2012年5月22日火曜日

術後疼痛管理とその意義

初期研修医勉強会  担当:F先生

「術後疼痛管理とその意義」

・体性痛
  →限局した、さしこむような痛み
  ・浅い痛み(切開創)
  ・深い痛み(筋肉痛)
・内蔵痛
  →部位が明確でない、違和感のある痛み
・麻酔薬の副作用としての痛み
  →セボフルランによる頭痛など
・術後疼痛の修飾因子
  ・患者因子
  ・術前の不安、恐怖による増強  
  ・麻酔方法
  ・全身麻酔、硬膜外麻酔併用、麻薬使用の有無
  ・手術部位、手術時間、侵襲の程度
  ・上腹部>下腹部
  ・長時間>短時間
  ・浅いところ>深いところなど
・術後痛の影響
  ①呼吸機能の低下
   ・反射的な腹筋緊張、横隔膜機能低下
   ・痛みへの恐怖による深呼吸、咳の抑制
      →分泌物貯留、無気肺
  ②循環器
   ・交換神経緊張→頻脈、血圧上昇
   ・離床の遅れ→DVTのリスク上昇
  ③消化器
   ・腸管運動抑制→イレウスのリスク上昇
  ④内分泌
   ・痛みによる交感神経緊張
   ・ストレスホルモンの遊離
   ・異化亢進、血液凝固能亢進、免疫能低下
  ⑤精神面
   ・薬の過量投与、医療スタッフへの不信感
・術後鎮痛の手段
  ・術中のNSAIDS、オピオイド予防的静注
  ・硬膜外腔またはクモ膜下腔オピオイド持続投与
  ・オピオイド静脈内投与によるPCA 
  ・薬を使わない鎮痛法
・術後鎮痛の意義
  ・早期機能回復による患者QOLの向上にとどまらない。
  ・医療関係者のストレス軽減
  ・栄養状態の改善
  ・医療経済的にも入院日数の減少などいいことは多い。
・日本における術後鎮痛の問題点
  ・我慢する日本人
    →手術後に多少痛いのはしょうがない
  ・施設、機器の不足によるハード面
  ・人手不足、連携不足という医療スタッフ側因子
  ・米国では術後鎮痛を体系的に行うためのガイドラインあり。
    ・術前からの患者状態把握の重要性
    ・患者、家族、医療スタッフへの適切な教育
    ・麻酔科医が主役

・ブレイク
「自己紹介」
「ファゴットの魅力」

・術後鎮痛法により術後予後が改善?
・局所麻酔併用の術後鎮痛
  →癌手術後の再発率、転移率が下がる
  →患者の長期予後を改善できる…かもしれない。
・周術期の細胞性免疫をを低下させる因子
  ・手術自体の侵襲
  ・痛みストレス
  ・オピオイド(とくにモルヒネ、フェンタニル)
  ・吸入麻酔薬
    →癌細胞の最前線の防御機構が弱る。
・COX阻害薬
  →動物実験では腫瘍増殖、血管新生等を抑制したらしい。 
・区域麻酔および鎮痛
  →痛み信号の伝達を止める
  →同時にNK細胞の機能維持
  →免疫能を保つ。
  →区域麻酔を併用して全身麻酔薬の使用量を減らす。
・COX阻害薬、局所麻酔での鎮痛の割合を増やして麻薬の必要量を減らす。
・周術期の免疫能を維持
  →がん手術後の転移率、再発率を下げる?
・乳房切除についての研究
  ・全麻+傍脊椎ブロックvs全麻のみ
  ・術後3年間のの再発率で有意差あり。
  ・再発リスクも優位に低下。
・麻酔科医の創意工夫や判断は患者の生命予後を左右する可能性。