ICU勉強会 担当:N先生
「感染性心内膜炎」
・感染性心内膜炎(IE)とは
・弁膜、心内膜に細菌集蔟を含む疣腫(vegetation)を形成
→菌血症、血管塞栓、心障害など
多彩な臨床症状を呈する全身性敗血症性疾患
・IE発症の流れ
・異常血流の影響:弁膜症、先天性心疾患など
・異物の影響:人工弁など
→NBTE(nonbacterial thrombogenic endocarditis)
→菌血症
→vegetationの形成
・症状・身体所見
・発熱:80~85%で認める
・心雑音:80~85%で聴取
・末梢血管病変:点状出血、Osler結節、Janeway発疹、Roth班
・関節痛、筋肉痛:全体の15~50%
・全身性塞栓症:脳・腎・脾・心筋梗塞、腸管虚血など
・神経学的症状:脳塞栓・頭蓋内出血
・うっ血性心不全
・腎不全:糸球体腎炎・血行動態の障害・抗菌薬の腎毒性
・DUKE基準について
・治療方針
・心内膜、弁に形成された疣腫から
原因となった病原微生物を死滅させる
・原因菌が判明しているかが重要。
・菌が分離されたらMICを測定する
・streptococci:ペニシリンG感受性連鎖球菌
・静脈炎を合併する場合ABPCに変更
・ペニシリンアレルギーでは即時型でなければCEZやCTRXの投与も可
・病状の進行は数週間~数か月
・PVEでは腸球菌(後述)と同様4~6週の治療期間
・streptococci:ペニシリンG低感受性連鎖球菌
・基本的にPCGとGMの併用療法
・VCMを使用する場合GMの併用はなくてもよい
・PVEでは腸球菌(後述)に準じた治療
・Enterococci:腸球菌
・60歳以上の高齢者に多い
・脳合併症を除けば臨床的には亜急性の経過をとる
・併用療法が原則
・ペニシリンアレルギーではVCMかTEICを使用
・GMの併用を4週間。PVEでは4~6週間併用
・Staphylococci:メチシリン感受性ブドウ球菌
・急性の経過をとる
・PCGやABPCは多くの場合無効
・PVEの場合、治療期間は6~8週でGM併用期間を2週間。
・RFP併用することもある
・Staphylococci:メチシリン耐性ブドウ球菌
・代表的菌種はMRSA
・MRSEもMRSAに準じて治療する
・PVEの場合、VCMの投与は6~8週、
アミノグリコシド系を2週間併用。
さらにRFPを2~6週間併用することもある
・グラム陰性菌(HACEK群を含む)
・頻度は数%~10%程度
・CTRXまたはCTMを4~6週間投与
(その他の第3・4世代セフェム系も可)
・腸内細菌や緑膿菌では感受性のある第3・4世代セフェム系と
アミノグリコシド系の併用
・Fungi:真菌
・カンジダ属が大部分を占める
・抗真菌活性の高いリポソームアムホテリシンBが選択される
・フルシトシン(5-FC)を併用することもある
・ミカファンギンも今後の検討が待たれる
・真菌性IE
→まず外科的治療を考慮したうえで抗真菌薬投与を行うべき
・外科的治療の適応
・うっ血性心不全
・NYHA分類Ⅲ~Ⅳ度の心不全、Ⅱ度でも心不全・肺高血圧がある
・抵抗性感染
・適切な抗生剤の投与後も感染所見が持続する
・薬物治療が奏功しがたい真菌・グラム陰性菌・MRSAなど
・弁輪膿瘍・房室ブロックなど感染巣の弁輪への波及
・感染性塞栓症
・可動性のある10㎜以上の疣腫が増大傾向にある
・重篤な心不全を認める脳合併症患者
・外科手技
・僧帽弁置換術
・僧帽弁形成術
・弁輪部再建
・基部置換術(ホモグラフトが推奨される)
・合併症
・うっ血性心不全
・IEの最大の予後規定因子
・炎症による弁破壊による弁閉鎖不全の増悪が原因
→弁尖の穿孔、腱索断裂、
弁周囲感染からの裂開・シャントなど
・自己弁IEの場合の発症率
・大動脈弁29% 僧帽弁20% 三尖弁8%
・頻度の高い起因菌
・Staphylococcus aureus が最多
・Enterococci, S,pneumoniae, なども合併率高い
・基本的には外科手術が必要
・活動性IE時の置換弁再発率は2~3%
・弁周囲感染
・感染が弁輪部を超えて周囲組織に広がり、膿瘍を形成
・瘻孔、心内シャント
→血行動態の突然の悪化もの可能性
・自己弁IEの10~14%
・大動脈弁IEに多い → AVblock・LBBBが続発
・人工弁IEの45~60%に合併
・僧帽弁IEにも高率に生じる
・機械弁では初期感染巣は弁輪部が多い(56~100%)
・診断にはTEEが有用(感度87% 特異度95%)
・うっ血性心不全の合併に関わらず、基本的に外科手術の適応
・塞栓症
・IEに全身性塞栓症を発症する頻度は27~45%
・中枢神経系が60~70%の頻度
その他、脾臓・腎臓・肺・冠動脈・
肝臓・腸管膜動脈・末梢動脈など
・疣腫>10mm(odds比 2.80)、可動性が大きい と頻度が高くなる
・塞栓発症の予測にTEEが有用
・脳合併症
・頻度は20~40%
・64.6% 脳梗塞
・31.5% 脳出血(出血性梗塞・感染瘤破裂によるクモ膜下出血)
・2.8% 脳膿瘍
・1.1% 髄膜炎
・神経系合併症の原因菌はStaphylococcus aureusが多い