初期研修医勉強会 担当:Y先生
「周術期輸液について」
・体重の約60%が水分(体液)
・細胞内液40%、細胞外液20%
→細胞間質15%+血漿量5%
・総体液量は全体重における筋肉量の比率で変化する
・水分は筋内にあり、脂肪にはない
→年齢や肥満度で体液量は変化する
・女性は男性に比べて脂肪の割合が多いため水分量は少ない
・周術期の輸液、輸血の目的
→血管内volumeとstroke volumeを最適化するため
→体液の恒常性を保つため
・体液の恒常性
→体内外の水の出入りは複雑
・IN:食事、飲水から電解質、栄養を取り入れる
・OUT:尿、便、肺、皮膚、不感蒸泄、発汗
・体内での水分移動
・消化管:消化液の分泌、再吸収
・腎臓:糸球体で原尿を生成、尿細管で再吸収
・腎
・腎から排泄される溶質:1日10mOsm/kg
・体重60㎏だと600mOsmを排泄
・腎の最大濃縮力は1200mOsm/L
→600÷1200=0.5L=500mlは尿量必要
・便中水分:100~200ml
→下痢や嘔吐があると、その分水も電解質も出ていく
・胆汁や大腸液は高電解質。
・ドレナージ量が多ければ補正は必要。
・呼吸器、皮膚
・不感蒸泄:皮膚、呼気からの喪失量の和
・体温が1℃上昇するごとに15%増量
・呼気から30%喪失
→全身麻酔では人工呼吸管理・・・
→100%加湿や人工鼻を付けていれば不感蒸泄量は
無視できる。
・ただしhyperventilationは避ける
・代謝水
・栄養素(炭水化物、蛋白質、脂質)の代謝で生じる
・400kcalの食事で50ml、1日2400kcalで300ml程度
・アンギオテンシンは血管収縮作用、ANPは血管拡張作用
→互いに密接な関係あり
・ANPはレニン分泌を抑制
→アンギオテンシンを介するアルドステロン分泌も抑制。
→アルドステロン作用も抑制する
・組織間の水の移動
・細胞内液、細胞外液(組織間液、血漿)
・各コンパートメント間で水、電解質は分布が一定となる。
・半透膜
・浸透圧
・Na-K ATPase
・周術期には恒常性が乱れる.
・術前:絶飲食、嘔吐、胃液吸引、下痢、下剤投与など
・術中:麻酔の影響、手術自体の影響など
・全身麻酔導入時の循環血液量の相対的減少
→体血管抵抗減少、心機能抑制
・手術による出血の影響
・サードスペースの影響
・術後:ドレーンチューブによるドレナージ
→炎症や感染症の影響
・サードスペース
・非機能的細胞外液
・細胞外液との交通はあるが平衡関係にない
・術野周囲の浮腫、液貯留によるもの
・腹腔臓器手術後に多い
・サードスペースの存在を疑う状況とは?
・手術部位や周囲の腫脹
・輸液をしても血圧、尿量の低下がある
・refillingの際には?
・サードスペースの水が戻ってくる。
・輸液量過剰や心疾患があれば心不全をきたす可能性。
→術後の輸液量は必要最小限に
・輸液の種類
・生理食塩水
・浸透圧はやや高い
・血漿よりもNa濃度は高い。
・塩素濃度はかなり高い。
→大量に入れると高Cl性アシドーシスになりうる
・乳酸リンゲル液
・血漿中の濃度に近いK、Caを含む
・Naはやや低い
・乳酸の存在のため、塩素濃度も削減
・高度肝機能障害、ショック、外傷の場合。
→乳酸Na代謝が滞る。
→高乳酸血症のリスクあるかも。
・アルブミン溶液
・ヒト血清アルブミンを生理食塩水に溶解したもの。
・5%と25%のものがある。。
・5%は血漿と同量のAlbと浸透圧
→70%は血管内
・25%は血漿よりはるかに高い浸透圧
→間質から水を移動させまくる
・HES
・ヒドロキシエチルデンプン(HES)
・デンプンの重合体、生食にHESを含む製剤
・膠質浸透圧は5%Albより高いため血漿量の増加も多い
・デンプン→小さな断片に分解→腎臓から排泄
・副作用
・凝固因子のⅦ因子、vWFの抑制、血小板粘着能の障害
→出血傾向を起こす
→血小板減少患者には原則禁忌
・腎障害や脱水状態の患者は腎不全を起こす可能性あり
・輸液量について
・色々なstrategyが研究されている
・Liberal fluid Therapy
→尿量やthird spaceへのlossを考慮に入れた輸液。
・腹部のopeなら10-15ml/㎏/hの晶質液を入れる
→多すぎて、術後の 体重が3-6㎏増加!
→腸管浮腫、縫合不全や肺水腫の原因に
→予後や入院期間に影響が出る
・Restrictive fluid therapy
・サードスペースへの補充を除外
・手術で喪失する分だけ補う。
・術後合併症(腹膜炎、縫合不全など)は?
・liberal protocol群で多い。
・入院期間もrestrictive protocol群の方が短い。
・術後の腎機能(Crea値)は両群で差なし
→術中尿量の減少は術後の腎機能に大きく関係せず。
・尿量低下はある程度の時間許容できる
・goal directed therapy
・適切なstroke volumeを維持して組織還流量を適正に保つ
・循環「動態」パラメーターを指標
・実際には?
・導入時負荷
・術前脱水に依存。晶質液をボーラスで投与。
・制限的晶質液投与量:1.5~2ml/kg /h
・膠質液:goal未達成で輸液反応性がある場合。
→200~250mlの膠質液によるfluid challenge
・HES製剤を使う
・欧米では分子量13万のHES製剤使用されている。
→日本では7万のHES製剤を使用。
・Goalは、1回拍出量と静脈血酸素飽和度
→酸素供給量、酸素需要量を表す
・Goalの指標
・ScvO2:中心静脈血酸素飽和度
→75%以上をgoalとした報告あり
・PVI:脈派変動指数
→13%未満をgoalとした報告あり
PICC挿入