麻酔科勉強会 担当:A先生
「AAAと硬膜外麻酔」
・硬膜外麻酔のメリット
→分節的な神経ブロック
・良好な鎮痛
・交感神経遮断
・呼吸器合併症の減少
・虚血性心イベント減少
・出血量低下
・血栓症低下
・消化管運動上昇
・ストレスホルモン上昇抑制
・免疫低下抑制
・創部感染低下
・AAAに対して硬膜外麻酔はあり?なし?
→現状はControversial
・腹部大動脈瘤手術時の硬膜外併用に関するアンケート結果
(麻酔 2009:58:363-377)
・AAA手術件数別施設数
→年間10件未満、月に1例前後が2/3を占める。
・AAAに硬膜外麻酔の併用
→64%が常時併用
→場合により併用21%
→併用しない14%
・硬膜外麻酔をやらない理由は?
→合併症、特に硬膜外血腫
・硬膜外血腫の発生頻度
→アスピリン投与単独では血腫の発生率を上昇させない
→血管損傷は大きく発生率を上昇させる
→ヘパリンも1時間以降では特に大きくない
・硬膜外穿刺の基準
・血小板数:8万/mm³
・PT-INR:<1.5
・APTT:正常上限(A&A 1994;79:1165-77)
・硬膜外麻酔の基準
・抗血小板薬
→NSAIDs:リスクなし
→チクロピジン:14日間休薬
→クロピドグレル:7日間休薬
・未分画ヘパリン(皮下注)
→1日2回投与<10000単位ではリスクなし
・未分画ヘパリン(静注)
→最終投与4時間後に穿刺・抜去
穿刺後1時間以降に投与可
・低分子ヘパリン
→最終投与12時間後に穿刺・抜去
・ワルファリン
→穿刺・抜去前にINR正常を確認
・フォンダパリヌクス
→カテーテル挿入は避ける
・直接トロンビン阻害薬
→データなく穿刺は避ける
・血栓溶解薬
→禁忌
・薬草、漢方薬
→データなし
・腹部大動脈瘤手術時の硬膜外併用に関するアンケート結果
(麻酔 2009:58:363-377)
・硬膜外麻酔をしない基準(最多のもの)
・血小板数<8万
・PT-INR>1.40
・APTT>40 sec
・カテーテル挿入時期
→前日、導入前の2つが多い。
・硬膜外カテーテル挿入からヘパリン化までの時間
→2時間以下、か12-24時間が多い。
・各施設での工夫
・研修医に穿刺させない
・穿刺は熟練者が行う
・穿刺回数は2回までとする
・硬膜外に固執せず無理はしない
ブレイク
「ブリディオンについて」
・当院のブリディオンリバース率は86.6%(9月)
・ブリディオン200mg≒エスラックス60mgらしい。
・当院の現状(2011年8月~2012年7月)
・AAA 31症例(うち緊急5例)
→施設としては、やや多い部類。
・圧倒的に男性が多い(90%)
・術前合併症が多い。
・麻酔手技
・CV挿入45%
・FDLカテ挿入16%(緊急は全例)
・TAP block 42%
・手術時間
・3~4時間が多い。2時間台で終わる例も。
・食事開始時期
・POD1で飲水してPOD2で食事開始が多い。
・緊急手術は術後合併症リスクが高い。
・もし硬膜外麻酔をするなら・・・
・血小板数、PT-INR、APTTが基準値以上
・手術前日に施行
・熟練医が施行
・穿刺回数の制限
+心臓血管外科Drとの交渉
・AAAと硬膜外麻酔併用の予後
→有意差なしの論文が多いが。。。
→心血管合併症、呼吸不全、脳血管障害、挿管期間、
ICU滞在日数がそれぞれ少ないとした論文も。
(Ann Surg 2001, 234:560-569)
・予後以外でのメリット
・術後の患者満足度が大きい
・術直後の白血球数低下
・腸管ガス排出までの時間短縮。
・在院日数短縮の報告も。
・前日施行では手術室見学も兼ねて不安軽減
・これからどうするか。
・短時間作動型麻酔薬の登場、IV-PCA、神経ブロック
→以前より硬膜外麻酔の必要性は減ってきている。
・硬膜外血腫が生じた場合への対応
→硬膜外麻酔には消極的にならざるをえない。
・ICUでは?
・腸管運動低下への対応
・鎮痛コントロール難渋
→硬膜外麻酔も考慮に値する。
・術前麻酔科外来で患者に提案し決めてもらう方法も。