初期研修医勉強会 担当:F先生
「顎関節疾患について」
・顎関節の構造と機能、まずは解剖の話から
・顎関節を構成する骨構造
・下顎骨:下顎頭
・側頭骨:下顎窩、関節結節
・咀嚼筋
・閉口筋
・咬筋、側頭筋、内側翼突筋
・開口筋
・外側翼突筋
・靭帯
・外側靭帯
・下顎頭の外側への逸脱を防止。
・下顎頭の前進・後退を制限。
・副靭帯
・蝶下顎靭帯:開口・側方運動の規制。
・茎突下顎靭帯:下顎の前方運動の規制。
・関節包
・顎関節を取り巻く結合組織の線維膜。
・下顎窩の周囲~関節突起の周囲に付着。
・関節包の内面は繊毛様のヒダを持つ
・滑膜によって覆われる。
・関節の円滑な運動のための滑液を分泌している。
・血管と神経
・栄養血管
・浅側頭動脈
・顎動脈
・神経
・三叉神経第3枝下顎神経
・顔面神経は顎関節周囲を走行。
・関節円板と滑液について
・正常な顎運動(動画で見てみよう)
・顎関節疾患あるある2つ
1.顎関節脱臼
・定義
・下顎頭が下顎窩から外にでて顎関節運動範囲外にあり、
もとの状態に戻らない状態。
・分類
・前方/後方
・完全/不完全(亜脱臼)
・新鮮/陳旧性
・単純性/習慣性
・外傷性/非外傷性
・原因、リスク
・浅い下顎窩
・平坦な下顎頭
・関節結節前方部の急峻な傾斜
・下顎角が開大したlong face
・関節包や顎関節に関連する靱帯の弛緩伸展
・ある報告
・男性54名, 女性83名, 男女比1: 1.5と女性にやや多い.
・平均年齢47.2歳(3~99 歳)
・脱臼整復法(早期)
①Hippocrates法
・患者の前方に立つ。
・整復後に咬まれないように拇指にガーゼを巻いておく。
・両手の拇指を下顎大臼歯咬合面上に置き,
残りの四指を下顎下縁に添えて,
両手で下顎体部を挟むように掴む。
・両手の拇指で下顎大臼歯部を下方に強く押し下げつつ
オトガイ部を持ち上げるようにする。
・そのまま下顎を下後方に押しつけるようにする。
②Borchers法
・患者の後方に立つ。
・患者の後頭部から抱えるように固定する。
・下顎を上前方に回転させつつ手前に引く。
・脱臼整復法(陳旧例)
・まずは徒手整復
・不可能な場合は局麻下、または全身麻酔。筋弛緩薬使用など。
・手術も。
・習慣性顎関節脱臼の予防
・非観血的療法
・包帯やチンキャップによる一定期間の開口制限
・観血的療法
①運動抑制法(顎関節前方障害術)
②運動平滑化法
関節結節削除術(eminectomy)
2.顎関節症(TMD)
・顎関節症とは?
→顎関節や咀嚼筋の疼痛、関節雑音、開口障害、
または顎運動を主要症候とする慢性疾患の総括的診断名
・咀嚼筋障害、関節包・靭帯障害、
関節円板障害、変形性関節症などが含まれる。
・TMDの分類
・顎関節症Ⅰ型(筋性)
・筋、筋膜疼痛機能障害症候群(MPD)と同意。
・咀嚼筋の異常により生じる筋・筋膜の代謝異常が原因
・筋の緊張・スパズムを生じる。
・圧痛点は限局的。
・トリガーポイントの存在。
・関連痛は高頻度。
・咀嚼筋の顎運動時痛→開口障害
・顎関節症Ⅱ型(靭帯障害)
・円板後部組織、関節包、靭帯の慢性外傷性病変。
・顎運動時に顎関節痛を訴える。
・触診で顎関節の圧痛を同定できる。
・Ⅲ型やⅣ型の前段階の可逆性の状態。
・過度の開口、硬固物の咀嚼、ブラキシズム、打撲
→滑膜組織・靭帯・関節包・円板後部組織の炎症、変性
・顎関節症Ⅲ型(関節円板障害)
・円板の方向
→92%が前方転位、8%が側方転位。
・転位した円板
→非生理的な負荷を受けて転位を増悪
→円板の変形を生じ、徐々に退行性変化をきたす。
・種類
①相反性ロック
②クローズドロック
③オープンロック
→対処法など
・顎がよく外れるけど自分で戻せる人
→オープンロックが疑われる。
→自ら下顎を左右に動かすことでロック解除
・顎関節症Ⅳ型(変形性関節症)
・退行性病変
・関節円板や滑膜などの軟組織や、下顎頭や下顎窩など
・画像診断により下顎頭や下顎窩の骨変形が確認。
・Ⅱ型⇒Ⅲ型⇒Ⅳ型と進行する。
・臨床症状
・顎関節痛
・開口障害
・関節雑音(ジャリジャリ)
・AAOP(米国口腔顔面痛学会)のガイドライン
・顎関節症とは?
・Self‐Limitingな疾患である
→際限なく悪化する病気ではない。
→放置しておいてもいずれ症状は軽減する
・不正咬合と顎関節症に因果関係はない
・顎関節症の主たる症状は?
①痛み
②顎関節音
③顎関節周囲の筋肉の痛み
④開口障害
⑤頭痛
・顎関節痛の主たる原因は?
①先天的なもの(解剖学的問題)
②全身疾患(リウマチなど)に関連
③関節円板の転位
④姿勢の悪さ
⑤特定の動作の連続性による筋肉の疲労
⑥持続的な強い力が関節に加わる
⑦ストレスなどの心因的因子
・顎関節症の治療方法
・対処療法で90%の患者は痛み・違和感が消失する
①温熱療法、理学療法、消炎鎮痛剤
②スプリント療法
③外科的療法(極めて稀:2-3%)
→通常②まででほとんどの患者は治癒する
・論文読みました。
・Using temporomandibular joint mobility
to predict difficult tracheal intubationSevtap
→J Anesth. 2011 Jun;25(3):457-61. Epub 2011 Mar 31