初期研修医勉強会 担当:初期研修医 H先生
「顎関節脱臼について」
・顎関節とは?
・下顎頭、下顎窩、関節結節によって構成される。
・開口時の顎関節の運動
→回転運動と滑走運動が組み合わさったもの。
・開口量が小さい場合
→下顎頭の回転運動が主体
・開口量が大きい場合
→前下方への滑走運動が組み合わさる。
・顎関節脱臼とは?
・下顎頭が下顎窩から外に出て顎関節運動範囲外にあり、
もとに戻らない状態。
・脱臼の分類
・両側性、片側性
・前方、後方、側方
・完全、不完全
・新鮮、陳旧性
・単純性、習慣性
・外傷性、非外傷性
・ほとんどが前方脱臼、それ以外は外傷により生じる。
→全身麻酔での挿管時に生じるのは前方脱臼。
・素因
・浅い下顎窩、平坦な下顎頭、
関節結節前方部の急な傾斜、下顎角の開大(long face)
・女性は男性に比べ下顎窩が浅いため脱臼しやすい。
・誘因
・欠伸、歯科治療時や麻酔挿管時の過度の開口、
外傷、咬合不全状態、下顎頸骨折…
・神経内科、精神科的疾患や脳腫瘍、向精神薬の服用、
パーキンソン病、脳血管疾患による運動麻痺、てんかん
→錐体外路症状を誘発し咀嚼筋の協調不全を引き起こすため。
・前方脱臼時の症状
・顎関節部疼痛
・顎運動制限
・閉口不能による咀嚼、発音、嚥下障害
・両側前方脱臼時の顔貌
・面長顔貌、両側耳前部の陥没、両側鼻唇溝の消失、
閉口不能による流唾(りゅうだ)。
・片側前方脱臼時の顔貌
・患側の耳前部の陥没、オトガイ部の健側偏位、
交叉咬合、開咬、患側鼻唇溝の消失。
・開口時の衝突、打撃などの下顎側方からの外力で発生する。
・診断
・ほとんどの場合X線撮影は行わない。
・顔貌所見のみで診断することが多い。
・診断が遅れる場合→陳旧性となる
・無歯顎など脱臼症状が著明でない場合
・全身状態の不良(意識障害等)
・精神障害
・他に優先すべき治療がある場合
・脱臼に気づいたら?
→まずは徒手整復
・関節結節の前上方に偏位した下顎頭を結節より下方へ押し下げる。
・Hippocrates法:患者の前方に立つ。
・Borchers法:患者の後方に立つ。
・陳旧性で徒手的整復が困難な場合は顎間ゴム牽引療法
・それでも整復不可能なら全身麻酔下に外科的治療が必要。
・下顎頭切除術が行われることもあるが、
術後顎変形症や顎関節強直症へ移行することがある。
・習慣性脱臼の治療法
・咬合療法
・スプリント療法
・チンキャップ
・顎間ゴム牽引法または顎間固定法
・関節腔内自己血注入法
・関節制動術
・軟組織に瘢痕を作って開口制限を図る。
・関節結節を高くして脱臼しにくくする。
→軟組織に瘢痕を作って開口制限を図る。