2017年2月22日水曜日

顎関節脱臼

初期研修医勉強会  担当:初期研修医 H先生

「顎関節脱臼について」

・顎関節とは?
  ・下顎頭、下顎窩、関節結節によって構成される。
・開口時の顎関節の運動
  →回転運動と滑走運動が組み合わさったもの。
  ・開口量が小さい場合
    →下顎頭の回転運動が主体
  ・開口量が大きい場合
    →前下方への滑走運動が組み合わさる。
・顎関節脱臼とは?
  ・下顎頭が下顎窩から外に出て顎関節運動範囲外にあり、
   もとに戻らない状態。
  ・脱臼の分類
    ・両側性、片側性
    ・前方、後方、側方
    ・完全、不完全
    ・新鮮、陳旧性
    ・単純性、習慣性
    ・外傷性、非外傷性
  ・ほとんどが前方脱臼、それ以外は外傷により生じる。
   →全身麻酔での挿管時に生じるのは前方脱臼。
  ・素因
   ・浅い下顎窩、平坦な下顎頭、
    関節結節前方部の急な傾斜、下顎角の開大(long face)
   ・女性は男性に比べ下顎窩が浅いため脱臼しやすい。
  ・誘因
   ・欠伸、歯科治療時や麻酔挿管時の過度の開口、
    外傷、咬合不全状態、下顎頸骨折…
   ・神経内科、精神科的疾患や脳腫瘍、向精神薬の服用、
    パーキンソン病、脳血管疾患による運動麻痺、てんかん
     →錐体外路症状を誘発し咀嚼筋の協調不全を引き起こすため。
・前方脱臼時の症状
  ・顎関節部疼痛
  ・顎運動制限
  ・閉口不能による咀嚼、発音、嚥下障害
・両側前方脱臼時の顔貌
  ・面長顔貌、両側耳前部の陥没、両側鼻唇溝の消失、
   閉口不能による流唾(りゅうだ)。
・片側前方脱臼時の顔貌
  ・患側の耳前部の陥没、オトガイ部の健側偏位、
   交叉咬合、開咬、患側鼻唇溝の消失。
  ・開口時の衝突、打撃などの下顎側方からの外力で発生する。
・診断
  ・ほとんどの場合X線撮影は行わない。
  ・顔貌所見のみで診断することが多い。
・診断が遅れる場合→陳旧性となる
  ・無歯顎など脱臼症状が著明でない場合
  ・全身状態の不良(意識障害等)
  ・精神障害
  ・他に優先すべき治療がある場合
・脱臼に気づいたら?
 →まずは徒手整復
  ・関節結節の前上方に偏位した下顎頭を結節より下方へ押し下げる。
  ・Hippocrates法:患者の前方に立つ。
  ・Borchers法:患者の後方に立つ。
  ・陳旧性で徒手的整復が困難な場合は顎間ゴム牽引療法
  ・それでも整復不可能なら全身麻酔下に外科的治療が必要。
  ・下顎頭切除術が行われることもあるが、
   術後顎変形症や顎関節強直症へ移行することがある。
・習慣性脱臼の治療法
  ・咬合療法
  ・スプリント療法
  ・チンキャップ
  ・顎間ゴム牽引法または顎間固定法
  ・関節腔内自己血注入法
  ・関節制動術
    ・軟組織に瘢痕を作って開口制限を図る。
    ・関節結節を高くして脱臼しにくくする。

    →軟組織に瘢痕を作って開口制限を図る。