2015年4月28日火曜日

新しい専攻医Drを迎えました

新年度を迎え、神戸市立医療センター中央市民病院・麻酔科では、
新たに4人の専攻医の先生方を迎えました。










当院初期研修医から1名、
全国から3名、合計4名の先生方が当院専攻医に加わりました。
新たな先生方を迎えて、これからもさらに安全な周術期管理を提供すべく、
スタッフ一同頑張っていこうと思います。


なお神戸市立医療センター中央市民病院・麻酔科では、
2016年度採用の専攻医の先生を募集しています。
見学は随時可能です。詳細は病院公式HPを御覧ください。

2015年4月24日金曜日

悪性高熱症

「初期研修医勉強会」  担当:S先生

「悪性高熱症について」

・悪性高熱症とは
 ・全身麻酔による最も死亡率の高い合併症
・歴史 
 ・1962年 Denboroughらによって発表されたオーストラリアでの報告
 ・1975年 Gaisford Harrisonがダントロレンによる治療を発見
 ・1982年 ヒトでダントロレンによる治療の有効性を確認
・疫学
 ・頻度は・・・
   →完全静脈麻酔(TIVA)の普及に伴い頻度は減少
   →全身麻酔症例 20000 人に 1 人
 ・男女比3.4:1、30歳以下(とくに小児)に多い
 ・死亡率はダントロレンにより死亡率は劇的に改善
 ・しかし依然10-15%と高値
・臨床症状
 ・体温上昇(40℃以上)
 ・筋硬直
 ・横紋筋融解
 ・低酸素血症
 ・ミオグロビン尿
 ・代謝性アシドーシス
 ・高K血症
 ・不整脈など
・鑑別診断
 ・鎮痛・鎮静・筋弛緩・換気の不足
 ・感染
 ・腹腔鏡手術におけるEtCO2の増加
 ・移植反応
 ・薬物乱用
 ・アルコール離脱症候群
 ・悪性症候群
 ・セロトニン症候群
 ・甲状腺クリーゼ
 ・褐色細胞腫・・・
・病態生理
 ・悪性高熱症の本態
  →骨格筋の異常な代謝亢進状態
 ・骨格筋は全体重の40%
  →骨格筋の代謝亢進は全身の代謝に重大な影響をもたらす
・CICR(Ca-induced Ca release)機構
 ・Ca遊離速度を亢進させる因子のうち、
  CaそのものがCa放出を促進させる系(positive feedback)
 ・生理的には、急激な筋収縮を得るために、
  激しく細胞内Ca濃度を上昇させるための機構
 ・通常はCa取り込み速度>放出速度であるため、
  一旦CICR機構が発動しても、細胞内Ca濃度はすぐに低下し、
  CICR機構は停止する
 ・ある素因を持つ患者が、誘引にさらされると、
  Ca放出速度>取り込み速度となり、
  CICR機構を止める事ができず、
  細胞内Caが異常に上昇し制御できなくなる。
・誘引
 ・麻酔薬による誘発
   ・揮発性吸入麻酔薬
     →ハロタン,エンフルラン,イソフルラン,
      デスフルラン,セボフルランなど
 ・脱分極性筋弛緩薬(スキサメトニウムなど)
 ・アミノフィリン,テオフィリン,アミド型局所麻酔薬など
 ・非麻酔時の誘発
  ・運動、熱射病などの高体温
・ハロタン
  →リアノジン受容体を活性化、SERCAを阻害
  →細胞内Ca↑
・スキサメトニウム
  →Ach受容体にAchと競合して結合し、持続的脱分極をもたらす
  →CICR機構を促進、細胞内Ca↑
・患者素因
 ・骨格筋の筋小胞体のリアノジン受容体の異常
  (Ca感受性亢進、最大Ca放出速度の増大)
 ・T管上のジヒドロピリジン受容体異常
 ・その他Ca再取り込み異常など
・参考その1
 ・Duchenne型、Becker型などの筋ジストロフィー
   →ハロタンやスキサメトニウムを用いると、
    高K血症・ミオグロビン尿などの
    悪性高熱類似症状が出現することがある。
   →厳密には機序は異なるとされている。
   →先天性筋疾患をもつ患者もこれらの薬物の使用を避ける。
・以下の疾患は悪性高熱リスクではない。
  ・骨形成不全症
  ・ヌーナン症候群
  ・先天性多発性関節拘縮症
  ・ミオトニア
  ・悪性症候群
・遺伝性
 ・悪性高熱には家族性がある
 ・ヒトでは病態関連遺伝子の変異点が複数存在
   →常染色体優性遺伝する
   ・点変異が単一でない
   →素因を持っていても発症時の症状や重症度は患者毎に異なる
 ・ブタの悪性高熱はすべて1つの点変異が原因
・悪性高熱感受性の判定
 ・ハロタンまたはカフェイン(筋小胞体からのCa放出を促進)
  を用いた骨格筋生検標本の収縮検査
 ・血清CK値測定による筋膜の透過性の評価
 ・DNA解析による変異の同定(ブタの場合はこれだけで特定可能)
・治療
 ・特効薬:ダントロレン
   ・筋弛緩薬の1つ。
   ・リアノジン受容体に結合し、
    T管から筋小胞体への興奮の伝達過程を遮断
    →筋小胞体からのCa2+の遊離を抑制。
   ・悪性高熱症の類似疾患である悪性症候群の特効薬でもある
・発症を疑うポイント
 ・咬筋の痙攣によって開口困難
 ・誘因薬物の使用後、咬筋の痙攣や全身の硬直
   →その後換気が難しい・または挿管が難しい
 ・体温が上昇するのはやや遅れて発現する徴候
 ・適切な換気、十分な流量、人工呼吸器に問題が無いにもかかわらず
  EtCO2↑、SpO2↓、頻脈、頻呼吸など
 ・その他患者の皮膚の色・循環・体温・尿の色・
  四肢の状態・筋肉の緊張など
・実際の対応
  ・応急処置
    ・助けを呼ぶ
    ・ダントロレンを持って来てもらう。
    ・原因となる麻酔薬を中止し、手術も中止する
    ・純酸素で通常の2~3倍の過換気を行う
    ・太い静脈路を確保し、冷却した輸液を15ml/kg行う
    ・その他全ての方法を用いて冷却
    ・ダントロレンを投与(2.5mg/kg)、徴候が収まるまで同じ量を繰り返す
   ・電解質(特にK)をチェック
    ・ABG check。
  ・必要なら動脈圧ライン、CVライン。
    ・GI療法、メイロン投与、凝固検査、CK check、ミオグロビン測定。
  ・不整脈に対してはACLSプロトコルに従って。
  ・Ca blockerはダントロレン使用中は避ける。
  ・尿量 1ml/kg/hを確保
  ・厳密な経過観察(25%で症状が再発)
     →少なくとも24時間は継続チェックが必要。
・ダントロレンの費用対効果
  ・アメリカの5316の全てのASCでダントロレンを
   1年間36バイアル常備する総コストは646万ドル
  ・アメリカの1年間の悪性高熱患者数は47人
   そのうちダントロレンの使用によって救命できる数は
   47×(80%−10%)=32.9人
  ・ICER=薬物の使用によって1人を助けるのにかかる費用
      =646万ドル/32.9人
      =19.6万ドル/人
  ・the values of statistical life (VSL):統計的生命の価値
    →アメリカのFDA、EPAなどの規制局が用いている基準によると、
     医療統計学的に、患者1人の命を救うのにかかる費用が
     400~1000万ドルまでに治まれば費用対効果は良いとされる
  ・ダントロレン36バイアルを常備した際のICER
    =19.6万ドル/人<400万ドル/人
    →ダントロレンの費用対効果は良い!


2015年4月23日木曜日

筋弛緩薬まとめ

「麻酔科勉強会」 担当:T先生

「筋弛緩薬まとめ」

・筋弛緩薬の分類
 ・脱分極性筋弛緩薬
     ・超短時間作用型(スキサメトニウム)
 ・非脱分極性筋弛緩薬
     ・短時間作用型(mivacurium)
     ・中時間作用型(ロクロニウム,ベクロニウム)
     ・長時間作用型(パンクロニウム)
・効果発現時間、効果持続時間、代謝経路、副作用を理解。
・アセチルコリン受容体において
  ・脱分極性筋弛緩薬
    ・あたかもAChのようにふるまう
      →AChEにより分解されない
      →持続的脱分極を引き起こす
      →筋肉は興奮しなくなる
  ・非脱分極性筋弛緩薬  
    ・ACh受容体に結合
      →受容体を活性化させない
      →筋肉は興奮しない
・脱分極性筋弛緩薬
  ・スキサメトニウム(SCh)のみ臨床で利用。
  ・筋に線維束攣縮が起こる。
  ・作用発現時間と作用持続時間が短い。
     ・作用発現 0.5-1.0min
     ・作用持続 5.0-10.0min (0.5-1.5 mg/kg使用)
  ・肝臓で作られた血漿ChEにて分解
  ・副作用が多い
    ・不整脈
       ・交感神経節のACh受容体を刺激
        →頻脈、高血圧を引き起こす
       ・副交感神経節のACh受容体を刺激
        →徐脈、低血圧を引き起こす
        →SCh投与1-3分前のアトロピン投与で防止
    ・高カリウム血症
       ・通常、血清カリウム濃度が0.5-1.0mEq/L上昇
       ・特に広範囲熱傷、上位及び下位運動ニューロン疾患、
        広範な筋挫傷、筋疾患患者では危険。
       ・Extrajunctional receptorが関与
          →胎児型ACh受容体と呼ばれている。
           α, α, β, γ, δサブユニットからなる。
          ・熱傷、運動ニューロン障害、敗血症などで発現。
          ・イオンチャンネルの長期開存により
           高カリウム血症を引き起こす。
       ・筋肉が普通の状態に戻れば大丈夫
         →臨床的に推測することは困難
         →熱傷後24時間から2年は投与しない方が無難
    ・筋肉痛
       ・線維束攣縮
         →腹部、背部、頸部の筋肉痛を訴えることが多い。
       ・頸部痛は“咽頭痛”と表現されることもある。
       ・外来手術後の若い患者に多い。
       ・少量の非脱分極性筋弛緩薬を前投与すると発生率は低下。
       ・治療はNSAIDs
    ・眼内圧上昇
    ・胃内圧上昇
    ・頭蓋内圧上昇
    ・悪性高熱症

・非脱分極性筋弛緩薬
   ・血液脳関門、胃腸上皮、胎盤通過性が無い
     →中枢神経作用や胎児への影響はない。
     →経口摂取では効果が無い。
   ・日本では主にベクロニウムとロクロニウムが使用可能。
   ・ベクロニウム
     ・20-30% は肝臓で代謝、40-75%は胆汁中に排泄、
      15-25%は腎臓から排泄される。
     ・代謝産物である3-desacetylvecuroniumは
      ベクロニウムの50-70%の活性を持ち、腎不全では蓄積する。
     ・心循環系に対する作用はほとんどない。
   ・ロクロニウム
     ・効果はベクロニウムの1/6程度
     ・70%は肝臓を介して胆汁中に、
      30%は腎臓を介して尿中に排泄される。
     ・腎不全、肝機能不全では作用の遷延がみられる。

・筋弛緩作用に関連する因子
  ・筋弛緩作用を増強
    →揮発性麻酔薬、アミノグルコシド系抗菌薬、局所麻酔薬、
     抗不整脈薬、ダントロレン、マグネシウム、リチウム
  ・筋弛緩作用を減弱
    →カルシウム、ステロイド、抗てんかん薬

・筋弛緩モニタリング
  ・末梢神経の電気刺激による反応の評価は、
   筋弛緩薬の効果判定に最も有用である。
  ・しかしアメリカやヨーロッパの麻酔科医の30-70%しか利用していない。
  ・モニタリングは筋弛緩薬の追加や拮抗薬の量決定に有用であり、
   PACU(postanesthesia care unit)での合併症を減らした。
 ・モニタリング法
   ・手根や肘の尺骨神経を刺激し、母指内転筋の反応を見る方法。
   ・顔面神経を刺激し、眼輪筋の反応を見る方法。
      →末梢神経の刺激方法には、いろいろなパターンがある。
 ・神経刺激のパターン
   ・単一刺激(single twitch)
     ・0.2msec持続する刺激を0.1Hz(10秒に1回)で与える。
     ・刺激電流の大きさは“最大刺激電流”を用いる。
     ・筋弛緩投与前のコントロール値との比で評価する。
     ・コントロール値にまで回復しても、
      まだ受容体の75%を筋弛緩薬が占拠している可能性あり。
   ・四連刺激(train of four;TOF)
     ・0.5秒ごとに2Hzの刺激を4回与える。
     ・1発目と4発目の収縮の高さを比較し評価する。
   ・テタヌス刺激
   ・Double-burst刺激
     ・3つの50Hzの刺激(第1刺激)が行われ、
      その0.75秒後に2-3回50Hzの刺激(第2刺激)を与える。
     ・第2刺激に対する反応が第1刺激に対する反応より弱ければ、
      筋弛緩の残存を示唆する。
     ・TOFより感度が高い。
   ・Post-tetanic count
     ・50Hzのテタヌス刺激を5秒間与えた後、
      3秒後から1Hzで単一刺激を与えた時にみられる
      収縮の数を数える。
     ・テタヌス刺激後に単一刺激を行うと筋の反応が増強される(PTP)
     ・TOFでは何も反応がみられないような
      深い筋弛緩を評価するのに用いられる。

・筋弛緩作用の拮抗
  ・抗コリンエステラーゼ薬(ネオスチグミン)やスガマデクスなど。
  ・筋弛緩の残存
    →気道閉塞、不十分な換気、低酸素血症リスク(発生率0.8%-6.9%)
  ・肥満、麻薬の使用、緊急手術、長時間手術
    →上記悪影響を引き起こす要因となる。
  ・ネオスチグミン
    ・コリンエステラーゼ阻害によりAChが増加。
     →ニコチン作用性受容体とムスカリン作用性受容体に作用。
     →ムスカリン作用で徐脈、縮瞳、分泌物増加。
     →この作用をブロックするために、アトロピンを併用。
  ・スガマデクス
    ・ステロイド性筋弛緩薬を包接することで拮抗する。
    ・作用発現が迅速で、深い筋弛緩の拮抗も可能。
    ・心血管系に影響を及ぼさない。
    ・腎臓排泄性であり、腎不全患者では注意して使用。


集中治療とTEE

「ICU勉強会」  担当:M先生

「集中治療とTEE」

・ICUにおけるTEEの適応
  →TTEではっきりとした情報が得られなくて、
   TEEで得られた情報で管理が変わると「期待」できる患者のみ
・ICUにおけるエコーの重要性
  ・ICUにおいて、急激な血行動態が起こったときには、
   まず心臓の動きを評価するべき
  ・急激な血行動態変化を伴うときには心臓の収縮能だけでなく、
   拡張能も調べるべき
 →TTEではダメなのか?
・TEE vs TTE
  ・TTEの後TEEを行い新しい所見が発見された確率:27-98%
  ・TEEの所見で血行動態が安定した症例:80%
・TTE所見を見えにくくする因子
  ・ドレッシングテープ
  ・挿管チューブ
  ・人工呼吸による過膨張
  ・気胸
  ・縦隔気腫
・TTEが失敗する因子
  ・体重増加>10%
  ・PEEP>15cmH2O
  ・胸腔ドレーン
  ・強心薬
  ・血管収縮薬
 →心臓手術後ICUではほとんどの患者が上記条件を満たす。。。
・TTEの技術的進歩
  ・ハーモニックイメージ
  ・デジタル処理
    →これらの進歩のおかげで
     TTEによる心原性ショックの原因検索
      ・感度:100%
      ・特異度:95%
・他のデバイスではダメなのか?
  ・TEE vs 肺動脈カテーテル(PAC)
    ・セットアップからモニタリングできるまでの時間
       ・PAC:63分
       ・TEE:19分
    ・PACを留置している低血圧状態の患者
       →63%がTEEによって状態が改善した
・心外術後でPAC留置している患者
   →血行動態と所見が完全に一致したのはTEEのみ
・TEEの安全性について
  ・TEEはsemi-invasiveである
  ・ある程度の修練をつんだ医師が行えば
  「ほとんど」合併症は起きない。
  ・7200例の心臓血管手術で死亡率は0%、
   その他の合併症発生率は0.2%であった
・結局のところ
  ・「TTEではっきりとした情報が得られなくて、
    TEEで得られた情報で管理が変わると「期待」できる患者のみ」
    がICUにおけるTEEの適応であろう。

2015年4月21日火曜日

硬膜外麻酔の合併症

「麻酔科勉強会」 担当:H先生

「硬膜外麻酔の合併症」

・1969年のDawkinsの報告が有名
・胸・腰部硬膜外麻酔では血管穿刺が2.9%と最も多い
・次いで硬膜穿刺は2.5%
・永続的な神経麻痺は0.02%(5000回に1回)
・1981年にKaneらが45783例で検討しているが神経麻痺は3例のみ(17000回に1回)
・2004年の日本麻酔科学会の偶発症調査では
   ・脊髄損傷 7件(78000回に1回)
   ・末梢神経損傷 22件(25000回に1回)
・末梢神経障害の発生頻度のメタ解析
   ・硬膜外麻酔 0.02%
   ・腕神経叢ブロック(斜角筋間法) 2.8%
                       (腋窩法) 1.5%
   ・大腿神経ブロック 0.3%
  →硬膜外麻酔よりブロックのほうが合併症が多い。

・血管損傷・血管穿刺
  ・McNeilらの妊婦685人に対しての研究
    →18%の患者で針の刺入とカテーテルの挿入時に出血している
    →針よりもカテーテル挿入での出血が多い
  ・大藤らはカテーテルの材質も関与していると報告している。
    ・先の曲がりにくいナイロン製のカテーテル
       →22/404人(5.4%)で血管損傷が発生
       →柔らかいポリウレタン製のカテーテルの使用では
        407人で1人もいなかった。
  ・無痛分娩での研究
    ・抵抗消失確認後にカテーテル挿入→9/100で逆血
    ・ブピバカイン10ml注入後に挿入→3/100に減少
  ・坐位、水平側臥位、頭低位側臥位の順に血管内留置は減る。
  ・胎児心拍測定用Dopplerプローブを胸骨上におき、
   硬膜外カテーテルから1mlの空気を注入し、
   15秒間心音を聴き、5秒間ヒューっという音が聞こえたときは
   血管内留置と判断する。
  ・20万倍エピネフリン入リドカイン3mlの投与の投与で
   HRが20/min以上上昇するときは血管内留置を疑う。
 →何の所見もなくても血管内留置を常に考える。

・硬膜穿破
  ・無痛分娩において137250人を対象に調査された研究
    →硬膜外穿破の頻度は0.04-6%とされる
  ・抵抗消失を確認する時に空気を用いるより
   液体を用いたときの方が硬膜穿刺の確率は低くなる。
       →液体を用いることで硬膜は腹側で広がるので
      針先から離れると考えられる。
  ・硬麻針で硬膜穿刺すると52-88%で頭痛が発生する。
     ・穿刺後頭痛 
       ・多くは48時間以内に始まる。
       ・まれに数日から数ヶ月後に発症することもある
       ・女性は2倍の頻度でおきやすい
       ・後頭部から前頭部、首から肩へ放散する
       ・悪心・嘔吐、視覚・聴覚症状を伴うこともある
     ・穿刺後頭痛の治療
       ・脊麻針による頭痛も含め85%は6週間以内に治る
       ・髄液産生を促すために水分摂取を促し、
        必要なら輸液で補う
       ・カフェインが有効で300-500mgを1日2回摂取する
       ・Nsaids
       ・片頭痛の治療薬のトリプタン製剤は有効ではない
       ・生食を硬膜外注入すると頭痛は緩和される
       ・血液パッチ療法は70-98%で頭痛を改善させる
          →20mlの注入で平均4.6椎間ひろがる
     ・ベベルを側方にして硬膜穿刺してしまったときと
      頭側にで穿刺した時の頭痛の程度は結論はでていない。

・脊髄損傷、神経根損傷
  ・神経根は可動性があるため、針から逃げる
  ・穿刺時に感覚異常を訴えることがあっても、
   不可逆的な障害の発生は少ないと考えられる
  ・誤って硬膜穿刺をして突き進んだら・・・
     ・軟膜は感覚神経の受容体はない
     ・脊髄に刺さっても痛みは感じない
     ・脊髄に針が刺さると運動、感覚障害が起こる
     ・薬液の注入で下肢、臀部などに痛みを訴える
・カテーテル遺残、迷入
・硬膜外血腫
  ・穿刺後にヘパリンを併用するものはリスクが7倍となる。
  ・穿刺後出血を伴うとリスクは10倍。
  ・NSAIDs単独使用はリスクとならない。
  ・未分画ヘパリン(UFH)
    ・APTTで評価可能であるので穿刺、抜去前に評価する
    ・UFH投与によるリスクの増大は
       ・穿刺後一時間以内の投与
       ・穿刺時出血
       ・他の抗凝固、抗血小板薬との併用
    ・UFHによる血腫の半数は抜去時に起こる
       →中止後2-4時間以上あける
    ・4日以上投与されている場合
       →HITを考慮し血小板数をチェックしたほうが良い
  ・ワルファリン
    ・ワルファリン投与中はOP3-5日前に投与中止し、
     未分画ヘパリンに変更
    ・ヘパリンは4時間前までに投与中止し
      PT-INR<1.5 or ACT<180を確認する
    ・カテーテルの抜去もPT-INR<1.5で行う
・硬膜外膿瘍
  ・Kindlerらの調査では13000回の硬膜外留置に1回の頻度で起こる  
  ・他にも7140回に1回、1930回に1回など報告にばらつきがある
  ・起炎菌は黄色ブドウ球菌が57-73%を占める
  ・多くは他の感染部位からの血行性感染で直接感染は少ない
・網膜出血
  ・硬膜外麻酔後に網膜出血をきたした報告がある
  ・急激な硬膜外腔圧と髄液圧の上昇によって
   網膜静脈圧が上昇が出血を来す原因と考えられる
  ・いずれも一度に多くの局所麻酔薬を使用されている
・誤薬投与
  ・いろいろな薬剤の硬膜外誤投与が報告されている。
  ・神経障害を残した報告はカリウムのみ。
  ・生食を加えて希釈するのが良いかは不明。
    →範囲を広げてしまう可能性がある。
・局所麻酔薬中毒
・悪心嘔吐
  ・低血圧、交感神経遮断による消化管の蠕動運動亢進
    →アトロピンで対応可能
  ・オピオイドの硬膜外投与(モルヒネ>フェンタニル)
    →ドロペリドール
    →低用量ドロペリドールはQTを延長させない。