2018年2月16日金曜日

ナトリウム異常

ICU勉強会  担当:C先生

「Na異常」

・ナトリウム基準値:135~150mEq/L 
 ・むしろ体液コンパートメント間の水分分布異常を指す。
 ・集中治療室におけるナトリウム異常の発症率
   →高・低ともに15~30%。
   ・電解質異常のなかでも最も遭遇しうる。
 ・ナトリウム異常はmortalityを上昇させる。
・高Na血症
 ・高Na血症の定義
   →血清Na濃度145mmol/L以上
  ・体内水分量が少ない状態
  ・体内総Na量が多い状態
 ・症状
  ・細胞内脱水、高浸透圧
  ・脳機能障害
  ・糖利用障害
  ・横紋筋融解
  ・左室機能低下
 ・急性:48時間未満、慢性:48時間以上
  ・慢性高Naを急激に補正すると・・・
    →脳浮腫:Na細胞内外を自由に移動できず、
         急激な低Naになると浸透圧の差で細胞内へ水が移動し、
         細胞浮腫がおこり症状がおこる。
 ・リスク因子
  ・医原性(Na過剰投与)
  ・利尿薬(マンニトール)
  ・中枢性尿崩症(中枢神経障害・術後)
  ・腎性尿崩症(低Ketc)
  ・薬剤(リチウムetc)
 ・治療
  ・発症時期が重要
  ・急性症候性の場合は、2~3mmol/L/時で補正する。
  ・慢性の場合は、0.5mmol/L/時で補正する。
  ・いずれの場合も体液ボリューム評価が大切である。

・低Na血症
 ・低Na血症の定義
    →血清Na濃度<135mmol/L
  ・体内総Na量と比較して相対的に水の量が過剰にある状態
 ・症状
  ・軽度(130~135)、中度(125~129)、重症(125以下)
   ・中程度:頭痛、悪心嘔吐、混乱
   ・重度:昏睡、痙攣、傾眠、無呼吸
 ・リスク因子
  ・頭部外傷
  ・脳出血
  ・急性髄膜炎
  ・Hardy手術
  ・一般外科手術
  ・薬剤(カルバマゼピンetc)
  ・加齢(腎血流低下)
 ・高張性・等張性
   →高脂血症・コレステロールなどの偽性低Na血症とよばれているもの
    高血糖など有効浸透圧物質による細胞内から外への水の引きこみなど。
 ・低張性
   ・細胞外液量hypo
     →嘔吐下痢などの腎外Na喪失
      中枢性のsalt wastingや利尿薬に伴う腎性のNa喪失
     もしくは炎症反応にともなうサードスペースへの喪失
   ・細胞外液量normalで最も代表的なのはSIADH
   ・細胞外液量hyrerの代表は心不全
 ・SIADH(SIDH) 
  ・ADHが異常に分泌される病態。
  ・現在は用語としてSIDH(syndrome of inappropriate antidiuresis)を使用
  ・VV2受容体の変異や薬剤などによる何らかの作用過剰が原因
・治療
 ・ECFの量によっても治療は様々
   ・例えば脳出血後CSWはhypoであり0.9%NaCl補正
 ・SIADHではeuvolumeであり3%NaCl補正
  ・慢性か急性かわからないとき
   →浸透圧性脱髄症候群を考慮して慢性として治療
・浸透圧性脱髄症候群
 ・メカニズム
   血清低Na⇒細胞内浮腫⇒脳細胞膨化⇒
   有機浸透圧物質排出⇒順応⇒急速Na補正⇒脱髄
 ・charactor
  ・重症低Na血症かつNa補正濃度が速い患者
    →アルコール多飲・肝硬変・腎不全・栄養障害etc
 ・症状
  ・意識変容、四肢麻痺、痙攣、嚥下障害、構音障害、眼球運動障害
 ・検査
  ・MRI(T2/Flair high)
 ・治療
  ・Naを再度低下させる? 、ステロイドパルス、血漿交感

2018年2月2日金曜日

術前肝機能評価

初期研修医勉強会 担当:N先生

「術前肝機能評価」

・肝機能障害を持つ患者
  →手術・麻酔関連の合併症のリスクが高い。
  ・非肝臓手術の1カ月後の死亡率
    →肝硬変患者:非肝硬変患者=16.3%:3.5%
・リスクの高さ
  →肝疾患の種類や重症度・術式・麻酔方法によって異なる。
・スクリーニングは必要?
  ・健康な成人に対するルーチンの肝酵素測定は薦められていない。
  ・予期しない肝酵素異常が指摘されるのは0.3%
  ・術前の肝酵素測定の0.1%しか術前のマネジメントを変化させない。
  ・臨床症状のない肝障害で周術期死亡率は増加しない。
 →病歴聴取や身体診察の方が重要!
・病歴聴取、身体診察
 ・病歴聴取
   輸血歴・違法薬物・不特定多数との性交渉
   家族歴・飲酒歴・内服薬
 ・身体診察
   黄疸・掻痒感・腹水・クモ状血管拡張・脾腫などなど
・手術を延期すべきなのは?
 ・急性or劇症肝炎(アルコール性・ウイルス性)
 ・重症慢性肝炎
 ・重症凝固能異常
 ・そのほか急性腎障害や心不全や低酸素血症など
 ・肝臓外の合併症がある場合は待機的手術を延期すべき。
・Child-Turcotte-Pugh score
 ・Child-Pugh scoreは門脈系の手術だけでなく、
  その他の非肝臓手術の予後予測にも有用という報告が多数ある。
   ・腹部手術を受けたアルコール性肝硬変患者の周術期死亡率
    →A:B:C=10%:31%:76%
   ・腹部手術(ほとんど腹腔鏡手術)を受けた肝硬変患者の死亡率
    →A:B:C=2%:12%:12%
・MELD(the Model for End-stage Liver Disease) score
 ・Child-Pughスコアには腹水や脳症など主観の入り込む余地が残る。
 ・MELD scoreはより客観的な指標となっている。
 ・MELD scoreの構成要素は、Bil,PT-INR,Creの3項目のみ。 
 ・MELD scoreとChild-Pugh scoreの相関は高い。
・MELD scoreはどんな風に使われている?
 ・欧米では、客観性を活かして脳死肝移植の優先権として。
 ・本邦では、肝移植前の肝障害度評価としてChild-Pughと併用で。
 ・今の所は肝移植以外の場面ではあまり使われていない。
 ・移植以外の手術の予後予測にも有用と判明している。
   →今後Child-Pughに代わる客観的な指標となり得る。