2012年11月29日木曜日

短腸症候群

ICU勉強会  担当:T先生

「短腸症候群」

・Short bowel syndrome(SBS)
  ・小腸の広範囲切除による吸収不良症候群。
・原因疾患
  ・クローン病、悪性腫瘍、放射線治療後、血流不全など
・経口摂取を開始できるかどうか
  →残存小腸長が重要な要素
・中心静脈栄養について
  ・残存小腸が
    ・180cm以下ならSBSになるかかも
    ・60cm以下ならPNが必須に
・残存小腸の変化
  ・空腸は大部分の栄養素の主な消化吸収部位
    →空腸切除によって栄養吸収が有意に低下
    →回腸の絨毛の長さが伸びる。
    →吸収機能が亢進し、適応していく。
    →結果として栄養吸収が徐々に改善する。
・回腸
  ・B12,胆汁酸の吸収
  ・60cm以上切断すると低下する
 ・回腸の切除が100cm以下
   →汁酸の喪失は肝臓が代償する 
   →吸収されなかった胆汁が結腸で過剰となり下痢に。
 ・100cm以上の切断
   →胆汁酸濃度が下がる。
   →十二指腸での脂肪と脂溶性ビタミンの吸収が低下
   →ビタミンB12および胆汁酸は回腸で吸収される。
  ・回腸を100cm以上切除した場合
    →重度の下痢および吸収不良が起こる。
    →残存空腸の代償性適応は認められない。
    →脂肪,脂溶性ビタミン,ビタミンB12の吸収不良
・回盲弁の消失
  →小腸通過時間が短くなる
  →栄養吸収障害が起こる
 ・結腸の細菌が回腸末端にトランスロケーション
  →ビタミンB12や胆汁酸の吸収が落ちる
  →下痢になる
・結腸内の非吸収胆汁酸
  →分泌性下痢の原因となる。
・切除部位では?
 ・結腸温存
  →水分および電解質喪失が有意に減少する。
 ・回腸末端および回盲弁の切除
  →腸内細菌異常増殖の素因となることがある。

・管理(早期)
 ・水分、電解質のモニタリング。
 ・初めのゴール
   →PNで電解質異常と水分異常を防ぐこと
   ・H2blocker投与で胃酸の過分泌を防ぐ
     →pHの変化による脂質の吸収が低下する
   →安定したら経腸栄養を再開する
   ・ソマトスタチンが消化液の分泌を減らす。
 ・状態が安定し排便量が2L/dayになったら
   →Naおよびブドウ糖の経口等浸透圧液を徐々に開始。
   →後半切除患者は生涯TPN
 ・食後に下痢をする患者は食事1時間前に止瀉薬。
   ・コレスチラミン2-4gを毎食時に。
 ・ビタミンB12欠乏患者は1日1回筋注。
 ・Ca、Mgも補充
 ・H2RA、PPI
・栄養は?
 ・持続的腸管栄養か少量頻回投与
 ・PNのテーパリング
・クスリ
 ・H2blockerなどは胃液膵液の過剰分泌を防ぐ。
 ・ロペラミド
・クスリの吸収
 ・薬剤はほとんどが胃や近位小腸で吸収される
   →効果が保たれることが多い
 ・腸液コーティングはやめとくべし
・手術療法
 ・小腸移植