2012年10月16日火曜日

AAAと硬膜外麻酔

麻酔科勉強会  担当:A先生

「AAAと硬膜外麻酔」

・硬膜外麻酔のメリット
  →分節的な神経ブロック
   ・良好な鎮痛
   ・交感神経遮断
  ・呼吸器合併症の減少
  ・虚血性心イベント減少
  ・出血量低下
  ・血栓症低下
  ・消化管運動上昇
  ・ストレスホルモン上昇抑制
  ・免疫低下抑制
  ・創部感染低下
・AAAに対して硬膜外麻酔はあり?なし?
  →現状はControversial
・腹部大動脈瘤手術時の硬膜外併用に関するアンケート結果
               (麻酔 2009:58:363-377)
・AAA手術件数別施設数
  →年間10件未満、月に1例前後が2/3を占める。
・AAAに硬膜外麻酔の併用
  →64%が常時併用
  →場合により併用21%
  →併用しない14%
・硬膜外麻酔をやらない理由は?
  →合併症、特に硬膜外血腫
・硬膜外血腫の発生頻度
  →アスピリン投与単独では血腫の発生率を上昇させない
  →血管損傷は大きく発生率を上昇させる
  →ヘパリンも1時間以降では特に大きくない
・硬膜外穿刺の基準
  ・血小板数:8万/mm³
  ・PT-INR:<1.5
  ・APTT:正常上限(A&A 1994;79:1165-77)
・硬膜外麻酔の基準
  ・抗血小板薬
     →NSAIDs:リスクなし
     →チクロピジン:14日間休薬
     →クロピドグレル:7日間休薬
  ・未分画ヘパリン(皮下注)
     →1日2回投与<10000単位ではリスクなし
  ・未分画ヘパリン(静注)
     →最終投与4時間後に穿刺・抜去
      穿刺後1時間以降に投与可
  ・低分子ヘパリン
     →最終投与12時間後に穿刺・抜去
  ・ワルファリン
     →穿刺・抜去前にINR正常を確認
  ・フォンダパリヌクス
     →カテーテル挿入は避ける
  ・直接トロンビン阻害薬
     →データなく穿刺は避ける
  ・血栓溶解薬
     →禁忌
  ・薬草、漢方薬
     →データなし 
・腹部大動脈瘤手術時の硬膜外併用に関するアンケート結果
               (麻酔 2009:58:363-377)
・硬膜外麻酔をしない基準(最多のもの)
  ・血小板数<8万
  ・PT-INR>1.40
  ・APTT>40 sec
・カテーテル挿入時期
  →前日、導入前の2つが多い。
・硬膜外カテーテル挿入からヘパリン化までの時間
  →2時間以下、か12-24時間が多い。
・各施設での工夫
 ・研修医に穿刺させない
 ・穿刺は熟練者が行う
 ・穿刺回数は2回までとする
 ・硬膜外に固執せず無理はしない


ブレイク
「ブリディオンについて」
 ・当院のブリディオンリバース率は86.6%(9月)
 ・ブリディオン200mg≒エスラックス60mgらしい。

・当院の現状(2011年8月~2012年7月)
  ・AAA 31症例(うち緊急5例)
    →施設としては、やや多い部類。
  ・圧倒的に男性が多い(90%)
  ・術前合併症が多い。
  ・麻酔手技
     ・CV挿入45%
     ・FDLカテ挿入16%(緊急は全例)
     ・TAP block 42%
  ・手術時間
     ・3~4時間が多い。2時間台で終わる例も。
  ・食事開始時期
      ・POD1で飲水してPOD2で食事開始が多い。
  ・緊急手術は術後合併症リスクが高い。
・もし硬膜外麻酔をするなら・・・
 ・血小板数、PT-INR、APTTが基準値以上
 ・手術前日に施行
 ・熟練医が施行
 ・穿刺回数の制限
    +心臓血管外科Drとの交渉
・AAAと硬膜外麻酔併用の予後
 →有意差なしの論文が多いが。。。
 →心血管合併症、呼吸不全、脳血管障害、挿管期間、
   ICU滞在日数がそれぞれ少ないとした論文も。
          (Ann Surg 2001, 234:560-569)
・予後以外でのメリット
 ・術後の患者満足度が大きい
 ・術直後の白血球数低下
 ・腸管ガス排出までの時間短縮。
 ・在院日数短縮の報告も。
 ・前日施行では手術室見学も兼ねて不安軽減

・これからどうするか。
 ・短時間作動型麻酔薬の登場、IV-PCA、神経ブロック
   →以前より硬膜外麻酔の必要性は減ってきている。
 ・硬膜外血腫が生じた場合への対応
   →硬膜外麻酔には消極的にならざるをえない。
 ・ICUでは?
   ・腸管運動低下への対応
   ・鎮痛コントロール難渋
       →硬膜外麻酔も考慮に値する。
 ・術前麻酔科外来で患者に提案し決めてもらう方法も。