2012年11月29日木曜日

顎関節疾患について

初期研修医勉強会  担当:F先生

「顎関節疾患について」 

・顎関節の構造と機能、まずは解剖の話から
・顎関節を構成する骨構造
  ・下顎骨:下顎頭
  ・側頭骨:下顎窩、関節結節
・咀嚼筋
  ・閉口筋
    ・咬筋、側頭筋、内側翼突筋
  ・開口筋
    ・外側翼突筋
・靭帯
  ・外側靭帯
    ・下顎頭の外側への逸脱を防止。
    ・下顎頭の前進・後退を制限。
  ・副靭帯
    ・蝶下顎靭帯:開口・側方運動の規制。
    ・茎突下顎靭帯:下顎の前方運動の規制。
・関節包
  ・顎関節を取り巻く結合組織の線維膜。
  ・下顎窩の周囲~関節突起の周囲に付着。
  ・関節包の内面は繊毛様のヒダを持つ
    ・滑膜によって覆われる。
  ・関節の円滑な運動のための滑液を分泌している。
・血管と神経
  ・栄養血管
    ・浅側頭動脈
    ・顎動脈
  ・神経
    ・三叉神経第3枝下顎神経
    ・顔面神経は顎関節周囲を走行。
・関節円板と滑液について
・正常な顎運動(動画で見てみよう)

・顎関節疾患あるある2つ

1.顎関節脱臼
・定義
  ・下顎頭が下顎窩から外にでて顎関節運動範囲外にあり、
   もとの状態に戻らない状態。
・分類
   ・前方/後方
    ・完全/不完全(亜脱臼)
   ・新鮮/陳旧性
   ・単純性/習慣性
   ・外傷性/非外傷性
・原因、リスク
   ・浅い下顎窩
   ・平坦な下顎頭
   ・関節結節前方部の急峻な傾斜
   ・下顎角が開大したlong face
   ・関節包や顎関節に関連する靱帯の弛緩伸展
・ある報告
  ・男性54名, 女性83名, 男女比1: 1.5と女性にやや多い.
  ・平均年齢47.2歳(3~99 歳)
・脱臼整復法(早期)
①Hippocrates法
  ・患者の前方に立つ。
  ・整復後に咬まれないように拇指にガーゼを巻いておく。
  ・両手の拇指を下顎大臼歯咬合面上に置き,
   残りの四指を下顎下縁に添えて, 
   両手で下顎体部を挟むように掴む。
  ・両手の拇指で下顎大臼歯部を下方に強く押し下げつつ
   オトガイ部を持ち上げるようにする。
  ・そのまま下顎を下後方に押しつけるようにする。
②Borchers法
  ・患者の後方に立つ。
  ・患者の後頭部から抱えるように固定する。
  ・下顎を上前方に回転させつつ手前に引く。
・脱臼整復法(陳旧例)
  ・まずは徒手整復
  ・不可能な場合は局麻下、または全身麻酔。筋弛緩薬使用など。
  ・手術も。
・習慣性顎関節脱臼の予防
  ・非観血的療法
  ・包帯やチンキャップによる一定期間の開口制限 
  ・観血的療法
     ①運動抑制法(顎関節前方障害術)
     ②運動平滑化法
       関節結節削除術(eminectomy)

2.顎関節症(TMD)
・顎関節症とは?
  →顎関節や咀嚼筋の疼痛、関節雑音、開口障害、
   または顎運動を主要症候とする慢性疾患の総括的診断名
  ・咀嚼筋障害、関節包・靭帯障害、
   関節円板障害、変形性関節症などが含まれる。

・TMDの分類

・顎関節症Ⅰ型(筋性)
  ・筋、筋膜疼痛機能障害症候群(MPD)と同意。
  ・咀嚼筋の異常により生じる筋・筋膜の代謝異常が原因
  ・筋の緊張・スパズムを生じる。
  ・圧痛点は限局的。
  ・トリガーポイントの存在。
  ・関連痛は高頻度。
  ・咀嚼筋の顎運動時痛→開口障害
・顎関節症Ⅱ型(靭帯障害)
  ・円板後部組織、関節包、靭帯の慢性外傷性病変。
  ・顎運動時に顎関節痛を訴える。
  ・触診で顎関節の圧痛を同定できる。
  ・Ⅲ型やⅣ型の前段階の可逆性の状態。
  ・過度の開口、硬固物の咀嚼、ブラキシズム、打撲
   →滑膜組織・靭帯・関節包・円板後部組織の炎症、変性
・顎関節症Ⅲ型(関節円板障害)
  ・円板の方向
    →92%が前方転位、8%が側方転位。
  ・転位した円板
    →非生理的な負荷を受けて転位を増悪
    →円板の変形を生じ、徐々に退行性変化をきたす。
  ・種類
    ①相反性ロック
    ②クローズドロック
    ③オープンロック
       →対処法など
   ・顎がよく外れるけど自分で戻せる人
     →オープンロックが疑われる。
     →自ら下顎を左右に動かすことでロック解除
・顎関節症Ⅳ型(変形性関節症)
   ・退行性病変
    ・関節円板や滑膜などの軟組織や、下顎頭や下顎窩など
   ・画像診断により下顎頭や下顎窩の骨変形が確認。
   ・Ⅱ型⇒Ⅲ型⇒Ⅳ型と進行する。
   ・臨床症状
    ・顎関節痛 
    ・開口障害
    ・関節雑音(ジャリジャリ)
・AAOP(米国口腔顔面痛学会)のガイドライン
  ・顎関節症とは?
    ・Self‐Limitingな疾患である
     →際限なく悪化する病気ではない。
     →放置しておいてもいずれ症状は軽減する
  ・不正咬合と顎関節症に因果関係はない  
  ・顎関節症の主たる症状は?   
    ①痛み   
    ②顎関節音   
    ③顎関節周囲の筋肉の痛み   
    ④開口障害   
    ⑤頭痛
  ・顎関節痛の主たる原因は?
    ①先天的なもの(解剖学的問題)
    ②全身疾患(リウマチなど)に関連
    ③関節円板の転位
    ④姿勢の悪さ
    ⑤特定の動作の連続性による筋肉の疲労
    ⑥持続的な強い力が関節に加わる
    ⑦ストレスなどの心因的因子
  ・顎関節症の治療方法
    ・対処療法で90%の患者は痛み・違和感が消失する
      ①温熱療法、理学療法、消炎鎮痛剤
      ②スプリント療法
      ③外科的療法(極めて稀:2-3%)
        →通常②まででほとんどの患者は治癒する
・論文読みました。
 ・Using temporomandibular joint mobility
    to predict difficult tracheal intubationSevtap
    →J Anesth. 2011 Jun;25(3):457-61. Epub 2011 Mar 31