2016年8月6日土曜日

手術室の電気と放射線のお話

麻酔科勉強会 担当:Y先生

「手術室の電気と放射線のお話」

・手術室における電気のお話。
・手術室の電気トラブル
  ・感電、停電、漏電、Overload
・電位があるから電流が流れる。
  →患者を挟んで電位差が発生すれば感電リスクとなる。
・感電
  ・皮膚抵抗+体内抵抗に打ち勝って体内に電流が流れる。
    ・皮膚抵抗:1000-5000Ω
    ・体内抵抗:150-500Ω 
  ・特に心臓に通電した時が問題となる。
    →致死性不整脈を引き起こす恐れ
  ・MicroshockとMacroshock
    ・Microshock
      ・カテーテル等を介して体内に直接通電
      ・皮膚抵抗を越えなくてよいので小電流でも問題となる。
      ・0.1mAでもVFをきたすリスクがある。
      ・主に病院で問題となる感電
    ・Macroshock
            ・皮膚を介して感電、比較的大きな電流
      ・院外で一般的な感電
      ・皮膚抵抗は発汗により変化
      ・1mAで電気を感じる(最小感知電流)
      ・10-20mAで持続的筋収縮により離脱できなくなる。
       →離脱電流
  ・アース
   →医療機器をアースすることにより機器間の電位差をなくす。
   →感電を防ぐ。
  ・保護設置
    →患者が触れるすべての機器、露出金属を0.1Ω以下の導線で
        医用設置センタに1点集中接地することによって、
        すべての金属表面間の電位差を10 mV以下に抑える。
      →手術室の3点コンセントの下の穴がアース。
     ・アースピンは最も長くなっている。
       →最初にアースが入り、抜くときも最後まで残る。
・もしも地絡や感電などで大電流が流れると・・・
   →電流本幹のヒューズが飛んで施設全体が停電する可能性。
   →患者の生命に関わる医療機器を扱う病院では危険!!!
   →非接地配線方式の採用。
     ・絶縁トランスの使用
       →電磁誘導により電気的に隔離された二次回路を形成。
       →手術室は電気的に隔離(isolation)されている。
       →地絡によっても本線ののヒューズが飛ぶことはない。
     ・漏電監視モニターの使用
       ・機器に絶縁不良が、起こっていないか監視、警報する装置。
       ・2mA以上の漏れ電流が発生した場合は、
        ランプと警報音により危険状態を警告。
       ・もし絶縁監視警報が鳴ったら1つ1つ機器をコンセントから抜き、
        どの機器で警報が停止するかを確認する。
・停電時には???
  ・一般非常電源(白)
    →40秒以内に自家発電設備が電圧を確立。
  ・特別非常電源(当院では赤)
    →10秒以内に自家発電設備が電圧を確立。
  ・瞬時特別非常電源(当院では緑)
    →0.5秒以内に電池設備が電圧を確立、10分は持つ。
・ロードモニター
  ・各コンセントユニットは20Aまで。
  ・16Aを越えると警告が鳴る。
    ・ウォームタッチ、TEEは電力消費が非常に大きい。
      →タコ足配線禁忌!
  ・体表エコーも電力消費が大きい。できるだけ単独で。
  ・HOTLINEもタコ足配線は避けましょう。

・手術室における放射線のお話
 ・確率的影響と確定的影響
 ・Gy(グレイ)とSv(シーベルト)
 ・線量限度
   ・男性および妊娠の可能性、意思のない女性
     →5年で100mSv、1年で50mSv
   ・女性(妊娠予定がある方)
     →5年で100mSv、1年で50mSv、3カ月で5mSv
   ・女性(妊娠中)
     →妊娠予定のある女性の規則に加えて、
      妊娠の事実を知った時から出産までに
      内部被ばく限度1mSv, 腹部表面被ばく限度2mSv.
   ・目安として1.8mSv/月を越えて被ばくしてはならない。
 ・術後ポータブル写真撮影時にどれだけ離れればよいか。
   ・患者から2m離れると・・・
     →胸部単純:0.09uSv、腹部単純:0.52uSvを被ばく。
   ・通常、自然放射線は6.6uSv/day浴びている。
     →撮影時は2m離れればほぼ被ばくの影響は皆無。
 ・CT、透視、血管造影は大量に被ばくするので要注意。
   →必ずプロテクターを着用すること。
 ・X線透視時にはベッド下に光電管が来ることが多い。
   →放射線は下から上に向かって放射される。
   →そしてベッドや患者に反射して周囲に散らばる。
   →麻酔科医は主に下からの放射線を防御すべし。
 ・プロテクターの選定
   ・重いプロテクターと軽いプロテクター、どちらがよいか。
     ・0.25mmと0.35mmとで遮へい能力に有意差はない。
     ・重い防護衣を着用すると診療行為に対する集中力が
      低下したり腰痛の原因になる。
    →軽いプロテクターを選ぶべし。



アセトアミノフェン

麻酔科勉強会 担当:T先生

「アセトアミノフェン」

・アセトアミノフェンの歴史
  ・1877年、Morse(米)がはじめて合成
  ・1887年、von mering(独)が鎮痛薬として臨床使用
  ・1953年、処方薬として発売
   その後、忘れられる
  ・1940年代、アセトアミノフェンがアニリド系の代謝産物と判明
  ・1955年、小児用のTylenol発売
・作用機序
  →実はよくわかっていない・
   ・ペルオキシダーゼ阻害作用説
   ・AM404説
   ・Cox-3阻害作用説
・薬物動態
 ・IVもoralも投与直後以外は血漿中濃度の推移同様
 ・しかし、CSF中濃度(効果部位?)はIV, oral, rectalの順にピーク。
   →IV: 2h後, oral: 4h後, rectal: 6h後
   ・肝臓での初回通過効果の有無
   ・投与直後の急激な濃度上昇→濃度勾配によるCSFへの受動拡散
 ・坐薬は以外と時間かかる(便やpHの影響?)
・効果のほどは?
 ・術後痛に対する単回IV投与に関するメタアナリシス
   →4時間後も50%以上の鎮痛が得られているのは、
    アセトアミノフェン37% vs プラセボ 16%
    ・オピオイド使用量減少
    ・しかしオピオイド関連の副作用には有意差なし
・肝障害について
  ・CYP2E1による代謝産物NAPQI
    →グルタチオン抱合され排泄
    →グルタチオンが枯渇すると肝障害
  ・肝障害→炎症→さらなる肝障害?
  ・飲酒→CYP2E1誘導→NAPQI増加
  ・低栄養→グルタチオン不足
 ・150mg/kg以上で肝障害の可能性 350mg/kg以上で重篤な肝障害
 ・慢性肝疾患(肝硬変含む)でも4g/日までなら
  問題ないとする報告が多い。
   →14日以上投与する場合は2-3g/日にするべき。
 ・治療
   →活性炭、1h以内なら胃洗浄
    N-アセチルシステイン(グルタチオン前駆体)


  TAVI症例も増えてきました。