「麻酔科勉強会」 担当:T先生
「筋弛緩薬まとめ」
・筋弛緩薬の分類
・脱分極性筋弛緩薬
・超短時間作用型(スキサメトニウム)
・非脱分極性筋弛緩薬
・短時間作用型(mivacurium)
・中時間作用型(ロクロニウム,ベクロニウム)
・長時間作用型(パンクロニウム)
・効果発現時間、効果持続時間、代謝経路、副作用を理解。
・アセチルコリン受容体において
・脱分極性筋弛緩薬
・あたかもAChのようにふるまう
→AChEにより分解されない
→持続的脱分極を引き起こす
→筋肉は興奮しなくなる
・非脱分極性筋弛緩薬
・ACh受容体に結合
→受容体を活性化させない
→筋肉は興奮しない
・脱分極性筋弛緩薬
・スキサメトニウム(SCh)のみ臨床で利用。
・筋に線維束攣縮が起こる。
・作用発現時間と作用持続時間が短い。
・作用発現 0.5-1.0min
・作用持続 5.0-10.0min (0.5-1.5 mg/kg使用)
・肝臓で作られた血漿ChEにて分解
・副作用が多い
・不整脈
・交感神経節のACh受容体を刺激
→頻脈、高血圧を引き起こす
・副交感神経節のACh受容体を刺激
→徐脈、低血圧を引き起こす
→SCh投与1-3分前のアトロピン投与で防止
・高カリウム血症
・通常、血清カリウム濃度が0.5-1.0mEq/L上昇
・特に広範囲熱傷、上位及び下位運動ニューロン疾患、
広範な筋挫傷、筋疾患患者では危険。
・Extrajunctional receptorが関与
→胎児型ACh受容体と呼ばれている。
α, α, β, γ, δサブユニットからなる。
・熱傷、運動ニューロン障害、敗血症などで発現。
・イオンチャンネルの長期開存により
高カリウム血症を引き起こす。
・筋肉が普通の状態に戻れば大丈夫
→臨床的に推測することは困難
→熱傷後24時間から2年は投与しない方が無難
・筋肉痛
・線維束攣縮
→腹部、背部、頸部の筋肉痛を訴えることが多い。
・頸部痛は“咽頭痛”と表現されることもある。
・外来手術後の若い患者に多い。
・少量の非脱分極性筋弛緩薬を前投与すると発生率は低下。
・治療はNSAIDs
・眼内圧上昇
・胃内圧上昇
・頭蓋内圧上昇
・悪性高熱症
・非脱分極性筋弛緩薬
・血液脳関門、胃腸上皮、胎盤通過性が無い
→中枢神経作用や胎児への影響はない。
→経口摂取では効果が無い。
・日本では主にベクロニウムとロクロニウムが使用可能。
・ベクロニウム
・20-30% は肝臓で代謝、40-75%は胆汁中に排泄、
15-25%は腎臓から排泄される。
・代謝産物である3-desacetylvecuroniumは
ベクロニウムの50-70%の活性を持ち、腎不全では蓄積する。
・心循環系に対する作用はほとんどない。
・ロクロニウム
・効果はベクロニウムの1/6程度
・70%は肝臓を介して胆汁中に、
30%は腎臓を介して尿中に排泄される。
・腎不全、肝機能不全では作用の遷延がみられる。
・筋弛緩作用に関連する因子
・筋弛緩作用を増強
→揮発性麻酔薬、アミノグルコシド系抗菌薬、局所麻酔薬、
抗不整脈薬、ダントロレン、マグネシウム、リチウム
・筋弛緩作用を減弱
→カルシウム、ステロイド、抗てんかん薬
・筋弛緩モニタリング
・末梢神経の電気刺激による反応の評価は、
筋弛緩薬の効果判定に最も有用である。
・しかしアメリカやヨーロッパの麻酔科医の30-70%しか利用していない。
・モニタリングは筋弛緩薬の追加や拮抗薬の量決定に有用であり、
PACU(postanesthesia care unit)での合併症を減らした。
・モニタリング法
・手根や肘の尺骨神経を刺激し、母指内転筋の反応を見る方法。
・顔面神経を刺激し、眼輪筋の反応を見る方法。
→末梢神経の刺激方法には、いろいろなパターンがある。
・神経刺激のパターン
・単一刺激(single twitch)
・0.2msec持続する刺激を0.1Hz(10秒に1回)で与える。
・刺激電流の大きさは“最大刺激電流”を用いる。
・筋弛緩投与前のコントロール値との比で評価する。
・コントロール値にまで回復しても、
まだ受容体の75%を筋弛緩薬が占拠している可能性あり。
・四連刺激(train of four;TOF)
・0.5秒ごとに2Hzの刺激を4回与える。
・1発目と4発目の収縮の高さを比較し評価する。
・テタヌス刺激
・Double-burst刺激
・3つの50Hzの刺激(第1刺激)が行われ、
その0.75秒後に2-3回50Hzの刺激(第2刺激)を与える。
・第2刺激に対する反応が第1刺激に対する反応より弱ければ、
筋弛緩の残存を示唆する。
・TOFより感度が高い。
・Post-tetanic count
・50Hzのテタヌス刺激を5秒間与えた後、
3秒後から1Hzで単一刺激を与えた時にみられる
収縮の数を数える。
・テタヌス刺激後に単一刺激を行うと筋の反応が増強される(PTP)
・TOFでは何も反応がみられないような
深い筋弛緩を評価するのに用いられる。
・筋弛緩作用の拮抗
・抗コリンエステラーゼ薬(ネオスチグミン)やスガマデクスなど。
・筋弛緩の残存
→気道閉塞、不十分な換気、低酸素血症リスク(発生率0.8%-6.9%)
・肥満、麻薬の使用、緊急手術、長時間手術
→上記悪影響を引き起こす要因となる。
・ネオスチグミン
・コリンエステラーゼ阻害によりAChが増加。
→ニコチン作用性受容体とムスカリン作用性受容体に作用。
→ムスカリン作用で徐脈、縮瞳、分泌物増加。
→この作用をブロックするために、アトロピンを併用。
・スガマデクス
・ステロイド性筋弛緩薬を包接することで拮抗する。
・作用発現が迅速で、深い筋弛緩の拮抗も可能。
・心血管系に影響を及ぼさない。
・腎臓排泄性であり、腎不全患者では注意して使用。