2014年4月16日水曜日

痛み

麻酔科勉強会  担当:S先生

「痛み」

・IASPによる定義(1979)
  →実際に何らかの組織損傷が起こったとき、
   または組織損傷を起こす可能性があるとき、
   あるいはそのような損傷の際に表現される、
   不快な感覚や不快な情動体験」
  →痛みは心と体の両面的現象
・痛みの分類
  ・急性痛
    ・病因を同定しやすい
    ・数日から数週間の経過が多い
    ・多くは侵害受容性
  ・慢性痛
    ・治療を要すると期待される時間の枠組みを越えて持続する痛み,
     あるいは進行性の非がん性疾患に関連する痛み
    ・病因が多因子
    ・期間不定(早期から生じていることも)
    ・侵害受容性 and/or 神経障害性
・神経障害性痛
 →体性感覚伝導路の損傷や病変によって直接に引き起こされる痛み
   ・古典的特徴
     ・持続的および発作性の自発痛
     ・アロディニア
     ・痛覚過敏
     ・しびれ
 ・神経障害性痛疾患
   ・脳卒中後痛(視床痛)
   ・脊髄損傷後痛
   ・多発性硬化症
   ・幻肢痛
   ・腕神経叢引き抜き損傷後痛
   ・帯状疱疹後神経痛
   ・三叉神経痛・舌下神経痛
   ・術後瘢痕性痛
   ・CRPSタイプⅡ(カウザルキー)
   ・腰下肢痛に伴う神経障害性痛
   ・糖尿病性ニューロパチー
   ・抗癌薬性ニューロパチー
   ・HIV性ニューロパチー
 ・神経障害性痛薬物療法アルゴリズムについて
・帯状疱疹後神経痛
 ・水痘・帯状疱疹ウイルス感染
   ・水痘・帯状疱疹ウィルスに対する免疫
     →正常人でも加齢とともに低下する。
   ・帯状疱疹の90%は明らかな基礎疾患がない人に起こる。
   ・80歳以上まで生きると50%の人が帯状疱疹にかかる。
 ・帯状疱疹痛の時間的変化
 ・帯状疱疹
   ・神経に沿って炎症を生じ、神経障害
   ・水疱を伴う皮疹と強い痛み
 ・帯状疱疹後神経痛
   ・炎症により神経が回復不能な損傷をうけた状態
   ・50代以降に発症すると神経痛に移行しやすい
・帯状疱疹後神経痛に移行する危険因子
  ・皮疹の重症度
  ・加齢
    →60歳以上では抗ウィルス薬を用いても、
     帯状疱疹発症6か月後に痛みが10~25%の症例で残存。
  ・合併疾患
    →免疫力が低下する疾患が合併する場合。  
  ・臨床像
    ・90%以上の症例で感覚低下
    ・約50%の症例でアロディニア
・早い時期から神経ブロックを行った場合
  →神経痛への移行が少ない傾向がある。
・治療
  ・薬物療法
  ・急性期のワクチン投与も有効
  ・神経ブロック
    ・体性神経ブロックは有効
    ・交感神経ブロックは無効
    ・ステロイド併用神経根ブロックは有効
・CRPS(複合性局所疼痛症候群)
  ・銃創による神経損傷後に遷延する痛みをカウザルキーと呼んだ
  ・外傷後遷延性疼痛患者で交感神経機能亢進を示すもの
    →反射性交感神経性ジストロフィー
  ・1994年に両者を内包する概念としてCRPSと呼ぶことになった
    ・神経損傷がない場合がタイプⅠ
    ・ある場合がタイプⅡ
  ・症状
    ・原因から予想される程度を超える激しい痛み
    ・着衣や微風などの触感が痛みとして認識(アロディニア)
    ・皮膚の変化(色の変化、光沢、乾燥など)
    ・浮腫  
    ・手や足の機能低下
  ・判定基準
    →判定基準を見ればわかる通り検査は不要だが・・・
      ・両側の同時撮影写真
      ・サーモグラフィー
      ・両側同時撮影のX線写真
      ・骨密度計測値
      ・筋電図、神経伝導速度検査
    →労災保険に必要
  ・病態
    ・神経損傷→証明できないことも
    ・不動化による障害(ギプス)
    ・Neglect-like現象
             →触覚の高次機能↓や思うように動かない
    ・自律神経症状
    ・社会的因子(自損では↓)
    ・心理的因子(うつなどでは↑)
  ・治療
    ・神経ブロック
    ・交感神経節ブロック(SGB、胸部・腰部)(推奨度C)
    ・持続硬膜外ブロック
    ・末梢神経ブロック
      →経過が長い場合は不可(推奨度C)
    ・社会的因子のある患者は要注意
    ・浮腫側に局所静脈内ステロイド(GradeⅠ)
  ・薬剤
    ・カルシトニンやビスフォスフォネート(推奨度A)
    ・ステロイド(経口・局所静脈内)(推奨度B)
    ・そのほかは神経障害性痛に対する薬剤(エビデンスなし)
    ・NSAIDsは無効なはずだが出していることが多い
  ・その他
    ・理学療法
      →治療の要
        ・温熱交代浴、光線療法、リハビリ
    ・手術(神経そのもの、偽関節など)
    ・認知行動療法(脳の関与??)
    ・脊髄内刺激電極
    ・エピドラスコピー(腰下肢痛に対して)
    ・人工神経再生




麻酔と睡眠時無呼吸

麻酔科EBM勉強会  担当:M先生

「麻酔と睡眠時無呼吸」

・睡眠時無呼吸
  →慢性的に、睡眠中の部分的もしくは完全な
   上気道閉塞を繰り返す病態
・有病率
 ・中年男性で9%、中年女性で5%
 ・最大90%のOSAS患者が正式な診断をされていない。
・閉塞起点は?
  ・口蓋垂89%
  ・舌根部22%
  ・下咽頭33%
  ・喉頭33%
・OSASの症状
 ・眠っているとき
   ・大きないびきをかく
   ・呼吸の停止
   ・頻回の中途覚醒
 ・日中、起きているとき
   ・耐え難い眠気
   ・集中力の低下
   ・起床時の頭痛
   ・性欲減退
・OSAS患者は交通事故や労働災害といった事故に遭いやすい
・OSASに併存しや
  ・高血圧
  ・肺高血圧(右心不全)
  ・冠動脈疾患
  ・うっ血性心不全
  ・不整脈
  ・耐糖能障害
・メカニズム
  ・睡眠時無呼吸→反復する低酸素&高二酸化炭素血症
     ・酸化ストレス
     ・全身炎症(α、β受容体upregulation)
     ・血管内皮障害
     ・免疫反応
    →心血管疾患、耐糖能障害
・OSASの検査と診断
  ・Polysomnography
  ・AHI(apnea hypopnea index)
   →1時間当たりのApnea、Hypopneaの回数
   →重症度分類
・OSASの合併症
  ・挿管困難
  ・術後低酸素血症、SpO2の低下
  ・血圧変動
  ・術後心筋虚血
  ・術後不整脈
  ・術後せん妄
  ・気道閉塞後肺水腫
  ・呼吸停止
・合併症増加の原因
  ・周術期の薬剤
    →周術期の薬剤の投与(鎮静薬、筋弛緩薬など)
    →上気道の緊張の低下、気道反射の抑制、中枢性換気応答の減弱
    →上気道閉塞を増悪させる
  ・上気道狭窄
    ・元々狭小化している上気道
      →麻酔や手術に伴いさらに狭小化
      →上気道の閉塞を引き起こす
    ・挿管後の声帯浮腫、鼻腔パッキング、NGチューブ、
     血腫などが原因となる
  ・仰臥位はOSASを増悪させる
  ・サーカディアンリズムの乱れ
  ・CPAPの中断
・スクリーニング
  ・ASA(American Society of Anesthesiologists)
    ・BMI35kg/㎡以上
    ・頚部の周囲径男性:17インチ、女性:16インチ以上
    ・気道に影響を与える頭頚部奇形の存在
    ・鼻腔の解剖学的な閉塞
    ・両側扁桃が接触しているまたは接触しそう
       →2つ以上該当で陽性
  ・APSS(Associated Professional Sleep Society)
  ・STOP screening tool
  ・STOP-Bang screening tool
  ・Epworthの眠気テスト(日本呼吸器学会)
・Mallanpati分類からOSASのリスクを予想しよう!
  →Mallanpati分類が1つ上がるごとにOSASのリスクも上昇する

・Recommendation
  ・日中の早い時間帯に手術の予定を入れましょう
  ・CPAPを持参するよう指示しましょう
  ・Difficult Airwayに備えましょう
  ・必要に応じモニタリングできる環境を整えましょう
  ・局所麻酔や神経ブロックを考慮しましょう
  ・導入・抜管時ヘッドアップしましょう
  ・誤嚥の予防をしましょう
  ・術後は上気道閉塞がないか継続した観察を行いましょう
  ・高CO2血症が疑われた場合血ガスを考慮しましょう
  ・麻薬の初回投与は回復室で行いましょう
  ・麻薬の眠剤やアルコールとの併用しないよう指導しましょう



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