2013年4月5日金曜日

NIRSいろいろ

麻酔科勉強会  担当:Y先生

「NIRSいろいろ」

・分光法
  →光を当てて物質の定性、定量、物性を知る手法
・近赤外線
  ・非破壊・非接触測定が可能 
  ・迅速に測定結果が求められる
  ・装置が安価
  ・「雑音」が多く正確な測定が困難だった。
    →computerの安価化および多変量解析の発達
    →定量分析への応用が可能となる。
・NIRS測定原理
  ・深部-浅部=脳実質組織
・NIRSとパルスオキシメトリーの違い
  →使用する光が違う
  ・パルスオキシメトリー
    ・動脈血酸素飽和度を測定するために開発。
    ・拍動を感知することで動脈成分のみをdetectする。
    ・すなわち、拍動がなければ測定できない。
  ・NIRS
    ・静脈成分が多い組織酸素飽和度(rSO2)測定。
    ・動脈成分と静脈成分を区別しない。
・rSO2が下がった時
  ・酸素供給量不足
    →CI上げる、圧上げる、Hct上げる、脳灌流量上げる
  ・酸素消費過多
    →体温冷やす、麻酔深度を深める
・rSO2が高くても
  →脳の酸素利用障害の可能性
  →必ずしも安心できない

・NIRSと心臓外科術後中枢神経合併症について
  ・術後神経合併症をきたした群では
   手術時間およびrSO2<55%の時間が有意に長かった。
      Eur J Cardiothorac Surg. 2004 Nov;26(5):907-11
  ・SACP中、rSO2がbaselineの76-86%低下
    →感度83%、特異度94%でstrokeの診断となる。
      J Thorac Cardiovasc Surg. 2006 Feb;131(2):371-9.
  ・rSO2がbaselineの80%に低下
    →術後神経合併症と有意に関連
      Applied Cardiopulmonary Pathophysiology 13: 201-207, 2009
  ・NIRS導入前と導入後の比較。導入後はrSO2低下に対して介入。
    →NIRS導入後はstrokeの割合が有意に低かった。
      Heart Surg Forum. 2004;7(5):E376-81.
  ・CABG患者をNIRS display群と非display群にランダム割付。
    →display群ではrSO2低下に対して介入を行う。
    →非display群ではrSO2低下時間とICU滞在期間が有意に増加。
    →合併症に差はなし。
      Anesth Analg. 2007 Jan;104(1):51-8

・NIRSと術後認知機能障害、術後譫妄との関連
  ・rSO2<40%の期間があることが術後MMSE、ASEM低スコアと関連。
      J Cardiothorac Vasc Anesth. 2004 Oct;18(5):552-8
  ・CABG患者でrSO2低下に対して介入群と非介入群で割付。
    →非介入群は早期POCDリスク上昇および病院滞在期間も延長。
      Ann Thorac Surg. 2009 Jan;87(1):36-44; discussion 44-5
  ・CAM-ICUを用いて術後譫妄リスクを評価
    →術中crSO2 < 51%で術後譫妄発症を予測。 
      Crit Care. 2011;15(5):R218

・Out-of-hospital cardiac arrest (OHCA)
・Post cardiac arrest syndrome (PCAS)
  →早期集中治療介入の適応判断としてのNIRS使用
  ・来院時心肺停止症例における到着時crSO2と社会復帰率
    →rSO2>40%では社会復帰率50%の報告も
      Resuscitation. 2012 Jan;83(1):46-50.
・J-POP registry
  →Japan-Prediction of neurological Outcome
                in Patients with cardiac arrest
 ・院外心肺停止患者におけるrSO2測定の有用性に関する研究
 ・全国24施設が登録

・中枢神経以外でNIRS
 ・Septic shock患者で最初の24hで腕撓骨筋rSO2<60%は予後が悪い。
      J Trauma. 2011 May;70(5):1145-52
 ・EGDT中にScvO2とrSO2の関連を見た。
   →咬筋rSO2がScvO2を最もよく予測。
   →咬筋rSO2と三角筋rSO2が28日mortalityを予測。
      Crit Care Med. 2012 Feb;40(2):435-40
 ・早産期児の額と側腹部と腹部にINVOS貼ってみた研究
      J Perinatol. 2011 January; 31(1): 51–57

・NRISの問題点
 ・NIRS測定デバイスによりrSO2異常の定義がバラバラ。
   →ちなみにアメリカではINVOS、FORE-SIGHT、EQUANOXが三大人気。
 ・大動脈手術後のstrokeは、RCTを行うには頻度が低すぎる。
   →clinical evidenceが未だ確立されていない。
 ・POCD、術後譫妄に関しても質の高い研究がなされていない。
 ・コストの問題。(プローブ片側のみで15,000円程度)