2017年2月22日水曜日

星状神経節ブロック

麻酔科勉強会  担当:T先生

「星状神経節ブロック」

・星状神経節とは
  ・交感神経節の1つ
  ・C7レベルにある。
  ・下頚神経節と第1胸神経節は80%の患者で癒合
    →“星状神経節”
  ・長2.5cm、幅1cm、厚0.5cm。
・周辺組織
  ①前方
   ・頚動脈鞘、胸鎖乳突筋、鎖骨下動脈
  ②後方
   ・椎骨動脈、腕神経叢、頚長筋、横突起
  ③内側
   ・下甲状腺動脈、食道、椎前筋膜、椎体、胸管
  ④尾側
   ・肺
・何に効くのか
 ・疼痛
  ・Chronic regional pain syndrome
  ・幻肢痛
  ・ヘルペス後神経痛
  ・三叉神経痛
  ・群発頭痛、偏頭痛
  ・神経障害性疼痛
  ・狭心痛
 ・血管
  ・Raynaud病
  ・血栓症、塞栓症
  ・血管閉塞症
  ・脳梗塞
  ・凍傷
 ・その他
  ・多汗症
  ・ホットフラッシュ (乳癌)
  ・PTSD
  ・突発性難聴
  ・Bell麻痺
  ・不整脈 (QT延長症候群)
・手技
 ・頚部はやや伸展、少し対側に向ける
 ・胸鎖乳突筋、頚動脈を側方に寄せつつ、
  Chassaignac結節 (輪状軟骨レベル、C6横突起)を触知する。
 ・気管-頚動脈鞘の間から針を刺入。
 ・C6 or C7に針を当て、1-2mm針を引いたところで薬液注入。
 ・Test dose (0.5-1mL程度の局所麻酔薬)
    →0.2%ロピバカイン 5-10mL
・効果判定
 ・Horner徴候: 縮瞳、眼瞼下垂、眼球陥凹、発汗↓
 ・鼻づまり
 ・皮膚温度上昇 (1-3℃以上)
 ・皮膚電気抵抗上昇
 ・血流増加 (ドプラー法)
・注意
 ・上肢の交感神経ブロックは不完全になりやすい
   ・頭頚部への交感神経遠心性線維
    →ほぼ全て星状神経節を通る
   ・上肢への交感神経遠心性線維
    →T2-3から直接腕神経叢に入る繊維もある
・安全に施行するために
 ・透視下で施行。
   ・もし造影剤広がらないならば→筋内
   ・造影剤すぐ消える→血管内
 ・エコーガイド下
 ・神経刺激装置
 ・会話、嚥下禁止
・合併症
 ・血気胸
 ・気管穿刺
 ・食道穿刺
 ・椎骨動脈、頚動静脈、下甲状腺動脈の損傷や血管内投与
 ・胸管損傷→乳び胸
 ・感染
 ・横隔神経麻痺
 ・反回神経麻痺
 ・腕神経叢ブロック
 ・髄腔内、硬膜外に誤投与 →高位脊椎麻酔
 ・局所麻酔薬中毒
 ・徐脈や低血圧
・禁忌
 ・出血傾向、横隔神経麻痺、反回神経麻痺、両側ブロック、敗血症
・postsympathectomy syndrome
  ・30-50% (CRPS患者では40-50%)
  ・交感神経ブロック後に神経障害性疼痛出現、増悪
  ・ブロック手技時に内臓神経障害→体性痛として感作?
  ・治療
    ・抗てんかん薬
    ・三環系抗うつ薬
    ・硬膜外ブロックなど併用
    ・交感神経ブロックを繰り返す
    ・外科的交感神経遮断





顎関節脱臼

初期研修医勉強会  担当:初期研修医 H先生

「顎関節脱臼について」

・顎関節とは?
  ・下顎頭、下顎窩、関節結節によって構成される。
・開口時の顎関節の運動
  →回転運動と滑走運動が組み合わさったもの。
  ・開口量が小さい場合
    →下顎頭の回転運動が主体
  ・開口量が大きい場合
    →前下方への滑走運動が組み合わさる。
・顎関節脱臼とは?
  ・下顎頭が下顎窩から外に出て顎関節運動範囲外にあり、
   もとに戻らない状態。
  ・脱臼の分類
    ・両側性、片側性
    ・前方、後方、側方
    ・完全、不完全
    ・新鮮、陳旧性
    ・単純性、習慣性
    ・外傷性、非外傷性
  ・ほとんどが前方脱臼、それ以外は外傷により生じる。
   →全身麻酔での挿管時に生じるのは前方脱臼。
  ・素因
   ・浅い下顎窩、平坦な下顎頭、
    関節結節前方部の急な傾斜、下顎角の開大(long face)
   ・女性は男性に比べ下顎窩が浅いため脱臼しやすい。
  ・誘因
   ・欠伸、歯科治療時や麻酔挿管時の過度の開口、
    外傷、咬合不全状態、下顎頸骨折…
   ・神経内科、精神科的疾患や脳腫瘍、向精神薬の服用、
    パーキンソン病、脳血管疾患による運動麻痺、てんかん
     →錐体外路症状を誘発し咀嚼筋の協調不全を引き起こすため。
・前方脱臼時の症状
  ・顎関節部疼痛
  ・顎運動制限
  ・閉口不能による咀嚼、発音、嚥下障害
・両側前方脱臼時の顔貌
  ・面長顔貌、両側耳前部の陥没、両側鼻唇溝の消失、
   閉口不能による流唾(りゅうだ)。
・片側前方脱臼時の顔貌
  ・患側の耳前部の陥没、オトガイ部の健側偏位、
   交叉咬合、開咬、患側鼻唇溝の消失。
  ・開口時の衝突、打撃などの下顎側方からの外力で発生する。
・診断
  ・ほとんどの場合X線撮影は行わない。
  ・顔貌所見のみで診断することが多い。
・診断が遅れる場合→陳旧性となる
  ・無歯顎など脱臼症状が著明でない場合
  ・全身状態の不良(意識障害等)
  ・精神障害
  ・他に優先すべき治療がある場合
・脱臼に気づいたら?
 →まずは徒手整復
  ・関節結節の前上方に偏位した下顎頭を結節より下方へ押し下げる。
  ・Hippocrates法:患者の前方に立つ。
  ・Borchers法:患者の後方に立つ。
  ・陳旧性で徒手的整復が困難な場合は顎間ゴム牽引療法
  ・それでも整復不可能なら全身麻酔下に外科的治療が必要。
  ・下顎頭切除術が行われることもあるが、
   術後顎変形症や顎関節強直症へ移行することがある。
・習慣性脱臼の治療法
  ・咬合療法
  ・スプリント療法
  ・チンキャップ
  ・顎間ゴム牽引法または顎間固定法
  ・関節腔内自己血注入法
  ・関節制動術
    ・軟組織に瘢痕を作って開口制限を図る。
    ・関節結節を高くして脱臼しにくくする。

    →軟組織に瘢痕を作って開口制限を図る。