2012年11月8日木曜日

術後鎮痛ガイドラインpart2

麻酔科勉強会  担当:S先生

「術後鎮痛ガイドラインpart2」

・前回のまとめ
 ・周術期の疼痛管理に関して麻酔科医は・・・
  ・他の職種と協力する。
  ・病院職員に対する継続的な教育と訓練に取り組む。
  ・知識と技量を身につけさせるように努めなる。
  ・周術期疼痛管理に関する問い合わせに応ずる。
 ・麻酔科医とその他の医療従事者は・・・
  ・統一化された実効的な方法に従う。、
  ・疼痛強度、疼痛管理法の効果の程度および副作用を
   定期的に評価し記録する。
 ・鎮痛法
  ・硬膜外腔
  ・クモ膜下腔オピオイド投与
  ・オピオイド静脈内投与によるPCA
  ・区域麻酔法
  →危険性と便益を十分検討した上でいずれかを選択する。
・可能な限り多角的(multimodal)な疼痛管理を実施すべき。
  ・禁忌でなければNSAIDs、COX1阻害薬またはアセトアミノフェン
  ・局所麻酔薬による区域麻酔を考慮する。
・ASA以外のガイドラインは?
 ・ASAのガイドラインは総説的で具体性にいまいち欠ける・・・
 ・高いエビデンスを求めすぎると仕方ないのかも・・・
 ・もう少し具体的なガイドラインはないものか?
・Postoperative pain management
      SIAARTI Recommendation 2010
  ・イタリアの麻酔科学会誌
  ・エビデンスによって推奨度をわけてある。
  ・もう少し具体的な指針を示している
・術後鎮痛とは?
  ・鎮痛は患者の基本的な権利である
  ・術後鎮痛により在院期間、費用、
   合併症の発生を抑える効果がある(level A)
  ・麻酔科医は術後期間に対する責務と責任を
   必ずしも持っているとはいえず、
   これが術後鎮痛への専門アプローチを困難にしている
   主要な原因である
・Acute Pain Service
  ・術後鎮痛にはAcute Pain Servece(APS)の設立が推奨される
                         (level A)
  ・APSの主導者は麻酔科医が適任(level D)
  ・APSにより嘔気嘔吐といった合併症も減少(level C)
・理想的なAPS
  ・24時間体制の麻酔科医コンサルトの受付
  ・プロトコルの共有・アップデートに努める
  ・継続的な鎮痛に関する医学教育の実施
  ・体系的な痛みの評価
  ・プロトコルの効果と安全面に関するデータ収集
  ・一年に一度のプロトコルの見直し
・アセトアミノフェン
  ・大きな副作用がなく、十分な効果が得られる(level A)
  ・肝不全患者にも肝機能をモニターすれば使用可能(level B)
  ・モルヒネの消費を抑える(level A)
  ・アセトアミノフェン+トラマドールの方が
   アセトアミノフェン+コデインよりも効果がある(level B)
・NSAIDS
  ・中等度の痛みに適応があり、
   麻薬との併用で麻薬消費量を減らす(level A)
  ・Coxib系薬剤
    →虚血性心疾患・脳血管障害・慢性心不全患者への
     使用は確立されていない(level B)
      →Coxib系全般ではなく種類によるかも
・麻薬性鎮痛薬
  ・麻薬の有害事象は用量依存性
  ・嘔吐予防には・・・
    ・ドロペリドール
    ・デキサメタゾン
    ・オンダンセトロン
    ・プロポフォール
       が推奨される(level C)
  ・トラマドールの呼吸抑制はモルヒネよりも強い(level B)
    →モルヒネとの併用は推奨されない(level C)
  ・モルヒネは年齢を考慮して投与量を決定(level A)
  ・モルヒネのivPCAは持続投与は避ける(level A)
  ・モルヒネのivPCAは入院患者のみが適応(level A)
  ・モルヒネivPCAとNSAIDsの併用は40%麻薬必要量を減らす。
   アセトアミノフェンの併用は20%減らす
  ・レミフェンタニルを0.1γで使用するものICUなら可(level B)
  ・オキシコドンはPCA後の鎮痛および小手術での
   前投薬としても使用できる(level D)
  ・ケタミンは術後痛の強さを減らし(level A)、
   PONVの発生を減少させ(level B)、
   モルヒネの使用量を30-50%減らす
  ・周術期のガバペンチン・プレガバリンの使用も有効(level C)
・PCA
  ・ivPCAはVASで平均5/100と、通常の麻薬の静脈投与に比べて
   患者の満足度の高い鎮痛が得られる。(level A)
  ・ivPCAでも通常の投与法と比べ麻薬使用量は減らないが、
   副作用は軽減される。(level A)
・硬膜外麻酔
  ・術後鎮痛に関して・・・
    ・硬膜外麻酔の方が麻薬の全身投与よりも優れる(level A)
    ・低濃度の局所麻酔薬と脂溶性麻薬の併用が
     有害事象の点から最も優れている(level A)
・持続神経ブロック
  ・硬膜外麻酔より血腫・膿瘍といった
   重篤な有害事象が少ない(level A)
  ・上下肢の手術では硬膜外麻酔と同等の効果があり、
   ivPCAより効果がある(level A)
  ・重症患者の麻薬使用量を減らす(level C)
・日帰り麻酔患者
  ・IVルートからNSAIDsかモルヒネを単回投与
  ・術後すぐに経口に切り替える
  ・筋注は避ける
  ・Mild pain→局麻+NSAIDs orアセトアミノフェン
  ・Moderate  pain→上記+麻薬(なるべくoffに)
  ・Severe pain→上記+神経ブロック(持続も考慮)
・高齢者
  ・痛みの評価は単純に(4段階程度)
  ・麻薬量は1/2から1/3程度に減らす
  ・硬膜外麻酔の局所麻酔薬量・麻薬量も減量
  ・早期のリハビリ開始と元のADL復帰を目標に
・小児
  ・笑気と局所麻酔の併用(level A)
  ・アセトアミノフェンとNSAIDsともに麻薬使用量をへらす(level A)
  ・6ヶ月以下の患者の場合
    →NSAIDsは術後出血のリスクを増やす(level A)
  ・日帰り患者の場合も仙骨ブロックや末梢神経ブロックが有効
                           (level B)
・OSAS患者
  ・麻薬を減らす
  ・鎮静レベルのモニタリング
  ・CPAPの使用
  ・麻薬の持続投与は避ける
・麻薬常習者
  ・術前に「麻薬常習者」であることを認識する
  ・日常の麻薬量は減らさない
  ・麻薬を前投薬してタイトレーションしておく
  ・局所麻酔の併用
  ・最大量のNSAIDsとアセトアミノフェンの使用
  ・TCIを用いて最大量の麻薬を使用する(通常の2-3倍)
  ・出来るだけ早期に経口投与に切り替える
  ・オピオイドローテーションに加えα2作動薬、低容量ケタミンも考慮



      11月から来てくれた研修医H先生。