2013年4月9日火曜日

Brugada症候群患者の麻酔

麻酔科勉強会  担当:I先生

「Brugada症候群患者の麻酔」

・Brugada症候群
  ・VT/VF
  ・Sudden cardiac death (SCD)
  ・アジア人男性
  ・ICD
 ・Brugadaらが1992年に報告
 ・明らかな器質的心疾患なし
 ・右側胸部誘導(V1-3)における特徴的なST⬆
      →そこから誘発されるVF
 ・日本を含め、東・東南アジア地域に多い
 ・男>>女 (72-76%)
 ・遺伝性AD(NaやCaチャネル遺伝子変異など)
 ・浸透率は低い.16%とも
 ・45歳の突然死 FHは22-50% (特に無症候群では50-70%)
 ・VFの過半数は安静時・夜間睡眠中
 ・PAF、冠攣縮性狭心症、神経調節性失神
 ・重篤な心事故の発生率
   ・VF・蘇生群 17.4% /year
   ・失神群 6.2% /year
   ・無症候群 0.6-3.7% /year
・心電図
 ・coved 型(Type1)
    →J点からドーム上にST上昇
    →VF生じ易い
 ・saddlebach型(Type2,3)
    →J点からSTがいったん下方に向かった後に再び上に向かう
・特徴的な心電図+以下の1つ
  a)Documented VF
  b)Self-terminating polymorphic VT
  c)FH of sudden cardiac death at <45yrs
  d)Type 1 ST elevation in family members
  e)Electrophysiologic inducibility of VT
  f)Unexplained syncope suggestive of a tachy
  g)Nocturnal agonal respiration
 ・type2,3は右前胸部誘導で1誘導以上、
  NaCB負荷でtype1ST上昇認めればBS
・BSにおいて重篤な不整脈を生じる因子
 ・Brugada型ST上昇の誘発因子は??
 ・Induced Brugada-Type Electrocardiogram,
    a Sign for Imminent Malignant Arrhythmias.
             Circulation. 2008; 117:1890-1893
   ・ERにてBrugada型ECGを示した47人
   ・male 69%、mean age 48 ± 16.2 yrs
   ・可能なら遺伝子SCN5A検査もした
 ・47人のうち
   ・16人は発熱時にBrugada型ECG変化
   ・26人は投薬を契機に
     (コカイン、麻酔薬、抗不整脈薬、抗うつ薬、抗ヒスタミン薬)
   ・5人は電解質異常
   ・24人(51%)で致死性不整脈
     ・そのうち18人で突然死
       (6人が発熱時、8人が麻酔薬で)
     ・3人がVT
     ・3人が失神
・Brugada型ST上昇の機序
  ・心筋の内向きNa電流・Ca電流の低下
   →NaCB、コカイン、抗うつ薬、抗ヒスタミン薬
  ・外向きK電流の増加
   →高K、副交感神経刺激、ATP感受性Kチャネル活性化剤
  ・プロポフォール
   →L型Ca電流抑制?まだ不明
  ・発熱
   →温度依存性に開口率が変化するNaチャネルの変異を持つため、
    発熱によりECG変化が生じる可能性
      →長時間の入浴もリスク
・PRISとの関連
  ・PRIS(propofol-related infusion syndrome)
  ・高濃度(>5mg/kg/hr)、長期間(>48hr)
  ・横紋筋融解、腎不全、高K、代謝性アシドーシス、高TG
  ・ミトコンドリア脂質代謝障害?遺伝子欠損?
 ・PRISで死亡した人の死亡前のECG再解析
    →多くはBrugada型ST上昇に伴うVFだったという報告