2013年12月15日日曜日

開心術後の低リン血症

ICU勉強会  担当:Y先生

「低リン血症」

・Pは体内に600g存在する。
  ・85%→ハイドロキシアパタイトとして骨に蓄積
  ・14-15%→ATPなど代謝産物の構成要素として主に細胞内に。
  ・1%未満→細胞外液に存在。500mg程度。
     →細胞外から細胞内へのシフトにより容易に血清P↓
・血清P(「無機リン」という項目になっていることが多い)
  ・正常値2.5-4.5mg/dl
  ・1.0mg/dl未満を高度低P血症とする。
・生体内でのPの役割
  ・ATPの産生
     →ADP+P=ATP
  ・2,3-DGPの産生
    ・解糖系の側副路:Rapoport-Luebering Pathway
    ・2,3-DGP復習
      ・赤血球におけるATP産生エネルギー
      ・HbとO2の親和性調節
        ・2,3-DPG増加
          →Hb酸素解離曲線の右方移動
        ・2,3-DPG低下
          →Hb酸素解離曲線の左方移動
          →赤血球からの酸素放出低下
          →組織低酸素血症
・低リン血症の鑑別
  ・消化管からの吸収減少
  ・消化管・腎からの排泄増加
  ・細胞内への移動
・消化管からの吸収
  ・1日のP摂取量は800-2,000mg。
  ・タンパク質、乳製品、肉類に多く含まれる。
    →牛乳1Lに1,000mgのP含む。
  ・消化管吸収量=腎排泄量
  ・腸管からの吸収
    ・濃度勾配に従った吸収(受動輸送)
    ・Na/P共輸送体による能動的吸収
       ↑Vit.Dにより亢進する。
・腎での排泄と再吸収
  ・NTP2について
    ・再吸収促進→P↑
      ・低P食
      ・成長ホルモン
      ・甲状腺ホルモン
    ・再吸収阻害→P↓
      ・高P食
      ・PTH
      ・Vit.D
      ・Steroid
      ・利尿薬 
      ・細胞外液量増加
・細胞内への移動
  ・インスリン
    ・glucose+Pで細胞内取り込み。
    ・アルコール依存症、低栄養Pt.では低Pに注意。
  ・呼吸性アルカローシス
    ・phosphofructokinase 活性化→細胞内解糖促進
    →ブドウ糖リン酸化促進→細胞内P低下
    →細胞外からPの移動
  ・カテコラミン
    ・DOA, DOB, 吸入薬(procaterolなど)
  ・白血病、悪性リンパ腫、sepsis(主にGNR感染)
・臨床症状
  ・高度急性低P血症(P<1.5 mg/dl)
    →2,3DPG低下、細胞内ATPレベル低下
    →組織低酸素血症
  ・筋力低下が全面に出ることが多い。
   ・横隔膜運動低下→呼吸不全、weaning困難
   ・心収縮力低下→血圧低下、心室性不整脈、
  ・末梢・中枢神経症状
   ・脳症→convulsion, epilepsy, comaなども。


・開心術後の低Pに関する論文
  ・術後低P群(<1.5 mg/dl)はcontrol群と比較して、
    ・血液製剤の使用
    ・ICU入室時2種類以上の循環作動薬使用
    ・術後人工呼吸期間
    ・術後循環作動薬使用期間
    ・in-hospital stay
        が有意に長かった。
  ・心臓手術術後、Pはルーチンに計測し低Pはすぐに補正すべき。

・開心術後の低Pに関する症例報告
  ・P補正でカテコラミンウィーニングが進んだ。
・その他
  ・心臓血管手術後の低Pは術後2日目に多い。
    →否定的な報告も
    →refillを見ている?
  ・肝臓切除後の低P。
    ・肝増殖によるPの消費?
    ・むしろ腎からのP排泄(FEP増加)によるものが多い。
  ・頭部外傷後の低体温療法(32-33℃)
    →reversibleな低P血症をきたす。
  ・低Pは耐糖能異常、インスリン感受性の低下をもたらす。