2013年2月28日木曜日

筋弛緩薬

初期研修医勉強会  担当:S先生

「筋弛緩薬」

・筋弛緩薬の歴史
 ・1516年 南アメリカの矢毒クラーレの文献的報告
 ・1821年 Sir Benjaminによるクラーレの動物実験
     「人工呼吸していれば動物は死なない」
 ・1906年 サクシニルコリンの合成
 ・1932年 ネオスチグミンの合成
 ・1935年 クラーレから有効成分d-ツボクラリンを生成
 ・1942年 BeecherとToddが虫垂切除術に
       d-ツボクラリンを初めて使用
 ・1952年 Scurrによるサクシニルコリンの臨床応用
 ・1973年 ベクロニウムの開発
 ・1994年 ロクロニウムの臨床応用
 ・2008年 スガマデクスの発売
・非脱分極性筋弛緩薬
   ・主にステロイド型
   ・ベンジルイソキノリニン型
 ・作用機序について
 ・TOFウォッチについて
 ・fade現象
   非脱分極性筋(+)、脱分極性(-)
 ・fasciculation
   非脱分極性(-)、脱分極性(+)
・筋弛緩薬の分布モデル
  ・中心コンパートメント:血液
  ・末梢コンパートメント:各臓器、脂肪
  ・効果部位:筋肉
  ・薬物排泄:肝臓、腎臓
 →筋弛緩薬は中心コンパートメントに投与され、
  迅速に分布し平衡状態となる。
・筋弛緩を打ち消すには??
  ①Ach放出を増加させる
  ②Ach分解を抑制する
  ③筋弛緩薬の分解促進
  ④筋弛緩薬の神経筋接合部の除去
・ネオスチグミン
   →Achエステラーゼを阻害
   →神経間隙中のAchが増加
   →相対的に接合部のAchが増加
   →筋弛緩状態から回復。
・ネオスチグミンの問題点
 ・作用発現に時間が必要
 ・深い筋弛緩では拮抗作用は不確実
 ・天井効果(ceiling effect)
 ・ムスカリン作用
 ・高用量投与による逆説的筋弛緩
・スガマデクス
 ・1999年、Anton Bom博士が側鎖が修飾。
 ・ロクロニウムに高い親和性を持つ物質が合成
 ・ロクロニウムを1:1で抱合、失活させる。
 ・抱合体は腎排泄。
・スガマデクスの利点
 ・迅速な拮抗作用
 ・天井効果なし
 ・ムスカリン作用なし
 ・逆説的筋弛緩なし
・スガマデクスの欠点
 ・薬剤相互作用あり。
 ・ベンジルイソキノリン型筋弛緩薬や脱分極型筋弛緩薬
   →拮抗できない
 ・過小投与によるリバウンド現象
 ・トレミファン, flucloxacillin(日本未発売の抗菌薬)
  フシジン酸(抗生剤)との併用により抱合離解の可能性
 ・経口避妊薬との併用により、血中濃度が減弱。
・リバウンド現象
  →中心コンパートメント(血液)で筋弛緩薬が除去、
   濃度勾配に従い末梢コンパートメントから
   筋弛緩薬が移動し効果を発現
・スガマデクスの腎機能障害患者への投与
  ・腎機能障害ある方が拮抗に時間がかかる。
  ・重傷腎機能患者にも速やかに拮抗は可能。
  ・スガマデクスは透析膜を通過せず長く血中に留まる。
  ・結合離解などの可能性指摘されている。
・スガマデクスの肥満患者への投与
  ・BMI>40以上の患者群
    →実体重換算よりIBW+40%程度の投与が望ましい。
・スガマデクス投与後再挿管
  ①ベンジルイソキノリン系筋弛緩薬の使用
  ②スキサメトニウムの使用
  ③ロクロニウムの大量投与
 ・理論的には・・・
  分子量(スガマデクス2178、ロクロニウム610)より、
  スガマデクス4mg/kgのリバースは
  1.2mg/kgのロクロニウムで可能。