2013年8月10日土曜日

心臓手術とノボセブン

麻酔科勉強会  担当:H先生

「心臓手術とノボセブン」

・ノボセブン
  →遺伝子組換え活性型血液凝固第VII因子製剤
 ・適応
   ・血液凝固第VIII因子又は第IX因子に対する
    インヒビターを保有する先天性血友病患者の出血抑制
   ・後天性血友病患者の出血抑制
   ・先天性第VII因子欠乏症患者における出血傾向の抑制
   ・血小板に対する同種抗体を保有し、
    血小板輸血不応状態が過去又は現在みられる
    グランツマン血小板無力症患者の出血傾向の抑制
・止血メカニズム
  ・内因系凝固カスケードを介さず直接第Ⅹ因子を活性化
    →トロンビン産生を促す。
  ・十分なフィブリノーゲンがないと凝固系は機能しない。
  ・もちろん正常機能を持つ血小板は不可欠。
・ノボセブンの適応外使用
  ・外傷
  ・血小板数・機能低下時の出血
  ・吐血、下血
  ・心臓大血管手術
  ・肝移植
  ・その他の大量出血手術など
・2000年、Al Douriら
  →CPB離脱後の出血に対してrFⅦa 30μg/kgの投与
  →出血量が劇的に減少した。
  →ここから心臓血管手術におけるrFⅦaの使用報告が急増。
・米国での使用状況
  ・2008年には17813症例でrFⅦaが承認適応外使用
    →全使用症例の97%
  ・心臓血管外科手術の使用が急激に増加
    →適応外使用の1/4を占める。
・ノボセブンの安全性
 Safety of Recombinant Activated Factor VII in Randomized Clinical Trials.
   ・rFⅦaにより血栓塞栓系の有害事象は増えそうである。
   ・特に動脈血栓塞栓が増えるらしい。
   ・動脈の中では冠動脈イベントがより増えるらしい。
   ・頭蓋内出血に対するrFⅦaの使用
     →有意に有害事象を増やしそうである。
   ・有害事象はdose-dependentに増えていくのであろう。
・投与量
   ・最近の報告になるに従ってlow-doseになる傾向?
   ・10-20μg/kg程度のボーラス投与でも有効との報告も。
・心臓大血管手術におけるノボセブンの適応外使用
 The role of recombinant factor VIIa in on-pump cardiac surgery: Proceedings of the Canadian Consensus Conference. 
  ・(心臓手術における)prophylactic use
  ・人工心肺離脱し、プロタミンリバース後投与
    ・全例投与
       or 大量出血が見込まれる、または輸血拒否患者
  ・輸血が遅れてしまう可能性あり。
  ・有害事象に有意差なし。
  ・全患者に投与することは避けるよう強く推奨。
  ・大量出血のリスクのある患者には有効かも。
 The role of recombinant factor VIIa in on-pump cardiac surgery: Proceedings of the Canadian Consensus Conference.
  ・routine use
  ・凝固異常のある、または見込まれる出血患者
  ・通常の止血療法の併用または代替として行う
  ・有害事象の頻度に有意差は認めないが、
   有意に良いエンドポイントが得られているわけでもなく、
   今のところ推奨できるものではない。
 The role of recombinant factor VIIa in on-pump cardiac surgery: Proceedings of the Canadian Consensus Conference.
  ・rescue use
  ・標準的な止血療法を最大限に行っても反応しない大量出血
  ・rescue useとしてのrFⅦaの使用
    →ベネフィットがリスクを上回ると考えられるため推奨
    →推奨度は弱く、制限もある。
  ・脳血管障害をもつ患者に使用すると有害事象が起こりやすい。
  ・“refractoriness”の判断
    →できるだけ出血の早期に、アグレッシブに行う。
    →rFⅦaの効果が最大限に出やすい。
・ノボセブンとPint of Care
 The Utility of Thromboelastography for Guiding Recombinant Activated Factor Ⅶ Therapy for Refractory hemorrhage After cardiac Surgery.
  ・rFⅦaを投与した患者をresponder(28人)vs nonresponder(10人)で比較。
  ・投与前のTEGデータがresponderの予測因子となりうるか。
  ・rFⅦa投与前のTEGデータが4つ中2つで異常値
     →nonresponderとなる確率が高い。
 Change in Hemostatic Intervention After Implementation of Thromboelasto- metry.
  ・2008年12月にROTEMを導入した施設での研究。
  ・2008年の心臓手術(811件)と2009年(865件)で、
   輸血必要量、rFⅦa使用量、フィブリノゲン製剤使用量を比較。
   ちなみに2009年のうち146症例でROTEMを使用。
  ・結果、輸血量は有意差なし、rFⅦa使用量は有意に減少、
   フィブリノゲン投与量は有意に増加した。
・まとめ
  ・ノボセブン使用前に確認すべきこと
    ・適正なHb
    ・適正な血小板数と機能
    ・適正な凝固機能(PTやAPTTよりもROTEMを使用した方が良い?)
    ・抗線溶薬の投与
    ・(術後ICUで・・・)術者に再開胸の意思確認
  ・CABGでは入れない方がいいかもしれない。