麻酔科勉強会 担当:S先生
「傾向スコアについて」
・臨床研究の目的は、因果推論にある
・そのツールとして統計を用いる
・観察研究と介入研究(実験研究)
・観察研究:研究者は介入せず観察する
→コホート研究 ケースコントロール研究
・介入研究:研究者により、治療法が決められるなど
ある種の実験的介入
→ランダム化比較試験など
・コホート研究
・定義した対象集団から抽出した標本(コホート)を追跡。
・観察して事象の発生を記述する。
・リスク要因に曝露している群と曝露していない群に分ける。
・両群をある期間にわたって追跡する
・アウトカムが発生するかどうかを観察する。
・曝露群と非曝露群で発生頻度や累積発生率を比較する。
・相対リスク、寄与リスクを求めることができる。
・ケースコントロール研究
・アウトカムを発生した群(ケース群)を特定し、
発生しなかった群(コントロール群)を選択する
・バイアスと交絡
・観察研究では以下の因子が問題になる
・因果関係(研究要因とアウトカムとの関係)
・偶然誤差(データ数が小さい場合など)
・系統誤差(バイアス、交絡)
・因果関係を主張するには・・・
→偶然誤差、系統誤差の程度を評価する必要がある。
・特に交絡が問題
・介入研究
・研究者の介入による群間比較
・ランダム化を行うと研究の質が上がる。
・ランダム化比較試験はバイアスや誤差が入りにくいデザイン
・因果効果の定義と 無作為割り付けの重要性
・集団で考えると・・・
・E(Yt=0)=ΣYt=0(個体i)/n=処置t=0を与えたときの反応の期待値
・E(Yt=1)=ΣYt=1(個体i)/n=処置t=1を与えたときの反応の期待値
→集団の因果効果の定義は
→E(Yt=1)ーE(Yt=0)
・ただし、同じ集団に異なる処置を同時に行うことはできない
→因果推論は原理的に不可能
・因果推論の根本問題=欠損値の問題
・欠損値問題として捉えれば・・・
→ランダム割付けにより根本問題を解決
・共変量の調整法
・マッチング・層別化
・共変量の似ている物を比較
・ただし”似ている”の定義はあいまい
・共変量が多いと類似するデータが少なくなる
・共変量を含めた回帰モデル(共分散 重回帰)
・回帰モデルで共変量の影響を調整
・モデルの依存度が高い(ロバストが低い)
・傾向スコア(propensity score)
→両者の良いとこ取りをする
・傾向スコアとは
→割り付けられやすさの指標
・ei = p(t=1|ci)
・共変量ベクトルがciの時に処置群に割り当てられる条件付確率
・この式は“割付け”と共変量の関係を示す。
→説明変数と結果変数はでない
・一般的にはロジスティック回帰で求める
・傾向スコアでは「割付け」をモデル化
・同じ傾向スコアを持つ患者
→実際どちらの群に割り付けられたかは偶然による
→処置以外の効果は無作為化されている
・傾向スコアが一致しているペアをマッチングすると
→差の平均が因果効果の不偏推定量になることが証明できる。
→ちょっと難しいけど。。。
・傾向スコアの具体的方法
①傾向スコアの計算
→ロジスティック回帰などから共変量を用いて計算
②算出された傾向スコアで調整
→マッチング、層別解析、IPW推定量
・傾向スコアが共分散分析に比べて優れている点
①次元の縮約
・傾向スコアは共変量を一次元に縮約している
→共変量の重なりが少ない場合でも使用できる
②モデル依存度の低さ 解析のロバストさ
・共変量と結果変数の関係をモデリングしなくてもよい
・回帰モデルよりもモデルの誤設定に強い
・傾向スコアの前提条件
・「強く無視できる割当て」条件
・どちらの群に割り当てられるかは共変量の値にのみ依存
→結果変数に依存しない
・どの対象となっている共変量が上記を満たしているかは
はっきりしないことが多い。
・前提条件の確認法
・割り付けを共変量が説明していることを示す。
→C統計量など
・共変量自体の分布が調整されていることを示す
→群間での共変量の差がないこと
・逆に説明できないor調整されない場合
→見逃している共変量があることが示唆される
・従属変数との因果関係を考えて共変量を選択
・処置前かつ結果変数に先行→共変量
・処置後かつ結果変数に先行→微妙
・処置後かつ結果変数の後になる→共変量ではない
・傾向スコアの限界
・2群以上の比較を行う場合
→2群ごとに傾向スコアを計算することになり母集団がかわる。
・マッチング・層別解析では因果効果の推定値は計算できるが、
標準誤差が計算できない。
・マッチングでは「同じ傾向スコア」を持つものをペアにするが、
連続変数のため完全に一致することは少ない。
そのためペア選択に恣意性が残る。
・マッチングでは多いデータの群で多くのデータが無駄になる。
「対象者の少ないほうの群の共変量」上での期待値が
因果効果の推定量になる。