2013年12月15日日曜日

空気塞栓症

ICU勉強会  担当:Y先生

「空気塞栓症」

・Air embolism発症に必要な2つの因子
 ・血管と空気の接触箇所
 ・空気源から血管内へのpressure gradient
・Air embolismが起こりうる主なsetting
 ・Surgery and Trauma
 ・血管内留置カテーテル
 ・barotrauma
・手術因子
 ・脳神経外科手術、頭頸部外科手術
   →CVP陰圧でair引き込み
 ・YAGレーザー使用気管支手術
   →coolant gas引き込み
 ・その他いろいろ。
   →肺生検、肺切除、腹腔鏡手術、
    帝王切開、CPB、静脈手術、・・・
・外傷
 ・Arterial air embolismも起こりうる。
   →頭頸部外傷、穿通性胸部外傷、鈍的腹部外傷など
 ・穿通性胸部外傷で左心系airを認めたcasesでは死亡率66%と。
・カテーテル挿入時の空気塞栓リスク
 ・connection部分の外れ、破損
 ・挿入、抜去の際に回路ロックを忘れる。
 ・カテーテル抜去後に刺入孔が閉じてない。→抜去後も注意。
 ・挿入、抜去時の深呼吸(吸い込み)
 ・head up position。
・Barotrauma
  →陽圧換気がリスクとなりうる。
   ・成人ARDS
   ・hyaline menbrane diseaseの新生児
  ・ダイバー
   ・100,000 diveに7例のリスク。
   ・PVに溶解していたgasがいきなり左心系に出現することも。
・合併症
 ・Large bubbles
  →pulmonary outflow tract閉塞(”air lock”)。
  →CVP上昇、PAP低下、ABP低下。
 ・Smaller bubbles
    →肺の細動脈閉塞→肺血管収縮→PAP上昇→RVP上昇
  ・頻脈により一過性にCOは上昇、その後低下。ABPも低下。
 ・肺の微小循環系airは血管内皮細胞障害を引き起こす。
    →肺水腫、気管支攣縮、VQ-mismatch、
     死腔増加、気道抵抗増加など
・臨床症状
 ・minor caseでは無症状
 ・severe caseでは血行動態破綻、臓器不全も。
  ・呼吸苦はほぼ必発(呼吸促迫、傍胸骨の疼痛、浮遊感を伴う)。
  ・息切れ、咳嗽
  ・頻呼吸、頻脈、低血圧、wheezing、crackles、呼吸不全、・・・
  ・精神状態の変化、巣症状、網状皮斑なども。
  ・arterial air embolismでは塞栓による臓器障害。
・鑑別診断
  ・呼吸不全、循環不全、中枢神経疾患の鑑別を。
・治療
 ・Venous air embolism
   →すぐに左側臥位に
    ・left lateral decubitus position
    ・Trendelenburg position
    ・Left lateral decubitus head down position
 ・Arterial air embolism
   →すぐに仰臥位に。
    ・動脈系は高圧系
       やjりう氏どんなpositionでもairは飛んで行く。
    ・頭蓋内圧を揚げるhead down positionは避けるべき。
 ・目標はRVOTから細動脈へairを追い出すこと。
 ・右心系airの場合は体位変換が効果的。
    →airの場所が変わりRVOTから外れる。
 ・それでも血行動態破綻が続くのであれば・・・
    →側臥位で胸骨圧迫開始。
     ・空気塞栓のcaseでは動物実験で有効性が示されている。
 ・CVカテーテルから脱気する。
    ・20ml程度しか引けない。
    ・CVカテ入ってる場合にのみ試す価値あり。
 ・高濃度酸素吸引
    ・血中酸素分圧増加→血中窒素分圧低下→airの血中吸収促進
 ・高圧酸素療法(HBO)
    ・循環動態が安定しているなら有益かもしれない。
    ・早期開始(6h以内)で予後改善の報告。
・予後
 ・Severe caseでは死亡率30%との報告。
 ・HBOを施行した119例の報告(venous and arterial)。
  ・ICU死亡12%、病院死亡16%、半年死亡18%、1年死亡21%
  ・ICU死亡のリスク因子
     →発症時心停止、ICU入室時SAPSⅡscore>33
  ・1年死亡のリスク因子
     →高齢、Babinski反射陽性、AKI
  ・生存者のうち43%がICU退室時神経学的後遺症あり
     →視野障害、植物状態、運動麻痺、認知障害、てんかん
     →しかし75%は退院時症状軽快。