は180~200㎎/dl程度に。
   ・Intensive Insulin Therapyの提唱
     →LeuvenⅠ&Ⅱtrial
        ・BS>150mg/dl:死亡率上昇
        ・BS110~150㎎/dl:死亡率低下・低血糖発生率変化なし
        ・BS<110㎎/dl:死亡率低下・低血糖発生率上昇
   ・LeuvenⅠ&Ⅱtrialの問題点
      ①患者重症度が低い。
      ②ICU入室直後から800~1200kcalを経静脈的に糖負荷
      ③単施設研究
      ④LeuvenⅠは開心術が60%以上を占めていた。
   ・NICE-SUGAR study(NEJM 2009)
     →IIT群では90日死亡率が有意に高い。
     →重症低血糖の頻度14.7倍高い
   ・その後のメタアナライシスでも
     →IITを行うことで低血糖の発生率は5.99倍高くなった。
・ICUでの血糖値の目標
  ・AHA/ACC:110-180
  ・ACE:140-180
  ・ADA:140-180
  ・米国胸部外科学会:180未満
  ・米国集中治療医学会:150未満
    →米国集中治療医学会だけ基準が厳し目なのは?
      ・対象患者が1000人以下のRCTを6つ新たに加えたこと。
      ・心臓血管外科術後患者で血糖値を150未満でコントロール
        →胸骨の感染が減少し、院内死亡率が低下した
・DM患者の血糖コントロールは?
  ・糖尿病患者
   →非糖尿病患者と比べて高血糖に日々暴露
   →急激な血糖低下は有害である可能性あり。
  →血糖値の基準はより甘めでよいのかもしれない。
・NICE-Sugar studyの弱点は?
  ・簡易血糖測定器の使用
    ・多くの簡易血糖測定器はHt:40%であると仮定
    ・ICUでの輸血の閾値は7~8㎎/dl。
    ・血糖値が高めに出ている可能性
       ・低血糖を見逃している可能性
       ・BS<180㎎/dlではなくもっと低かった可能性あり
・血糖値のゆらぎ
  ・プロテインキナーゼC-β
    ・酸化ストレスの指標
    ・高血糖から正常血糖に低下するときに上昇する
  ・臍帯静脈細胞を用いたモデル
    ・高血糖から正常血糖に急速に低下するときに
     細胞のアポトーシスが増加する
  ・血糖値の変動も患者予後に影響を与える可能性がある。
    →持続的に血糖値を測定しより厳密に血糖をコントロールすれば
     予後改善が期待できるかも?
・人工膵臓
  ・国内唯一の人工膵臓。
  ・一部の大学で臨床で使用されている。
  ・設定した血糖値を上回るとインスリンが、
   下回るとグルコースが自動的に注入される。



     超緊急帝王切開シミュレーション

2013年7月7日日曜日

集中治療医学会・近畿地方会

7月6日、第58回日本集中治療医学会・近畿地方会が
ポートアイランド・兵庫医療大学にて開催されました。
当科からも2名の先生が発表されました。








 発表された先生方、お疲れ様でした。

2013年7月4日木曜日

肥満と麻酔

「麻酔科勉強会」 担当:W先生

「肥満と麻酔」

・各国別の肥満者の割合
・男女別肥満者の割合
  ・男性:30.4%
  ・女性:21.1%
・BMIとObesity Class分類
・肥満を来す疾患いろいろ
・麻酔管理上の問題点
   ・気道管理
   ・体位
   ・酸素化
   ・循環管理
   ・術後疼痛管理
   ・術後悪心・嘔吐
   ・創感染
   ・深部静脈血栓症
・教科書的には
  ・頚部が太く短い
  ・舌が大きい
  ・咽頭軟部組織が厚い
     →喉頭展開・挿管が困難
・BMIとMallampati分類
  ・仰臥位、肩枕使用、sniffing position
  ・BMIは挿管困難の指標とはならなかった
  ・Mallampati分類ハイスコアが潜在的な挿管困難の指標か
  ・喉頭展開と挿管の難易度は相関しない
・30°半側臥位、sniffing position
  →Mallampati分類 3以上が挿管困難の独立したリスク因子だが、
   特異度・陽性的中率は共に低い(62%, 29%)
・エコーでの気道評価
  ・皮膚〜気管前壁の軟部組織の厚さを評価
    ・声帯レベルの気管前面の軟部組織の厚さ
    ・頚部周囲長
   →挿管困難の指標
・sniffing vs ramped position
・肥満と酸素化
  ・肺活量・深吸気量・予備呼気量・機能的残気量が減少
  ・Closing volumeの増加
  →酸素飽和度の急激な低下
・CPAP+PEEPや、head up/reverse Trendelenbergが酸素化に有効。


Journal超ななめ読み6月

「Journal超ななめ読み6月 」


Management of antithrombotic therapy in patients undergoing invasive procedures.
侵襲的処置を受ける患者に対する抗凝固療法の管理レビュー
N Engl J Med. 2013 May 30;368(22):2113-24.


Ischemic mitral regurgitation: an intraoperative echocardiographic perspective.
Ischemic MRの術中エコー評価のレビュー
J Cardiothorac Vasc Anesth. 2013 Jun;27(3):573-85.


Thoracic epidural anesthesia improves early outcome in patients undergoing cardiac surgery for mitral regurgitation: a propensity-matched study.
胸部硬膜外麻酔は僧帽弁手術における早期outcomeを向上させる
J Cardiothorac Vasc Anesth. 2013 Jun;27(3):445-50.


Early parenteral nutrition in critically ill patients with short-term relative contraindications to early enteral nutrition: a randomized controlled trial.
早期経腸栄養比較的禁忌の重症患者における早期静脈栄養
JAMA. 2013 May 22;309(20):2130-8.


Meta-analysis of randomized trials of effect of milrinone on mortality in cardiac surgery: an update.
心臓手術においてミルリノンが死亡率に及ぼす影響のメタ解析
J Cardiothorac Vasc Anesth. 2013 Apr;27(2):220-9.


Use of Therapeutic Hypothermia After In-Hospital Cardiac Arrest*
院内心停止後の低体温療法の実態研究
Crit Care Med. 2013 Jun;41(6):1385-1395.



・ブラザキサ、イグザレルト、エリキュースも休薬期間をチェック。
・tetheringの評価、左室・左房リモデリングの評価も。
・胸部硬膜外麻酔は僧帽弁手術後の心臓、呼吸器合併症を減らす可能性。
・早期EN禁忌患者に対する早期PNも主要outcomeは向上しなかった。
・メタ解析ではミルリノン使用は死亡率の増加と関連がない可能性。
・院内心停止に対して低体温療法を行う施設はまだまだ少ない。





2013年6月28日金曜日

ラテックスアレルギー

初期研修医勉強会 担当:A先生

「ラテックスアレルギー」

・ラテックスアレルギーとは?
  →即時型アレルギー反応
  →ラテックス中のタンパク質が抗原となる。
・ラテックスとは?
  ・hevea brasiliensisというゴムの木
  ・白いミルクのような樹液
    →超遠心分離にかけると・・・
    →半透明のC−cerumと白いラテックス粒子層に分けられる
    →C−cerum中にはアレルゲンとなるタンパクが含まれる
・ラテックス中アレルゲンはHevb1〜13に分類
  →この中で最も注目されているのはHevb 6.02
・ラテックスアレルギーの患者に行われている検査
  ①ラテックス特異IgE抗体検査の測定
  ②皮膚のプリックテスト
    →①は非侵襲的だが特異度が低い。
    →②は検査によるアナフィラキシー症状の報告あり
  →Hevb6.02特異IgE抗体検査
  →感度、特異度ともに高く非侵襲的
  →臨床応用される可能性もある
・交差反応について
  ・ラテックスアレルギーと診断された患者
    →50~70%が他の植物に交叉反応性を示すという報告
  ・果物類との交叉反応性は顕著
    →ラテックス・フルーツ症候群
・交差反応性の理由
  ・植物の生体防御蛋白質群
    →ラテックスアレルゲンとなっている
  ・生体防御蛋白質群の構造は植物の進化過程で保存されている
    →IgE抗体に対する共通のエピトープを提供
  ・生体防御蛋白の正体
    →クラスⅠキチナーゼ(PR-3)
  ・Hev b 6.02とPR-3は共通のへベインドメインを持つ。
    →交差反応性の原因に。
・対策
  ・手術はその日の1例目に
  ・ラテックス製品は全てラテックスフリーに
    →呼吸器のバッグ、手袋、駆血帯、尿道バルーン
     ドレーン、キャップ、・・・
  ・代替品が手に入らない場合
    →ビニールやサランラップでくるんで使う。
・麻酔科医の対応
  ・術前:リスク患者を把握する。
  ・術中:アナフィラキシー症状の原因として鑑別に上げる。
・周術期アナフィラキシーの症状
  ①心血管系症状
  ②気管支攣縮
  ③皮膚粘膜徴候
   ・周術期で頻度が高い初発症状
      →脈拍の消失、SpO2の低下、換気困難
・症状が一部だけの場合も。
 →他の鑑別がたくさん上がる。。。
  ・心血管系のみ
    →頻脈の場合:その他のショックをきたす疾患
    →徐脈の場合:麻薬の影響
  ・呼吸器系のみ
    →チューブトラブル、誤嚥性肺炎、緊張性気胸、喘息発作など
・アナフィラキシーが起こったら
  ①原因が疑われる薬剤、ラテックスの使用を中止する
  ②100%酸素の投与
  ③輸液
  ④循環虚脱を認める場合はエピネフリンiv
  ⑤気管支攣縮を認める場合はβ2刺激薬吸入
  ⑥重症例の場合は救援要請

・パウダーフリー手袋の効果についての論文紹介




2013年6月4日火曜日

ミニトラックと私

ICU勉強会  担当:U先生

「ミニトラックと私」

・ミニトラック
  →いざというときの緊急気道確保にも。
・輪状甲状膜穿刺の目的
  ・気管内貯留物の除去
    ・喀痰排出困難症例など。
    ・肺炎・は依存症を予防
  ・緊急時の気道確保と酸素投与
    ・急性喉頭蓋炎など上気道閉塞、挿管困難など。
・輪状甲状膜周辺の解剖
  →男性は自分の首を触ってみよう。
・ミニトラック
  ・セルジンガーキット
    →より確実、安全に手技が可能
  ・中長期留置目的
    →チューブが軟性で気道刺激が少ない
    →肉芽発生リスク軽減
  ・15mmコネクタ対応のスリップジョイント付属
    →高圧換気装置への接続が可能。
・合併症
  ・肉芽形成。出血、肺塞栓症、感染、無気肺
  ・皮下気腫、縦隔気腫、気胸、気管膜様部穿孔、気管壁裂孔、肺穿孔
  ・食道狭窄
  ・気管狭窄、気道狭窄、低酸素血症、換気不全、心肺停止
  ・喉頭狭窄、嗄声
  ・誤挿入(皮下、食道、甲状舌骨間など)


Journal超ななめ読み5月

「Journal超ななめ読み5月」


Extracorporeal Cardiopulmonary Resuscitation for Patients With Out-of-Hospital Cardiac Arrest of Cardiac Origin: A Propensity-Matched Study and Predictor Analysis*.
院外心原性心肺停止症例に対するE-CPR
Crit Care Med. 2013 May;41(5):1186-96.


Renal Perfusion Assessment by Renal Doppler During Fluid Challenge in Sepsis.
sepsis患者における輸液反応性と腎血管抵抗指数
Crit Care Med. 2013 May;41(5):1214-1220.


The impact of postoperative nausea and vomiting prophylaxis with dexamethasone on postoperative wound complications in patients undergoing laparotomy for endometrial cancer.
PONV予防のデキサメタゾンが術後創部合併症に及ぼす影響
Anesth Analg. 2013 May;116(5):1041-7.


Retrograde Light-guided Laryngoscopy for Tracheal Intubation: Clinical Practice and Comparison with Conventional Direct Laryngoscopy.
逆行性光ガイド挿管
Anesthesiology. 2013 May;118(5):1059-1064.


High-osmolarity saline in neurocritical care: systematic review and meta-analysis*.
神経集中治療領域における高張食塩水の効果
Crit Care Med. 2013 May;41(5):1353-60.


Risk of Stroke or Systemic Embolism in Atrial Fibrillation Patients Treated With Warfarin: A Systematic Review and Meta-analysis.
ワーファリン内服心房細動患者の脳卒中または血栓症リスク
Stroke. 2013 May;44(5):1329-36


Reduced cortisol metabolism during critical illness.
重症疾患ではコルチゾールの代謝が低下している
N Engl J Med. 2013 Apr 18;368(16):1477-88


Effect of early vs late tracheostomy placement on survival in patients receiving mechanical ventilation: the TracMan randomized trial.
人工呼吸患者における気管切開のタイミング
JAMA. 2013 May 22;309(20):2121-9.


Nonsteroidal anti-inflammatory drugs during pregnancy and the initiation of lactation.
妊婦と授乳婦に対するNSAIDSの使用に関するレビュー
Anesth Analg. 2013 May;116(5):1063-75


The association between nitrous oxide and postoperative mortality and morbidity after noncardiac surgery.
非心臓手術におけるN2Oの使用と死亡率、合併症との関連
Anesth Analg. 2013 May;116(5):1026-33




・E-CPRは院外心原性CPA患者の神経学的予後を改善させる。
・sepsis患者において、輸液反応性と腎血管抵抗指数の関連は薄い。
・PONV予防デキサメタゾン単回投与は術後創部合併症を増やさない。
・逆行性光ガイド挿管は有用。
・高張食塩水は大きな合併症なく頭蓋内圧を下げる。
・WF内服AF患者でStrokeリスク、女性、高齢、腎機能障害、アジア人など。
・重症疾患ではコルチゾールの代謝が低下し高コルチゾール血症をきたす。
・早期気切(入室4日以内)しても生存率その他は変わらない。
・NSAIDsは妊娠後期は避けるべき。その他は低用量なら比較的安全。
・N2Oは死亡率、合併症を減らす可能性。


2013年5月31日金曜日

輸血についてのstudyいろいろ

麻酔科勉強会  担当:K先生


「輸血についてのstudyいろいろ」


・昔は慣習的にHb<10mg/dl、Hct<30となれば輸血を開始していた。
・ABC study
  →輸血実施群の方が制限群に比べて死亡率との相関が高い
・CRIT study
・SOAP study
  →輸血実施群と制限群の相関はなし
・TRICC (Transfusion Requirements In Critical Care) study 
                     (N Engl J Med 1999)
  ・ICU入室後72時間以内にHb<9g/dLとなった838人
     ・制限輸血群(Hb<7g/dlで輸血、7-9g/dlに保つ )
     ・自由輸血群(Hb<10g/dlで輸血、10-12g/dlに保つ )
   →2群に分けて比較検討
   →30日後の死亡率有意差なし。
・FOCUS Trial (NEJM2011)
  ・大腿骨骨折の初回手術
  ・術後3日目までにHb10g/dl以下となった心血管系疾患患者)
     ・自由輸血群(Hb≧10㎎/dl)
     ・制限輸血群(Hb≧8㎎/dl)
   →60日後の死亡率有意差なし
・TRACS  Trial Transfusion Requirements After Cardiac Surgery
                          (JAMA2010)
  ・心臓血管外科の手術を受けた502人の患者
     ・自由輸血群(Hct≧30)
     ・制限輸血群(Hct≧24)
   →制限輸血群は自由輸血群と比較して非劣性
・Transfusion Strategies
  for Acute Upper Gastrointenstinal Bleeding
                   (N Engl J Med 2013)
  ・monocenter prospective RCT
  ・急性消化管出血で入院となった患者921人
     ・制限輸血群(Hb<7g/dlで輸血、7-9g/dlに保つ )
     ・自由輸血群(Hb<9g/dlで輸血、9-11g/dlに保つ )
  ・6週後の生存率
    →制限輸血群95% vs 自由輸血群91%
    →死亡率のハザード比は0.55
  ・再出血:自由輸血群10%、制限輸血群16%(P=0.01)
・Association of Blood transfusion
   with Increased Mortality in Myocardial Infarction
                   (JAMA Intern Med 2013)
  ・MI患者における輸血療法についてのmeta analysis
  ・自由輸血群は制限輸血群と比較して死亡確率が2.91倍高い。
  ・自由輸血群は続発性心筋梗塞を起こす可能性が2.04倍高い
・Outcomes Using lower vs Higher Hemogobin Thresholds
                        for Red Blood Cell Transfusion
                                                (JAMA2013)
    ・meta analysis
  ・14日以内の死亡率、60日以内の死亡率でも有意差なし。
  ・院内死亡率は制限輸血群の方が死亡率が低かった。


2013年5月28日火曜日

Abdominal Compartment Syndrome

ICU勉強会 担当:K先生

「Abdominal Compartment Syndrome」

・Intraavdominal pressure(IAP)
  ・Normal:5〜7mmHg
  ・BMIと相関し、病的肥満患者や妊娠中で
  ・10〜15mmHg程度
・Abdominal perfusion pressure(AAP)
  ・APP=MAP-IAP
  ・APPは腹腔内臓器灌流の最も良い指標(pHや乳酸値、尿量より)
  ・APPを60mmHg以上に保つことがIAH、ACSの予後と相関
・primary:
  →腹部骨盤の疾患による(腹部外傷や膵炎、術後など)
・secondary:
  →腹部以外の原因(大量輸液)
   ・外傷:ショックで大量輸液をするとリスク高い
   ・熱傷
   ・腹腔内の疾患
     →大量腹水、腸管拡張、腹部手術、腹腔内出血
   ・後腹膜の疾患
     →AAA破裂、骨盤骨折、膵炎
   ・大量輸液が必要なsepsisや3rdスペースに漏れる疾患
     →術後患者など
・腹腔内圧と症状
  ・10mmHgでも横隔膜の上昇が起こる。
  ・15mmHg〜乏尿、30mmHg〜無尿
  ・肝でのLactateクリアランス低下は10mmHgでも起こる。
  ・20mmHgで腸管粘膜灌流の低下(J trauma 1994;37:488)
  ・40mmHgでceliac、SMAの血流低下を起こし、
   Lactate上昇やbacterial translocationを起こす。
  ・腹部症状からの>15mmHgの予測:感度56%、特異度87%
・治療
  ・支持療法が基本(輸液は入れざるを得ない)
  ・熱傷瘢痕の場合は切開、腹水があれば抜く
  ・外科的減圧術について明確な手術適応は定まっていない
     →IAP>25mmHgで手術すべき
       (Surg Clin North Am 1996; 76:833)
     →臓器灌流を改善し、ACSを防ぐために
      <25mmHgでも手術すべきという意見も多い
     →APP<50mmHgでは死亡率が上昇する(J Trauma 2000;69:78)
      ため、APPを指標にすべきという意見もある
  ・一時的な減圧開腹術では改善しないと判断した場合
     →応急的な閉腹法を行う




胸腹部大動脈瘤手術における脊髄保護

ICU勉強会  担当:K先生

「胸腹部大動脈瘤手術における脊髄保護」

・胸腹部瘤手術における脊髄合併症に関わる因子
  ・Adamkiewicz動脈の再建の有無
  ・術中の動脈遮断時間
  ・術中灌流方法
  ・脊髄血流動態の個人差(前脊髄動脈の連続性)
  ・上半身の高血圧
  ・下半身低血圧
  ・脳脊髄圧の上昇
・脊髄保護について
  ・mPSL、ナロキソンが効果あり?
  ・CCBは効果ありといわれていたが無効?
・脊髄灌流圧(SCPP)=MAP-CSFP
  ・MAP↑、CSFP<10?は合理的?
  ・MAP>90・・・これも症例報告レベル
・オピオイドは悪か、ナロキソンは善か。
  ・脳虚血患者のモルヒネ投与で麻痺の悪化、
   ノロキソン静注で改善
              Lancet. 1981; 2: 272-275
  ・高用量ナロキソンには脊髄保護作用あり(ウサギ)
              Eur J Pharmacol. 1984; 103: 115-120
  ・胸腹部大動脈瘤患者の麻酔導入前
     ~術後48時間低用量ナロキソン(1μg/kg/hr)投与
   →対麻痺発生率低下(historical control)
              J Vasc Surg. 1994; 19:236-248
  ・脊髄ドレナージ単独群11例 vs
        ドレナージ+ナロキソン(1μg/kg/hr)併用群16例
   →脊髄障害の発生に差なし
              J Vasc Surg. 2004; 40: 681-690
  ・頚髄損傷患者に対するナロキソン投与のRCT
   受傷8時間以内にナロキソン5.4mg静注+4mg/kg/hで23時間投与
   →脊髄保護効果なし
              NEJM. 1990; 322: 1405-1411
  ・オピオイドはかなり高用量のオピオイドで
   脊髄障害起こったり起こらなかったり・・・(動物)
   →通常使用量なら問題ない?


2013年5月25日土曜日

揮発性麻酔薬とプレコンディショニング

「麻酔EBM勉強会」  担当:O先生


「揮発性麻酔薬とプレコンディショニング」

・実験室データでは・・・
  →心筋保護作用、心筋梗塞発生範囲の抑制効果あり。
・臨床研究
  →冠血管手術患者において、心筋障害の抑制効果があり。

・吸入麻酔薬の心保護作用
 →全期間にわたり投与されると最も効果がある。
  ・虚血前、虚血後など部分的な期間では効果を認めない。

・セボフルランとデスフルラン
 →周術期心筋梗塞の発生率及び死亡率を抑制する効果がありそうである。

・非心臓手術では、データは限定的。
 →一部の試験では肝臓、肺など他の臓器への保護作用を示すものがある。
・ガイドラインでは?
 ・非心臓手術での周術期管理ガイドライン
  →吸入麻酔薬の記述及び推奨度は、アメリカとヨーロッパで異なる。



2013年5月14日火曜日

平成26年度麻酔科専攻医募集

☆☆神戸市立医療センター中央市民病院 麻酔科専攻医募集☆☆






 神戸市立医療センター中央市民病院・麻酔科では平成26年度採用の専攻医(後期研修医)を募集しています。
 当院は神戸市の基幹病院であると同時に、救急救命センターを併設する救急病院であり、小児心臓外科を除く全科の麻酔管理に対応しています。平成23年7月に新築移転し、最新の麻酔環境を有する手術室18室を有しています。大手術も多く、緊急手術も昼夜問わず毎日のように行われる忙しい病院です。麻酔科スタッフ25名のうち専攻医は現在10名であり、当院の手術室、集中治療室の実働部隊としての中央診療部門の核心を担っています。麻酔科専攻医は連日、定期手術に緊急手術に集中治療にと充実した臨床経験を積んでおり、時にはハードな日々もありますが、麻酔科医としての臨床能力をつけるには当院は最適の病院です。
 当院麻酔科の特徴として、手術部門に隣接して麻酔科管理型ICU(GICU)を有しており、心臓大血管手術をはじめとする大手術の術後管理、内科的重症患者、院内急変患者の治療を麻酔科主体で行なっている点があります。専攻医は1年次、および3年次に集中治療部専属期間を経験し、集中治療を学び経験することとなります。
 朝の麻酔科ミーティングも当院麻酔科の名物です。毎朝、日々の業務が始まる前に全員集合での勉強会が開催され、麻酔、集中治療、経食道心エコー、神経ブロック、症例フィードバックなど、麻酔科ローテーション中の研修医の先生も加えて発表&質疑応答が行われ、全員で知識を深め、共有しています。
 当院麻酔科の専攻医プログラムの概要は以下の通りです。 


【1年目】
1.一般的な手術の麻酔を単独で担当できる。
2.心臓大血管手術を上級医の指導の下に経験し、知識と技術を習得する。
3.2ヶ月のGICU専属期間で重症患者管理を経験し、人工呼吸、循環管理、血液浄化法、栄養管理など、集中治療の知識と技術を習得する。


【2年目】
1.挿管困難、大量出血、循環動態不安定などの緊急事態に対応できる。
2.心臓大血管手術を単独で担当できる。
3.日本周術期経食道心エコー認定医(JB-POT)を取得する。
4.麻酔・集中治療領域での症例報告や論文作成を行う。
5.超音波ガイド下神経ブロックを習得する。


【3年目】
1.研修医を指導できる。
2.心臓大血管手術の麻酔で後期研修医を指導できる。
3.集中治療室において入室患者の治療方針を決定し、夜間当直を担当する。
3.麻酔科標榜医・認定医を取得する。



 充実したスタッフ構成のため、オンオフがはっきりしていることも当科の特徴です。夜間は麻酔科当直(麻酔部門2人、集中治療部門1人)が緊急手術、集中治療に対応するため、非当直日は仕事が終われば完全duty freeです。夜間呼び出されることはありません。また当直明けも可能な限り早く帰れるよう努力しています(だいたい昼過ぎには解放です)。
 忙しい病院ですが、麻酔科スタッフ25名、協力して、お互いから刺激を受けながら日々の業務に勤しんでいます。神戸市の高度医療、救急医療の第一線を担う当院麻酔科で研鑽を担いたいという志の高い先生方の応募を期待しています。是非一度見学にお越しください。
 研修医の先生の見学は随時受け付けています。麻酔部門中心、集中治療部門中心、どちらも、など希望があればお伝え下さい。もちろん医学生、後期研修医の先生、その他ベテランの先生方の見学も歓迎しています。お待ちしております。

■見学申し込みなど、お問い合せはこちらへ。
副院長兼麻酔科部長 山崎 和夫
313kyama■kcho.jp (■を@に変換してご送信ください。)

■後期研修医採用情報はこちら
http://chuo.kcho.jp/recruit/late_resident/guidelines3.html

2013年5月8日水曜日

Low-flow Low-gradient AS

「麻酔科勉強会」 担当:N先生

「Low-flow Low-gradient AS」

・ASの病態生理
  ・Early changes→Diastolic dysfunction
  ・Late changes→Systolic dysfunction
・severe ASの基準
   ・Jet velocity>4.0
   ・Mean gradient>40
   ・Valve area<1.0
   ・Valve area index<0.6
・severe ASのマネジメント戦略
  →ACC/AHAガイドラインより。
      ・ClassⅠ
    ・症状のあるsevere AS:AVR適応
    ・CABG受ける人のsevere AS:AVR適応
    ・Aoまたは他の弁膜症手術受ける人のsevere AS:AVR適応
        ・LV機能不全のsevere AS:AVR推奨
・severe ASのパターン
  ・Low flow Low gradient AS with depressed LVEF
     → Severe AS の5~10% 
    →ischemic heart disease or afterload mismatch
    ・Low flow Low gradient AS with preserved LVEF
       →Severe AS の10~25%   (paradoxical LF-LG)
    →concentric remodeling, small cavity size,
         reductions in  LV compliance and filling
・Low flow Low gradient AS with Low LVEF
   ・診断基準
    ・EOA≦1.0㎝2 or ≦0.6㎝2/m2
    ・low mean transvalvular gradient(<40mmHg)
    ・low LVEF (≦40%)
    ・LF state
      SVI <35ml/m2 (doppler ,熱希釈法、カテーテル造影)
 →重要なのはpseudo Severe ASとの鑑別
   ・True severe AS
     →大動脈の狭窄による2次的な機能不全
   ・Pseudo severe AS (20-30%)
     →心筋障害によるASの過大評価。
     →Low flowは不完全な弁の開口による。
     →多枝病変をもつ場合が多い
      →AVRをしてもpseudo severe ASは改善を見込めない
     →ドブタミン負荷エコーでの評価が鑑別に有用
    ・projected Effective Orfice Area
            EOAprojected
              →normal flow rate (Q=250m/s)時のEOA
              →DSEで得られたEOAとFLから計算できる(TOPAS study)
    ・CT-Ca(CTで大動脈弁の石灰化の程度をスコア化)
       →Agatston Unit >1650でTrueかPseudoか鑑別可能
  ・治療方針
    ・ACC/AHA guideline
      →low EF,LF-LG ASの治療に関する推奨は特になし
    ・ESC/EACTS guideline
      →LV flow reserveではAVRの推奨度はClassⅡa
      →no LV flow reserve ではAVRの推奨度はClassⅡb
・LV flow reserve and Pseudo severe AS
   ・予後は悪く、明確なevidenceはない
   ・内科的治療が第一選択
   ・心筋障害の程度とASの重症度がoutcomeに影響
   ・正常な心筋にはmoderateでも機能低下した心筋にとっては
    severe ASと同等
   ・EOA<1.2,  mean gradient<30~35mmHgがsevere ASの基準
    として適当
   ・内科的治療で改善なければ手術も考慮
・Severe AS with no LV flow reserve
  ・True severe AS ( DSE or CT-Caで評価)ではAVRを検討
  ・CT-Ca scoreも心筋障害がある場合基準を調整するべき
  (例1650→1200)
  ・手術リスクは高く、transcatheter AVR ( TAVR)という
   選択肢も考慮
  ・TAVRがAVRよりLVEFが改善したとの報告があるが、
   弁周囲逆流の発生率は高く、より予後が悪くなる可能性もある

・Low flow Low gradient AS with normal ( Paradoxical ) LVEF
  →Hachicha らが報告
    ・EOA≦1.0㎝2 or ≦0.6㎝2/m2
    ・low mean transvalvular gradient(<40mmHg)
    ・low LVEF (≧50%)
    ・LF state (SVI <35ml/m2)
       →Restrictive physiology が関与
    ・高齢
    ・女性
    ・高血圧    
  →重要なのは・・
   ・Paradoxical Normal flow Low gradient AS
    との鑑別(SVI >35ml/m2)
   ・NF-LG ASでは
     ・restrictive physiology, Zva↑は見られない
     ・EOAとPGの乖離は・・
       ①measurement error(PGの過小評価)
       ②small body size(BSAで評価しないとASを過大評価)
       ③ガイドラインの矛盾
        →理論的にはnormal flowではEOA<1.0cm2では
         mean gradient30-35mmHgが妥当
     ・MRIやechoのVolume測定でSVを算出
     ・EOAをindexで判断する

   ・治療方針
    ・ACC/AHA guideline
      →Paradoxical,LF-LG ASの治療に関する推奨はなし
    ・ESC/EACTS guideline
      →AVRの推奨度はClassⅡa
    ・EF正常なため、LGでmoderateASと過少評価されやすい。
    (外科への紹介率40-50%低い)
    ・EF保たれていても、Pseudo severe ASの可能性もある
    (DSEやCT-Caで判断)


2013年5月6日月曜日

Journal超ななめ読み4月

「Journal超ななめ読み4月」


Effects of off-pump and on-pump coronary-artery bypass grafting at 1 year.
Off-pump CABGとOn-pump CABG、1年後転帰の比較
N Engl J Med. 2013 Mar 28;368(13):1179-88


Off-pump versus on-pump coronary-artery bypass grafting in elderly patients.
高齢患者に対するOff-pump CABGとOn-pump CABGの比較
N Engl J Med. 2013 Mar 28;368(13):1189-98


Acute kidney injury in the critically ill: is iodinated contrast medium really harmful?
ICU入室患者のAKI、ヨード系造影剤は本当に有害か。
Crit Care Med. 2013 Apr;41(4):1017-26


A multicenter randomized trial of atorvastatin therapy in intensive care patients with severe sepsis.
ICU入室の重症sepsis患者に対するAtorvastatin投与についての多施設RCT
Am J Respir Crit Care Med. 2013 Apr;187(7):743-50


Preoperative stroke and outcomes after coronary artery bypass graft surgery.
CABG患者における術前strokeと予後について
Anesthesiology. 2013 Apr;118(4):885-93.


General anesthesia with sevoflurane decreases myocardial blood volume and hyperemic blood flow in healthy humans.
セボフルランは心筋血液容量および充血性血流を減らす。
Anesth Analg. 2013 Apr;116(4):767-74.


Ultrasound estimates for midline epidural punctures in the obese parturient: paramedian sagittal oblique is comparable to transverse median plane.
肥満患者の硬膜外麻酔midlineアプローチに対するエコーにおいて、Paramedianの矢状斜め像は正中横断像と比肩しうる。
Anesth Analg. 2013 Apr;116(4):829-35.


A New Simple Method for Estimating Pleural Effusion Size on Computed TomographyMatthew P. Moy1, et. al.
CT画像から胸水貯留量を評価する簡便な新法。
CHEST.2013;143(4):1054-1059


Continuous Electroencephalographic Monitoring in Critically Ill Patients: Indications, Limitations, and Strategies*
ICUにおける持続脳波モニタリングの適応、限界、戦略。
Crit Care Med. 2013 Apr;41(4):1124-1132.


Echo didactics: the interventricular septum: measurement and motion.
TEEによる心室中隔の計測と運動
Anesth Analg. 2013 Apr;116(4):788-92


Ultrasound imaging for lumbar punctures and epidural catheterisations: systematic review and meta-analysis.
腰椎穿刺および硬膜外カテ挿入におけるエコー使用のシステマティックレビューとメタ解析。
BMJ. 2013 Mar 26;346:f1720.


Goal-directed therapy in cardiac surgery: a systematic review and meta-analysis.
心臓手術における目標志向型血行動態管理についてのシステマティックレビューとメタ解析
Br J Anaesth. 2013 Apr;110(4):510-7.



・OPCABGとOn-pump CABG、1年後再血行再建率、QOL、認知機能に差はなし。
・OPCABGとOn-pump CABG、高齢患者でも周術期合併症に有意差なし。
・重症患者において造影剤が腎機能に与える可能性は少ない可能性。
・既にスタチンuserならばリピトール投与でsepsisの生存率が上がる。
・最近strokeが起こったからといってCABGを遅らせるのはダメ。
・セボで心筋血液のvolume、flowは影響を受けるが原因か結果は不明。
・epiのエコーは正中横断像と斜め矢状断を組み合わせて距離を測るとよい。
・CTでの胸水評価は鎖骨中線4分割法が簡便。
・ICUの持続EEGモニターは有用だがアーチファクトに悩まされる。
・心室中隔に詳しくなろう。
・腰麻、硬麻共にエコー使用で成功率が上がり合併症も減る。
・目標志向型血行動態管理は心臓手術でも有効。




  TEEプローベホルダーが入りました。便利です。

フィードバックカンファレンス

「フィードバックカンファレンス」 担当:T先生

「3、4月の症例振り返り」


・外傷性脳挫傷
  →開頭減圧、血腫除去の方針で入室
  →手術室入室と同時にCPA
  →手術中止

・泌尿器科の外傷症例

・術中喘息発作を疑った症例

・挿管困難の1例
  ・Madelung病
    →良性対称性脂肪腫である。
    →非被包性皮下脂肪組織増生が特徴
    →主に首から肩にかけて脂肪が対称性に脂肪が蓄積
    →原因は不明
       ・大量の飲酒歴があることが多い。
       ・脂質代謝異常と関連?

・大量出血の外傷

・他院の手術で挿管困難だったとの記載
  →今回も挿管困難。
  →顔貌では予測させる要素なし(やや小顎?)。

・気腹手術後の気胸
  →SpO2低下し16G針で緊急脱気。
  →改善
  →ドレナージ。



   ROTEM説明会。出動機会が増えそうです。

2013年4月28日日曜日

腎交感神経アブレーション

麻酔科勉強会  担当:U先生

「腎交感神経アブレーション」

・高血圧
 ・10-20mmHg毎に心血管死亡率2倍
 ・脳血管障害・心筋梗塞・心不全・腎不全のRISKが劇的に増大
 ・およそ半数でしか降圧管理目標に到達していない
 ・有病率高い
   →2000年有病率 約25%の成人
   →2025年までには約30%の成人
     ・特に開発途上国
・治療抵抗性高血圧について
   →大半は本態性高血圧
   →実は二次性が隠れているcaseも。
・腎の神経支配について
  ・輸出・輸入細動脈を含めた全ての腎臓血管
     →交感神経線維によって支配されている
・交感神経刺激受容器としての腎臓(旧来)
    →交感神経賦活臓器としての腎臓

・腎交感神経繊維アブレーションについて
  ・症例報告
    ・59歳男性
    ・7種類の降圧薬 161/107mmHg
    ・アブレーション1ヶ月後141/90mmHg
    ・12ヶ月後127/81mmHg
   →遠心性腎交感神経NEスピルオーバー(実質的放出量)↓↓
   →直接傷害されていない全身のNEスピルオーバーも↓↓
   →全身への遠心性交感神経活動も低下?
・腎臓の神経支配
  ・Th10-L2
    ・神経線維は腎血管の外膜に埋もれている
・腎交感神経繊維アブレーション
  ・両側腎動脈内にカテーテル挿入
  ・5-8W・約2分/回で焼灼。
  ・血管内皮細胞は傷害されず外膜に侵入する腎神経束は有効に焼灼。
  ・治療時間は平均38分。
  ・治療中は痛みが続くとか・・・
・デバイスの紹介
・You Tubeに紹介映像ありました。
・現状
 ・日本不整脈学会・インターベンション治療学会
  高血圧学会の合同委員会発足
 ・適応、予測因子など議論中
 ・交感神経活動指標 アイソトープ 日本では・・・




硬膜外麻酔の合併症

初期研修医勉強会  担当:M先生

「硬膜外麻酔の合併症」

・硬膜外麻酔
 ・硬膜を通して作用するので緩徐。
 ・術後も持続投与が可能となる。
 ・ストレスホルモンの上昇や免疫機能の上昇
 ・呼吸器合併症やイレウスの発生率の低下
 ・早期離床が可能
・合併症
 ・血管穿刺:2.8%
 ・硬膜穿破:2.5%
 ・背部痛:2.0%
 ・低血圧:1.8%
 ・全脊髄くも膜麻酔、中毒:0.2%
 ・硬膜下注入、一過性神経麻痺:0.1%
 ・硬膜外血腫:1/150000
・低血圧
 ・交感神経の遮断により起こる。
 ・抗精神薬服用者はリスクファクター。
 ・α受容体の遮断による。
・高血圧
 ・三環系抗鬱薬、MAO阻害剤
   →神経終末でのカテコラミン再取り込み阻害による。
 ・非選択的β blockerはα受容体を優位にする。
・極めて稀な副作用
 ・持続勃起
   →泌尿器科手術などでは手術中止の適応となる。
・持続勃起に対する対応
 ・Ketamine投与0.5mg/kg(+Physostigmine~1.5mg)、
   →NMDA受容体を刺激して交感神経を活性化。
 ・ベンゾジアゼピン投与(5~10mg)
 ・S2-S4のブロック
 ・冷却生食による浣腸


2013年4月18日木曜日

TAVIについて

麻酔科勉強会  担当:S先生

「TAVIについて」

・TAVI
 ・Transcatheter Aortic Valve Implantation
 ・現在は高度先進医療で国内4施設で施行されている
 ・今年秋から保険診療になる予定
 ・当院も認可施設基準を満たしているらしい
・方法
 ・局所麻酔+鎮静または全身麻酔
 ・ペーシングリード挿入
 ・抗凝固
 ・ラージシース挿入
 ・ヘパリン化(ACT>250)
 ・術中TEE
 ・ガイドワイヤー留置
 ・人工弁展開
 ・術後評価(MR、AR)
・合併症
 ・完全房室ブロック
   ・永久ペースメーカー必要率
     →CoreValveの方がSapien valveより多い。
     →RBBBの存在はCHBのリスク
 ・AR
   ・Paravalvular AR
     →バルーン拡張、valve in valve留置など
   ・Central valvular AR
     →放置、2nd TAVRすることも
 ・血圧が下がったら?
   ・腸骨動脈破裂、心破裂、急性弁機能不全、冠動脈閉塞、
    poor LV機能の人にrapid pacingしたとき
    LVH患者におけるSuicical LV
・臨床試験
 ・PARTNER Trial
    ・ASハイリスク患者(n=699)と手術適応外患者(n=358)を対象
  ・コホートA(ハイリスク患者)
    ・AVR vs TAVI
     →脳卒中と大血管合併症の発生率はTAVI群で高かった。
     →大出血や不整脈は少なかった。
     →一次エンドポイントについては両群間で有意差はなかった。
  ・コホートB(手術適応外患者)
    ・標準治療 vs TAVI
     →TAVIは1年までの生存率を改善させる。
     →コストの問題
・ガイドラインの紹介
 Transcatheter aortic valve implantation: a Canadian Cardiovascular Society position statement.
 Can J Cardiol. 2012 Sep-Oct;28(5):520-8
・TAVIの麻酔
  ・局所麻酔±sedationか全身麻酔。
  ・文献的には全麻が多いが局麻で行う例も増えている
  ・モニタリングはA圧とCVPのみでPACはルーチン挿入していない
  ・麻酔方法についての大規模比較試験は行われていない。
  ・GAとLAを比較した4編の論文
    ・LA
     →カテコラミンの使用量・ICU滞在日数・在院日数
     →GAより有意に低いが30日間のmortalityは変わらない。
  ・術中の合併症が致死的で迅速な対応が必要
  ・TEEは必須
  ・LAからGAへの移行率が17%ある
  ・Femoral approachは元々合併症のリスクが高い
  ・EEも少量の麻薬を中心とした鎮静で行える
  ・NIVも併用すると良い
・まとめ
  ・TAVIはハイリスク患者の方が有益
  ・TAVIそのものにも議論は多い。(BMJ 2012;345:e4710)
  ・麻酔に関しては当面は全身麻酔がよさそう
  ・局所麻酔でも麻酔科の役割は大きい
  ・ICUで難渋する症例が増えそう?


2013年4月9日火曜日

Brugada症候群患者の麻酔

麻酔科勉強会  担当:I先生

「Brugada症候群患者の麻酔」

・Brugada症候群
  ・VT/VF
  ・Sudden cardiac death (SCD)
  ・アジア人男性
  ・ICD
 ・Brugadaらが1992年に報告
 ・明らかな器質的心疾患なし
 ・右側胸部誘導(V1-3)における特徴的なST⬆
      →そこから誘発されるVF
 ・日本を含め、東・東南アジア地域に多い
 ・男>>女 (72-76%)
 ・遺伝性AD(NaやCaチャネル遺伝子変異など)
 ・浸透率は低い.16%とも
 ・45歳の突然死 FHは22-50% (特に無症候群では50-70%)
 ・VFの過半数は安静時・夜間睡眠中
 ・PAF、冠攣縮性狭心症、神経調節性失神
 ・重篤な心事故の発生率
   ・VF・蘇生群 17.4% /year
   ・失神群 6.2% /year
   ・無症候群 0.6-3.7% /year
・心電図
 ・coved 型(Type1)
    →J点からドーム上にST上昇
    →VF生じ易い
 ・saddlebach型(Type2,3)
    →J点からSTがいったん下方に向かった後に再び上に向かう
・特徴的な心電図+以下の1つ
  a)Documented VF
  b)Self-terminating polymorphic VT
  c)FH of sudden cardiac death at <45yrs
  d)Type 1 ST elevation in family members
  e)Electrophysiologic inducibility of VT
  f)Unexplained syncope suggestive of a tachy
  g)Nocturnal agonal respiration
 ・type2,3は右前胸部誘導で1誘導以上、
  NaCB負荷でtype1ST上昇認めればBS
・BSにおいて重篤な不整脈を生じる因子
 ・Brugada型ST上昇の誘発因子は??
 ・Induced Brugada-Type Electrocardiogram,
    a Sign for Imminent Malignant Arrhythmias.
             Circulation. 2008; 117:1890-1893
   ・ERにてBrugada型ECGを示した47人
   ・male 69%、mean age 48 ± 16.2 yrs
   ・可能なら遺伝子SCN5A検査もした
 ・47人のうち
   ・16人は発熱時にBrugada型ECG変化
   ・26人は投薬を契機に
     (コカイン、麻酔薬、抗不整脈薬、抗うつ薬、抗ヒスタミン薬)
   ・5人は電解質異常
   ・24人(51%)で致死性不整脈
     ・そのうち18人で突然死
       (6人が発熱時、8人が麻酔薬で)
     ・3人がVT
     ・3人が失神
・Brugada型ST上昇の機序
  ・心筋の内向きNa電流・Ca電流の低下
   →NaCB、コカイン、抗うつ薬、抗ヒスタミン薬
  ・外向きK電流の増加
   →高K、副交感神経刺激、ATP感受性Kチャネル活性化剤
  ・プロポフォール
   →L型Ca電流抑制?まだ不明
  ・発熱
   →温度依存性に開口率が変化するNaチャネルの変異を持つため、
    発熱によりECG変化が生じる可能性
      →長時間の入浴もリスク
・PRISとの関連
  ・PRIS(propofol-related infusion syndrome)
  ・高濃度(>5mg/kg/hr)、長期間(>48hr)
  ・横紋筋融解、腎不全、高K、代謝性アシドーシス、高TG
  ・ミトコンドリア脂質代謝障害?遺伝子欠損?
 ・PRISで死亡した人の死亡前のECG再解析
    →多くはBrugada型ST上昇に伴うVFだったという報告


2013年4月5日金曜日

NIRSいろいろ

麻酔科勉強会  担当:Y先生

「NIRSいろいろ」

・分光法
  →光を当てて物質の定性、定量、物性を知る手法
・近赤外線
  ・非破壊・非接触測定が可能 
  ・迅速に測定結果が求められる
  ・装置が安価
  ・「雑音」が多く正確な測定が困難だった。
    →computerの安価化および多変量解析の発達
    →定量分析への応用が可能となる。
・NIRS測定原理
  ・深部-浅部=脳実質組織
・NIRSとパルスオキシメトリーの違い
  →使用する光が違う
  ・パルスオキシメトリー
    ・動脈血酸素飽和度を測定するために開発。
    ・拍動を感知することで動脈成分のみをdetectする。
    ・すなわち、拍動がなければ測定できない。
  ・NIRS
    ・静脈成分が多い組織酸素飽和度(rSO2)測定。
    ・動脈成分と静脈成分を区別しない。
・rSO2が下がった時
  ・酸素供給量不足
    →CI上げる、圧上げる、Hct上げる、脳灌流量上げる
  ・酸素消費過多
    →体温冷やす、麻酔深度を深める
・rSO2が高くても
  →脳の酸素利用障害の可能性
  →必ずしも安心できない

・NIRSと心臓外科術後中枢神経合併症について
  ・術後神経合併症をきたした群では
   手術時間およびrSO2<55%の時間が有意に長かった。
      Eur J Cardiothorac Surg. 2004 Nov;26(5):907-11
  ・SACP中、rSO2がbaselineの76-86%低下
    →感度83%、特異度94%でstrokeの診断となる。
      J Thorac Cardiovasc Surg. 2006 Feb;131(2):371-9.
  ・rSO2がbaselineの80%に低下
    →術後神経合併症と有意に関連
      Applied Cardiopulmonary Pathophysiology 13: 201-207, 2009
  ・NIRS導入前と導入後の比較。導入後はrSO2低下に対して介入。
    →NIRS導入後はstrokeの割合が有意に低かった。
      Heart Surg Forum. 2004;7(5):E376-81.
  ・CABG患者をNIRS display群と非display群にランダム割付。
    →display群ではrSO2低下に対して介入を行う。
    →非display群ではrSO2低下時間とICU滞在期間が有意に増加。
    →合併症に差はなし。
      Anesth Analg. 2007 Jan;104(1):51-8

・NIRSと術後認知機能障害、術後譫妄との関連
  ・rSO2<40%の期間があることが術後MMSE、ASEM低スコアと関連。
      J Cardiothorac Vasc Anesth. 2004 Oct;18(5):552-8
  ・CABG患者でrSO2低下に対して介入群と非介入群で割付。
    →非介入群は早期POCDリスク上昇および病院滞在期間も延長。
      Ann Thorac Surg. 2009 Jan;87(1):36-44; discussion 44-5
  ・CAM-ICUを用いて術後譫妄リスクを評価
    →術中crSO2 < 51%で術後譫妄発症を予測。 
      Crit Care. 2011;15(5):R218

・Out-of-hospital cardiac arrest (OHCA)
・Post cardiac arrest syndrome (PCAS)
  →早期集中治療介入の適応判断としてのNIRS使用
  ・来院時心肺停止症例における到着時crSO2と社会復帰率
    →rSO2>40%では社会復帰率50%の報告も
      Resuscitation. 2012 Jan;83(1):46-50.
・J-POP registry
  →Japan-Prediction of neurological Outcome
                in Patients with cardiac arrest
 ・院外心肺停止患者におけるrSO2測定の有用性に関する研究
 ・全国24施設が登録

・中枢神経以外でNIRS
 ・Septic shock患者で最初の24hで腕撓骨筋rSO2<60%は予後が悪い。
      J Trauma. 2011 May;70(5):1145-52
 ・EGDT中にScvO2とrSO2の関連を見た。
   →咬筋rSO2がScvO2を最もよく予測。
   →咬筋rSO2と三角筋rSO2が28日mortalityを予測。
      Crit Care Med. 2012 Feb;40(2):435-40
 ・早産期児の額と側腹部と腹部にINVOS貼ってみた研究
      J Perinatol. 2011 January; 31(1): 51–57

・NRISの問題点
 ・NIRS測定デバイスによりrSO2異常の定義がバラバラ。
   →ちなみにアメリカではINVOS、FORE-SIGHT、EQUANOXが三大人気。
 ・大動脈手術後のstrokeは、RCTを行うには頻度が低すぎる。
   →clinical evidenceが未だ確立されていない。
 ・POCD、術後譫妄に関しても質の高い研究がなされていない。
 ・コストの問題。(プローブ片側のみで15,000円程度)



Journal超ななめ読み3月

「Journal超ななめ読み3月」


Effects of fibrinogen concentrate as first-line therapy during major aortic replacement surgery: a randomized, placebo-controlled trial.
大動脈手術において第一選択肢としてのフィブリノゲン製剤の効果
Anesthesiology. 2013 Jan;118(1):40-50


Epidural versus Continuous Preperitoneal Analgesia during Fast-track Open Colorectal Surgery: A Randomized Controlled Trial.
Fast-track開腹腸管手術における硬膜外麻酔vs持続腹膜前面麻酔の比較
Anesthesiology. 2013 Mar;118(3):622-630.


Influence of increased left ventricular myocardial mass on early and late mortality after cardiac surgery.
心臓術後の左室心筋重量増加と早期・晩期死亡率の影響
Br J Anaesth. 2013 Jan;110(1):41-6


Brief report: a randomized comparison of ropivacaine 0.1% and 0.2% for continuous interscalene block after shoulder surgery.
肩関節手術における持続斜角筋ブロックにおける0.1%、0.2%ロピバカインの比較
Anesth Analg. 2013 Mar;116(3):730-3.


The impact of bispectral index versus end-tidal anesthetic concentration-guided anesthesia on time to tracheal extubation in fast-track cardiac surgery.
Fast-track心臓手術におけるBIS指標抜管とEnd-Tidalガス指標抜管の比較
Anesth Analg. 2013 Mar;116(3):541-8.


Predictive value of pulse pressure variation for fluid responsiveness in septic patients using lung-protective ventilation strategies.
肺保護戦略中のsepsis患者における脈波変動の輸液反応性に対する有用性
Br J Anaesth. 2013 Mar;110(3):402-8.


Echo rounds: difficult cannulation of the coronary sinus due to a large thebesian valve.
テベシアン弁のためにレトロのカヌラが挿入困難だった1例
Anesth Analg. 2013 Mar;116(3):563-6.


Pravastatin for the prevention of preeclampsia in high-risk pregnant women.
プラバスタチンはハイリスク妊婦において子癇予防となりうるか
Obstet Gynecol. 2013 Feb;121(2 Pt 1):349-53.


Cerebral near-infrared spectroscopy monitoring and neurologic outcomes in adult cardiac surgery patients: a systematic review.
成人心臓手術におけるNIRSと神経学的予後
Anesth Analg. 2013 Mar;116(3):663-76.



・大動脈手術でフィブリノゲン製剤は輸血量を減らす。
・やはり硬膜外は強力。
・LV systolic function低下よりLVMI増加のほうが予後不良を予測する。
・持続斜角筋ブロックはアナペイン0.2%でよさそう。
・早期抜管はBIS、Etガスよりも患者固有の問題に左右される。
・⊿PPは肺保護のやや低換気でも輸液反応性の指標となる。
・X-planeで見るとテベシアン弁つきCSの立体構造がわかる。
・スタチンはおそらくは妊婦にも投与可能、子癇も予防できそう。
・crSO2はevidenceを得るに至っていないがデータは集まりつつある。


2013年4月1日月曜日

腹部大動脈瘤の術後腸管合併症

ICU勉強会  担当:K先生

「腹部大動脈瘤の術後腸管合併症」

・部位
 ・胸腹部大動脈瘤として
   ・上行:16% 下行:10% 弓部:7% 胸腹部:2%
    腎上部:5% 腎下部:60%
 ・腹部大動脈瘤として 腎下部:95%
・原因
  ・動脈硬化性(90%以上)
  ・特発性嚢状中膜壊死
  ・Marfan 症候群、Ehlers-Danlos 症候群
  ・特異的炎症
  ・梅毒性、結核性
  ・非特異的炎症
  ・大動脈炎症候群、Bechet病
  ・細菌感染
  ・外傷
・腹部大動脈瘤
 →最大短径が55mmを超えると破裂する可能性が増大する
 →5mm/6ヶ月以上の拡張速度で手術を検討される
・治療
  ・外科的治療:人工血管置換術
    ・腹膜経路
    ・後腹膜経路
  ・血管内治療:ステントグラフト挿入術
    ・適応
      ・中枢側のネックが長く(15mm以上)
       比較的真っすぐ(60度以下)かつ直径が28mm以下
      ・アクセスルートとして腸骨動脈が長く(6-7mm以上)、
       極端な屈曲蛇行・石灰化がみられない
      ・末梢側ネックが10mm以上
・手術死亡率は2-3%
  ・早期合併症
    →心合併症、呼吸器合併症、
     腎機能低下、創感染、出血
     腸管麻痺、腸管虚血、臀筋跛行、性機能障害(陰萎)
  ・晩期合併症
    →吻合部動脈瘤、グラフト閉塞、
     グラフト感染、グラフト腸管瘻
・腸管虚血
  →待機的腹部大動脈瘤手術の約1.6%に発生する
  ・下腸間膜動脈(IMA)領域、特にS状結腸に好発
  ・腸管切除が必要な腸管虚血
     →死亡率は50%を上回る
  ・危険因子
    ・年齢
    ・腎障害
    ・腸切除の既往
    ・緊急手術
    ・術者の経験不足
    ・大動脈遮断時間の延長など
・腸管虚血の評価、予測
  ・肉眼的観察
  ・腸管の色調
  ・腸管ドプラ音・直腸ドプラ音
  ・ドプラエコーの使用
  ・IMA断端圧
  ・血液pH、PaO2も腸管虚血と関連がある
  ・下部消化管内視鏡検査
    →最も信頼性が高い
    ・手間がかかりルーチンでは行われない
  ・臨床症状
    →腹部所見、腹痛、粘血便
・IMA再建によって虚血性腸炎は有意に減少しない
・後腹膜アプローチは術後腸管麻痺を軽減できる


・本日の論文
A cohort study of nutrition practices in the intensive care unit following abdominal aortic aneurysm repair
JPEN J Parenter Enteral Nutr. 2013 Mar;37(2):261-7