2018年2月2日金曜日

術前肝機能評価

初期研修医勉強会 担当:N先生

「術前肝機能評価」

・肝機能障害を持つ患者
  →手術・麻酔関連の合併症のリスクが高い。
  ・非肝臓手術の1カ月後の死亡率
    →肝硬変患者:非肝硬変患者=16.3%:3.5%
・リスクの高さ
  →肝疾患の種類や重症度・術式・麻酔方法によって異なる。
・スクリーニングは必要?
  ・健康な成人に対するルーチンの肝酵素測定は薦められていない。
  ・予期しない肝酵素異常が指摘されるのは0.3%
  ・術前の肝酵素測定の0.1%しか術前のマネジメントを変化させない。
  ・臨床症状のない肝障害で周術期死亡率は増加しない。
 →病歴聴取や身体診察の方が重要!
・病歴聴取、身体診察
 ・病歴聴取
   輸血歴・違法薬物・不特定多数との性交渉
   家族歴・飲酒歴・内服薬
 ・身体診察
   黄疸・掻痒感・腹水・クモ状血管拡張・脾腫などなど
・手術を延期すべきなのは?
 ・急性or劇症肝炎(アルコール性・ウイルス性)
 ・重症慢性肝炎
 ・重症凝固能異常
 ・そのほか急性腎障害や心不全や低酸素血症など
 ・肝臓外の合併症がある場合は待機的手術を延期すべき。
・Child-Turcotte-Pugh score
 ・Child-Pugh scoreは門脈系の手術だけでなく、
  その他の非肝臓手術の予後予測にも有用という報告が多数ある。
   ・腹部手術を受けたアルコール性肝硬変患者の周術期死亡率
    →A:B:C=10%:31%:76%
   ・腹部手術(ほとんど腹腔鏡手術)を受けた肝硬変患者の死亡率
    →A:B:C=2%:12%:12%
・MELD(the Model for End-stage Liver Disease) score
 ・Child-Pughスコアには腹水や脳症など主観の入り込む余地が残る。
 ・MELD scoreはより客観的な指標となっている。
 ・MELD scoreの構成要素は、Bil,PT-INR,Creの3項目のみ。 
 ・MELD scoreとChild-Pugh scoreの相関は高い。
・MELD scoreはどんな風に使われている?
 ・欧米では、客観性を活かして脳死肝移植の優先権として。
 ・本邦では、肝移植前の肝障害度評価としてChild-Pughと併用で。
 ・今の所は肝移植以外の場面ではあまり使われていない。
 ・移植以外の手術の予後予測にも有用と判明している。
   →今後Child-Pughに代わる客観的な指標となり得る。