「CRRTについて」
・RRTとは?
→Renal Replacement Therapy
→腎機能を代替する治療
→電解質補正、体液量調整、有害物質の除去etc
・RRTの原理
①拡散(diffusion)
→溶質の濃度差での移動
→主に小分子の移動に有用
※拡散の規定因子
①溶質の分子量
②溶質の濃度勾配
③膜の要素(厚さ/膜孔/面積)
②濾過(ultrafiltration)
→半透膜の片方に陰圧をかけ、膜孔より小さい物質を通過させる
→中分子・小分子の移動に有用
※濾過の規定因子
①膜間圧力差(TMP)
②ふるい係数
③膜の性能(限外濾過率:UFR)
・RRTの適応
①乏尿
②尿毒症(高尿素窒素、クレアチニン血症)
③高カリウム血症
④溢水
⑤代謝性アシドーシス
⑥中毒 etc..
・RRTの種類
・IRRT (Intermittent Renal Replacement Therapy)
→短時間で生体腎の何十倍もの効率で浄化
→3-4時間/回のRRTを週 3-4回(通常の維持透析患者の透析)
・CRRT(Continuous Renal Replacement Therapy )
→大幅に透析効率を落とし、24時間持続緩徐に施行
→循環動態が不安定な患者や,頭蓋内圧上昇や
脳浮腫を有している患者(KDIGOガイドライン)
・SLED(Sustained Low Efficiency Dialysis)
→透析効率をIRRTの1/2程度に減らし、
2倍の治療時間(8~12時間)で行う
→IRRTとCRRTの中間
・CRRTの種類
・CHD:持続的血液透析
・CHF:持続的血液濾過
・CHDF:持続的血液濾過透析
・クリアランス
・QD+QF=QE(排液流量)を一定とした場合
・小分子ではCHF≧CHDF≧CHD
・中分子ではCHF≫CHDF>CHD
・CRRTに関する様々な疑問
・CRRT/IRRTどちらを選択すべきか?
・導入、終了のタイミングは?
・抗凝固薬は何を選択すべきか?
・適切な血液浄化量は?
→AKIに対するCRRTの適切な血液浄化量
・Roncoらの研究(2000年)
・ICUにおいてAKIを発症した 425例にCHFを施行する際に
QFを20ml, 35, 45 ml/kg/hrの 3 群に割り付け、
治療 15 日後の生存率を検討
→生存率は 41%,57%,58%
・20ml/kg/hr群が他の 2 群と比較して有意に低値。
・35 ml/kg/hr群と 45 ml/kg/hr群では有意差は認めず。
・AKIに対する浄化量は少なくとも35 ml/kg/hrが望ましいと結論。
(※血液浄化量=QD(透析液流量)+QF(濾過流量)=QE(排液流量))
・ATN study(2000年)
→RRTが必要なAKI症例 1,124例を無作為に
intensive therapy群(n=563)
→循環動態の安定している患者に対しては週6回のHD、
不安定な患者では35ml/kg/hrのCHDFあるいは週6回のSLED
less-intensive therapy群(n=561)
→循環動態が安定していれば週3回のHD、
不安定な場合には 20ml/kg/hrのCHDFあるいは週3回のSLED
→全死亡率、腎機能の回復率等を検討。
→全死亡率,腎機能の回復率で両群間で有意差なし。
・RENAL study(2009年)
→1,508例のAKI患者
higher intensity therapy群(n=747:35ml/kg/hr CHDF)と
lower intensity therapy群(n=761:25ml/kg/hr CHDF)に割り付ける。
→全死亡率,腎機能回復率で両群間で有意差なし。
・KDIGOガイドライン
→AKIに対するCHDFの血液浄化量として
20~25ml/kg/hrを推奨量としている。
・日本における保険制限
・現在のDPC制度においてCRRTの血液浄化量が15-20L/日に制限。
→15-20L/日=10-16ml/㎏/hr(体重60㎏の場合)
・諸外国におけるlow dose 20ml/kg/hr>10-16ml/kg/hr
・日本のCRRTのdoseは他国より圧倒的に低い。
・そもそも予後や腎機能を改善するエビデンスのないCRRTが
これほどまでに普及しているのはなぜか?
・CRRTの役割
①Renal indication(AKIに対するCRRT)
②Non-renal indication
→病態に関わる物質の除去により病態の改善を期待する治療法。
→例:敗血症性ショックにおける過剰な炎症性サイトカイン除去。
・CHDFがサイトカインに及ぼす影響
①濾過原理
・血液浄化量を上げると効率Up
→欧米では高血液浄化量に関する研究が進行。
→日本では保険による血液浄化量の制限があり研究は進まず。
②吸着原理
・血液浄化膜への炎症性サイトカインの吸着により物質を除去するとの考え。
・血液浄化量に制限のある日本での主流な考え方に
→様々な膜の開発(AN69ST膜、PMMA膜など)につながった
・Non-renal indicationのエビデンス
・血液浄化療法のnon-renal indicationに関する様々なStudy
・通常のCRRTvs保存療法のRCT
・高流量CRRTvs通常流量CRRTのRCT
・大孔径膜vs通常膜のRCT
→血中炎症性サイトカイン濃度の減少を示したものはあっても、
死亡率等の予後の改善を示したものは一切なし。
・RoncoのReview (2015)
「CRRTは炎症性サイトカインを取り除き、
血漿サイトカイン濃度を一部低下させるが、
血液浄化量にかかわらず予後には影響を受けないようである。」
・血液浄化推進派の意見
・敗血症の診断基準が2016年に変更されたため、
予後を改善する治療としてのCRRTが有用である可能性がある。
・CRRTのサイトカイン吸着能は膜面積に依存するので、
より広範囲の膜、あるいは2ユニットCHDFでの検討が必要である。
・PMMA膜などより吸着能の高い膜が開発されており、
それらが炎症性サイトカインを減少させ予後を改善する可能性がある。
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