2012年11月29日木曜日

アルブミン製剤

ICU勉強会  担当:S先生

「アルブミン製剤について」

・SSCGについて
  ・1990年代、敗血症とは???
  ・2001年:NISEが設立
  ・2003年:敗血症の定義
  ・SSCG 2004
  ・SSCG 2008
・SSCG 2012
  ・特に血漿分画製剤(アルブミン/IVIG)
    →推奨度と投与基準に変更が予想される。
・アルブミンの生理作用
  ・体液保持
  ・抗酸化
  ・抗炎症、アポトーシス予防
  ・抗凝固作用
  ・酸塩基平衡
  ・種々の物質との結合
 ・侵襲による血管透過性亢進で浸出したアルブミン
   ・抗炎症、抗酸化作用により組織障害の増悪抑制
   ・体液保持による間質浮腫の増悪
・血清アルブミン値が1 g/dl低下
  →死亡リスク↑、合併症↑、ICU滞在期間↑
・アルブミン製剤投与について
  ・Cochrane Injuries Group(1998年)
  ・Wilkes(2001年) 
  ・Liberati(2006年)
    →いずれも死亡リスクはアルブミン投与群で高い。
・SOAP study
  ・ICU stay、Hospital stay、死亡率はAlb投与群で高い。
  ・観察研究
  ・肝硬変、担癌患者が多かった。
・SAFE study
  ・脳損傷に対するalbumin投与群で 死亡率が高かった
  ・Severe Sepsisでは有意差なし。
・アルブミン製剤の副作用
  ・循環血漿量増加
  ・心機能抑制
  ・肺水腫
  ・末梢循環不全
  ・多臓器不全
  ・腎不全
  ・出血傾向亢進
  ・アナフィラキシー
 


     薬剤師さんに見送られて出張麻酔

顎関節疾患について

初期研修医勉強会  担当:F先生

「顎関節疾患について」 

・顎関節の構造と機能、まずは解剖の話から
・顎関節を構成する骨構造
  ・下顎骨:下顎頭
  ・側頭骨:下顎窩、関節結節
・咀嚼筋
  ・閉口筋
    ・咬筋、側頭筋、内側翼突筋
  ・開口筋
    ・外側翼突筋
・靭帯
  ・外側靭帯
    ・下顎頭の外側への逸脱を防止。
    ・下顎頭の前進・後退を制限。
  ・副靭帯
    ・蝶下顎靭帯:開口・側方運動の規制。
    ・茎突下顎靭帯:下顎の前方運動の規制。
・関節包
  ・顎関節を取り巻く結合組織の線維膜。
  ・下顎窩の周囲~関節突起の周囲に付着。
  ・関節包の内面は繊毛様のヒダを持つ
    ・滑膜によって覆われる。
  ・関節の円滑な運動のための滑液を分泌している。
・血管と神経
  ・栄養血管
    ・浅側頭動脈
    ・顎動脈
  ・神経
    ・三叉神経第3枝下顎神経
    ・顔面神経は顎関節周囲を走行。
・関節円板と滑液について
・正常な顎運動(動画で見てみよう)

・顎関節疾患あるある2つ

1.顎関節脱臼
・定義
  ・下顎頭が下顎窩から外にでて顎関節運動範囲外にあり、
   もとの状態に戻らない状態。
・分類
   ・前方/後方
    ・完全/不完全(亜脱臼)
   ・新鮮/陳旧性
   ・単純性/習慣性
   ・外傷性/非外傷性
・原因、リスク
   ・浅い下顎窩
   ・平坦な下顎頭
   ・関節結節前方部の急峻な傾斜
   ・下顎角が開大したlong face
   ・関節包や顎関節に関連する靱帯の弛緩伸展
・ある報告
  ・男性54名, 女性83名, 男女比1: 1.5と女性にやや多い.
  ・平均年齢47.2歳(3~99 歳)
・脱臼整復法(早期)
①Hippocrates法
  ・患者の前方に立つ。
  ・整復後に咬まれないように拇指にガーゼを巻いておく。
  ・両手の拇指を下顎大臼歯咬合面上に置き,
   残りの四指を下顎下縁に添えて, 
   両手で下顎体部を挟むように掴む。
  ・両手の拇指で下顎大臼歯部を下方に強く押し下げつつ
   オトガイ部を持ち上げるようにする。
  ・そのまま下顎を下後方に押しつけるようにする。
②Borchers法
  ・患者の後方に立つ。
  ・患者の後頭部から抱えるように固定する。
  ・下顎を上前方に回転させつつ手前に引く。
・脱臼整復法(陳旧例)
  ・まずは徒手整復
  ・不可能な場合は局麻下、または全身麻酔。筋弛緩薬使用など。
  ・手術も。
・習慣性顎関節脱臼の予防
  ・非観血的療法
  ・包帯やチンキャップによる一定期間の開口制限 
  ・観血的療法
     ①運動抑制法(顎関節前方障害術)
     ②運動平滑化法
       関節結節削除術(eminectomy)

2.顎関節症(TMD)
・顎関節症とは?
  →顎関節や咀嚼筋の疼痛、関節雑音、開口障害、
   または顎運動を主要症候とする慢性疾患の総括的診断名
  ・咀嚼筋障害、関節包・靭帯障害、
   関節円板障害、変形性関節症などが含まれる。

・TMDの分類

・顎関節症Ⅰ型(筋性)
  ・筋、筋膜疼痛機能障害症候群(MPD)と同意。
  ・咀嚼筋の異常により生じる筋・筋膜の代謝異常が原因
  ・筋の緊張・スパズムを生じる。
  ・圧痛点は限局的。
  ・トリガーポイントの存在。
  ・関連痛は高頻度。
  ・咀嚼筋の顎運動時痛→開口障害
・顎関節症Ⅱ型(靭帯障害)
  ・円板後部組織、関節包、靭帯の慢性外傷性病変。
  ・顎運動時に顎関節痛を訴える。
  ・触診で顎関節の圧痛を同定できる。
  ・Ⅲ型やⅣ型の前段階の可逆性の状態。
  ・過度の開口、硬固物の咀嚼、ブラキシズム、打撲
   →滑膜組織・靭帯・関節包・円板後部組織の炎症、変性
・顎関節症Ⅲ型(関節円板障害)
  ・円板の方向
    →92%が前方転位、8%が側方転位。
  ・転位した円板
    →非生理的な負荷を受けて転位を増悪
    →円板の変形を生じ、徐々に退行性変化をきたす。
  ・種類
    ①相反性ロック
    ②クローズドロック
    ③オープンロック
       →対処法など
   ・顎がよく外れるけど自分で戻せる人
     →オープンロックが疑われる。
     →自ら下顎を左右に動かすことでロック解除
・顎関節症Ⅳ型(変形性関節症)
   ・退行性病変
    ・関節円板や滑膜などの軟組織や、下顎頭や下顎窩など
   ・画像診断により下顎頭や下顎窩の骨変形が確認。
   ・Ⅱ型⇒Ⅲ型⇒Ⅳ型と進行する。
   ・臨床症状
    ・顎関節痛 
    ・開口障害
    ・関節雑音(ジャリジャリ)
・AAOP(米国口腔顔面痛学会)のガイドライン
  ・顎関節症とは?
    ・Self‐Limitingな疾患である
     →際限なく悪化する病気ではない。
     →放置しておいてもいずれ症状は軽減する
  ・不正咬合と顎関節症に因果関係はない  
  ・顎関節症の主たる症状は?   
    ①痛み   
    ②顎関節音   
    ③顎関節周囲の筋肉の痛み   
    ④開口障害   
    ⑤頭痛
  ・顎関節痛の主たる原因は?
    ①先天的なもの(解剖学的問題)
    ②全身疾患(リウマチなど)に関連
    ③関節円板の転位
    ④姿勢の悪さ
    ⑤特定の動作の連続性による筋肉の疲労
    ⑥持続的な強い力が関節に加わる
    ⑦ストレスなどの心因的因子
  ・顎関節症の治療方法
    ・対処療法で90%の患者は痛み・違和感が消失する
      ①温熱療法、理学療法、消炎鎮痛剤
      ②スプリント療法
      ③外科的療法(極めて稀:2-3%)
        →通常②まででほとんどの患者は治癒する
・論文読みました。
 ・Using temporomandibular joint mobility
    to predict difficult tracheal intubationSevtap
    →J Anesth. 2011 Jun;25(3):457-61. Epub 2011 Mar 31


産科麻酔について

初期研修医勉強会  担当:H先生

「産科麻酔について」

・帝王切開術の割合増加中
  ・昭和62年8%→平成20年19%
  ・生殖医療の普及、多胎の増加など
・周産期医療センターでの麻酔科の不足
  →産婦人科医による自家麻酔が多い
・麻酔科医が担当する割合
  →病院で59%、診療所で15%、全体で42%
・本邦では脊髄くも膜下硬膜外麻酔併用の比率が高い
  →421施設中131施設 31%
  ・硬膜外麻酔を併用する長所
    ・術後鎮痛にも用いることが出来る。
  ・短所
    ・硬膜外血腫、感染のリスク
・脊髄麻酔、硬膜外麻酔の禁忌を知る。
  ・適応
    ・血小板数 >50,000–100,000/μL
    ・PT-INR <1.2–1.5
    ・APTT <120-150%
・PDPH(postdurapuncture headache)について
  ・若年女性はリスクが高い
  ・術後早期から離床する妊婦では特に問題となる。
  ・ペンシルポイント針はリスクが低い
・ブピバカインの用量
  ・高比重ブピバカインのED95は11.2mg
・添加オピオイドについて
  ・フェンタニル
    ・鎮痛効果時間が延長。
    ・IONVの頻度が減少。
    ・10-25μgの投与が一般的。
  ・モルヒネ
    ・局麻に追加1回投与で12-24時間程度の術後鎮痛効果。
    ・0.1-0.2mg程度の投与が一般的。
    ・副作用:遅延性の呼吸抑制
・低血圧の予防
  ・子宮の左方転位
    →手術台を左下に傾ける(15°程度が妥当)
  ・母体に腰枕をあてがう
  ・用手的に子宮を圧迫
・急速輸液
  ・preloadかcoloadか
  ・coloadの方が昇圧薬が少なくて済む。
    →Anaesth Intensive Care. 2004 Jun;32(3):351-7.
・膠質液の有用性
  ・HESのpreload, coloadともCO増加させる報告あり。
    →Anesth analg 109:1916-1921, 2009
・昇圧薬
  ・エフェドリン
    ・α、β作用(α<β)
    ・血圧上昇、心拍数増加。Bolus 5-10mg。
    ・最大効果発現時間は1分超。作用持続は10-15分。
  ・ネオシネジン
    ・血圧上昇、心拍数減少。Bolus 50-100μg
    ・最大効果発現時間は30秒程度。作用持続は5分。
・論文読みました。
  ・脊麻CSにおけるPhenylephrineの影響
    →Habib et al. Anesth Analg 114:377-390, 2012
  ・Pheはephに比べIONVの発現率が低い
  ・臍帯血のpHが低くならない。
    →pHの違いは臨床的に問題にならない程度。
  ・Pheの持続divはbolus投与よりも低血圧予防に効果がある。
  ・一方でpheは徐脈、心拍出量を下げる。
  ・臨床的な影響については今後の研究課題。



     MEさんによる人工心肺勉強会

Airway Management

麻酔の問題集  担当:T先生

「Airway Management」

問題1:LMAと陽圧換気に関する問題

・LMAの欠点と合併症
  ・LMAの位置異常
  ・粘膜損傷と咽頭痛:10%程度
  ・胃の膨張、但しバックバルブマスクよりは優れている
  ・胃内容物の逆流と誤嚥:0.02%程度
  ・カフの膨らませすぎ N2Oによりカフ圧が上がる
  ・神経障害 高いカフ圧や位置以上が原因
  ・縦隔炎と咽後膿瘍の症例報告あり
・LMAの利点
  ・DAM症例のアルゴリズムで用いられる
  ・気管挿管と比べて
    →挿入時の局所障害が少なく血行動態の変動が少ない
    →眼圧上昇がない。
    →咽頭痛・嗄声の頻度が少ない。
  ・慣れてなくても使用可能
  ・気道過敏性のある患者に使える。
  ・マスクより密着性がよく手が疲れずより信頼出来る   
  ・バックマスク換気と比べて胃の膨張が少ない

問題2、3:喉頭痙攣に関する問題

・誘発因子
  異物(経口経鼻エアウェーイ),saliva(唾液),血液,
  嘔吐物,内臓痛,浅麻酔
・対処法
  ・陽圧でO2投与
  ・短時間作動性筋弛緩薬
・刺激物の除去
・成人における手術後の致死的呼吸イベントの23%
   ・輪状披裂筋、甲状披裂筋の収縮で起こる
   ・陰圧性肺水腫になる可能性がある

問題4:挿管困難の予測因子に関する問題

・TMDが短い
  →喉頭が下降する割合が低くなる。
  →挿管困難となることがある
    ・TMD:60mm以下で陽性
・Mallampati分類と甲状切痕頤間距離の組み合わせ
  →挿管困難の予測率は改善する。
・喉頭が長すぎる
  →舌の大部分が下咽頭に
  →挿管困難の原因となる
・小顎
  →舌を圧排するスペースがない
  →挿管困難の要素となりうる

問題5:直達喉頭鏡をかける場合についての問題

・JSA Airway Management Algorithmの紹介




短腸症候群

ICU勉強会  担当:T先生

「短腸症候群」

・Short bowel syndrome(SBS)
  ・小腸の広範囲切除による吸収不良症候群。
・原因疾患
  ・クローン病、悪性腫瘍、放射線治療後、血流不全など
・経口摂取を開始できるかどうか
  →残存小腸長が重要な要素
・中心静脈栄養について
  ・残存小腸が
    ・180cm以下ならSBSになるかかも
    ・60cm以下ならPNが必須に
・残存小腸の変化
  ・空腸は大部分の栄養素の主な消化吸収部位
    →空腸切除によって栄養吸収が有意に低下
    →回腸の絨毛の長さが伸びる。
    →吸収機能が亢進し、適応していく。
    →結果として栄養吸収が徐々に改善する。
・回腸
  ・B12,胆汁酸の吸収
  ・60cm以上切断すると低下する
 ・回腸の切除が100cm以下
   →汁酸の喪失は肝臓が代償する 
   →吸収されなかった胆汁が結腸で過剰となり下痢に。
 ・100cm以上の切断
   →胆汁酸濃度が下がる。
   →十二指腸での脂肪と脂溶性ビタミンの吸収が低下
   →ビタミンB12および胆汁酸は回腸で吸収される。
  ・回腸を100cm以上切除した場合
    →重度の下痢および吸収不良が起こる。
    →残存空腸の代償性適応は認められない。
    →脂肪,脂溶性ビタミン,ビタミンB12の吸収不良
・回盲弁の消失
  →小腸通過時間が短くなる
  →栄養吸収障害が起こる
 ・結腸の細菌が回腸末端にトランスロケーション
  →ビタミンB12や胆汁酸の吸収が落ちる
  →下痢になる
・結腸内の非吸収胆汁酸
  →分泌性下痢の原因となる。
・切除部位では?
 ・結腸温存
  →水分および電解質喪失が有意に減少する。
 ・回腸末端および回盲弁の切除
  →腸内細菌異常増殖の素因となることがある。

・管理(早期)
 ・水分、電解質のモニタリング。
 ・初めのゴール
   →PNで電解質異常と水分異常を防ぐこと
   ・H2blocker投与で胃酸の過分泌を防ぐ
     →pHの変化による脂質の吸収が低下する
   →安定したら経腸栄養を再開する
   ・ソマトスタチンが消化液の分泌を減らす。
 ・状態が安定し排便量が2L/dayになったら
   →Naおよびブドウ糖の経口等浸透圧液を徐々に開始。
   →後半切除患者は生涯TPN
 ・食後に下痢をする患者は食事1時間前に止瀉薬。
   ・コレスチラミン2-4gを毎食時に。
 ・ビタミンB12欠乏患者は1日1回筋注。
 ・Ca、Mgも補充
 ・H2RA、PPI
・栄養は?
 ・持続的腸管栄養か少量頻回投与
 ・PNのテーパリング
・クスリ
 ・H2blockerなどは胃液膵液の過剰分泌を防ぐ。
 ・ロペラミド
・クスリの吸収
 ・薬剤はほとんどが胃や近位小腸で吸収される
   →効果が保たれることが多い
 ・腸液コーティングはやめとくべし
・手術療法
 ・小腸移植


2012年11月16日金曜日

周術期輸液について

初期研修医勉強会  担当:Y先生

「周術期輸液について」

・体重の約60%が水分(体液)
・細胞内液40%、細胞外液20%
       →細胞間質15%+血漿量5%
・総体液量は全体重における筋肉量の比率で変化する
・水分は筋内にあり、脂肪にはない
  →年齢や肥満度で体液量は変化する
・女性は男性に比べて脂肪の割合が多いため水分量は少ない
・周術期の輸液、輸血の目的
 →血管内volumeとstroke volumeを最適化するため
 →体液の恒常性を保つため
・体液の恒常性
 →体内外の水の出入りは複雑
   ・IN:食事、飲水から電解質、栄養を取り入れる
   ・OUT:尿、便、肺、皮膚、不感蒸泄、発汗
・体内での水分移動
 ・消化管:消化液の分泌、再吸収
 ・腎臓:糸球体で原尿を生成、尿細管で再吸収
・腎
  ・腎から排泄される溶質:1日10mOsm/kg
  ・体重60㎏だと600mOsmを排泄
  ・腎の最大濃縮力は1200mOsm/L
     →600÷1200=0.5L=500mlは尿量必要
・便中水分:100~200ml
  →下痢や嘔吐があると、その分水も電解質も出ていく
  ・胆汁や大腸液は高電解質。
  ・ドレナージ量が多ければ補正は必要。
・呼吸器、皮膚
  ・不感蒸泄:皮膚、呼気からの喪失量の和
  ・体温が1℃上昇するごとに15%増量
  ・呼気から30%喪失
    →全身麻酔では人工呼吸管理・・・
    →100%加湿や人工鼻を付けていれば不感蒸泄量は
     無視できる。
   ・ただしhyperventilationは避ける
・代謝水
  ・栄養素(炭水化物、蛋白質、脂質)の代謝で生じる
  ・400kcalの食事で50ml、1日2400kcalで300ml程度
・アンギオテンシンは血管収縮作用、ANPは血管拡張作用
  →互いに密接な関係あり
・ANPはレニン分泌を抑制
  →アンギオテンシンを介するアルドステロン分泌も抑制。
  →アルドステロン作用も抑制する
・組織間の水の移動
  ・細胞内液、細胞外液(組織間液、血漿)
  ・各コンパートメント間で水、電解質は分布が一定となる。
     ・半透膜
     ・浸透圧
     ・Na-K ATPase
・周術期には恒常性が乱れる.
  ・術前:絶飲食、嘔吐、胃液吸引、下痢、下剤投与など
  ・術中:麻酔の影響、手術自体の影響など
    ・全身麻酔導入時の循環血液量の相対的減少
      →体血管抵抗減少、心機能抑制
    ・手術による出血の影響
    ・サードスペースの影響
  ・術後:ドレーンチューブによるドレナージ
     →炎症や感染症の影響
・サードスペース
   ・非機能的細胞外液
   ・細胞外液との交通はあるが平衡関係にない
   ・術野周囲の浮腫、液貯留によるもの
   ・腹腔臓器手術後に多い
 ・サードスペースの存在を疑う状況とは?
   ・手術部位や周囲の腫脹
   ・輸液をしても血圧、尿量の低下がある
 ・refillingの際には?
  ・サードスペースの水が戻ってくる。
  ・輸液量過剰や心疾患があれば心不全をきたす可能性。
   →術後の輸液量は必要最小限に

・輸液の種類
 ・生理食塩水
  ・浸透圧はやや高い
  ・血漿よりもNa濃度は高い。
    ・塩素濃度はかなり高い。
     →大量に入れると高Cl性アシドーシスになりうる
 ・乳酸リンゲル液
  ・血漿中の濃度に近いK、Caを含む
  ・Naはやや低い
  ・乳酸の存在のため、塩素濃度も削減
  ・高度肝機能障害、ショック、外傷の場合。
    →乳酸Na代謝が滞る。
    →高乳酸血症のリスクあるかも。
 ・アルブミン溶液
  ・ヒト血清アルブミンを生理食塩水に溶解したもの。
  ・5%と25%のものがある。。
    ・5%は血漿と同量のAlbと浸透圧
       →70%は血管内
    ・25%は血漿よりはるかに高い浸透圧
       →間質から水を移動させまくる
 ・HES
  ・ヒドロキシエチルデンプン(HES)
  ・デンプンの重合体、生食にHESを含む製剤
  ・膠質浸透圧は5%Albより高いため血漿量の増加も多い
  ・デンプン→小さな断片に分解→腎臓から排泄
  ・副作用
    ・凝固因子のⅦ因子、vWFの抑制、血小板粘着能の障害
      →出血傾向を起こす
      →血小板減少患者には原則禁忌
    ・腎障害や脱水状態の患者は腎不全を起こす可能性あり

・輸液量について
  ・色々なstrategyが研究されている
  ・Liberal fluid Therapy
    →尿量やthird spaceへのlossを考慮に入れた輸液。
      ・腹部のopeなら10-15ml/㎏/hの晶質液を入れる
    →多すぎて、術後の 体重が3-6㎏増加!
    →腸管浮腫、縫合不全や肺水腫の原因に
    →予後や入院期間に影響が出る
・Restrictive fluid therapy
  ・サードスペースへの補充を除外
  ・手術で喪失する分だけ補う。
  ・術後合併症(腹膜炎、縫合不全など)は?
    ・liberal protocol群で多い。
    ・入院期間もrestrictive protocol群の方が短い。
    ・術後の腎機能(Crea値)は両群で差なし
      →術中尿量の減少は術後の腎機能に大きく関係せず。
    ・尿量低下はある程度の時間許容できる
・goal directed therapy
  ・適切なstroke volumeを維持して組織還流量を適正に保つ
  ・循環「動態」パラメーターを指標
 ・実際には?
  ・導入時負荷
  ・術前脱水に依存。晶質液をボーラスで投与。
  ・制限的晶質液投与量:1.5~2ml/kg /h
  ・膠質液:goal未達成で輸液反応性がある場合。
    →200~250mlの膠質液によるfluid challenge
  ・HES製剤を使う
  ・欧米では分子量13万のHES製剤使用されている。
    →日本では7万のHES製剤を使用。
  ・Goalは、1回拍出量と静脈血酸素飽和度
    →酸素供給量、酸素需要量を表す
  ・Goalの指標
    ・ScvO2:中心静脈血酸素飽和度
      →75%以上をgoalとした報告あり
    ・PVI:脈派変動指数
       →13%未満をgoalとした報告あり



            PICC挿入

2012年11月14日水曜日

MICSと麻酔科医

ICU勉強会  担当:I先生

「MICSと麻酔科医」

・OPCABGとMIDCABGとMICSとTECABGの違い、知ってますか?

・MID CAB (minimally invasive direct CAB)
  ・左小開胸によるOPCABG
   ・1994   Benetti@Argentina
   ・1996 -    @Japan
  ・創小さい
    →疼痛少ない、治癒早い
     →ICU退室、退院、社会復帰が早い
    ・ちなみに胸骨正中切開
      →数ヶ月は重い物を持てない、車の運転も控える、・・・
    ・縦隔炎リスクなし
    ・美容面に優れる
    ・CPBの影響なし
    ・バイパスできる血管は限定(LITA-LAD)
    ・OPCAB→ムズイ
・MICS (minimally invasive cardiac surgery)
   ・低侵襲心臓手術
    ・1995 Cleveland Clinic  @Ohio
   ・CPB用いない
   ・全胸骨切開をしない
   ・その両方
     →MID CABも含まれる?!
   ・胸骨部分切開 (hemisternotomy)
   ・右(or左)肋間アプローチ(→胸骨温存)
        →port-access MICS(minithoracotomy)
   ・MVP,MVR,ASD,myxoma~AVR,基部置換も
   ・利点
     ・創は5-10cmと小さい
       →ICU退室、退院、社会復帰が早い
     ・美容面に優れる
     ・胸骨感染、縦隔炎少ない
     ・reオペ時のリスク軽減、癒着少ない
   ・欠点
     ・術野展開が困難
     ・緊急時の対応が困難(出血、VF)
     ・手術時間(CPB時間)が伸びる傾向
     ・手術手技としては大変だが、患者のQOL↑↑
   ・麻酔科医(with TEE)の役割かなり重要!!
     ・分離換気±
     ・A弁手術
       →第3肋間開胸 
       →心室リード留置難
       →最初に麻酔科医がぺーシング機能付きPAC挿入
     ・CPB…Ao or FA送血⇒、⇒FV(+IJV)脱血
     ・CSカテーテル、PAベントカテーテル、Ao閉塞カテーテル
       →いずれもTEE checkが必要
     ・心内遺残空気検出
・TECABG
  ・totally endoscopic coronary artery bypass
  ・ダ・ヴィンチを使う。


挿管困難と顔貌

初期研修医勉強会  担当:F先生

「挿管困難と顔貌」

・開口度
  ・下顎骨ー側頭骨関節機能
  ・口が開かなくては始まらない
・最大開口時の上下前歯間距離
  ・通常2.5~3横指幅
  ・2横指幅以下⇒喉頭鏡のブレード挿入、操作が困難
・上顎前歯の突出
  ・喉頭鏡操作および視線の妨げになる。
  →挿管困難の可能性が高くなる
  ・ブレードによる歯の損傷の可能性も高くなる
・マランパチー分類
  ・ClassⅠ、Ⅱでは喉頭展開しやすい
  ・ClassⅢ、Ⅳでは挿管困難が多い
・下顎のスペース
  ・挿管困難が予測される場合は・・・
    ・下顎ー舌骨間距離 2横指以下
    ・下顎甲状軟骨隆起間距離が6.5cm以上
・頸部伸展度
 ・喉頭展開
  →口腔・咽頭・喉頭の軸を一致させたい
  →頭部をさらに伸展させる必要がある。
 ・環椎ー後頭骨関節機能障害(慢性関節リウマチ)など
  →頭を後屈するのが困難
  →挿管困難の可能性が高くなる。
 ・その他頭部、頸部、顔面の評価
   ・頭が短い
   ・頭部・顔面・頚部の外傷
   ・高度肥満

・挿管困難対策
 ・ファイバースコープ下挿管
   ・気管支ファイバースコープを使用する主な目的
     ①分離肺換気デバイスの操作
     ②挿管困難
     ③喀痰吸引や無気肺の解除など
   ・喉頭の観察
     →経鼻的に行う方が経口的に行うよりも容易。
   ・気管内チューブの挿入
     →角度的に経鼻の方が進みやすい.
   ・経口の場合は舌をうまくよけておく必要
   ・バーマンエアウェイTを使用する。
 ・Airway Scope
   ・2006年7月登場。
   ・日本のペンタックス社(現HOYA株式会社)。
   ・一般名称はビデオ硬性挿管用喉頭鏡
   ・ディスポーザブルの喉頭鏡
     →イントロック(ITL).
   ・AWSの利点
    ①通常の喉頭鏡よりも視野が良好
    ②優れた気管チューブ誘導機能がある
    ③頭頸部の位置を動かす必要がない。
      →自然位で挿管可能(頸椎病変患者に有用)
    ④イントロックに吸引カテーテルを挿入できる。
      →挿管操作中の吸引操作が容易  
    ⑤液晶モニター。
      →より多くの人に挿管状況の観察が可能
   ・欠点
    ①高価。本体850,000円、ITL=1箱5本入り12,500円
    ②開口制限時は使用困難(開口量18mm以下では使用不能)
    ③歯の脆弱がある場合、挿入・操作が困難
    ④曇り止めが必要
    ⑤分泌物や出血が多いと視野閉塞の可能性あり
    ⑥歯の脆弱がある場合、挿入・操作が困難
 ・Bullard型喉頭鏡
   ・気道の解剖に. 基づきJ字型にデザイン
   ・内視鏡を有する喉頭鏡
   ・気管内チュ-ブが通過できる程度の開口が可能
     →かなり高確率で挿管が可能
 ・盲目的経鼻挿管
   ・適度の鎮静を効かせる。
   ・経鼻で気管内チューブを通す。
   ・呼吸音を頼りに患者の吸気に合わせてチューブを進める。
   ・挿管する.
 ・トラキライト
 ・ラリンジアルマスク
   ・利点
    ・挿入は気管挿管よりも容易、盲目的に挿入可能。
    ・効果はバッグマスク法よりも確実。
    ・酸素化、陽圧喚起能力は気管挿管とほぼ同等。
    ・声門を通らないため、侵襲は気管挿管よりも小さい
   ・欠点
    ・気管と食道が完全に分離されない
   ・マスクから漏れが大きいときは陽圧換気が不十分
   ・声門下の気道閉塞(腫瘍・浮腫)には無効
 ・逆行性挿管

・E-line
  →Esthetic-line
 ・1954年 Rickettsが提唱
 ・美しい口もとの基準とされる線
 ・軟組織顔貌上の鼻の先端-オトガイ部最突出点を結ぶ直線
 ・東洋人の骨格
  →E-lineに上下の口唇が接するか
   やや後退している状態が美しいとされている。
・Profileの分類
・美しい顔の条件
 ・アリストテレス
   →美は「秩序とシンメトリーの明確さ」にある.
 ・プロティノス
   →「美しいものは本質的にシンメトリーをなす.」
 ・新古典派やルネサンス期の基準
   ・「耳の長さと鼻の長さが同一である」
   ・「眼間距離が鼻の幅と同一である」
   ・「口裂の幅が鼻の幅の1.5 倍である」
・正面観
 ①対称性 
   →ヒトの顔は非対称.
    ・右半分が大きい。
    ・中顔面より下顔面に下がるにつれて左方偏位を示す.
   →正中に対してオトガイが4mmずれると・・・
    顔が非対称であることに人は気付く.
 ①顔面高 
   ・上中下顔面の比率が均等な顔の下顔面高
     →総顔面の高の±13~15%変化させると・・・
     →長い(or短い)顔と認識される。
・不正咬合
  ・遺伝的要因
  ・環境的要因
    ・口腔習癖
    ・齲蝕、歯周疾患
    ・顎関節障害
    ・鼻咽腔疾患
       ・歯ぎしり
        ・外傷 
・ハプスブルグ家における骨格性下顎前突の家系集積



2012年11月8日木曜日

成人先天性心疾患患者の非心臓手術麻酔

麻酔科勉強会  担当:Y先生

「成人先天性心疾患患者の非心臓手術麻酔」

・日本には現在約50万人の先天性心疾患患者。
・年間12,000程度が生まれ、10,000人が成人する。
・1997年に、成人患者と小児患者はほぼ同数となった。
・2020年には成人患者のほうが多くなる。
・複雑心奇形術後患者の成人も増加している。

・Functinal Classification(古典的、臨床的)
  ・L-R shunt→肺高血圧
  ・R-L shunt→チアノーゼ
・両心室循環と単心室循環
  ・両心室循環:経過観察 or OPE
  ・単心室循環:姑息手術、Fontan手術、Fontan循環
・体血流増加のためには
  ・肺血管抵抗増加
    ・低酸素
    ・低換気(CO2 ↑)
    ・ヘマトクリット上昇
    ・PEEP
    ・低体温
    ・代謝性アシドーシス
    ・α受容体刺激
  ・体血管抵抗減少
    ・血管拡張薬
    ・脊椎麻酔
    ・硬膜外麻酔
    ・深麻酔
    ・高体温
・肺血流増加のためには
  ・肺血管抵抗減少
    ・過換気 (CO2 ↓)
    ・血管拡張薬(NO)
  ・体血管抵抗増加
    ・交感神経刺激
    ・血管収縮薬
    ・低体温
・点滴に絶対にairを入れない!
  →液面はチャンバーの2/3程度にすべきらしい。
・Severe Cyanosis患者では凝固異常、出血傾向が共存しうる。
・周術期の絶食により脱水傾向となる。
  →血栓塞栓症のリスク。
  →輸液により循環血液量をeuvolemicに保つ。
・周術期の瀉血
  →Hct > 65%を超えた場合は考慮。
・鉄欠乏は術前に補正されるべきである。
・Hct上昇・血漿量低下の状態では通常のPT、APTTは信頼できない。
  →Hctを考慮した補正式での補正が必要。
・左心不全はガイドライン通り治療。右心不全は個別に対応。
・不整脈、呼吸不全、肝機能異常など他にも併存合併症は多い。
・麻酔計画
  ・中等度-高度complex症例は地域の中心施設に集める。
  ・各分野の専門スタッフを集合させて周術期計画を練る。
・周術期リスクを理解
  ・患者因子:心機能、PHの存在、シャントの状態など
  ・手術因子:片肺換気、腹臥位、Trendelenburg体位など
・前投薬
  ・低換気→低酸素→肺血管抵抗上昇のリスク
  ・不安が強い患者(trisomy 21など)では考慮。
・IE予防
  ・極めてIEリスク高い患者のみ考慮。
  ・ルーチンでのIE予防のための抗生剤投与は必要ない。
・スタンダードモニタリング。
  ・Pulse oximetry、ECG、ABP、Capnography、体温計など。
  ・Pulse oximetryは特にACHD患者で有用。
     →SpO2低下は肺血流低下を示唆する。
     →すなわちR-Lシャントの増大を示唆する。
  ・しかしPulse oximetryはL-Rシャントの増大を感知できない。
     →体血流が著明に減少してもSaO2が維持されるため。
・CapnogramはR-Lシャント増大時にPaCO2との解離が増大する。
・CVライン
 ・Glenn、Fontan術後の患者はSVCのCVで血栓リスク高い。
 ・いずれにしろ輸液ラインから絶対にairを抜く。
・経食道心エコー(TEE)
 ・圧データ(CVP、LAP)のみでは循環影響因子の把握は困難。
  →TEEが有用
   ・心機能、volume status逆流の有無、血管圧迫の有無など)。
  →ただし、CHDのTEEに慣れている術者が行うべき。

・肺高血圧患者の麻酔
  ・特にEisenmenger syndrome患者
    →非心臓手術が絶対に必要な場合にのみ手術を行う。
  ・予後不良の予測因子
    →失神の既往、ES発症年齢、早い症状進行、
     上室性頻脈の合併、右房圧上昇、SpO2 < 85%、腎不全、
     重症右心不全、trisomy 21、
  ・肺血管抵抗を下げて、体血管抵抗も保つことが管理目標。
  ・肺血管抵抗を下げる
     ・肺血管抵抗増悪因子を防ぐ
        ・FiO2 up (通常1.0)
        ・Hyperventilation
        ・交感神経刺激の抑制
        ・通常体温維持
        ・胸腔内圧を低く保つ
        ・アシドーシスの補正
     ・クスリを使う
        ・PGE1(プロスタグランジンE1)
        ・PGI2(ベラプロストナトリウム)
        ・ニトログリセリン
        ・ニトロプルシド
        ・エンドセリン受容体拮抗薬
        ・PDE5阻害薬
        ・NO
  ・局所麻酔
    →体表の手術なら可能。
  ・脊髄くも膜下麻酔、硬膜外麻酔
    →体血管抵抗の減少
    →R-L Shuntが急激に増大するリスクあり。
  ・全身麻酔
    →High Risk患者では全身麻酔が好ましい。
    →呼吸管理(肺血管抵抗のcontrol)ができるため。
・Fontan循環患者の麻酔
  ・Fontan手術の歴史
  ・1990年代から成績向上:急性期死亡率1-2%
    →2012年現在、20歳前後となっている。
  ・Fontan循環の特徴
    ・右心室をバイパスしている。
    ・SVC、IVC血流は直接、受動的に、非拍動流としてPAへ。
  ・Fontan循環患者の麻酔目標 
    ・肺血管抵抗を減らし、肺血流を保つ。
    ・SaO2 90-95%を目安として維持する。
      →CSからの非酸素化血があるため100%にはならない。
   →preloadを保つ
     ・充分な輸液
     ・ただし拡張障害がベースにあるので注意。
   →肺血管抵抗を低く保つ
     ・可能なら自発管理
     ・呼吸回数を減らし、陽圧吸気時間を減らす。
     ・PEEPを避ける。
   →洞調率および心収縮力の維持
   →体血管抵抗を低く維持
     ・Milrinoneは有効である可能性。
  ・Fontan循環患者は術前合併症も多い。
    →上室性頻脈、拘束性肺障害、血栓合併症、肝機能異常など。      
  ・凝固亢進傾向、抗凝固傾向いずれも存在しうる。
  ・肝機能異常、蛋白喪失性胃腸症などの影響
  ・TEEは有用。
    →逆流やvolume statusの評価、導管狭窄の診断などに有効。
  ・症例報告
    ・ラパロ・・・症例報告はそれなりに。
    ・分離肺換気・・・PubmedではCase report1件のみ。
    ・帝王切開・・・症例報告が散見

・ACHDと妊娠・出産
  ・ACHD 90妊娠についての報告によれば、
    ・術前合併症として母体肺水腫 16.7%  遷延性不整脈 2.8%
    ・心臓関連有害事象を予測する独立危険因子
      → PV下心室の駆出率低下、重度PR、喫煙歴あり。
  ・なおACHDに限らず心疾患合併妊娠については、
    ・NYHA Ⅲ-Ⅳ、母体cyanosis、不整脈既往、肺血管疾患、
     心筋障害(EF<40%)、左心狭窄病変
         →心臓関連事象の独立した危険因子。
  ・新生児の転帰
    ・早産 20.8%、脳室内出血 1.4%、
     子宮内胎児死亡 2.8%、新生児死亡 1.4%
  ・新生児の有害事象を予測する危険因子
    →動脈弁下心室の流出路圧較差>30mmHg
  ・Cyanosis性心疾患では母体SpO2<85%で児の予後不良。
  ・Eisenmenger症候群では母体死亡危険性30-50%。
    →原則として妊娠出産は禁忌。
    →どうしても希望する場合は硬膜外無痛分娩
       →with NO吸入の報告も。
    ・いかなる麻酔方法を選択するか。



  11月から麻酔科に来てくれた研修医Y先生

周術期の内分泌機能

麻酔の問題集  担当:K先生

「ENDOCRINE FUNCTION」

問題1:コルチゾールの生理に関する問題

・糖質コルチコイド(糖質コルチコイド>電解質コルチコイド)
・15-25mg/day分泌されている。
・Corticosteroid binding globulin(CBG)と結合している。
・生理活性あるのは遊離のcortisolのみ。
・早朝に最高値、夜間に最低値となる日内変動

・糖質コルチコイドの作用
  ・代謝作用
    ・糖新生を促す。
      →タンパクを片っ端から糖に。
      →筋萎縮
  ・抗インスリン作用。
    →末梢の糖利用を抑制。血糖値↑、グリコーゲン合成↑
  ・脂肪分解↑。血中遊離脂肪酸↑。
  ・水利尿作用
    →糸球体濾過量増加作用。抗利尿ホルモンに拮抗。
  ・電解質作用
    →電解質コルチコイド活性
    →Na+を再吸収。H+とK+の分泌を促す。
  ・免疫に対する作用
    →末梢血中の白血球数↑↑
    →好中球遊走阻害→抗炎症作用
  ・末梢血中のリンパ球、好酸球、好塩基球数↓↓
    →抗アレルギー、抗炎症作用
  ・アラキドン酸カスケード阻害
  ・リソソームの安定化
  ・肉芽形成阻害
  ・骨
    →骨芽細胞抑制
  ・Ca吸収抑制作用
    →骨粗鬆症
  ・神経系
    ・過剰:精神的な不安定。不眠。集中力低下
    ・欠乏:易疲労感。脱力感。
・感染症診療でステロイドの使用
  ・相対的副腎不全に対する低容量ステロイド
    →内分泌疾患の既往、ステロイドの使用歴なければ、
     ショックを呈していないsepsis患者にステロイドはダメ。
  ・小児髄膜炎(H.influenzae type B)
  ・成人髄膜炎(Streptococcus pneumoniae)
   →細菌を破壊する事で生じる炎症カスケードをblock、難聴を防ぐ。
   →抗菌薬が入る直前か同時に投与しないと意味がなくなる。

問題2:コルチゾールの生理に関する問題Part2

 ・PONVとステロイド
  ・8 mg dexamethasoneはgradeAで術後鎮痛と悪心•嘔吐対策に有効。
    →高いエビデンスがある。

問題3:ステロイドカバーに関する問題
 ・ステロイド必要量
   →視床下部−下垂体−副腎系により調節される。
 ・ステロイド服用
   →視床下部−下垂体−副腎系の抑制が起こる可能性がある。
  ・ステロイドの投与量、中止期間が関与。
  ・視床下部−下垂体−副腎系が抑制されていると、
   手術時に本来分泌されるべきコルチゾール分泌が不十分になり、
   急性副腎不全となりショックを起こす事が懸念されてきた。
 ・ステロイドカバーの強いエビデンスは存在しない。
 ・個々の患者にあわせた適切な投与量、投与間隔を検討する必要。


問題4:レニン・アンジオテンシン系に関する問題

・レニン・アンジオテンシン系の全体像
・傍糸球体装置の役割
・腎臓低灌流によって起こる変化
  →傍糸球体装置:交感神経末端(β)↑↑
  →マクラデンサ:原尿中Cl-量↓↓
  →腎臓輸入細動脈の弛緩
  →レニン分泌
   →アンギオテンシノーゲン(肝臓)
   →アンギオテンシンⅠ
   →アンギオテンシンⅡ 
・交感神経系の緊張
 →アルドステロン分泌↑↑(副腎皮質)
    →Na+再吸収↑↑H+、K+排泄↑↑(集合管)
  →尿細管にてNa+,Cl-の再吸収とK+の排泄
  →動脈収縮
  →下垂体後葉での抗利尿ホルモン分泌の促進
  →腎灌流を改善する
・周術期のACEi、ARBについて

問題5:周術期の低血糖に関する問題



  11月から麻酔科に来てくれた研修医Y先生

術後鎮痛ガイドラインpart2

麻酔科勉強会  担当:S先生

「術後鎮痛ガイドラインpart2」

・前回のまとめ
 ・周術期の疼痛管理に関して麻酔科医は・・・
  ・他の職種と協力する。
  ・病院職員に対する継続的な教育と訓練に取り組む。
  ・知識と技量を身につけさせるように努めなる。
  ・周術期疼痛管理に関する問い合わせに応ずる。
 ・麻酔科医とその他の医療従事者は・・・
  ・統一化された実効的な方法に従う。、
  ・疼痛強度、疼痛管理法の効果の程度および副作用を
   定期的に評価し記録する。
 ・鎮痛法
  ・硬膜外腔
  ・クモ膜下腔オピオイド投与
  ・オピオイド静脈内投与によるPCA
  ・区域麻酔法
  →危険性と便益を十分検討した上でいずれかを選択する。
・可能な限り多角的(multimodal)な疼痛管理を実施すべき。
  ・禁忌でなければNSAIDs、COX1阻害薬またはアセトアミノフェン
  ・局所麻酔薬による区域麻酔を考慮する。
・ASA以外のガイドラインは?
 ・ASAのガイドラインは総説的で具体性にいまいち欠ける・・・
 ・高いエビデンスを求めすぎると仕方ないのかも・・・
 ・もう少し具体的なガイドラインはないものか?
・Postoperative pain management
      SIAARTI Recommendation 2010
  ・イタリアの麻酔科学会誌
  ・エビデンスによって推奨度をわけてある。
  ・もう少し具体的な指針を示している
・術後鎮痛とは?
  ・鎮痛は患者の基本的な権利である
  ・術後鎮痛により在院期間、費用、
   合併症の発生を抑える効果がある(level A)
  ・麻酔科医は術後期間に対する責務と責任を
   必ずしも持っているとはいえず、
   これが術後鎮痛への専門アプローチを困難にしている
   主要な原因である
・Acute Pain Service
  ・術後鎮痛にはAcute Pain Servece(APS)の設立が推奨される
                         (level A)
  ・APSの主導者は麻酔科医が適任(level D)
  ・APSにより嘔気嘔吐といった合併症も減少(level C)
・理想的なAPS
  ・24時間体制の麻酔科医コンサルトの受付
  ・プロトコルの共有・アップデートに努める
  ・継続的な鎮痛に関する医学教育の実施
  ・体系的な痛みの評価
  ・プロトコルの効果と安全面に関するデータ収集
  ・一年に一度のプロトコルの見直し
・アセトアミノフェン
  ・大きな副作用がなく、十分な効果が得られる(level A)
  ・肝不全患者にも肝機能をモニターすれば使用可能(level B)
  ・モルヒネの消費を抑える(level A)
  ・アセトアミノフェン+トラマドールの方が
   アセトアミノフェン+コデインよりも効果がある(level B)
・NSAIDS
  ・中等度の痛みに適応があり、
   麻薬との併用で麻薬消費量を減らす(level A)
  ・Coxib系薬剤
    →虚血性心疾患・脳血管障害・慢性心不全患者への
     使用は確立されていない(level B)
      →Coxib系全般ではなく種類によるかも
・麻薬性鎮痛薬
  ・麻薬の有害事象は用量依存性
  ・嘔吐予防には・・・
    ・ドロペリドール
    ・デキサメタゾン
    ・オンダンセトロン
    ・プロポフォール
       が推奨される(level C)
  ・トラマドールの呼吸抑制はモルヒネよりも強い(level B)
    →モルヒネとの併用は推奨されない(level C)
  ・モルヒネは年齢を考慮して投与量を決定(level A)
  ・モルヒネのivPCAは持続投与は避ける(level A)
  ・モルヒネのivPCAは入院患者のみが適応(level A)
  ・モルヒネivPCAとNSAIDsの併用は40%麻薬必要量を減らす。
   アセトアミノフェンの併用は20%減らす
  ・レミフェンタニルを0.1γで使用するものICUなら可(level B)
  ・オキシコドンはPCA後の鎮痛および小手術での
   前投薬としても使用できる(level D)
  ・ケタミンは術後痛の強さを減らし(level A)、
   PONVの発生を減少させ(level B)、
   モルヒネの使用量を30-50%減らす
  ・周術期のガバペンチン・プレガバリンの使用も有効(level C)
・PCA
  ・ivPCAはVASで平均5/100と、通常の麻薬の静脈投与に比べて
   患者の満足度の高い鎮痛が得られる。(level A)
  ・ivPCAでも通常の投与法と比べ麻薬使用量は減らないが、
   副作用は軽減される。(level A)
・硬膜外麻酔
  ・術後鎮痛に関して・・・
    ・硬膜外麻酔の方が麻薬の全身投与よりも優れる(level A)
    ・低濃度の局所麻酔薬と脂溶性麻薬の併用が
     有害事象の点から最も優れている(level A)
・持続神経ブロック
  ・硬膜外麻酔より血腫・膿瘍といった
   重篤な有害事象が少ない(level A)
  ・上下肢の手術では硬膜外麻酔と同等の効果があり、
   ivPCAより効果がある(level A)
  ・重症患者の麻薬使用量を減らす(level C)
・日帰り麻酔患者
  ・IVルートからNSAIDsかモルヒネを単回投与
  ・術後すぐに経口に切り替える
  ・筋注は避ける
  ・Mild pain→局麻+NSAIDs orアセトアミノフェン
  ・Moderate  pain→上記+麻薬(なるべくoffに)
  ・Severe pain→上記+神経ブロック(持続も考慮)
・高齢者
  ・痛みの評価は単純に(4段階程度)
  ・麻薬量は1/2から1/3程度に減らす
  ・硬膜外麻酔の局所麻酔薬量・麻薬量も減量
  ・早期のリハビリ開始と元のADL復帰を目標に
・小児
  ・笑気と局所麻酔の併用(level A)
  ・アセトアミノフェンとNSAIDsともに麻薬使用量をへらす(level A)
  ・6ヶ月以下の患者の場合
    →NSAIDsは術後出血のリスクを増やす(level A)
  ・日帰り患者の場合も仙骨ブロックや末梢神経ブロックが有効
                           (level B)
・OSAS患者
  ・麻薬を減らす
  ・鎮静レベルのモニタリング
  ・CPAPの使用
  ・麻薬の持続投与は避ける
・麻薬常習者
  ・術前に「麻薬常習者」であることを認識する
  ・日常の麻薬量は減らさない
  ・麻薬を前投薬してタイトレーションしておく
  ・局所麻酔の併用
  ・最大量のNSAIDsとアセトアミノフェンの使用
  ・TCIを用いて最大量の麻薬を使用する(通常の2-3倍)
  ・出来るだけ早期に経口投与に切り替える
  ・オピオイドローテーションに加えα2作動薬、低容量ケタミンも考慮



      11月から来てくれた研修医H先生。

周術期の輸血

初期研修医勉強会  担当:K先生

「周術期の輸血」

・赤血球製剤
  ・保存:2~6℃で保存、21日間
  ・使用目的
   ・Hb補充
    →予想上昇Hb値=投与Hb量÷循環血液量
     ・赤血球濃厚液1パックのHb≒56~60g
     ・循環血液量≒70mL/kg
・血小板製剤
  ・保存:室温、水平震盪
   4日間(医療機関に搬送されてから1日未満)
  ・使用目的
  ・予想血小板増加数
    ・輸血血小板総数/循環血液量×1000×2/3
    ・通常1単位につき5000/μL
  ・感染のリスクが高い
・新鮮凍結血漿
  ・保存:‐20℃以下で保存、1年間
  ・使用目的
    ・凝固因子の補充
    ・凝固因子の血中レベルを20~30%あげるためには?
      →FFPは400ml~600ml必要
・アルブミン製剤
  ・膠質浸透圧の改善→高張アルブミン製剤
  ・循環血漿量の是正→等張アルブミン製剤
  ・50%以上の大量出血、低アルブミン血症、腎機能障害など
・出血時の輸液、輸血の目安
・周術期には?
  ・赤血球輸血
    ・目安:Hb値7~8g/dl
    ・冠動脈疾患、肺機能障害、脳血管障害では10g/dl以上に。
    ・過剰な輸血は予後を悪化させる
  ・血小板輸血
    ・術前、術中は5~10万/μlが理想
    ・術後は?
      >5万/μLでは適応なし
      <1万/μLでは予防投与することも
    ・血小板が減っていてもHIT、TTPは禁忌 
    ・血管損傷などの出血は外科的処置が優先
  ・新鮮血凍結血漿
     ・大量出血時の希釈性、消費性の凝固障害
     ・PT<30%  PT-INR>2.0
          ・APTT>基準の上限の2倍、<25%
     ・フィブリノゲン<100mg/dl
           +出血症状の確認を!  
     ・予防投与は意味がない
・輸血の副作用
  ・肝炎:1/10万人以下
  ・HIV:ほぼなし
  ・GVHD:ほぼなし
  ・溶血反応:軽症1/1,000~重症1/10,000
  ・アレルギー:1/1,000
  ・TRALI:1/20万
  ・TACO:1/5,000
  ・細菌感染:1/200万
・副作用
  ・輸血開始直後、5分後、15分後は患者の観察
  ・TACOは輸血速度の問題。
    →1単位を2~3時間かけて輸血することで予防できる
  ・緊急時の大量輸血
    →低体温障害、低Ca、高K、アシドーシスに注意
・アナフィラキシーショック
  ・輸血中止
  ・アドレナリン
       ・0.3mg~0.5mg(0.01%溶液3~5ml) i.v.
     ・2~8μg/minで持続静注
  ・循環血液量の補充
  ・持続性の低血圧にたいして
     ・ドパミン(5~15μg/kg/min)
       ・ノルアドレナリン(2~8μg/min)
・TRALI
  ・輸血に伴う死亡原因の第一位
  ・輸血開始後数時間以内の呼吸困難、肺水腫
  ・ただちに輸血中止
  ・呼吸管理
・敗血症
  ・2000年以降で関連性が高いと報告されているのは6例
    ・Streptococcus pneumoniea(血小板製剤 死亡)
    ・Bacillus cereus(赤血球製剤 生存)
    ・Yersinia enterocolitica(赤血球製剤 1例死亡2例生存)
    ・Staphylococcus aureus(血小板製剤 死亡)
  ・使用前に血液バッグが黒く変色していないか確認を!
・不適合輸血
  ・わずか5mlの輸血でも症状出現 
  ・突然の低血圧
  ・治療
    ①輸血中止
    ②輸液、ドパミン
     +検査
      →尿潜血、血漿の色、直接Coombs


Acute Pain Management in the Perioperative Setting

麻酔科勉強会  担当:K先生

「Acute Pain Management in the Perioperative Setting」

・このガイドラインで取り扱うのは?
  ・術後患者に生じる疼痛
  ・術後疼痛を軽減あるいは取り除くための、
   術前、術中、術後における活動
・ガイドライン目的
  1.周術期における急性疼痛管理の安全性と有効性を促進する。
  2.有害転帰のリスクを減少する。
  3.患者の機能的能力や、肉体的、精神的に健康な状態を維持する。
  4.周術期に急性疼痛を持つ患者の、生活の質を向上させる。
Ⅰ:周術期疼痛管理における施設の方針と体制
   1.医療従事者の教育と訓練
   2.患者アウトカムの監視
   3.監視内容の記録
   4.施設水準のモニタリング
    5.周術期疼痛管理を行う麻酔科医の24時間対応
    6.acute pain serviceの利用
 ・教育プログラムは、疼痛レベルとPONVを減少させ、
  患者満足度を上昇させるかもしれない。(Category B2)
 ・患者レベル、施設レベルでのアウトカムの監視や、
  麻酔科医の24時間対応に関する十分なエビデンスはない。
                      (Category D)
 ・疼痛アウトカムに関する記録は、
  十分に行われていないかもしれない。(Category B2)
 ・acute pain serviceは、周術期の疼痛を軽減するかもしれない。
                      (Category B2)
 ・Recommendations
  ・麻酔科医は他職種と協力し、
   継続的な教育活動に努めること。
  ・標準的、効率的な方法で疼痛管理を行い、
   その結果を監視、記録すること。
  ・麻酔科医は、周術期疼痛管理に関する問い合わせに
   いつでも対応すること。
  ・麻酔科医はAcute Pain Serviceの枠組みにならって
   周術期の鎮痛を行うこと。
Ⅱ:術前評価
 ・術前の疼痛に関する病歴聴取、理学所見、他科との協議に関する
  十分なエビデンスはない。(Category D)
 ・Recommendation
   術前評価において、疼痛に関する病歴、理学所見をとり、
   疼痛コントロールの計画を立てること。
Ⅲ:患者の術前準備
 1.離脱症候群を引き起こす可能性がある薬剤の調節または継続
 2.既存の疼痛や不安の軽減
 3.マルチモーダル鎮痛としての前投薬
 4.行動療法を含む、患者と家族への教育
 ・離脱症候群を引き起こす可能性がある薬剤の調節または
  継続に関する十分なエビデンスはない。(Category D)
 ・既存の疼痛軽減や、マルチモーダル鎮痛を目的とした
  術前治療に関する十分なエビデンスはない。(Category D)
 ・疼痛、鎮痛薬の使用、不安、在院期間における、
  患者と家族への教育効果ははっきりしない。(Category C2)
 ・Recommendations
  ・術前準備において、離脱症候群の予防、
   既存の疼痛コントロール、術前からの
   術後疼痛管理を考慮すること。
  ・麻酔科医は他職種と協力し、患者と家族に対して
   術後疼痛管理に関する教育を行うこと。
Ⅳ:周術期の疼痛管理テクニック
 1.Central regional opioid analgesia
 2.PCA with systemic opioids
 3.Peripheral regional techniques
・Recommendations
 ・麻酔科医は症例ごとにリスクとベネフィットを考慮し、
  種々の疼痛管理テクニックを用いること。
 ・疼痛管理に関するテクニックは、麻酔科医の技量や
  状況の安全域に応じて選択すること。
 ・特に持続投与法の際には、薬物の蓄積に注意すること。
Ⅴ:疼痛管理における マルチモーダルテクニック
 ・Recommendations
  ・可能な限り、マルチモーダルな疼痛管理を行うこと。
  ・有害事象のリスクは最小限にしつつ、
   効果的な投与量を決めること。
  ・薬剤の選択、投与量、経路、期間は症例ごとに決めること。
Ⅵ:患者群ごとの問題点
 1.小児
 2.高齢者
 3.重症患者、認知機能低下患者、その他の意思疎通が困難な患者
 ・高齢者は若年者と比べて、周術期に投与される
  鎮痛薬が少ないかもしれない。(Category B2)
 ・意思疎通が困難な患者特有の、疼痛評価や疼痛管理に関する
  十分なエビデンスはない。(Category D)
 ・Recommendations
  ・小児においても、発達に応じた疼痛管理を積極的に行う。
  ・高齢者には認知機能に応じた評価を行い、
   基礎疾患や、常用薬との薬物相互作用に注意すること。
  ・意思疎通が困難な患者では付加的な介入を考慮し、
   興奮状態が見られた場合には鎮痛薬の投与を検討すること。