2013年2月28日木曜日

周術期末梢神経障害

初期研修医勉強会  担当:N先生

「周術期末梢神経障害」

・380,680例の麻酔で、112例の末梢神経障害 (0.03%)
・高血圧、喫煙、糖尿病が有意なリスク
・全身麻酔・硬膜外麻酔での頻度が高かった。
・脳外科・心臓血管外科・一般外科・整形外科で神経障害の頻度高い。
・砕石位では?
  ・991例で15例の下肢末梢神経障害(1.5%; 95% CI, 0.8–2.5%)
  ・閉鎖神経5例
  ・大腿神経4例
  ・坐骨神経3例
  ・腓骨神経3例
  ・14例が知覚異常、4例が灼熱痛、筋力低下は無し
  ・手術終了後4時間以内に症状出現
  ・リスクは2時間以上手術(P=0.0006)
  ・糖尿病と喫煙はリスクは有意なリスクにならず
  ・14例では4ヶ月以内に回復した
・神経伝導速度検査
  ・軸索障害→振幅低下→Waller変性
  ・ミエリン鞘障害→伝導遅延
  ・受傷後も繰り返しの検査が必要
  ・直後の検査のみでは軸索障害を見逃す恐れ
  ・神経障害からの回復の推移を観察
・総腓骨神経について
  ・運動:足関節背屈
  ・感覚:下腿外側〜足背面
  ・体位
    ・切石位での腓骨神経の圧迫により生じる(category B)
    ・腓骨頭部を守ることが肝要
    ・リスク因子は?
      ・ベッド
      ・足台
      ・離被架・腹壁鉤引っ掛ける棒などの金属
      ・弾性ストッキング
      ・フットポンプ
      ・膝関節屈曲
・大腿神経
  ・運動:股関節屈曲、膝関節伸展
  ・感覚:大腿前面
  ・体位
  ・症例報告レベルでは切石位での股関節外転・外旋による牽引
                   (category B3 evidence).
  ・エキスパートオピニオンでは、
    ・仰臥位での股関節伸展
    ・切石位では、股関節屈曲は何度でもリスク



筋弛緩薬

初期研修医勉強会  担当:S先生

「筋弛緩薬」

・筋弛緩薬の歴史
 ・1516年 南アメリカの矢毒クラーレの文献的報告
 ・1821年 Sir Benjaminによるクラーレの動物実験
     「人工呼吸していれば動物は死なない」
 ・1906年 サクシニルコリンの合成
 ・1932年 ネオスチグミンの合成
 ・1935年 クラーレから有効成分d-ツボクラリンを生成
 ・1942年 BeecherとToddが虫垂切除術に
       d-ツボクラリンを初めて使用
 ・1952年 Scurrによるサクシニルコリンの臨床応用
 ・1973年 ベクロニウムの開発
 ・1994年 ロクロニウムの臨床応用
 ・2008年 スガマデクスの発売
・非脱分極性筋弛緩薬
   ・主にステロイド型
   ・ベンジルイソキノリニン型
 ・作用機序について
 ・TOFウォッチについて
 ・fade現象
   非脱分極性筋(+)、脱分極性(-)
 ・fasciculation
   非脱分極性(-)、脱分極性(+)
・筋弛緩薬の分布モデル
  ・中心コンパートメント:血液
  ・末梢コンパートメント:各臓器、脂肪
  ・効果部位:筋肉
  ・薬物排泄:肝臓、腎臓
 →筋弛緩薬は中心コンパートメントに投与され、
  迅速に分布し平衡状態となる。
・筋弛緩を打ち消すには??
  ①Ach放出を増加させる
  ②Ach分解を抑制する
  ③筋弛緩薬の分解促進
  ④筋弛緩薬の神経筋接合部の除去
・ネオスチグミン
   →Achエステラーゼを阻害
   →神経間隙中のAchが増加
   →相対的に接合部のAchが増加
   →筋弛緩状態から回復。
・ネオスチグミンの問題点
 ・作用発現に時間が必要
 ・深い筋弛緩では拮抗作用は不確実
 ・天井効果(ceiling effect)
 ・ムスカリン作用
 ・高用量投与による逆説的筋弛緩
・スガマデクス
 ・1999年、Anton Bom博士が側鎖が修飾。
 ・ロクロニウムに高い親和性を持つ物質が合成
 ・ロクロニウムを1:1で抱合、失活させる。
 ・抱合体は腎排泄。
・スガマデクスの利点
 ・迅速な拮抗作用
 ・天井効果なし
 ・ムスカリン作用なし
 ・逆説的筋弛緩なし
・スガマデクスの欠点
 ・薬剤相互作用あり。
 ・ベンジルイソキノリン型筋弛緩薬や脱分極型筋弛緩薬
   →拮抗できない
 ・過小投与によるリバウンド現象
 ・トレミファン, flucloxacillin(日本未発売の抗菌薬)
  フシジン酸(抗生剤)との併用により抱合離解の可能性
 ・経口避妊薬との併用により、血中濃度が減弱。
・リバウンド現象
  →中心コンパートメント(血液)で筋弛緩薬が除去、
   濃度勾配に従い末梢コンパートメントから
   筋弛緩薬が移動し効果を発現
・スガマデクスの腎機能障害患者への投与
  ・腎機能障害ある方が拮抗に時間がかかる。
  ・重傷腎機能患者にも速やかに拮抗は可能。
  ・スガマデクスは透析膜を通過せず長く血中に留まる。
  ・結合離解などの可能性指摘されている。
・スガマデクスの肥満患者への投与
  ・BMI>40以上の患者群
    →実体重換算よりIBW+40%程度の投与が望ましい。
・スガマデクス投与後再挿管
  ①ベンジルイソキノリン系筋弛緩薬の使用
  ②スキサメトニウムの使用
  ③ロクロニウムの大量投与
 ・理論的には・・・
  分子量(スガマデクス2178、ロクロニウム610)より、
  スガマデクス4mg/kgのリバースは
  1.2mg/kgのロクロニウムで可能。


2013年2月15日金曜日

妊婦の非産科手術の麻酔

麻酔科勉強会  担当:A先生

「妊婦の非産科手術の麻酔」

・妊婦の生理
  ・妊娠前との違い
    ①ホルモン:プロゲステロン↑
    ②出産に備える体
    ③増大する子宮
  ・呼吸器系
    ・呼吸器系の粘膜毛細血管の怒張
      →挿管困難のリスク
    ・1回換気量の増加、分時換気量の増加、酸素消費量の増大
      →低酸素のリスク
    ・機能的残気量減少
      →低酸素のリスク
  ・循環器系
    ・心拍出量増加、血液量の増加、血液凝固因子の増加
      →塞栓症のリスク
    ・下大静脈の圧迫(妊娠18~20週以降)
      →低血圧のリスク
  ・消化器系
    ・下部食道括約筋圧の低下(妊娠18~20週以降)
      →誤嚥のリスク
  ・中枢神経系
    ・硬膜外腔の血管怒張、疼痛閾値上昇
      →麻酔効果の増大
・妊婦の非産科手術
   →頻度:0.3~2.2%
・手術適応となる疾患
  ①急性虫垂炎 1/500-1500
  ②胆石・胆嚢炎 
  ③卵巣疾患(卵巣茎捻転、卵巣嚢腫破裂、卵巣腫瘍など)
  ④外傷
  ⑤乳癌
  ⑥子宮頸癌
  ⑦腸閉塞など・・・
・診断の困難さ
  ・子宮の増大により変わる位置の変化
    →虫垂炎の誤診の頻度は36%
  ・CTなどの使用が困難
    →50mGy以下では奇形が生じることはない
    →10mGy以上で小児悪性腫瘍の発生リスク増加
・手術のタイミング
  ・緊急手術
    ・時期は関係なくやるしかない。
      →非妊婦と同様に施行。
    ・重症患者では母体の生命を守ることを優先。
    ・週数・手術内容によっては帝王切開先行を考慮。
  ・予定手術
    ・出産後で可能なものは出産後がよい
  ・準予定手術
    ・第2三半期が望ましい
      →流産・早産の頻度が低い
      →器官形成期を避けられる
      →子宮の影響が小さい
    ・流産・早産の頻度が第1三半期で増えるという
     強いevidenceはない。
    ・第2三半期の早期~中期(15~24週)がより望ましい
・催奇形性について
  ①胎児奇形(死亡、体の奇形、成長障害)
  ②機能性奇形(行動学的奇形)
・麻酔薬と催奇形性
  →基本的に日常使用している麻酔関連の薬剤で
   ヒトで催奇形性が証明されている薬剤はない。
・笑気と催奇形性
  ・慢性的な笑気の暴露(手術室で働く女性)で
   先天性奇形、自然流産の危険性が高いという報告あり。
  ・ヒトにおいては妊娠第2三半期に短時間暴露されても
   有害な影響はなかった
・行動学的奇形
  ・NMDA受容体およびGABA受容体と反応する化合物が
   胎児脳細胞のアポトーシスを惹起するという報告
  ・臨床的には証明されていない。
    →しかし麻酔薬への暴露は必要最小限に。
・麻酔の考え方
  ①術式は非妊婦と同様で術者に任せる
  ②区域麻酔が可能なら区域麻酔で
  ③全身麻酔を避ける必要はない
   (帝王切開では全身麻酔は区域麻酔の17倍のリスク
    挿管困難・低酸素・誤嚥・循環動態不安定など)
  ④術後鎮痛に硬膜外麻酔が使用できるなら積極的に使用考慮

・論文
Am J Obstet Gynecol  1989 Nov;161(5):1178-85.
Reproductive outcome after anesthesia and operation during pregnancy
 ・唯一の大規模study。
 ・72万人の妊婦のうち5405人(0.75%)が非産科手術を受けた。
 ・奇形や死産の率は変わらず。
 ・ただ低出生体重児や生後一週間での死亡は増加した。
 ・麻酔・手術の種類は結果に関係ない。

・硬膜外麻酔の利点
  ・全身投与の麻酔薬を減らすことが可能
  ・術後疼痛に対して子宮収縮抑制効果があり
・硬膜外麻酔の注意点
  ・硬膜外腔の血管怒張
  ・血管穿刺に注意
  ・局所麻酔薬投与量は非妊婦より少なくてよい
  ・低血圧
    →交感神経遮断・子宮による下大静脈圧迫で著明な低血圧
・全身麻酔での注意点
  ・挿管困難・低酸素・誤嚥・低血圧に注意
  ・全身麻酔の使用薬の投与量に注意
    ・吸入麻酔薬のMACは妊娠早期より30~40%低下
    ・チオペンタールの導入時の使用量は18~35%低下
    ・プロポフォールは減量の必要なし
  ・EtCO2 32mmHgにkeep
    ・妊婦は生理的に過換気(Progesteroneの影響)
  ・ロピオンは使っていい?
    ・胎児の動脈管閉鎖が生じる可能性がある。
    ・慎重にいくなら妊娠中期まで。
    ・世界的なコンセンサスでは32週までなら投与可能。
・妊婦と腹腔鏡手術
  ・基本的に非妊婦と同様
    ・術後痛が少ない
    ・出血量が少ない
    ・術後イレウスが少ない
    ・術後の癒着が少ない
    ・入院期間の短縮
    ・日常生活への早期復帰(早期離床でDVTも少ない)
  ・腹腔鏡手術の注意点
    ・気腹に伴う腹腔内圧上昇による子宮胎盤血流の減少
    ・胎児のアシドーシスがCO2の吸収から生じる
    ・手技に伴う子宮・胎児への外傷の可能性
    ・増大した子宮と手術体位による呼吸・循環への影響

・妊婦腹腔鏡手術のガイドラインの紹介
Guidelines for Diagnosis, Treatment, and Use of Laparoscopy for Surgical Problems during Pregnancy
Practice/Clinical Guidelines published on: 01/2011 by the Society of American Gastrointestinal and Endoscopic Surgeons (SAGES)


呼吸器外科手術の麻酔

初期研修医勉強会  担当:S先生

「呼吸器外科手術の麻酔」

・呼吸器外科の対象疾患
  →原発性肺癌、転移性肺癌、胸壁腫瘍、縦隔腫瘍
   自然気胸、膿胸、嚢胞性肺疾患、肺胞蛋白症・・・
・呼吸器外科手術の歴史
  ・1880年 経口気管挿管の発明
  ・1990年代初頭 胸部外科手術の黎明期
    ・肺結核に対する肺虚脱術が主
    ・陰圧の手術室と頭部を陽圧に保つボックスを使用
  ・1942年 Carlens気管内チューブ開発
  ・1962年 Robertshawダブルルーメンチューブ開発
・肺の解剖
  ・右肺は上葉(B1,2,3)・中葉(B4,5)
   下葉(B6,7,8,9,10)の3葉。
  ・左肺は上葉(B1+2,3,4,5)・下葉 (B6,8,9,10)の2葉。
  ・右肺上葉支は右肺中間幹より近位でほぼ垂直に分岐。
・側臥位での呼吸生理
  ・肺底部は軽度のシャント流の状態。
    →比較的効率よく換気が可能。
・低酸素性肺血管攣縮(HPV)
    ・肺胞が低酸素状態に
   →血管が収縮
   →低酸素に陥った肺胞への血流が減少。
  ・分離肺換気中の”守り神”
・理論的には・・・
  ・吸入麻酔薬と血管拡張薬は、HPVを抑制する。
  ・静脈麻酔薬と麻薬は影響がない。

・論文1
Effects of propofol vs sevoflurane on arterial oxygenation during one lung ventilation
BJA 98(4):539-44 (2007)
・対象は肺葉切除術を行った80人
・吸入麻酔薬群とTIVA群群に割り当て。
・結果
  →酸素化に大きな変化はなかった。
  →片肺換気に吸入麻酔薬を用いても大きな問題はない。

・分離肺換気について
  ・絶対的適応:やらないと死に至る
    ①肺出血、膿胸
    ②片側肺の重大な異常(気管支瘻、巨大ブラ等)
     により、左右別々の換気が必要な場合
    ③肺胞蛋白症に対する肺胞洗浄
  ・相対的適応
    ・高優先度
       ・胸部大動脈瘤
       ・肺全摘、上葉切除
       ・胸腔鏡下切除
    ・低優先度
       ・中・下葉切除
       ・胸椎切除
       ・食道切除
・ダブルルーメンチューブ(DLT)
  ・左肺用と右肺用がある。
    →主に左肺用が使われる。
  ・大人なら32-41Frを用いる。
  ・チューブの太さは身長と強く相関。
・DLTの位置異常
  ・深すぎる・浅すぎる・位置が逆の3パターン
  ・聴診で正常と思えても、実際は78%に位置異常あり
  ・気管支鏡下での確認は必須
・DLTの利点と欠点
  ・利点
    ・気管内の分泌物を盲目的に吸引可能
    ・両肺"片肺への切り替えが用意
  ・欠点
    ・気道系の変形が強い患者には禁忌。
    ・小柄な患者はサイズが・・・
    ・チューブの入れ替えが必要な場合がある。
    ・挿管困難だと大変。

・論文2
Hypoxemia during One-lung Ventilation
-Prediction, Prevention, and Treatment
Anesthesiology 2009;110:1402-11
・片肺換気中の低酸素血症(SpO2<90%)
・OLVを行った4-10%に出現
・予測因子、予防法、治療についてのreview
・手術側
  ・左肺手術:平均PaO2 280mmHg
  ・右肺手術:平均PaO2 170mmHg
     →右肺手術は低酸素血症の危険因子。
・肺機能検査
  ・検査結果が悪いと、低酸素血症の確率が上がる。
    →ただしFEV1が低いほど酸素化が改善したとの報告も。
・術前血液ガス検査
  ・術前のPaO2が低ければ術中低酸素血症の危険因子。
  ・手術側への灌流(V/Qスキャンによる)
    →手術側への還流が多いほど低酸素血症に陥りやすい。
    →中心に近い、大きな腫瘍ほど酸素化は良好。
・デバイスの確認
  ・DLTは周術期に12%に位置異常あり
  ・側臥位にした状態で位置確認が必要
・手術前の肺機能改善
  ・気管支拡張薬、分泌物低下
・貧血の是正
  ・貧血があるとシャント流が増加
・人工呼吸器の設定
  ①非手術側:無気肺の防止
   →低一回換気量(6-8ml/kg)+中程度PEEP(4-5mmH2O)
  ②手術側:再膨張性肺水腫予防
   →3cmH2O程度のCPAP
・肺血流の是正
  ・NO:換気側の血流を多くするという報告あり
  ・アルミトリン
    ・HPV増強、非換気側の血流を低下
    ・PaO2が130%増強
    ・日本では未発売、毒性あり
・低酸素時の対応
  ・FiO2増加
    ・最も有効。
    ・純酸素の投与は、無気肺を防ぐため避ける。
    ・FiO2は正常時は0.5程度の投与が望ましい。
  ・手術肺の一時的換気
    ・手術を3-5分程度中止し、再膨張させる。
    ・CPAPの併用も有効。
  ・必要ならば手術側肺動脈クランプ。



バレンタインデー、たくさんの差し入れを頂きました。

2013年2月13日水曜日

法医学の世界

麻酔科勉強会  担当:S先生

「法医学の世界」

・法医学ーforensic medicine
・医学→基礎医学
   →応用医学→臨床医学
        →衛生学
        →法医学→基礎法医学
            →応用法医学
・基礎法医学
  →血液型学、血清学、法医中毒学、法医病理学
   法医組織学、法医解剖学、犯罪学、心理学など。
・応用法医学
  →法律上の実際問題、犯罪捜査など。
・死亡診断書・死体検案書
  →原死因から直接死因に至る経過を
   考えられる傷病・病態の因果関係を整理して、
   できる限り医学的に正確に人の死を診断するもの。
・解剖の種類
  ・病理解剖
    ・病死の死因、治療評価
    ・担当は病理医、管轄は厚生労働省
    ・死体解剖保存法
  ・行政解剖
    ・異状死体の死因究明
    ・担当は監察医、管轄は地方自治体
    ・死体解剖保存法
  ・承諾解剖
    ・異状死体の死因究明
    ・担当は法医学者、担当は地方自治体
    ・死体解剖保存法
  ・司法解剖
    ・犯罪関連。
    ・担当は法医学者、担当は法務省
    ・刑事訴訟法
    ・強制力あり
・監察医が行政解剖を実施している都道府県
  →東京都、大阪市、神戸市、(と名古屋市と神奈川県)
  →実際稼働しているのは東京都と神戸市。
・死亡解剖は裁判所命令。
・“鑑定処分許可状”と“鑑定嘱託書”
  ・嘱託事項とは、
    1.死因
    2.自他殺の別
    3.死亡推定日時及び死後経過時間
    4.損傷の部位及び程度
    5.成傷器の種別及び成傷方法
    6.疾病の有無
    7.劇毒物摂取の有無
    8.血中アルコール濃度
    9.胃内容物と食後経過時間
   10.血液型
   11.その他参考事項
・解剖は平均4時間程度かかる。
  ・2時間20分で終了したケースも。
     →白骨死体だった。
  ・12時間かかったケースも。
     →損傷が多い他殺死体だった。
     →損傷部位を詳細に記録しなければならない。

・災害時、トリアージ黒は必ず存在する。
・東日本大震災における災害時死体検案支援の紹介。
  
  

2013年2月2日土曜日

Journal超ななめ読み1月

「Journal超ななめ読み1月」 担当:Y先生


Randomized double-blind placebo-controlled trial of 40 mg/day of atorvastatin in reducing the severity of sepsis in ward patients (ASEPSIS Trial).
アトルバスタチンはsepsisの重症化を防ぐ
Crit Care. 2012 Dec 11;16(6):R231


Preoperative statin use and postoperative acute kidney injury.
術前のスタチン使用と術後AKI
Am J Med. 2012 Dec;125(12):1195-1204.e3.


Randomized controlled trial of goal-directed haemodynamic treatment in patients with proximal femoral fracture.
大腿骨近位部骨折患者に対する目標志向型血行動態管理
Br J Anaesth. 2012 Dec 28.


Monitoring of the respiratory muscles in the critically ill.
重症患者における呼吸筋モニタリング
Am J Respir Crit Care Med. 2013 Jan 1;187(1):20-7.


Cerebral oximetry during cardiac surgery: the association between cerebral oxygen saturation and perioperative patient variables.
心臓手術中の脳酸素飽和度:周術期の患者パラメータと脳酸素飽和度の関連
J Cardiothorac Vasc Anesth. 2012 Dec;26(6):1015-21.


Dexamethasone for antiemesis in laparoscopic gynecologic surgery: a systematic review and meta-analysis.
婦人科ラパロ手術における制吐剤としてのデキサメタゾン
Obstet Gynecol. 2012 Dec;120(6):1451-8.


Case records of the Massachusetts General Hospital. Case 40-2012. A 43-year-old woman with cardiorespiratory arrest after a cesarean section.
帝王切開後にCPAとなった43歳女性
N Engl J Med. 2012 Dec 27;367(26):2528-36


Prediction of difficult tracheal intubation: time for a paradigm change.
挿管困難の予想。パラダイムチェンジの時。
Anesthesiology. 2012 Dec;117(6):1223-33.


Impact of perioperative bleeding on the protective effect of β-blockers during infrarenal aortic reconstruction.
AAA手術でのβブロッカーの心保護作用に対する、出血の影響
Anesthesiology. 2012 Dec;117(6):1203-11.


The effect of depth of anesthesia on the severity of mitral regurgitation as measured by transesophageal echocardiography.
TEEを用いて計測されたMRの重症度と麻酔深度の関連
J Cardiothorac Vasc Anesth. 2012 Dec;26(6):994-8.


Prognostic significance of blood lactate and lactate clearance in trauma patients.
外傷患者における乳酸値と乳酸クリアランス
Anesthesiology. 2012 Dec;117(6):1276-88.



・リピトールの急速投与によりsepsisの重症化を防げる可能性。
・術前スタチン使用は術後AKIリスクを減少させる。
・ICU入室時の血清Na値異常、また入室中のNa値変動は病院死亡のリスク因子。
・目標志向型循環動態管理は目標達成することが難しい?
・呼吸筋モニタリングとしてEMG、エコー、Trop I、レボシメンダン、Nアセチルシスティンなど。
・心臓手術で最初からrSO2が低い人は病院滞在が長くなる可能性。
・デキサメタゾンは婦人科ラパロ手術で合併症の増加なくPONVを減らす。
・羊水塞栓の診断、TEEは有効。血栓のない右室拡大、TR増強がポイント。
・各種因子の関連をコンピューター解析すれば挿管困難は予想できるかも。
・βブロッカー使用者は、大量出血すると病院死亡とMOFリスクが高まる。
・術中MR重症度の評価は浅麻酔で。
・外傷患者は入室から2時間の乳酸クリアランスを測定。-20%以下は予後不良。




周術期輸血について

麻酔科勉強会 担当:T先生

「周術期輸血について」

・輸血準備
  ・血液型不規則抗体スクリーニング法:T&S
  ・最大手術血液準備量:MS-BOS
  ・手術血液準備量計算法:SBOE
・Type&Screen
  ・待機手術を含めて直ちに輸血が必要でない場合。
  ・患者のABO血液型、不規則抗体の陰性を確認。
  ・輸血が必要となったらオモテ検査でABOを確認。
・MSBOS
  ・確実に輸血が必要となる予定手術
  ・過去の例から準備輸血量/輸血量<1.5となるよう交差して準備。
・SBOE
  ・術前Hb、許容出来るHb、術式別平均出血量。
  ・上記から患者固有の準備料を決定。
・出血患者における輸血・成分輸血療法の適応。
 出血量に応じて・・・
  ①細胞外液を出血量の2-3倍程度
  ②人工膠質液、RCC投与。
  ③等張アルブミン投与。
  ④FFP、PC投与。
・人工膠質液
  ・出血傾向や腎機能障害の報告。
  ・一回の手術では1,000mlまで。
  ・大量出血時はその限りではない。
・アルブミン製剤
  ・循環血液量の50%以上の出血で使用を考慮。
  ・4本1,000mlまでは保険で削られない。
・RCC輸血
  ・組織への酸素供給を維持するために行う。
  ・酸素運搬料の式。
  ・組織への酸素供給は心拍出量とHb濃度で決まる。
・FFP輸血
  ・使用するのは…
   ・凝固異常。
   ・大量出血時。
   ・DIC、肝障害合併時。
   ・低Fib血症。
   ・WFの緊急補正。
  ・生理的な止血効果
    →凝固因子の最小活性は正常の20-30%程度。
  ・凝固因子活性20-30%の上昇
    →FFP 400-600ml程度の投与が必要。
・PC輸血
  ・大量輸血では血小板の希釈性減少&機能低下。
  ・活動性出血では血小板50,000を保つ。
・輸血の合併症
  ・急性溶血性反応
  ・アレルギー反応
  ・非溶血性発熱
  ・急性肺傷害:TRALI
・輸血の際に注意すること
  ・低体温
    →急速輸血では加温ラインを用いる。
  ・代謝性アシドーシス
  ・低Ca血症
  ・アレルギー反応。
    →PC、FFPで多い。
  ・凝固異常
  ・FFPを溶かして放置してしまう。
・輸血基準
  ・Hb 7.0 g/dl程度までは我慢できる。
    →不安定狭心症、心筋梗塞などは除く。
  ・TRICC trial
  ・TRACS study
  ・FOCUS trial
・TRICC trial
  ・ICU入室患者838人
  ・Hb 7-9g/dl目標群 vs Hb 10-12 g/dl目標群
  ・いずれもoutcomeに有意差なし。
・TRACS study
  →心臓手術患者でHct 24の輸血閾値はHct 30と比較して非劣勢。
・FOCUS trial
  →心血管リスクのある患者
  →Hb 10はHb 8と比較して有意な結果をもたらさず。
・AABBガイドライン