2012年10月23日火曜日

ACE阻害薬とARBの注意点

ICU勉強会  担当:K先生

「ACE阻害薬とARBの注意点」

・ACEi、ARBの適応
  ・高血圧
  ・CKD
  ・心不全
  ・(血管疾患)
  ・(糖尿病)
・副作用
  ・アンジオテンシンⅡの減少、阻害によるもの
    ・低血圧、急性腎不全、高K血症、妊娠中の問題
    ・ARBでも起こる。
  ・キニンの増加が関与(ACE=キニナーゼ)
    ・咳、血管性浮腫、アナフィラキシー様反応
    ・ARBで少ない。
・低血圧
  ・脱水状態の場合
    →利尿薬の休薬
  ・うっ血性心不全の場合
    →少量分割投与
  ・ACE阻害薬よりARBで多い
・GFR低下
  ・両側腎動脈狭窄
  ・高血圧性腎硬化症
  ・心不全
  ・CKD
    →3~5日目に腎機能チェック
  ・高K血症
  ・30%以上のクレアチニン上昇
    →この2つを認めたら中止
・高K血症のリスク
  ・腎不全
  ・糖尿病
  ・K保持性利尿薬
  ・NSAID
  ・高齢者
・空咳
  ・ACE阻害薬で5~20%に出現
  ・投薬から1~2週間で出現
  ・休薬から1週間以内に改善
  ・ACE阻害薬の再投薬で高い再発率
  ・ARBを考慮
・ARBは悪くなかった?
  ・ARBで発ガン率が上昇する?
    →否定
  ・ARBで心筋梗塞を発症する?
    →否定
・ACEi vs ARB
  ・低血圧はARBが多い
  ・咳と血管性浮腫はACE阻害薬が多い
  ・ちなみに、基本的に併用はダメ(副作用↑)



高齢者に対する麻酔

麻酔の問題集  担当:N先生

「高齢者に対する麻酔」

問題1:高齢者と腎機能に関する問題。

・加齢に伴って・・・
 ・腎皮質は20-25%減少
 ・80歳までに糸球体は50%減少
 ・GFRは40歳以降、1ml/min/yrずつ低下
    →個人差が大きい。
    →実際は計算上ほどは低下していないことが多い。
 ・60歳以降は年齢に合わせて薬物投与量を調節すべき。
 ・Naや水分の調節が低下
 ・口渇感もにぶくなる

問題2:術後精神機能異常に関する問題

・Postopretive delirium (POD)
  →手術後に発症するせん妄
・Postoperative cognitive dysfunction (POCD)
  →手術に関連して起こった認知機能の低下
・Postoperative deliriumについて
  ・Emergence:術後24hr以内に発症するもの
     ・主として麻酔からの覚醒の際に起こるの
     ・数分~数時間
  ・Interval:術後2日目以降に発症するもの
     ・DCTが動くやつ
     ・数時間~数日
・Postoperative cognitive dysfunctionについて
  ・認知機能とは・・・
    ・学習、記憶、言語、知覚、注意、抽象思考など。
  ・認知機能のどれかが術後低下した場合
  ・性格の変化や情動の変動性の亢進なども
  ・可逆性、長くても1年以内で改善することが多い
  ・麻酔方法・術後鎮痛方法の影響はなさそう
  ・原因ははっきりしていない
    →低酸素? 脳虚血? 中枢神経系の炎症?
     神経伝達物質の異常? 遺伝学的影響?
     高cortisol?
  ・Risk factor
    ・高齢
    ・大手術(心臓手術で多い)
    ・周術期の身体・精神機能障害
    ・アルコール多飲者
    ・high ASA score
    ・低い教育レベル
    ・strokeの既往
    ・POD
・PODとPOCDの相違点
  ・POD
    ・原因不明
    ・リスク因子はいくつか同定
    ・経過が短い
    ・症状をもとに診断
  ・POCD
    ・原因不明
    ・リスク因子はいくつか同定
    ・長期にわたる
    ・認知機能検査で
・POCDの診断
  ・診断は神経心理学検査による
  ・患者の自覚症状と検査所見の相関は乏しい
  ・術前・術後に検査の実施が必要
  ・標準となる検査、基準のstandardが未確定
  ・学習効果、floor effectなどの問題点
・神経心理学検査のチェック項目
  ・Level of consciousness (arousal)
  ・Attention and concentration
  ・Memory (immediate, recent, and remote)
  ・Language
  ・Visual spatial perception (視空間認知)
  ・Executive functioning
  ・Mood and thought content
  ・Praxis
  ・Calculations
・神経心理学検査の実際
  ・口頭での質問や絵、立体を見せて反応を見る。
  ・MMSEや長谷川式認知症スケール
  ・性格検査
  ・脳障害後の高次機能障害の評価
 →一つの検査方法で同時に複数の機能の検査が可能
 →POCDではいくつかの神経心理学検査を組み合わせて評価する。
・Attention & concentrationのテスト
  ・Digit symbol test
  ・Letter cancellation test
・Memoryのテスト
  ・Rey-Osterrieth complex figure
・Visual spatial perceptionについて
 ・perceptual and constructional abilities
  ・失認
   →ある一つの感覚を介して対象物を認知できない障害
  ・失行
   →運動可能であるにもかかわらず合目的運動ができない状態
 →copying/drawing ,building/assembly tasks
 ・Clock drawingなど。
・Praxis
 ・実践?(process)
 ・the performance of learned motor movements
      in the absence of primary deficits
             in motor and spatial abilities
 ・障害→観念失行
   ・個々の運動はできる
   ・複雑な一連の運動連鎖が必要な行為が障害される
   ・要素行為は正しいが順序・対象を誤る
・Mood and thought content
 ・感情、思考形式
 ・性格検査や、うつ病スクリーニング検査が用いられる
   ・Minnesota Multiphasic Personality Inventory
   ・Beck Depression Inventory
   ・Geriatric Depression Scale
   ・Neuropsychiatric Inventory
・Executive functioning
 ・他の認知過程を制御する認知過程
 ・決断、計画、推論、問題解決、multi-tasking、working memoryなど
 ・複合的な検査機能をもった神経心理学検査で調べる
・その他
 ・Visual Verbal Learning Test
 ・Concept Shifting Test
 ・Stroop Colour Word Interference Test
 ・Letter-Digit Coding Testなど。



     SGカテ挿入のシミュレーション中

2012年10月18日木曜日

奮闘!初期研修医Dr


今日も麻酔科ローテーションの初期研修医の先生方が
指導医の指導のもと、麻酔科研修に勤しんでいます。
現在麻酔科ローテーション中の研修医の先生方に、
気に入った薬剤を手に写ってもらいました。



セボフルラン

ヘスパンダー

マンニトール

安息香酸チンキ


研修医の先生方、これからも頑張ってください!

セミナー予演会

「セミナー予演会」


「第4回 若手医師のための麻酔科診療最前線セミナー」
  ・平成24年10月20日(土)14:15-17:00
  ・ブリーゼプラザ803・804会議室



「全身麻酔中にメトヘモグロビン血症を診断し、
   術後在宅酸素療法(HOT)から離脱し得た一例」




      H先生、発表頑張ってください。

麻酔器いろいろ

初期研修医勉強会  担当:U先生

「麻酔器いろいろ」

・麻酔器の歴史
  1867 鼻と口を覆う笑気ガス吸入器
     クロロホルムと空気の%を調節できる吸入器
  1872 笑気を鉄筒に詰めることに成功
  1877 エーテル濃度を調節する携帯式麻酔器
  1882 エーテルクロロホルム麻酔器
  1887 笑気・酸素の混合吸入器
  1898 濃度調節可能な麻酔器
  1910 間欠的流量調節可能な笑気酸素麻酔器
  1912 麻酔器に流量計がつく
  1924 ソーダライムが取り付けられる
     麻酔バッグの圧による作動開閉弁
  1926 循環式麻酔呼吸回路、二酸化炭素吸収装置
     日本にも麻酔器導入
・麻酔器ははじめから小型だった
  ・ちなみに初期の心電図は2部屋使うほど大きかった
・麻酔器の構成
  ・ガス供給源(中央配管、個別供給)
  ・ガス流量計
  ・気化器
  ・麻酔回路
  ・二酸化炭素吸収装置
  ・人工呼吸器
  ・警報装置
・ガス供給源
  ・中央配管方式
     ・酸素→液化ガス(-150℃~175℃)in大容量ボンベ
     ・亜酸化窒素→高圧ボンベ内で液体として保存
     ・治療用空気→圧縮ガス、合成空気
     ・供給圧は3-5気圧、流量計では2気圧
  ・ボンベ方式
・ガス供給間違え防止
  ・中央配管アウトレット、麻酔ガスホース接続
    →ピンインデックス方式、カラーインデックス方式
  ・配管
    →酸素:緑、空気:黄色、亜酸化窒素:青
  ・ボンベ
    →酸素:黒、二酸化炭素:緑、亜酸化窒素:ねずみ色
・流量計
  ・ニードル弁、浮子、ノブ、バルブ止め
  ・ロタメーター型の浮子→上端
  ・球形の浮子→中央
・気化器
  ・回路内気化器、回路外気化器がある
  ・回路外気化器が現在主流
  ・流入する新鮮ガスは80%以上がバイパス
  ・気化室には20%以下が分配される
・呼吸回路
  ・半閉鎖循環式麻酔回路
  ・閉鎖循環式麻酔回路
  ・部分的再呼吸法
  ・非再呼吸法
 →半閉鎖循環式麻酔回路が多く用いられている
・循環式麻酔回路
  ・吸気弁・呼気弁
  ・二酸化炭素吸収装置
  ・蛇管
  ・Yピース
  ・呼吸バッグ
  ・ポップオフバルブ
  ・余剰ガス排出装置
・酸素フラッシュ回路
  ・多量の100%酸素(35-70L/分)を呼吸回路へ
  ・流量計や気化器は通らない
    →吸入麻酔薬濃度は希釈される
  ・緊急的に加圧バックを膨らますときに使用する
  ・フラッシュを使用したリークテスト
    →通常回路のリークは検知できない。注意。

ブレイク
「鳩の撃退法」

・麻酔器の大手メーカー・販売元
  ・ドレーゲル
  ・GE
  ・アコマ医科工業
  ・アイ・エム・アイ
  ・木村医科器械
  ・アネス
・当院手術室は?
  →18室、Datex-Omeda社のAestivaで統一。
・救急外来には?
  →3次救急初療室
    ・2番:Datex ohmeda aestiva 5
    ・3番:Drager Fabius GS
    ・4番:Drager Fabius Tiro
・人工呼吸器の問題点・危険性
  ・回路のはずれ
    →もっともはずれやすいのはYピース
  ・そこに対するモニター
    ・カプノグラフィー
    ・上降式べローズ(回路が外れると上がらない)
    ・胸部の運動と心窩部の観察
    ・回路内圧モニター
    ・換気量モニター
・呼吸回路の閉塞
  →肺・気道の圧外傷の原因となる!!
  ・チューブトラブル(折れ曲がり、噛まれる、分泌物など)
  ・不適切な機器が回路内にある
  ・人工呼吸器のべローズのリーク
  ・人工呼吸器の余剰ガス開放弁の故障
  ・バルブの開放が不十分
・人工呼吸中の急変(DOPE)
  ・Displacement:チューブの位置の異常
  ・Obstruction:挿管チューブの閉塞
  ・Pneumothorax:緊張性気胸
  ・Equipment failure:人工呼吸器の異常
 →私は「いきつめ」で覚えています。
   ・い(位置の異常)
   ・き(気胸)
   ・つ(詰まった)
   ・め(メカの異常)
・急変時には?
   ・指導医を呼ぶ!!
   ・用手換気に切り替える
   ・呼吸音を聴取する
   ・気管内チューブから吸引してみる
   ・喉頭鏡直視下に確認・再挿管


2012年10月16日火曜日

AAAと硬膜外麻酔

麻酔科勉強会  担当:A先生

「AAAと硬膜外麻酔」

・硬膜外麻酔のメリット
  →分節的な神経ブロック
   ・良好な鎮痛
   ・交感神経遮断
  ・呼吸器合併症の減少
  ・虚血性心イベント減少
  ・出血量低下
  ・血栓症低下
  ・消化管運動上昇
  ・ストレスホルモン上昇抑制
  ・免疫低下抑制
  ・創部感染低下
・AAAに対して硬膜外麻酔はあり?なし?
  →現状はControversial
・腹部大動脈瘤手術時の硬膜外併用に関するアンケート結果
               (麻酔 2009:58:363-377)
・AAA手術件数別施設数
  →年間10件未満、月に1例前後が2/3を占める。
・AAAに硬膜外麻酔の併用
  →64%が常時併用
  →場合により併用21%
  →併用しない14%
・硬膜外麻酔をやらない理由は?
  →合併症、特に硬膜外血腫
・硬膜外血腫の発生頻度
  →アスピリン投与単独では血腫の発生率を上昇させない
  →血管損傷は大きく発生率を上昇させる
  →ヘパリンも1時間以降では特に大きくない
・硬膜外穿刺の基準
  ・血小板数:8万/mm³
  ・PT-INR:<1.5
  ・APTT:正常上限(A&A 1994;79:1165-77)
・硬膜外麻酔の基準
  ・抗血小板薬
     →NSAIDs:リスクなし
     →チクロピジン:14日間休薬
     →クロピドグレル:7日間休薬
  ・未分画ヘパリン(皮下注)
     →1日2回投与<10000単位ではリスクなし
  ・未分画ヘパリン(静注)
     →最終投与4時間後に穿刺・抜去
      穿刺後1時間以降に投与可
  ・低分子ヘパリン
     →最終投与12時間後に穿刺・抜去
  ・ワルファリン
     →穿刺・抜去前にINR正常を確認
  ・フォンダパリヌクス
     →カテーテル挿入は避ける
  ・直接トロンビン阻害薬
     →データなく穿刺は避ける
  ・血栓溶解薬
     →禁忌
  ・薬草、漢方薬
     →データなし 
・腹部大動脈瘤手術時の硬膜外併用に関するアンケート結果
               (麻酔 2009:58:363-377)
・硬膜外麻酔をしない基準(最多のもの)
  ・血小板数<8万
  ・PT-INR>1.40
  ・APTT>40 sec
・カテーテル挿入時期
  →前日、導入前の2つが多い。
・硬膜外カテーテル挿入からヘパリン化までの時間
  →2時間以下、か12-24時間が多い。
・各施設での工夫
 ・研修医に穿刺させない
 ・穿刺は熟練者が行う
 ・穿刺回数は2回までとする
 ・硬膜外に固執せず無理はしない


ブレイク
「ブリディオンについて」
 ・当院のブリディオンリバース率は86.6%(9月)
 ・ブリディオン200mg≒エスラックス60mgらしい。

・当院の現状(2011年8月~2012年7月)
  ・AAA 31症例(うち緊急5例)
    →施設としては、やや多い部類。
  ・圧倒的に男性が多い(90%)
  ・術前合併症が多い。
  ・麻酔手技
     ・CV挿入45%
     ・FDLカテ挿入16%(緊急は全例)
     ・TAP block 42%
  ・手術時間
     ・3~4時間が多い。2時間台で終わる例も。
  ・食事開始時期
      ・POD1で飲水してPOD2で食事開始が多い。
  ・緊急手術は術後合併症リスクが高い。
・もし硬膜外麻酔をするなら・・・
 ・血小板数、PT-INR、APTTが基準値以上
 ・手術前日に施行
 ・熟練医が施行
 ・穿刺回数の制限
    +心臓血管外科Drとの交渉
・AAAと硬膜外麻酔併用の予後
 →有意差なしの論文が多いが。。。
 →心血管合併症、呼吸不全、脳血管障害、挿管期間、
   ICU滞在日数がそれぞれ少ないとした論文も。
          (Ann Surg 2001, 234:560-569)
・予後以外でのメリット
 ・術後の患者満足度が大きい
 ・術直後の白血球数低下
 ・腸管ガス排出までの時間短縮。
 ・在院日数短縮の報告も。
 ・前日施行では手術室見学も兼ねて不安軽減

・これからどうするか。
 ・短時間作動型麻酔薬の登場、IV-PCA、神経ブロック
   →以前より硬膜外麻酔の必要性は減ってきている。
 ・硬膜外血腫が生じた場合への対応
   →硬膜外麻酔には消極的にならざるをえない。
 ・ICUでは?
   ・腸管運動低下への対応
   ・鎮痛コントロール難渋
       →硬膜外麻酔も考慮に値する。
 ・術前麻酔科外来で患者に提案し決めてもらう方法も。




術中低血圧について

初期研修医勉強会  担当:I先生

「術中低血圧について」

・血圧モニター
  ・触診法
  ・聴診法
  ・自動血圧計
  ・観血的動脈圧測定
    →動脈内にカテーテル留置
    →圧力をトランスデューサーで電気信号に変換
・間欠的血圧計の測定原理
  ・血管内を血液が流れていると仮定
  ・そこに管を差し込めば、管の先から血液が流れ出る
  ・その先に指先を押し当てれば、指先に圧力を感じる
  ・指の代わりに「圧力を電気信号に変換するセンサ」を装着。
  ・血圧を電気的に観察できる
・血圧波形
  ・立ち上がりが急峻なほど左室機能が良い
  ・圧波形の面積は心拍出量を反映
  ・dicrotic notchは末梢血管抵抗を反映
  ・呼吸性変動は循環血液量不足の場合に起こる
・平均血圧=脈圧/3+拡張期圧
・平均血圧は80mmHgを目標に(麻酔科研修チェックノート)

ブレイク
「イエローストーン国立公園について」

・Intraoperative Hypotension and 1-Year Mortality
                  after Noncardiac Surgery
     Anaesthesiology December 2009 Volume 111
                     Issue 6 pp 1217-1226

・術中低血圧(intraoperative hypotension;IOH)
  →遷延すれば手術後の転帰が悪化する可能性がある。
・しかしIOHの定義は様々、正確な評価もされていない
・一年後死亡率に影響を与える術中低血圧は?

・Method、Result、discussionなど。

・まとめ
  ・IOHと1年後死亡率の因果関係は明らかにならなかった
  ・CART分析
  ・IOHと1年後死亡率の相関
     →血圧閾値と低血圧持続時間によって決まる
  ・血圧閾値だけでなく低血圧持続時間も重要
  ・患者、手術特性、年齢、術式などもIOHと転帰に影響

というわけで、
  ・手術時の低血圧閾値、持続時間の両方が転帰に影響
  ・低血圧が持続すると転帰が悪化する可能性
    →IOHには留意


2012年10月11日木曜日

麻酔の問題集(Airway Management)

麻酔の問題集(Clinical Anesthesia)  担当:T先生

「Airway Management」


第1問:術前酸素投与に関する問題

・肺の機能的残気量が酸素の貯蔵場所:30ml/kg
・100%酸素5分間の吸入
  →SpO2が90%以下に低下するまで数分間
  →この間の無呼吸時間が許容
・前酸素化=脱窒素化
・迅速導入
 →バックマスク換気を行わない
 →事前に酸素化を行う必要

第2問:術前酸素投与に関する問題Part2

・room airで導入すると2分間でSpO2は90%以下になる
・FiO21.0で5分間前酸素化を行うと10分間に伸びる
・5分間の前酸素化の代替として・・・
  →60秒で8回の深呼吸を行う
    =脱窒素を行う!
・4回の深呼吸で脱窒素化できる
・肥満者にはBiPAPや25度程度のhead-upが有効.
・マスクはしっかりfitさせないとFiO21.0にならない
・機能的残気量の69%は窒素で占められている
  →これ酸素に置き換える

第3問:マスク換気に関する問題

・sniffing position により舌根部と喉頭蓋が前方推移する
・入れ歯などの補綴物が有る方が換気しやすい
  →脱落には注意!
  →ちなみに湿らせたガーゼを入れるとかもあり
・マスク換気のみで麻酔を維持しても良い
  →ただしフルストマックなど禁忌がない場合
・健常な肺を膨らますのには圧は20-25cmH2Oで十分
  →20cmH2O以上圧を掛けると胃が膨れる

ブレイク
「夏休みは北欧へ行ってきました」

第4問:声門上器具に関する問題

・利点
  ・侵襲が少ない
  ・筋弛緩の必要性が少ない
  ・覚醒時に咳反射が少ない
・欠点
  ・一般的に誤嚥の恐れのある症例には禁忌、
  ・気道内圧20cmH2O以下が推奨される
・どのような症例が適応か?
  ・気道が術野と競合しない
  ・嘔吐を誘発しない
  ・高い気道内圧を必要としない場合
    →ラパロ下手術は?
     →気腹で腹圧上昇
     →換気に高めの圧を要し胃からの逆流の恐れも高まる
     →慣れた人なら可能

第5問:声門上器具に関する問題Part2

・喘息がある場合は?
  →気管内挿管は気道への刺激が強い
  →喘息発作の強力なトリガーとなる。
  →LMAをもちいれば挿管をさけることができる。
  →喘息の症例には進んで用いてよい。
・麻酔深度を得てからLMAを挿入
  →術中も深めの麻酔で維持する。
・喘息症例で挿管が必要なときは?
  →まずLMAを挿入
  →セボフルランでさらに麻酔を深くしてから挿管
  →覚醒の時は深麻酔下で抜管
  →その後LMAを挿入し、覚醒まで待つ
     ・・・という方法もある。
・LMA抜去タイミングは?
  ・深麻酔下 or protect airway reflexesが回復してから
  ・興奮期に抜けば咳or喉頭痙攣を起こす
  ・LMAは気管~気管支の敏感なところに位置しない
    →喘息患者が喘鳴を起こす訳ではない
  ・抜去のタイミング
    →LMAの抜去時deflatedせずにinflatedしたまま抜去
    →分泌物を一緒に掬い出す
・LMAの欠点と合併症
  ・LMAの位置異常
  ・粘膜損傷と咽頭痛:10%程度
  ・胃の膨張 但しバックバルブマスクよりは優れている
  ・胃内容物の逆流と誤嚥:0.02%程度
  ・カフの膨らませすぎ N2Oによりカフ圧が上がる
  ・神経障害 高いカフ圧や位置以上が原因
  ・縦隔炎と咽後膿瘍の症例報告あり
・LMAの利点
  ・DAM症例
  ・気管挿管と比べて・・・
    ・挿入時の局所障害が少ない。
    ・血行動態の変動が少ない
  ・訓練を受けていない人でも使用可能
  ・気道過敏性のある患者でも使える
  ・気管挿管と比べて眼圧上昇が少ない
  ・気管挿管と比べて咽頭痛・嗄声の頻度が少ない
  ・マスクより密着性がよく手が疲れない
  ・バックマスク換気と比べて胃の膨張が少ない



2012年10月5日金曜日

周術期の輸液と出血

初期研修医勉強会  担当:K先生

「周術期の輸液と出血」

・維持量+
 ①術前の脱水
 ②麻酔薬による血管拡張
 ③サードスペースへの移動
 ④出血
・4-2-1のルール
・維持量に加えて・・・
   ①術前の脱水補正
     →はじめの500mlは早めのスピードで
   ②麻酔薬による血管拡張
     →麻酔方法、使用薬剤でも異なる
   ③サードスペースへの移動
     →侵襲に応じて
   ④出血
・Fixed Volume Therapy
   →体液の移行、不感蒸泄、尿量による喪失を見越して輸液負荷
 ・小さな手術→6ml/kg/hr
 ・中等度の手術→8ml/kg/hr
 ・大きな手術→10ml/kg/hr
    →過剰輸液になりやすい
・過剰輸液の悪影響
  ・肺水腫の増悪
  ・呼吸不全および肺炎
  ・消化管浮腫、消化管吻合不全
  ・腹水、abdominal compartmet syndrome
  ・創傷治癒の遅延
  ・希釈による凝固障害
・Restrictive Fluid Therapy
・Goal Directed Fluid Therapy
・輸液管理のパラメータ
  ・静的パラメータ
    →有効性は証明されていない
  ・動的パラメータ
    →各種循環モニタリング値の呼吸に伴う変動
    →輸液反応性の指標となりうる
    ・自発呼吸のある人、不整脈では不可能    
  ・輸液反応性の予測には静的パラメータの有用性は限定的
  ・動的パラメータなども併用すべき

ブレイク
「お月見と和菓子」

・出血と重症度
  ・クラスⅠ:全血液量の15%未満
    →臨床所見は軽微もしくはみられない
  ・クラスⅡ:全血液量の15%~30%
    →起立時に血圧低下、心拍数上昇
  ・クラスⅢ:全血液量の30%~40%
    →非代償性の循環血液量減少性ショック
  ・クラスⅣ:40%を超す出血
    →低血圧、乏尿
・輸液について
  →組織酸素摂取量を維持、好気性代謝を継続させる
・心拍出量、ヘモグロビン濃度が重要
  ・心拍出量→補充輸液
  ・ヘモグロビン濃度→輸血
・膠質液vs晶質液
  ・膠質液→75%~80%が血管内に=血漿量を増加
  ・晶質液→20%のみが血管内に=間質液を増加
  →心拍出量を増加させるには膠質液が有効
・赤血球濃厚液は粘度の増加により、心拍出量は増加しにくい
・血流、酸素運搬、組織の酸素化を正常化
   →心係数、D02、Vo2、 乳酸値など



         ハイブリッド手術

2012年10月2日火曜日

chylopericardium

ICU勉強会  担当:I先生

「chylopericardium」

・chylothorax:乳び胸
・chyloperitoneum:乳び腹水
・chylopericardium:乳び心膜

・chyle:乳び
  →50%以上の人:胸管1本、左静脈角に合流
  →胸管2本、右静脈角に合流する人も
  →39%以上で胸管2,3本
     →胸管結さつ失敗する可能性が高い
・chylo~に共通の症状
  →低栄養、免疫不全、代謝異常
・chylo”pericardium”
  →心タンポ、心外膜炎(→収縮性心膜炎)
  →治療しないとhigh motarity rate

・chylopericardium
  ・1次性<<2次性
      →心外傷、オペ(特にCHD)、先天性リンパ管症、
          radiation後、鎖骨下静脈塞栓、感染(TB)、
              縦隔悪性腫瘍(lymphoma、メタ)、急性膵炎、、、
  ・成人心臓術後合併症としては珍しい
      →AVR、CABG、tlansplantation
  ・診断
    ・TG>500mg/dL 
    ・Chole/TG<1
    ・感染negative、cytologyでリンパ球優位
    ・リンパ管造影、リンパ管シンチ(+CT)
  ・治療
    ・制限食(脂肪0、中鎖脂肪酸はOK?!)、TPN
        →半数は数週間で治る(食事再開で再発多い)
    ・タンポ、心外膜炎、massive(500mL/day×5days)
        →aggressive に(心嚢ドレーン、全身管理)
    ・Surgicalに治す場合
      →保存的治療1-2wで改善傾向ない場合、低栄養激しいとき
         ・心膜開窓、胸管結さつ(VATS)
         ・心嚢―腹腔バイパス
    ・内科的治療
       ・サンドスタチン(ソマトスタチンアナログ)
         →消化管のDcellから分泌
         ・消化管の栄養吸収や運動抑制
         ・消化液そのものの減少?
         ・胸管平滑筋を収縮させるため胸管流量減少?
       ・フィブロガミンP(第13因子製剤)
         ・適応
            ・先天性第13因子欠乏による出血傾向
            ・第13因子低下に伴う縫合不全・漏こう
              →胸管損傷部の修復促進?
       ・lymphangiography 
          ・インジゴカルミンでリンパ管を同定後リピオドールを注入
          ・そもそもは損傷部位の同定目的だったが…
             →リピオドールが損傷部位を塞栓する?!
          ・保存的治療抵抗性の乳び疾患9人に対するリンパ管造影
             →8/9人で治ったとの報告



 10月から研修を始めたF先生。頑張ってください。