2012年5月15日火曜日

人工呼吸器について

初期研修医勉強会  担当:Y先生

「人工呼吸器について」


1.人工呼吸器のモードと時相変数
・Continuous Mandatory Ventilation(CMV)
  →すべての一回換気が人工呼吸器の決めたパターンで繰り返される
  ・Volume Control(VC)
    →1回換気量を一定にするよう換気が行われる
  ・Pressure Control(PC)
    →換気圧を一定にするよう1回換気が行われる
Continuous Spontaneous Ventilation(CSV) :
  →患者自身の吸気で開始(トリガー)
  →患者自身の吸気終了で呼気相に移る(サイクル)。
  ・Pressure Support Ventilation(PSV)
    →吸気相に陽圧をかけて圧支持する
  ・Continuous Positive Airway Pressure(CPAP)
    →吸気呼気相を通じて一定の陽圧付加
・Flow、Volume、Pressureグラフの解釈
  ・PCVでは気道内圧一定。
  ・VCVではフロー(または1回換気量)が一定。
  ・フローの時間積分は換気量になる。
  ・換気量を時間微分するとフローになる。
  ・肺&胸壁コンプライアンスが機能的残気量周辺でほぼ一定と仮定
    →吸気量とPplateau(肺胞内圧)はほぼ比例する。
  ・Ppeak:気道抵抗、肺、胸郭のコンプライアンスを反映
  ・Pplateau:肺・胸郭のコンプライアンスを反映。
    →ほぼ肺胞圧に等しい。
    →人工呼吸器誘発性肺障害(VILI)に関係。
        →よってPpeak-Pplateauは気流の駆動圧。
        →気道抵抗を反映。
・時相変数
  →1回換気において吸気を成立させるために必要な設定
  ①吸気の開始:トリガー
  ②吸気過程中に一定に制限される量:リミット
  ③吸気の終了(=呼気の開始):サイクル
2.PaCO2と酸素化を決定する因子
  ・分時CO2排出量=分時体内CO2産生量(=一定)……①
  ・PaCO2=PCO2(肺胞気)とすると
    →分時CO2排出量=分時換気量×PCO2(肺胞気)
               =1回換気量×RR×PaCO2……②
   →よってRR×1回換気量×PaCO2=一定
   →体内CO2産生が上昇すればPaCO2は上昇
   →分時換気量が上昇すればPaCO2は低下
  ・分時換気量上昇
    ・脳圧亢進、アシドーシス(敗血症、薬物中毒等)、発熱、
     体内CO2産生量増加、発熱(感染症、薬剤性、膿瘍等)
       炎症(熱傷、膵炎等) 異化亢進状態
・酸素化を決定する因子
  →いかに肺胞毛細血管に酸素分圧をかけるか
  ①酸素分圧(FiO2)を上げる  
  ②平均気道内圧/容量を上げる
   →同じ換気量でもVCV   →PEEPをかける    
   →PCVにおいて吸気時間を長くする

・ブレイク
・「フルートの魅力」
 

3.人工呼吸中のアラーム対処
  →アラームを消音する…ダメ
  →原因を検索する
・気道内圧・呼気分時換気量が低下したとき
   →患者自身の呼吸数・換気量の低下の有無を確認
  ・Ppeakのみ上昇していたら(=気道抵抗の上昇)
    ・喀痰によるチューブ・人工鼻の詰まり    
    ・チューブの折れまがり、噛み    
    ・気管支攣縮
  ・Pplateauも上昇していたら(=肺コンプライアンスの低下)
    ・片肺挿管、腹圧上昇、auto-peep    
  ・患者-呼吸器不同調    
  ・無気肺、気胸、肺水腫
・急激に呼吸状態が悪くなったときにすべきこと
  1.用手換気に切り替える。
  2.PpeakとPplateauを評価する
    ・気道抵抗の上昇?→気管内吸引など
    ・肺コンプライアンスの低下?→気胸を疑うなど
  3.肺塞栓症や患側を下にする体位変換なども考える

・まとめ
  ・モードはCMVとCSV、CMVにはVCとPC
  ・VCは容量リミットタイムサイクル、PCは圧リミットタイムサイクル
  ・Pplateauは肺胞内圧→VILIに関係
  ・Ppeak‐Pplateauは気道抵抗を反映する
  ・PaCO2は分時換気量、酸素化は平均気道内圧で制御する
  ・アラームが鳴ったら原因を考える