2012年5月31日木曜日

麻酔科学会・予演会

来週から日本麻酔科学会・第59回学術集会が開催されます。
会場は神戸ポートピアホテル・神戸国際展示場、
当院より歩いて5分の至近距離となっています。
当院からは3名の先生が発表される予定となっています。

発表に先立ち、朝のカンファレンスの時間を使って
予演会が開催されました。








発表される先生方、頑張ってください。

2012年5月29日火曜日

造血幹細胞移植

ICU勉強会   担当:Y先生


「最近のICUトピックス」

・ヘルペス脳炎、症候性てんかんなど。
・ICUにおける造血幹細胞移植。
・心臓血管外科術後の意識障害。
・繰り返す腹腔内出血。
・open abdomenの管理。
・など。


「造血幹細胞移植」

・造血幹細胞移植の分類
  ・ドナーによる分類
    →自家移植と同種移植
  ・移植法による分類
    →骨髄移植、末梢骨幹細胞移植、臍帯血移植
・自家移植
  ・ほとんどが末梢血幹細胞移植。
  ・自家骨髄移植が行われることも。
・同種移植
  ・HLA適合(HLA-A, HLA-B, HLA-DR各2型、合計6型全て適合)
    ・血縁者・・・・兄弟姉妹で1/4の確率で一致
    ・非血縁者・・・骨髄バンク。80%の患者で適応者が見つかる。
  ・HLA非適合(6型のうち5型のみ適合)
    ・血縁者・・・・HLA適合非血縁者間移植に匹敵
    ・非血縁者・・・成績は向上中。
・骨髄移植
  ・ドナーの骨髄採取に全身麻酔が必要となる。
  ・ほとんどが同種移植。まれに自家骨髄移植も行われる。
  ・生着率、採取可能幹細胞数は普通。
  ・同種移植の場合、GVHD(急性・慢性)発症あり。
・末梢血幹細胞移植
  →同種移植の場合
    ・幹細胞数は多い。
    ・生着率が高い。
    ・慢性GVHD発症の可能性が高い。
    ・健常人にG-CSFを使用するリスク。
  →自家移植の場合
    ・幹細胞数は普通。
    ・生着率が高い。
    ・GVHDは起こり得ない。
    ・癌細胞混入の可能性あり。
・自家移植が 超大量化学療法を可能とした。
    ・抗癌剤の使用量をもう少し増やせば有効率が上がるはず。
      →しかしこれ以上使うと骨髄破壊が心配。
      →骨髄破壊量を超えて抗癌剤を使用。
      →骨髄破壊後にPBSCT施行。
      →骨髄機能の回復。
    ・骨髄破壊量<致死的肝・腎・肺障害発症量。
    ・PBSCTにより骨髄破壊量を超えた化学療法が可能となった。
・臍帯血幹細胞移植
  ・長所
    ・ドナーに危険性や負担がない
    ・比較的速やかに移植が実施できる
    ・GVHDが少ない。
    ・HLA不一致でも移植可能。
  ・短所
    ・造血幹細胞が少ない→生着不全が起こりやすい。
    ・同じドナーから血液を再び採取 できない。
    ・移植後感染症発症率が高い。
・前処置
  ・抗癌剤、急性GVHD予防、放射線照射
・急性GVHD
  ・術後100日以内に発症。
  ・骨髄破壊的移植では60日以内の発症が多い。
  ・原因はHLAのマイナーミスマッチ?
  ・移植片中の成熟T cellが関与。
  ・Target organは皮膚、肝臓、消化管。
  ・鑑別は血栓性微小血管症:TMA(HUS/TTP)
  ・治療はステロイド投与。
・慢性GVHD
  ・移植後100日以降に発症。
  ・発症様式によって3型に分類。
     →Progressive型、Quiescent型、De novo型
  ・Target organが多岐にわたる。
  ・移植幹細胞から分化したT cellが関与。
  ・症状に応じて局所療法から全身免疫抑制療法まで。




2012年5月25日金曜日

統計学について


麻酔科勉強会  担当:S先生

「統計学について」

・多重比較検定
  ・多群の平均値の比較といえば…
     →分散分析
  ・分散分析でわかることと言えば…
     →「少なくともどれか2つの群間に有意差がある」かどうかのみ
  ・現実的にはどの群間で差があるかが気になる
     →多重比較
・なぜ多重比検定?
・何が問題?
  ・有意水準αのとき正しく判断する確率は(1-α)
  ・単純にn回検定するとすべて正しく判断する確率は
     →(1-α)のn乗≈1-nα
  ・全体の有意水準がnαになる
     →誤って有意としてしまう確率が増える
・解決方法
  ・解決方法は無数にあるので一部を
    ・単純にはボンフェローニ法(有意水準調整型)
      →有意水準5%を検定回数で割った値を一ごとの有意水準にする
      ・どの検定でも使える
      ・検定回数が5回以上だとほとんど有意差がでない
    ・基準との比較
      ・Dunnett法(分布調整法)
        ・母集団が正規分布で、すべての群の分散が等しいと仮定。
        ・有意差は出やすい。JMP搭載
      ・Steel法
        ・Dunnettのノンパラメトリック版。これもJMP搭載
        ・すべての群間の対比較
      ・Tukey(-Kramer)法(分布調整型)
        ・母集団の正規分布ですべての群の分散が等しいと仮定。
        ・群が少ないと検出力ダウン。JMP搭載(TukeyのHSD検定)
      ・Steel-Dwass法
        ・Tukey法のノンパラメトリック版。JMPに搭載。
        ・可能な組み合わせすべての比較
      ・Sheffe法(統計量調整型)
        ・ありとあらゆる組み合わせ(A群対B&C群)に対して検定可能
        ・事前に分散分析で有意差があることが必須
        ・ただし有意差はかなり出にくい
        ・JMPには非搭載のようです

「ブレイク」
・自己紹介
・物性理論
・水の電離度


・統計学的なごまかし
   ・知っている・知らないによらず…
     →統計的なごまかしに陥ることがある
   ・棄却率、検出力とは関係なく「有意差あり」を「有意差なし」とする。
   ・またその逆のパターン
・シンプソンのパラドックス
  ・数学的に見破る方法はない。
  ・介入群と非介入の割合の差が大きいサブグループがあると生じやすい。
・サンプル数が多いときは割合にして有意差を消す!
・分割表や頻度の検定ではサンプル数が多いと有意差が出やすい
   →500例中100例の場合は0.2とするなど
・全数情報が消えるので有意差が出にくい
・散布図を書かない!(外れ値で有意に)
・相関や回帰は外れ値に大きな影響を受ける。
・外れ値をそのままにしておくと…
   →有意になったり逆に有意でなくなったりする。
・エクセルに手入力するときは…
   →一定の割合で入力ミスすると考えて検定する前には散布図を。
・有意差がでるorでない検定を使う!
・2群の比較
   →パラメトリック検定とノンパラメトリック検定で検出力に差がある
・とりあえず片っ端から試してみて都合の良い検定を採用。
・パラメトリック検定
   →正規分布から外れると有意になりにくい。
   →差を出したくないとき有効。
・パラメトリック検定とノンパラメトリック検定で結果が違うときは?
   →結論は「保留」


ICUモーニングカンファレンス

2012年5月24日木曜日

周術期の心筋虚血

初期研修医勉強会  担当:N先生

「周術期の心筋虚血」

・手術侵襲
  →炎症反応、過凝固状態
  →プラーク破綻
  →血栓形成
・疼痛、出血・貧血、低体温
  →ストレス状態、低酸素
  →心筋酸素需要↑↑ 心筋酸素供給↓↓
  →心筋虚血
・周術期心筋虚血のタイプ
  ①プラーク破裂による血栓
     ・周術期心筋梗塞の1/3
     ・術前の狭窄レベルとプラーク破裂部位は一致せず
     ・致死的MIの50~93%
  ②心筋の酸素需給バランス破綻
     ・周術期心筋梗塞の2/3
     ・高度狭窄、低血圧、頻脈、貧血、低酸素がリスク
     ・ECGでST低下が多い
     ・致死的MIの7~50%
・予後
  ・非心臓手術の周術期死亡原因10~40%
  ・周術期心筋梗塞発症 院内死亡率15~25%
  ・30日死亡率
     →発症例11.6% 非発症例2.6%
・RCRIスコア~心血管合併症の発症率と関連
  ・高リスク手術(胸部大動脈瘤、腹部大動脈瘤など)
  ・虚血性心疾患の既往
  ・心不全の既往
  ・脳血管疾患の既往
  ・インスリンが必要な糖尿病
  ・腎機能障害(Cr>2.0mg/dL)

・ブレイク~「天野篤Drについて」
  ・天皇陛下のOPCABGを担当。
  ・アントニオ猪木のファン

・予防について
  ・β遮断薬
  ・スタチン
  ・抗血小板薬
  ・血行再建(PCI,CABG)
・β遮断薬
  ・心拍数:心筋酸素需給バランスの指標
  ・β遮断薬で心拍数管理
     →周術期心筋梗塞の発症を抑える?
  ・研究結果は様々
  ・非致死的心筋梗塞は減少、全死亡率、心血管死亡率は増加?
・スタチン
  ・プラークの安定化で破綻を予防
  ・2010年のメタ解析
     ・4805人のPCI・CABG・非心臓手術
     ・術前からのスタチン投与の有無で比較
     ・周術期心筋梗塞の発症
     ・非心臓手術とPCIで有意に減少
     ・CABGでは有意差なし
・抗血小板薬
  ・虚血リスク vs 出血リスク
  ・心血管リスクのある220人の周術期
     ・アスピリン投与群  vs  プラセボ群
     ・術後30日以内の心血管合併症
     ・1.8%vs9.0% p=0.02
     ・アスピリン投与群で出血→再手術2例
     ・その他出血イベントに有意差なし
・術前血行再建
  ・虚血性心疾患のある患者
  ・術前に血行再建をすれば周術期の急性心筋梗塞や死亡は減少?
  ・AAAやASOの予定手術での検討あり
  ・術前血行再建で予後を改善するエビデンスは今のところない
・実際に起ってしまったら?
  ・周術期心筋梗塞のアルゴリズム
  ・冠動脈再建を行うかを以下で検討
    ・STEMI or NSTEMI
    ・血行動態   安定  or  不安定
    ・アスピリン・ヘパリンが投与可能か?
  ・STEMI
    ・血行動態が安定・不安定に関わらず…
      →CAGと早期PCI(必要ならIABP,CABG)
    ・ヘパリンによる抗凝固療法の絶対禁忌あれば
      →保存的治療(出血リスクを考慮してアスピリン)
    ・退院時には
      →アスピリン・β遮断薬・スタチン・ACE阻害薬
  ・NSTEMI
    ・血行動態が不安定
      →CAG・PCI(必要ならIABP)
    ・血行動態が安定
      →保存的治療(出血リスクを考慮してアスピリン)
    ・退院時には
      →アスピリン・β遮断薬・スタチン・ACE阻害薬
      →4~6週間以内にリスクを再評価



       研修医Dr、挿管の練習中。

2012年5月23日水曜日

麻酔科専攻医募集!

☆☆神戸市立医療センター中央市民病院 麻酔科専攻医募集☆☆

 神戸市立医療センター中央市民病院・麻酔科では平成25年度採用の専攻医(後期研修医)を募集しています。
 当院は神戸市の基幹病院であると同時に、救急救命センターを併設する救急病院であり、小児心臓外科を除く全科の麻酔管理に対応しています。平成23年7月に新築移転し、最新の麻酔環境を有する手術室18室を有しています。大手術も多く、緊急手術も昼夜問わず毎日のように行われる忙しい病院です。麻酔科スタッフ21名のうち専攻医は現在9名であり、当院の手術室、集中治療室の実働部隊としての中央診療部門の核心を担っています。麻酔科専攻医は連日、定期手術に緊急手術に集中治療にと充実した臨床経験を積んでおり、時にはハードな日々もありますが、麻酔科医としての臨床能力をつけるには当院は最適の病院です。
 当院麻酔科の特徴として、手術部門に隣接して麻酔科管理型ICU(GICU)を有しており、心臓大血管手術をはじめとする大手術の術後管理、内科的重症患者、院内急変患者の治療を麻酔科主体で行なっている点があります。専攻医は1年次、および3年次に集中治療部専属期間を経験し、集中治療を学び経験することとなります。
 朝の麻酔科ミーティングも当院麻酔科の名物です。毎朝、日々の業務が始まる前に全員集合での勉強会が開催され、麻酔、集中治療、経食道心エコー、神経ブロック、症例フィードバックなど、麻酔科ローテーション中の研修医の先生も加えて発表&質疑応答が行われ、全員で知識を深め、共有しています。
 当院麻酔科の専攻医プログラムの概要は以下の通りです。

【1年目】
1.一般的な手術の麻酔を単独で担当できる。
2.心臓大血管手術を上級医の指導の下に経験し、知識と技術を習得する。
3.2ヶ月のGICU専属期間で重症患者管理を経験し、人工呼吸、循環管理、血液浄化法、栄養管理など、集中治療の知識と技術を習得する。


【2年目】
1.挿管困難、大量出血、循環動態不安定などの緊急事態に対応できる。
2.心臓大血管手術を単独で担当できる。
3.日本周術期経食道心エコー認定医(JB-POT)を取得する。
4.麻酔・集中治療領域での症例報告や論文作成を行う。
5.超音波ガイド下神経ブロックを習得する。


【3年目】
1.研修医を指導できる。
2.心臓大血管手術の麻酔で後期研修医を指導できる。
3.集中治療室において入室患者の治療方針を決定し、夜間当直を担当する。
3.麻酔科標榜医・認定医を取得する。

 充実したスタッフ構成のため、オンオフがはっきりしていることも当科の特徴です。夜間は麻酔科当直(麻酔部門2人、集中治療部門1人)が緊急手術、集中治療に対応するため、非当直日は仕事が終われば完全duty freeです。夜間呼び出されることはありません。また当直明けも可能な限り早く帰れるよう努力しています(だいたい昼過ぎには解放です)。
 忙しい病院ですが、麻酔科スタッフ21名、協力して、お互いから刺激を受けながら日々の業務に勤しんでいます。神戸市の高度医療、救急医療の第一線を担う当院麻酔科で研鑽を担いたいという志の高い先生方の応募を期待しています。是非一度見学にお越しください。
 研修医の先生の見学は随時受け付けています。麻酔部門中心、集中治療部門中心、どちらも、など希望があればお伝え下さい。もちろん医学生、後期研修医の先生、その他ベテランの先生方の見学も歓迎しています。お待ちしております。

■見学申し込みなど、お問い合せはこちらへ。
麻酔科部長・山崎 和夫
313kyama■kcho.jp (■を@に変換してご送信ください。)

■後期研修医採用情報はこちら
http://chuo.kcho.jp/recruit/late_resident/



        朝の麻酔科カンファレンス


ハートワークス

経食道心エコーシミュレーター、
「ハートワークス」が当院麻酔科にやってきました。





期間限定ですが、専攻医にもスタッフにも大好評です。

単純ヘルペス脳炎

ICU勉強会   担当:S先生

「単純ヘルペス脳炎」

・単純ヘルペス脳炎
   ・ウイルス脳炎の10-20%程度。
  ・1/3は若年者。
  ・通常はHSV-1、新生児はHSV-1 or HSV-2。
  ・immunocompromised hostでなくとも発症する。
・症状
  ・意識障害、意識レベルの変容、巣症状など。
  ・発熱、頭痛など。
・画像
  ・側頭葉、前頭葉に病変(CT、MRI)。
  ・脳波異常。基礎律動の徐波化、PLEDS時々。
  ・髄液検査
    →蛋白上昇、リンパ球有意の上昇、髄液圧上昇など。
・診断
  ・PCRでHSV-DNAの検出。
  ・脳生検もあるらしい。
  ・髄液培養ではほとんど陽性にならない。
・治療
  疑った時点で直ちに治療開始。アシクロビル。





2012年5月22日火曜日

術後疼痛管理とその意義

初期研修医勉強会  担当:F先生

「術後疼痛管理とその意義」

・体性痛
  →限局した、さしこむような痛み
  ・浅い痛み(切開創)
  ・深い痛み(筋肉痛)
・内蔵痛
  →部位が明確でない、違和感のある痛み
・麻酔薬の副作用としての痛み
  →セボフルランによる頭痛など
・術後疼痛の修飾因子
  ・患者因子
  ・術前の不安、恐怖による増強  
  ・麻酔方法
  ・全身麻酔、硬膜外麻酔併用、麻薬使用の有無
  ・手術部位、手術時間、侵襲の程度
  ・上腹部>下腹部
  ・長時間>短時間
  ・浅いところ>深いところなど
・術後痛の影響
  ①呼吸機能の低下
   ・反射的な腹筋緊張、横隔膜機能低下
   ・痛みへの恐怖による深呼吸、咳の抑制
      →分泌物貯留、無気肺
  ②循環器
   ・交換神経緊張→頻脈、血圧上昇
   ・離床の遅れ→DVTのリスク上昇
  ③消化器
   ・腸管運動抑制→イレウスのリスク上昇
  ④内分泌
   ・痛みによる交感神経緊張
   ・ストレスホルモンの遊離
   ・異化亢進、血液凝固能亢進、免疫能低下
  ⑤精神面
   ・薬の過量投与、医療スタッフへの不信感
・術後鎮痛の手段
  ・術中のNSAIDS、オピオイド予防的静注
  ・硬膜外腔またはクモ膜下腔オピオイド持続投与
  ・オピオイド静脈内投与によるPCA 
  ・薬を使わない鎮痛法
・術後鎮痛の意義
  ・早期機能回復による患者QOLの向上にとどまらない。
  ・医療関係者のストレス軽減
  ・栄養状態の改善
  ・医療経済的にも入院日数の減少などいいことは多い。
・日本における術後鎮痛の問題点
  ・我慢する日本人
    →手術後に多少痛いのはしょうがない
  ・施設、機器の不足によるハード面
  ・人手不足、連携不足という医療スタッフ側因子
  ・米国では術後鎮痛を体系的に行うためのガイドラインあり。
    ・術前からの患者状態把握の重要性
    ・患者、家族、医療スタッフへの適切な教育
    ・麻酔科医が主役

・ブレイク
「自己紹介」
「ファゴットの魅力」

・術後鎮痛法により術後予後が改善?
・局所麻酔併用の術後鎮痛
  →癌手術後の再発率、転移率が下がる
  →患者の長期予後を改善できる…かもしれない。
・周術期の細胞性免疫をを低下させる因子
  ・手術自体の侵襲
  ・痛みストレス
  ・オピオイド(とくにモルヒネ、フェンタニル)
  ・吸入麻酔薬
    →癌細胞の最前線の防御機構が弱る。
・COX阻害薬
  →動物実験では腫瘍増殖、血管新生等を抑制したらしい。 
・区域麻酔および鎮痛
  →痛み信号の伝達を止める
  →同時にNK細胞の機能維持
  →免疫能を保つ。
  →区域麻酔を併用して全身麻酔薬の使用量を減らす。
・COX阻害薬、局所麻酔での鎮痛の割合を増やして麻薬の必要量を減らす。
・周術期の免疫能を維持
  →がん手術後の転移率、再発率を下げる?
・乳房切除についての研究
  ・全麻+傍脊椎ブロックvs全麻のみ
  ・術後3年間のの再発率で有意差あり。
  ・再発リスクも優位に低下。
・麻酔科医の創意工夫や判断は患者の生命予後を左右する可能性。




2012年5月16日水曜日

Echo Round~ASD、AVSD

TEE勉強会  担当:Y先生

「ASD、AVSD」

Case1
・症例: 51歳 女性
・心電図: Af, complete RBBB, 左軸偏位

・所見まとめ
  ・二次孔欠損型ASD
  ・二ヶ所の欠損 50mmと30mm
  ・大きい欠損孔・・線維性のフィラメントで3つにわかれている
  ・小さい欠損孔・・RUPVの開口部の尾側に位置
  ・3Dでは数と大きさ、正確な位置が特定できた
  ・経皮的ASD閉鎖術の適応にはならなかった
・ASDについて
  ・疫学:先天性心疾患の8%(最も多い)
  ・分類
   ①ostium primum(15%)
     ・合併:cleft MV, subaortic stenosis, atrioventricular canal defects
   ②ostium secundum(75%)
     ・合併:mitral prolapse
   ③sinus venosus(10%)
     ・合併:partial anomalous pulmonary venous drainage (RUPV to RA)
   ④unroofed coronary sinus(1%)
     ・合併:partial anomalous pulmonary venous drainage, Left SVC
・ASD closureについてACC/AHA 2008ガイドラインの紹介
・Percutaneous Closure
  ・アンプラッツァーデバイス(2006~)
  ・適応
  ・二次孔欠損
  ・欠損孔の径が 38mm を超えない。
  ・欠損縁からCS、房室弁およびRUPVまでの距離が5mm 以上

・ブレイク
「金環日食について」

Case 2
・症例:23歳男性
・主訴:mild dyspnea when exercising

・所見まとめ
  ・partial AVSD 
  ・MV cleft (AML)
  ・PML:only 2 scallops
  ・TV:MVと同じレベルに
  ・unwedged Aorta
    →左室流出路の変形“goose neck deformity”
・AVSD(Atrioventricular septal defect)について
  ・成因:心内膜床の発達障害 
  ・21 trisomyに多く合併
  ・分類
    ①complete: ASD
    ②partial : ASD

・まとめ
  ・ASDの分類と成因
  ・4つのタイプの画像所見
  ・経皮的ASD閉鎖術に3D TEEは有効
  ・AVSDの分類




胸部大動脈瘤に対するステントグラフト

ICU勉強会   担当:U先生

「胸部大動脈瘤に対するステントグラフト」

・歴史は浅い
  ・1993年:自作ステントグラフトの臨床応用開始
    ※Aoに対する血管内治療自体が保険適応認められず
  ・2008年:企業製造の胸部用ステントグラフトが薬事承認
  ・以降、急速に普及
・適応
 ①上行大動脈
   ・適応なし
   ・ただし広範囲胸部大動脈瘤については
     →上行・弓部を人工血管 +  弓部・下行にステント
     →elephant trunk + 経カテーテルステントグラフト
 ②弓部大動脈
   ・弓部専用ステントグラフト
   ・branched(枝付き) stentgrsft
   ・ Fenestrsted(開窓型) stentgraft薬事承認なし
     →弓部分枝への非解剖学的バイパス と併用
       ※外科手術困難例・ハイリスク症例
   ・Frozen elephant trunk 法またはStented elephant trunk法
     →末梢側(下行)大動脈縫合のみステントグラフトで代用
     →死亡率/合併症発症率が通常手術に比して同等あるいは良好
     →特に広範囲弓部型・A型解離にて弓部置換を要するCASEで有用
   ・広範弓部~下行瘤に対する2期的ハイブリッド手術
     →弓部置換の際にelephant trunkを下行瘤内に挿入
     →後日、TEVER。
 ③下行大動脈
   ・解剖学的状況がデバイスの適応に適合するなら…
   ・OPEと比較して急性期死亡率・有害事象発症率が低い
   ・ハイリスク症例ではfirst choice.
   ・Low risk症例でも脊髄神経障害の発生は低い。
   ・適応外
      ・瘤による圧迫症状があるもの(心臓・食道など)
      ・食道と交通のあるもの
      ・感染瘤
      ・気管支婁・肺婁を伴ったCASE
 ④外傷性大動脈損傷
   ・First choice
     →体外循環を使用することのRISKが高い
     →付随する外傷治療に移行できる
     →大動脈損傷を伴う多発外傷の治療成績は著明に向上
・合併症
  ・エンドリーク:急性期8-26% Type Ⅰが中心
   ・ちなみに…
    ・TypeⅠ
      ・ステントグラフトと宿主大動脈との接合不全に基づいたleak。
    ・TypeⅡ
      ・大動脈瘤側枝からの逆流に伴うleak。
    ・TypeⅢ
      ・グラフト-グラフト間の接合部,あるいはグラフト損傷等に伴うleak
    ・TypeⅣ
      ・ステントグラフトのporosityからのleak
    ・TypeⅤ
      ・画像診断上,明らかなEndoleakは指摘できないが
       徐々に拡大傾向をきたすもの。
  ・脊髄神経麻痺
    ・risk factor
      ①広範囲の肋間動脈閉塞
      ②AAA OPE既往(内腸骨動脈閉塞)
      ③左鎖骨下動脈のCOVER
         →RISK重なる場合にはスパドレなど予防措置が必須








2012年5月15日火曜日

フィードバックカンファレンス

フィードバックカンファレンス  担当:H先生

「4月麻酔科管理症例振り返り」

・病棟で術後出血
  →病棟で挿管、Xp checkもされ緊急手術に。
  →手術室で麻酔科医が食道挿管を発見。
  →自発呼吸が温存されていたため手術室まで酸素化保っていた。
・病棟で術後出血、CPA
・下部消化管穿孔、shock
  →救急外来でCPA繰り返す。
  →麻酔導入後もCPAに。
  →蘇生
・開腹胆嚢摘出術後
  →病棟でCPA、蘇生しICUへ。
  →低Na血症あり。
  →ステロイド中止による相対的副腎不全???
  →Na補正で改善、翌日抜管。特に合併症なくICU退室。
・VATSブラ切除
  →術後覚醒遅延。
   →肋間神経ブロックのアナペインによる局所麻酔薬中毒?
  →Lipid Therapy。
   →覚醒。
・外傷性心破裂
・緊急帝王切開(DD twin)
  →閉腹中にSpO2低下。
  →肺水腫?肺塞栓?羊水塞栓?
  →Xp、造影CTなど特に異常なし。
  →何事もなく回復。



人工呼吸器について

初期研修医勉強会  担当:Y先生

「人工呼吸器について」


1.人工呼吸器のモードと時相変数
・Continuous Mandatory Ventilation(CMV)
  →すべての一回換気が人工呼吸器の決めたパターンで繰り返される
  ・Volume Control(VC)
    →1回換気量を一定にするよう換気が行われる
  ・Pressure Control(PC)
    →換気圧を一定にするよう1回換気が行われる
Continuous Spontaneous Ventilation(CSV) :
  →患者自身の吸気で開始(トリガー)
  →患者自身の吸気終了で呼気相に移る(サイクル)。
  ・Pressure Support Ventilation(PSV)
    →吸気相に陽圧をかけて圧支持する
  ・Continuous Positive Airway Pressure(CPAP)
    →吸気呼気相を通じて一定の陽圧付加
・Flow、Volume、Pressureグラフの解釈
  ・PCVでは気道内圧一定。
  ・VCVではフロー(または1回換気量)が一定。
  ・フローの時間積分は換気量になる。
  ・換気量を時間微分するとフローになる。
  ・肺&胸壁コンプライアンスが機能的残気量周辺でほぼ一定と仮定
    →吸気量とPplateau(肺胞内圧)はほぼ比例する。
  ・Ppeak:気道抵抗、肺、胸郭のコンプライアンスを反映
  ・Pplateau:肺・胸郭のコンプライアンスを反映。
    →ほぼ肺胞圧に等しい。
    →人工呼吸器誘発性肺障害(VILI)に関係。
        →よってPpeak-Pplateauは気流の駆動圧。
        →気道抵抗を反映。
・時相変数
  →1回換気において吸気を成立させるために必要な設定
  ①吸気の開始:トリガー
  ②吸気過程中に一定に制限される量:リミット
  ③吸気の終了(=呼気の開始):サイクル
2.PaCO2と酸素化を決定する因子
  ・分時CO2排出量=分時体内CO2産生量(=一定)……①
  ・PaCO2=PCO2(肺胞気)とすると
    →分時CO2排出量=分時換気量×PCO2(肺胞気)
               =1回換気量×RR×PaCO2……②
   →よってRR×1回換気量×PaCO2=一定
   →体内CO2産生が上昇すればPaCO2は上昇
   →分時換気量が上昇すればPaCO2は低下
  ・分時換気量上昇
    ・脳圧亢進、アシドーシス(敗血症、薬物中毒等)、発熱、
     体内CO2産生量増加、発熱(感染症、薬剤性、膿瘍等)
       炎症(熱傷、膵炎等) 異化亢進状態
・酸素化を決定する因子
  →いかに肺胞毛細血管に酸素分圧をかけるか
  ①酸素分圧(FiO2)を上げる  
  ②平均気道内圧/容量を上げる
   →同じ換気量でもVCV   →PEEPをかける    
   →PCVにおいて吸気時間を長くする

・ブレイク
・「フルートの魅力」
 

3.人工呼吸中のアラーム対処
  →アラームを消音する…ダメ
  →原因を検索する
・気道内圧・呼気分時換気量が低下したとき
   →患者自身の呼吸数・換気量の低下の有無を確認
  ・Ppeakのみ上昇していたら(=気道抵抗の上昇)
    ・喀痰によるチューブ・人工鼻の詰まり    
    ・チューブの折れまがり、噛み    
    ・気管支攣縮
  ・Pplateauも上昇していたら(=肺コンプライアンスの低下)
    ・片肺挿管、腹圧上昇、auto-peep    
  ・患者-呼吸器不同調    
  ・無気肺、気胸、肺水腫
・急激に呼吸状態が悪くなったときにすべきこと
  1.用手換気に切り替える。
  2.PpeakとPplateauを評価する
    ・気道抵抗の上昇?→気管内吸引など
    ・肺コンプライアンスの低下?→気胸を疑うなど
  3.肺塞栓症や患側を下にする体位変換なども考える

・まとめ
  ・モードはCMVとCSV、CMVにはVCとPC
  ・VCは容量リミットタイムサイクル、PCは圧リミットタイムサイクル
  ・Pplateauは肺胞内圧→VILIに関係
  ・Ppeak‐Pplateauは気道抵抗を反映する
  ・PaCO2は分時換気量、酸素化は平均気道内圧で制御する
  ・アラームが鳴ったら原因を考える



  

STANDARD MONITORING TECHNIQUES

麻酔科勉強会  担当:T先生

「STANDARD MONITORING TECHNIQUES」


・安全な麻酔のためのモニター指針(日本麻酔科学会)
・パルスオキシメーター
  →Beer-Lambertの法則に基づく。
・ヘモグロビンの吸収スペクトル
・パルスオキシメトリーの原理
・ヘモグロビン酸素飽和度(%) = [HbO2/(HbO2+Hb)] X 100
・精度に影響する要因
  ・異常ヘモグロビン
  ・COHb(SpO2を高く評価してしまう)、metHb
  ・低還流
  ・体動
  ・他(マニキュア・重症の貧血・蛍光灯・電メスなど)
・血圧測定について
 ・平均血圧
 ・収縮期圧+1/3(収縮期圧-拡張期圧)
 ・血圧が間違って高く出すぎるのは?
   ・小さすぎるカフ
   ・ちょっとしぼんでるカフ
   ・四肢が心臓より下
 ・非観血的血圧測定
   ・聴診法
   ・オシロメトッリク法
   ・カフの適正サイズ
   ・オシロメトリック法による血圧測定の正確度は非常に低い

・ブレイク
・天理よろづ相談所病院について


・間欠的動脈圧測定の合併症
  ・正中神経損傷
  ・血腫形成
  ・動脈血栓
・ALLEN’S TEST
・カテーテルトランスデューサー式モニタリングシステム
  ・単純なバネ質量系がその原型
  ・固有振動数(周波数)と制動係数が重要パラメーター
  ・固有振動数はシステムの振動速度を定量化
  ・制動系数はシステムに対する摩擦力を定量化
・固有周波数(モニタリングシステム)
  ・一つの動脈波を再現 6-10個の高調正弦波が必要
  ・心拍120=2拍/s=2Hz →固有振動数 12-20Hzは必要
  ・モニタリングシステムの固有周波数が低すぎると、動
  ・脈波形の周波数がシステムの固有周波数に近似する
  ・共鳴して本来の動脈圧より増幅される
・固有周波数と制動系数
・アンダーダンピングの原因
  ・接続チューブが軟らかく長すぎる
  ・接続チューブが細い
  ・オーバーダンピングの原因
  ・チューブ内に気泡が混入
  ・カニューラ先端が血管壁に当たっている



      大動脈ステントグラフト内挿術


2012年5月7日月曜日

眼科手術の麻酔

麻酔科勉強会  担当:N先生

「眼科手術の麻酔」

・眼圧
  ・正常値10~22mmHg
  ・日本人の平均値14.5 mmHg
・眼圧上昇はなぜ悪いか
  ・急性緑内障の発生
  ・眼内容物の突出の可能性
     →失明の可能性
・眼圧を上昇させる因子
  ・高血圧
  ・眼周囲の圧力上昇、眼球圧迫
  ・低酸素症、高二酸化炭素症
  ・いきみ、嘔吐、咳、バッキング
  ・麻酔関連
    →喉頭展開・気管挿管・高換気圧・薬剤
・眼圧を低下させる因子
  ・低二酸化炭素症
  ・低体温
  ・頭部挙上
  ・薬剤
    →利尿薬、β遮断薬等
  ・ほとんどの麻酔関連薬で眼圧は低下する。
    →ケタミン、スキサメトニウムは眼圧を上昇させる。
・アトロピンと緑内障
  →閉塞隅角・開放隅角緑内障の患者でも通常の量であれば使用OK。
・眼球心臓反射
  ・眼球圧迫・外眼筋牽引などによって起こる
  ・子供に多い
    →斜視手術などで問題となる
  ・神経支配:
    →求心路:三叉神経、
    →遠心路:迷走神経
  ・症状
    →不整脈(洞性徐脈が多い)、吐き気など
  ・低酸素・高二酸化炭素血症で増悪・重症化しやすい
  ・様々な予防方法が考えられているが確実なものはない
  ・刺激の反復により再発しにくくなる
・眼科麻酔
  ・全身麻酔
  ・区域麻酔
  ・表面麻酔
・全身麻酔
  ・患者の協力が得られない場合
   →安静が保てない、コミュニケーションがとれないなど
  ・侵襲が高い場合など
  ・眼圧上昇が好ましくない状況では、適切な麻酔深度を保つ(LMAが有用)
  ・手術中はAirwayへのアクセスが困難
     →チューブの接続不良・位置のずれなどに注意する
・区域麻酔
  ・球後ブロック(Retrobulbar block)
  ・眼周囲ブロック(peribulbar block)
  ・テノン嚢下麻酔
・テノン嚢下麻酔について
    →結膜に表面麻酔をする
    →結膜をハサミで切開し強膜の上のテノン嚢まで切開
    →テノン嚢の中に鈍針を挿入
    →局麻薬を注入
  ・球後・眼周囲ブロックとの比較
    ・無動効果の優劣ははっきりせず
    ・鎮痛効果は優れる
    ・球後部にアクセスしないため球後出血や神経損傷が起きにくい
  ・特徴的な合併症
    →結膜出血・浮腫がほぼ必発
    →自然に消退



       ICUにもROTEM出動中。