2013年4月1日月曜日

腹部大動脈瘤の術後腸管合併症

ICU勉強会  担当:K先生

「腹部大動脈瘤の術後腸管合併症」

・部位
 ・胸腹部大動脈瘤として
   ・上行:16% 下行:10% 弓部:7% 胸腹部:2%
    腎上部:5% 腎下部:60%
 ・腹部大動脈瘤として 腎下部:95%
・原因
  ・動脈硬化性(90%以上)
  ・特発性嚢状中膜壊死
  ・Marfan 症候群、Ehlers-Danlos 症候群
  ・特異的炎症
  ・梅毒性、結核性
  ・非特異的炎症
  ・大動脈炎症候群、Bechet病
  ・細菌感染
  ・外傷
・腹部大動脈瘤
 →最大短径が55mmを超えると破裂する可能性が増大する
 →5mm/6ヶ月以上の拡張速度で手術を検討される
・治療
  ・外科的治療:人工血管置換術
    ・腹膜経路
    ・後腹膜経路
  ・血管内治療:ステントグラフト挿入術
    ・適応
      ・中枢側のネックが長く(15mm以上)
       比較的真っすぐ(60度以下)かつ直径が28mm以下
      ・アクセスルートとして腸骨動脈が長く(6-7mm以上)、
       極端な屈曲蛇行・石灰化がみられない
      ・末梢側ネックが10mm以上
・手術死亡率は2-3%
  ・早期合併症
    →心合併症、呼吸器合併症、
     腎機能低下、創感染、出血
     腸管麻痺、腸管虚血、臀筋跛行、性機能障害(陰萎)
  ・晩期合併症
    →吻合部動脈瘤、グラフト閉塞、
     グラフト感染、グラフト腸管瘻
・腸管虚血
  →待機的腹部大動脈瘤手術の約1.6%に発生する
  ・下腸間膜動脈(IMA)領域、特にS状結腸に好発
  ・腸管切除が必要な腸管虚血
     →死亡率は50%を上回る
  ・危険因子
    ・年齢
    ・腎障害
    ・腸切除の既往
    ・緊急手術
    ・術者の経験不足
    ・大動脈遮断時間の延長など
・腸管虚血の評価、予測
  ・肉眼的観察
  ・腸管の色調
  ・腸管ドプラ音・直腸ドプラ音
  ・ドプラエコーの使用
  ・IMA断端圧
  ・血液pH、PaO2も腸管虚血と関連がある
  ・下部消化管内視鏡検査
    →最も信頼性が高い
    ・手間がかかりルーチンでは行われない
  ・臨床症状
    →腹部所見、腹痛、粘血便
・IMA再建によって虚血性腸炎は有意に減少しない
・後腹膜アプローチは術後腸管麻痺を軽減できる


・本日の論文
A cohort study of nutrition practices in the intensive care unit following abdominal aortic aneurysm repair
JPEN J Parenter Enteral Nutr. 2013 Mar;37(2):261-7