2012年5月24日木曜日

周術期の心筋虚血

初期研修医勉強会  担当:N先生

「周術期の心筋虚血」

・手術侵襲
  →炎症反応、過凝固状態
  →プラーク破綻
  →血栓形成
・疼痛、出血・貧血、低体温
  →ストレス状態、低酸素
  →心筋酸素需要↑↑ 心筋酸素供給↓↓
  →心筋虚血
・周術期心筋虚血のタイプ
  ①プラーク破裂による血栓
     ・周術期心筋梗塞の1/3
     ・術前の狭窄レベルとプラーク破裂部位は一致せず
     ・致死的MIの50~93%
  ②心筋の酸素需給バランス破綻
     ・周術期心筋梗塞の2/3
     ・高度狭窄、低血圧、頻脈、貧血、低酸素がリスク
     ・ECGでST低下が多い
     ・致死的MIの7~50%
・予後
  ・非心臓手術の周術期死亡原因10~40%
  ・周術期心筋梗塞発症 院内死亡率15~25%
  ・30日死亡率
     →発症例11.6% 非発症例2.6%
・RCRIスコア~心血管合併症の発症率と関連
  ・高リスク手術(胸部大動脈瘤、腹部大動脈瘤など)
  ・虚血性心疾患の既往
  ・心不全の既往
  ・脳血管疾患の既往
  ・インスリンが必要な糖尿病
  ・腎機能障害(Cr>2.0mg/dL)

・ブレイク~「天野篤Drについて」
  ・天皇陛下のOPCABGを担当。
  ・アントニオ猪木のファン

・予防について
  ・β遮断薬
  ・スタチン
  ・抗血小板薬
  ・血行再建(PCI,CABG)
・β遮断薬
  ・心拍数:心筋酸素需給バランスの指標
  ・β遮断薬で心拍数管理
     →周術期心筋梗塞の発症を抑える?
  ・研究結果は様々
  ・非致死的心筋梗塞は減少、全死亡率、心血管死亡率は増加?
・スタチン
  ・プラークの安定化で破綻を予防
  ・2010年のメタ解析
     ・4805人のPCI・CABG・非心臓手術
     ・術前からのスタチン投与の有無で比較
     ・周術期心筋梗塞の発症
     ・非心臓手術とPCIで有意に減少
     ・CABGでは有意差なし
・抗血小板薬
  ・虚血リスク vs 出血リスク
  ・心血管リスクのある220人の周術期
     ・アスピリン投与群  vs  プラセボ群
     ・術後30日以内の心血管合併症
     ・1.8%vs9.0% p=0.02
     ・アスピリン投与群で出血→再手術2例
     ・その他出血イベントに有意差なし
・術前血行再建
  ・虚血性心疾患のある患者
  ・術前に血行再建をすれば周術期の急性心筋梗塞や死亡は減少?
  ・AAAやASOの予定手術での検討あり
  ・術前血行再建で予後を改善するエビデンスは今のところない
・実際に起ってしまったら?
  ・周術期心筋梗塞のアルゴリズム
  ・冠動脈再建を行うかを以下で検討
    ・STEMI or NSTEMI
    ・血行動態   安定  or  不安定
    ・アスピリン・ヘパリンが投与可能か?
  ・STEMI
    ・血行動態が安定・不安定に関わらず…
      →CAGと早期PCI(必要ならIABP,CABG)
    ・ヘパリンによる抗凝固療法の絶対禁忌あれば
      →保存的治療(出血リスクを考慮してアスピリン)
    ・退院時には
      →アスピリン・β遮断薬・スタチン・ACE阻害薬
  ・NSTEMI
    ・血行動態が不安定
      →CAG・PCI(必要ならIABP)
    ・血行動態が安定
      →保存的治療(出血リスクを考慮してアスピリン)
    ・退院時には
      →アスピリン・β遮断薬・スタチン・ACE阻害薬
      →4~6週間以内にリスクを再評価



       研修医Dr、挿管の練習中。