「麻酔科勉強会」 担当:Y先生
「脳動脈瘤クリッピング術とMEP」
・MEP
→運動誘発電位:Motor evoked potential
・脳動脈瘤の好発部位
・内頸動脈後交通動脈分岐部 (IC-PC)
・前交通動脈 (A-com)
・中大脳動脈第一分岐部 (MCA)
・脳底動脈終末部 (basilar top)
・重要な穿通枝
・前脈絡叢動脈(AChA)
・内頚動脈の後交通動脈分岐部より末梢で分枝
・灌流領域:内包後脚。外側膝状体、視床など
・片麻痺、半身感覚障害、半盲
→Abbie症候群 or Monakow症候群
・レンズ核線条体動脈(LSA)
・中大脳動脈の水平部分(M1)から分枝
・M1以外から分枝することも。
・BAD、被殻出血など
・灌流域は線条体、内包、視床など
・閉塞で錐体路障害
・Heubner反回動脈
・前交通動脈分岐近傍の前大脳動脈A1
ないしはA2近位側から分岐し外側方向に反回して走行
・灌流域:尾状核や被殻、淡蒼球の前下部および低位内包前脚
・閉塞で対側の上肢に優位な麻痺、
顔面・口蓋・舌の障害
・MEP
・頭蓋または脳表を電気刺激
・短母指外転筋、前脛骨筋の電位を記録
・麻酔薬は脊髄前角においてシナプス伝導を抑制する。
・興奮性シナプス後電位(EPSP)
→7-10 msec持続する
・EPSP持続している間に連続刺激を与えると閾値に達する。
→Temporal Summation:時間的加算
・5連発高頻度(500Hz)矩形波電気刺激
→麻酔中のMEPが可能となった。
・刺激方法
・脳表直接電気刺激(d-MEP)
・刺激部位
・中心溝上で正中から7cm外側位置
→手指運動野
・グリッド電極(陽極)を硬膜下腔に挿入する。
・陰極は前頭部針電極。
・筋電図記録用電極
→反対側母指球筋
・利点
・脳表を直接刺激するので低い刺激エネルギーでの刺激が可能。
・皮質、皮質脊髄路の血流不全に鋭敏に反応する。
・t-MEPと比較してfalse nevativeが少ない。
・欠点
・開頭された状態でなければ使用できない。
・硬膜癒着例、脳腫脹の強い例では使用できない。
・前交通動脈、前大脳動脈付近の手術では使用できない。
・脳脊髄液吸引により電極が浮き上がり反応が消えることがある
・経頭蓋電気刺激(t-MEP)
・刺激部位:C3,C4にスクリュー電極
→患側:陽極、健側:陰極
・C3-C4で刺激すると上肢・下肢ともに刺激される場合が多い。
・利点
・開頭されていない場合でも施行可能。
・硬膜癒着例、脳腫脹の強い症例でも使用可能。
・設置が簡便。(清潔野を必要としない)
・欠点
・強い刺激エネルギーを必要とする。
・False nevativeの可能性。
・経頭蓋電気刺激
→皮下組織を通電、大孔から延髄刺激に
→MEPは正常
・MEP変化の基準に関して、明確な基準はない。
・MEPの消失、振幅の50%以上の低下をMEP変化とする施設が多い。
・MEPの報告をいろいろと見てみると…
・d-MEPの反応消失は皮質脊髄路の虚血が疑われる。
・t-MEPはやはり一定のfalse negativeが発生する可能性。
・MEP変化が5分以内に回復
→術後運動麻痺を起さない可能性が高い。
・穿通枝血流不全
→MEP変化は直ちに生じる。
・皮質枝(特にMCA分枝)は10分ほど観察が必要。
・MEPと麻酔
・吸入麻酔薬、静脈麻酔薬いずれもMEPを抑制する。
・静脈麻酔薬は吸入麻酔薬よりもMEP抑制が少なかったという報告が多い。
・Rapid trainpulse法によるMEP
→麻酔薬による抑制をあまり受けなかったという報告も。
→吸入麻酔薬を使用してもいいかも。
・筋弛緩薬をT1 twitchが30%程度になるよう調節
→体動を抑制しかつMEPモニタリングも可能。
・術中誘発電位モニタリングの現状:アンケート調査による検討
・吸入麻酔派2%、TIVA派80%
・筋弛緩薬は導入のみ使用が73%
・当院における症例の紹介