麻酔科勉強会 担当:Y先生
「NIRSいろいろ」
・分光法
→光を当てて物質の定性、定量、物性を知る手法
・近赤外線
・非破壊・非接触測定が可能
・迅速に測定結果が求められる
・装置が安価
・「雑音」が多く正確な測定が困難だった。
→computerの安価化および多変量解析の発達
→定量分析への応用が可能となる。
・NIRS測定原理
・深部-浅部=脳実質組織
・NIRSとパルスオキシメトリーの違い
→使用する光が違う
・パルスオキシメトリー
・動脈血酸素飽和度を測定するために開発。
・拍動を感知することで動脈成分のみをdetectする。
・すなわち、拍動がなければ測定できない。
・NIRS
・静脈成分が多い組織酸素飽和度(rSO2)測定。
・動脈成分と静脈成分を区別しない。
・rSO2が下がった時
・酸素供給量不足
→CI上げる、圧上げる、Hct上げる、脳灌流量上げる
・酸素消費過多
→体温冷やす、麻酔深度を深める
・rSO2が高くても
→脳の酸素利用障害の可能性
→必ずしも安心できない
・NIRSと心臓外科術後中枢神経合併症について
・術後神経合併症をきたした群では
手術時間およびrSO2<55%の時間が有意に長かった。
Eur J Cardiothorac Surg. 2004 Nov;26(5):907-11
・SACP中、rSO2がbaselineの76-86%低下
→感度83%、特異度94%でstrokeの診断となる。
J Thorac Cardiovasc Surg. 2006 Feb;131(2):371-9.
・rSO2がbaselineの80%に低下
→術後神経合併症と有意に関連
Applied Cardiopulmonary Pathophysiology 13: 201-207, 2009
・NIRS導入前と導入後の比較。導入後はrSO2低下に対して介入。
→NIRS導入後はstrokeの割合が有意に低かった。
Heart Surg Forum. 2004;7(5):E376-81.
・CABG患者をNIRS display群と非display群にランダム割付。
→display群ではrSO2低下に対して介入を行う。
→非display群ではrSO2低下時間とICU滞在期間が有意に増加。
→合併症に差はなし。
Anesth Analg. 2007 Jan;104(1):51-8
・NIRSと術後認知機能障害、術後譫妄との関連
・rSO2<40%の期間があることが術後MMSE、ASEM低スコアと関連。
J Cardiothorac Vasc Anesth. 2004 Oct;18(5):552-8
・CABG患者でrSO2低下に対して介入群と非介入群で割付。
→非介入群は早期POCDリスク上昇および病院滞在期間も延長。
Ann Thorac Surg. 2009 Jan;87(1):36-44; discussion 44-5
・CAM-ICUを用いて術後譫妄リスクを評価
→術中crSO2 < 51%で術後譫妄発症を予測。
Crit Care. 2011;15(5):R218
・Out-of-hospital cardiac arrest (OHCA)
・Post cardiac arrest syndrome (PCAS)
→早期集中治療介入の適応判断としてのNIRS使用
・来院時心肺停止症例における到着時crSO2と社会復帰率
→rSO2>40%では社会復帰率50%の報告も
Resuscitation. 2012 Jan;83(1):46-50.
・J-POP registry
→Japan-Prediction of neurological Outcome
in Patients with cardiac arrest
・院外心肺停止患者におけるrSO2測定の有用性に関する研究
・全国24施設が登録
・中枢神経以外でNIRS
・Septic shock患者で最初の24hで腕撓骨筋rSO2<60%は予後が悪い。
J Trauma. 2011 May;70(5):1145-52
・EGDT中にScvO2とrSO2の関連を見た。
→咬筋rSO2がScvO2を最もよく予測。
→咬筋rSO2と三角筋rSO2が28日mortalityを予測。
Crit Care Med. 2012 Feb;40(2):435-40
・早産期児の額と側腹部と腹部にINVOS貼ってみた研究
J Perinatol. 2011 January; 31(1): 51–57
・NRISの問題点
・NIRS測定デバイスによりrSO2異常の定義がバラバラ。
→ちなみにアメリカではINVOS、FORE-SIGHT、EQUANOXが三大人気。
・大動脈手術後のstrokeは、RCTを行うには頻度が低すぎる。
→clinical evidenceが未だ確立されていない。
・POCD、術後譫妄に関しても質の高い研究がなされていない。
・コストの問題。(プローブ片側のみで15,000円程度)