2012年10月23日火曜日

高齢者に対する麻酔

麻酔の問題集  担当:N先生

「高齢者に対する麻酔」

問題1:高齢者と腎機能に関する問題。

・加齢に伴って・・・
 ・腎皮質は20-25%減少
 ・80歳までに糸球体は50%減少
 ・GFRは40歳以降、1ml/min/yrずつ低下
    →個人差が大きい。
    →実際は計算上ほどは低下していないことが多い。
 ・60歳以降は年齢に合わせて薬物投与量を調節すべき。
 ・Naや水分の調節が低下
 ・口渇感もにぶくなる

問題2:術後精神機能異常に関する問題

・Postopretive delirium (POD)
  →手術後に発症するせん妄
・Postoperative cognitive dysfunction (POCD)
  →手術に関連して起こった認知機能の低下
・Postoperative deliriumについて
  ・Emergence:術後24hr以内に発症するもの
     ・主として麻酔からの覚醒の際に起こるの
     ・数分~数時間
  ・Interval:術後2日目以降に発症するもの
     ・DCTが動くやつ
     ・数時間~数日
・Postoperative cognitive dysfunctionについて
  ・認知機能とは・・・
    ・学習、記憶、言語、知覚、注意、抽象思考など。
  ・認知機能のどれかが術後低下した場合
  ・性格の変化や情動の変動性の亢進なども
  ・可逆性、長くても1年以内で改善することが多い
  ・麻酔方法・術後鎮痛方法の影響はなさそう
  ・原因ははっきりしていない
    →低酸素? 脳虚血? 中枢神経系の炎症?
     神経伝達物質の異常? 遺伝学的影響?
     高cortisol?
  ・Risk factor
    ・高齢
    ・大手術(心臓手術で多い)
    ・周術期の身体・精神機能障害
    ・アルコール多飲者
    ・high ASA score
    ・低い教育レベル
    ・strokeの既往
    ・POD
・PODとPOCDの相違点
  ・POD
    ・原因不明
    ・リスク因子はいくつか同定
    ・経過が短い
    ・症状をもとに診断
  ・POCD
    ・原因不明
    ・リスク因子はいくつか同定
    ・長期にわたる
    ・認知機能検査で
・POCDの診断
  ・診断は神経心理学検査による
  ・患者の自覚症状と検査所見の相関は乏しい
  ・術前・術後に検査の実施が必要
  ・標準となる検査、基準のstandardが未確定
  ・学習効果、floor effectなどの問題点
・神経心理学検査のチェック項目
  ・Level of consciousness (arousal)
  ・Attention and concentration
  ・Memory (immediate, recent, and remote)
  ・Language
  ・Visual spatial perception (視空間認知)
  ・Executive functioning
  ・Mood and thought content
  ・Praxis
  ・Calculations
・神経心理学検査の実際
  ・口頭での質問や絵、立体を見せて反応を見る。
  ・MMSEや長谷川式認知症スケール
  ・性格検査
  ・脳障害後の高次機能障害の評価
 →一つの検査方法で同時に複数の機能の検査が可能
 →POCDではいくつかの神経心理学検査を組み合わせて評価する。
・Attention & concentrationのテスト
  ・Digit symbol test
  ・Letter cancellation test
・Memoryのテスト
  ・Rey-Osterrieth complex figure
・Visual spatial perceptionについて
 ・perceptual and constructional abilities
  ・失認
   →ある一つの感覚を介して対象物を認知できない障害
  ・失行
   →運動可能であるにもかかわらず合目的運動ができない状態
 →copying/drawing ,building/assembly tasks
 ・Clock drawingなど。
・Praxis
 ・実践?(process)
 ・the performance of learned motor movements
      in the absence of primary deficits
             in motor and spatial abilities
 ・障害→観念失行
   ・個々の運動はできる
   ・複雑な一連の運動連鎖が必要な行為が障害される
   ・要素行為は正しいが順序・対象を誤る
・Mood and thought content
 ・感情、思考形式
 ・性格検査や、うつ病スクリーニング検査が用いられる
   ・Minnesota Multiphasic Personality Inventory
   ・Beck Depression Inventory
   ・Geriatric Depression Scale
   ・Neuropsychiatric Inventory
・Executive functioning
 ・他の認知過程を制御する認知過程
 ・決断、計画、推論、問題解決、multi-tasking、working memoryなど
 ・複合的な検査機能をもった神経心理学検査で調べる
・その他
 ・Visual Verbal Learning Test
 ・Concept Shifting Test
 ・Stroop Colour Word Interference Test
 ・Letter-Digit Coding Testなど。



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