麻酔科勉強会 担当:H先生
「心臓手術とノボセブン」
・ノボセブン
→遺伝子組換え活性型血液凝固第VII因子製剤
・適応
・血液凝固第VIII因子又は第IX因子に対する
インヒビターを保有する先天性血友病患者の出血抑制
・後天性血友病患者の出血抑制
・先天性第VII因子欠乏症患者における出血傾向の抑制
・血小板に対する同種抗体を保有し、
血小板輸血不応状態が過去又は現在みられる
グランツマン血小板無力症患者の出血傾向の抑制
・止血メカニズム
・内因系凝固カスケードを介さず直接第Ⅹ因子を活性化
→トロンビン産生を促す。
・十分なフィブリノーゲンがないと凝固系は機能しない。
・もちろん正常機能を持つ血小板は不可欠。
・ノボセブンの適応外使用
・外傷
・血小板数・機能低下時の出血
・吐血、下血
・心臓大血管手術
・肝移植
・その他の大量出血手術など
・2000年、Al Douriら
→CPB離脱後の出血に対してrFⅦa 30μg/kgの投与
→出血量が劇的に減少した。
→ここから心臓血管手術におけるrFⅦaの使用報告が急増。
・米国での使用状況
・2008年には17813症例でrFⅦaが承認適応外使用
→全使用症例の97%
・心臓血管外科手術の使用が急激に増加
→適応外使用の1/4を占める。
・ノボセブンの安全性
Safety of Recombinant Activated Factor VII in Randomized Clinical Trials.
・rFⅦaにより血栓塞栓系の有害事象は増えそうである。
・特に動脈血栓塞栓が増えるらしい。
・動脈の中では冠動脈イベントがより増えるらしい。
・頭蓋内出血に対するrFⅦaの使用
→有意に有害事象を増やしそうである。
・有害事象はdose-dependentに増えていくのであろう。
・投与量
・最近の報告になるに従ってlow-doseになる傾向?
・10-20μg/kg程度のボーラス投与でも有効との報告も。
・心臓大血管手術におけるノボセブンの適応外使用
The role of recombinant factor VIIa in on-pump cardiac surgery: Proceedings of the Canadian Consensus Conference.
・(心臓手術における)prophylactic use
・人工心肺離脱し、プロタミンリバース後投与
・全例投与
or 大量出血が見込まれる、または輸血拒否患者
・輸血が遅れてしまう可能性あり。
・有害事象に有意差なし。
・全患者に投与することは避けるよう強く推奨。
・大量出血のリスクのある患者には有効かも。
The role of recombinant factor VIIa in on-pump cardiac surgery: Proceedings of the Canadian Consensus Conference.
・routine use
・凝固異常のある、または見込まれる出血患者
・通常の止血療法の併用または代替として行う
・有害事象の頻度に有意差は認めないが、
有意に良いエンドポイントが得られているわけでもなく、
今のところ推奨できるものではない。
The role of recombinant factor VIIa in on-pump cardiac surgery: Proceedings of the Canadian Consensus Conference.
・rescue use
・標準的な止血療法を最大限に行っても反応しない大量出血
・rescue useとしてのrFⅦaの使用
→ベネフィットがリスクを上回ると考えられるため推奨
→推奨度は弱く、制限もある。
・脳血管障害をもつ患者に使用すると有害事象が起こりやすい。
・“refractoriness”の判断
→できるだけ出血の早期に、アグレッシブに行う。
→rFⅦaの効果が最大限に出やすい。
・ノボセブンとPint of Care
The Utility of Thromboelastography for Guiding Recombinant Activated Factor Ⅶ Therapy for Refractory hemorrhage After cardiac Surgery.
・rFⅦaを投与した患者をresponder(28人)vs nonresponder(10人)で比較。
・投与前のTEGデータがresponderの予測因子となりうるか。
・rFⅦa投与前のTEGデータが4つ中2つで異常値
→nonresponderとなる確率が高い。
Change in Hemostatic Intervention After Implementation of Thromboelasto- metry.
・2008年12月にROTEMを導入した施設での研究。
・2008年の心臓手術(811件)と2009年(865件)で、
輸血必要量、rFⅦa使用量、フィブリノゲン製剤使用量を比較。
ちなみに2009年のうち146症例でROTEMを使用。
・結果、輸血量は有意差なし、rFⅦa使用量は有意に減少、
フィブリノゲン投与量は有意に増加した。
・まとめ
・ノボセブン使用前に確認すべきこと
・適正なHb
・適正な血小板数と機能
・適正な凝固機能(PTやAPTTよりもROTEMを使用した方が良い?)
・抗線溶薬の投与
・(術後ICUで・・・)術者に再開胸の意思確認
・CABGでは入れない方がいいかもしれない。