12/16より、来年度専攻医の二次登録期間が始まりました。
専門医機構の配慮により、本プログラムの採用定員が5名→6名と、1名増員となりました。神戸市立医療センター中央市民病院での麻酔科専攻医採用枠は5名で確定しております。従いまして、増員分は連携病院での研修スタートが条件となりますので、ご注意ください。詳しくはプログラム責任者にお問い合わせください。
プログラム責任者 麻酔科部長・美馬裕之
hmima■kcho.jp (■を@に変換してご送信ください)
2017年12月20日水曜日
2017年11月17日金曜日
シバリング治療とガイドライン
麻酔科勉強会 担当:K先生
「シバリング治療とガイドライン」
・シバリングとは?
・骨格筋の不随意で小刻みな収縮
・末梢温が中枢温よりも極端に低い時に発生。
→必ずしも中枢温が低くはない。
・体温調節性シバリングと非体温調節性シバリングがある。
・シバリングが起こる原因
・体温低下
・手術による炎症性サイトカイン分泌
→体温セットポイントの上昇
・疼痛
・麻酔中の体温低下の原因
・第1相
・麻酔導入による熱の再分布
・麻酔導入前は末梢血管が収縮している状態。
→中枢‐末梢温度較差が存在。
→麻酔導入による血管拡張で熱の再分布が起こる。
→中枢温が低下する。
・第2相
・熱喪失>熱産生
・第3相
・プラトー期
・低体温により体温調節性血管収縮が起こる。
・視床下部による体温調節
・脳、脊髄、深部組織、皮膚などの温度入力
→視床下部前部で統合処理され体温調節機構が働く。
・体温調節性シバリング
・持続緊張性で筋電図では4~8サイクル/分の漸増漸減パターン
・全身麻酔中では体温が低下するが、
麻酔薬によりシバリング閾値も低下するためシバリングは生じない。
・麻酔から覚醒するときにシバリング閾値が元に戻り、
低下した中枢温を上回るときにシバリングが起こる。
・手術侵襲や感染などの体温のセットポイント上昇でも
シバリング閾値が上昇しシバリングが発生する。
・非体温調節性シバリング
・5~7Hzの連射的な筋電図パターン
・呼気中のイソフルラン濃度が0.2~0.4%程度の低濃度で出現。
・病的クローヌスと同様のパターン。
・皮膚末梢温の低下は見られない。
・オピオイドやNSAIDsといった鎮痛薬で改善する。
・疼痛に関係する?
・シバリングを起こすリスク
・低体温
・レミフェンタニルの使用(μオピオイドによるシバリング抑制)
・手術侵襲(体温調節中枢のセットポイント上昇)
・シバリングの問題点
・酸素消費量の増加(2~4倍)
・主要臓器への酸素不足→心筋梗塞、脳梗塞、創傷治癒遅延
・二酸化炭素の発生
・呼吸不全患者で危険増加
・頭蓋内圧、眼圧、胸腔内圧、腹腔内圧の上昇
・皮膚緊張による創傷の増強
・末梢の血流障害と代謝性アシドーシス
・不快感
・シバリングの予防法
①熱の喪失の抑制
・放射を防ぐために室温を上げて
温風加温システムで保温、加温する。
・輸液を保温庫で温め輸液加温システムで輸液をさらに加温。
②熱再分布の抑制
・導入前加温、導入前の血管拡張薬、麻酔前投薬、血管収縮薬
③熱産生
・アミノ酸輸液
④鎮痛
・シバリングの治療
・加温
・薬物療法
・メペリジン
・α2受容体作動薬
・ケタミン
・マグネシウム
・5-HT3阻害薬
・NSAIDs
Choi KE, Park B, Moheet AM, Rosen A, Lahiri S, Rosengart A.Systematic Quality Assessment of Published Antishivering Protocols.Anesth Analg. 2017;124:1539-1546. doi: 10.1213/ANE.0000000000001571.
によると・・・
・個々の薬物、理学的治療の有効性は確立されているが
組み合わせた研究は少ない。
・近年のRCTメタアナリシスではクロニジン、メペリジン、
トラマドール、ネホパム、ケタミンはRR 1.6~2.2、NNT 2~4で
最適な薬剤であると確認されている。
・積極的な皮膚の加温もシバリング対策に好ましい。
・現実的に可能なシバリング対策としては・・・
・加温
・酸素投与
・アセリオ、ロピオンetc.
・オピオイド
・プレセデックス
・マグネシウム
・メペリジン(痙攣のリスク)
・
・明日からできるシバリング対策
・加温(温風式加温装置、輸液の加温。できれば導入前も)
・部屋の室温も上げる
・マグネシウム含有の輸液
・十分な鎮痛
・NSAIDs、アセトアミノフェンで体温のセットポイント上昇を抑制
・シバリングが起きた場合はオピオイド、マグネシウム、
ケタミンを考慮する。
「シバリング治療とガイドライン」
・シバリングとは?
・骨格筋の不随意で小刻みな収縮
・末梢温が中枢温よりも極端に低い時に発生。
→必ずしも中枢温が低くはない。
・体温調節性シバリングと非体温調節性シバリングがある。
・シバリングが起こる原因
・体温低下
・手術による炎症性サイトカイン分泌
→体温セットポイントの上昇
・疼痛
・麻酔中の体温低下の原因
・第1相
・麻酔導入による熱の再分布
・麻酔導入前は末梢血管が収縮している状態。
→中枢‐末梢温度較差が存在。
→麻酔導入による血管拡張で熱の再分布が起こる。
→中枢温が低下する。
・第2相
・熱喪失>熱産生
・第3相
・プラトー期
・低体温により体温調節性血管収縮が起こる。
・視床下部による体温調節
・脳、脊髄、深部組織、皮膚などの温度入力
→視床下部前部で統合処理され体温調節機構が働く。
・体温調節性シバリング
・持続緊張性で筋電図では4~8サイクル/分の漸増漸減パターン
・全身麻酔中では体温が低下するが、
麻酔薬によりシバリング閾値も低下するためシバリングは生じない。
・麻酔から覚醒するときにシバリング閾値が元に戻り、
低下した中枢温を上回るときにシバリングが起こる。
・手術侵襲や感染などの体温のセットポイント上昇でも
シバリング閾値が上昇しシバリングが発生する。
・非体温調節性シバリング
・5~7Hzの連射的な筋電図パターン
・呼気中のイソフルラン濃度が0.2~0.4%程度の低濃度で出現。
・病的クローヌスと同様のパターン。
・皮膚末梢温の低下は見られない。
・オピオイドやNSAIDsといった鎮痛薬で改善する。
・疼痛に関係する?
・シバリングを起こすリスク
・低体温
・レミフェンタニルの使用(μオピオイドによるシバリング抑制)
・手術侵襲(体温調節中枢のセットポイント上昇)
・シバリングの問題点
・酸素消費量の増加(2~4倍)
・主要臓器への酸素不足→心筋梗塞、脳梗塞、創傷治癒遅延
・二酸化炭素の発生
・呼吸不全患者で危険増加
・頭蓋内圧、眼圧、胸腔内圧、腹腔内圧の上昇
・皮膚緊張による創傷の増強
・末梢の血流障害と代謝性アシドーシス
・不快感
・シバリングの予防法
①熱の喪失の抑制
・放射を防ぐために室温を上げて
温風加温システムで保温、加温する。
・輸液を保温庫で温め輸液加温システムで輸液をさらに加温。
②熱再分布の抑制
・導入前加温、導入前の血管拡張薬、麻酔前投薬、血管収縮薬
③熱産生
・アミノ酸輸液
④鎮痛
・シバリングの治療
・加温
・薬物療法
・メペリジン
・α2受容体作動薬
・ケタミン
・マグネシウム
・5-HT3阻害薬
・NSAIDs
Choi KE, Park B, Moheet AM, Rosen A, Lahiri S, Rosengart A.Systematic Quality Assessment of Published Antishivering Protocols.Anesth Analg. 2017;124:1539-1546. doi: 10.1213/ANE.0000000000001571.
によると・・・
・個々の薬物、理学的治療の有効性は確立されているが
組み合わせた研究は少ない。
・近年のRCTメタアナリシスではクロニジン、メペリジン、
トラマドール、ネホパム、ケタミンはRR 1.6~2.2、NNT 2~4で
最適な薬剤であると確認されている。
・積極的な皮膚の加温もシバリング対策に好ましい。
・現実的に可能なシバリング対策としては・・・
・加温
・酸素投与
・アセリオ、ロピオンetc.
・オピオイド
・プレセデックス
・マグネシウム
・メペリジン(痙攣のリスク)
・
・明日からできるシバリング対策
・加温(温風式加温装置、輸液の加温。できれば導入前も)
・部屋の室温も上げる
・マグネシウム含有の輸液
・十分な鎮痛
・NSAIDs、アセトアミノフェンで体温のセットポイント上昇を抑制
・シバリングが起きた場合はオピオイド、マグネシウム、
ケタミンを考慮する。
2017年11月16日木曜日
脳神経外科手術の麻酔
麻酔科勉強会 担当:E先生
「脳神経外科手術の麻酔」
・脳血流量について
・脳血流量(CBF)=脳還流圧/脳血管抵抗
・脳還流圧(CPP)=平均血圧(MAP)-頭蓋内圧(ICP)
→MAP 50-100mmHgの範囲では自動調整される。
・脳血流量の平均は50ml/min
・ →血圧、代謝要求量、PaCO2、PaO2、
血液粘度、神経性調節に影響を受ける。
・脳虚血、外傷、低酸素症、高CO2血症、浮腫、
腫瘤による圧迫、揮発性麻酔薬、・・・
←自動調節能を抑制
→患部の血流は平均動脈圧に依存してしまう。
・動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)について
・20-80mmHgでは直線的に脳血流量が増加
・過換気は脳虚血の危険
→normocapnia(PaCO2=30-35mmHg)
・EtCO2でなく、PaCO2で評価
・動脈血酸素分圧(PaO2)について
・低酸素症により脳血管は拡張(酸素供給を代償する)
・PaO2=60-300mmHg
・脳酸素代謝率(CMRO2)について
・脳組織の酸素消費
・体温低下1℃に対してCMRO27%低下
・麻酔薬(↓)、体温(↑)、痙攣(↑)、疼痛(↑)
・頭蓋内圧(ICP)について
・正常値:5-15mmHg
・ICP上昇
→脳灌流圧が低下
→脳ヘルニアや神経学的合併症を引き起こす
・臨床的徴候
→頭痛、悪心、嘔吐、視力障害、うっ血乳頭、意識障害
・重篤な場合はCushingの3徴(高血圧、徐脈、不規則呼吸)
・生理学的に調節すべきもの
①脳血流量(CBF→MAP 50-150mmHg
②動脈血二酸化炭素分圧→PaCO2 30-35mmHg
③動脈血酸素分圧(PaO2)→PaO2 60-300mmHg
④脳酸素代謝率(CMRO2)→体温、疼痛、痙攣
⑤頭蓋内圧(ICP)→体位、PEEP、バッキング
・これらを調節して適切な脳内循環を維持する。
・麻酔薬
・吸入麻酔薬
・用量依存的にCMRO2減少(↓)、血管を拡張させCBF増加(↑)
・ただし亜酸化窒素はCMRO2(↑)、CBF(↑)となる
・1MAC以下では影響は少ない。
※頭蓋内コンプライアンスの低下した患者では注意
・利点として覚醒良好なことがある
・静脈麻酔薬
・用量依存的にCBFとCMRO2を減少させる。
・ただしケタミンはCBF(↑)
・麻薬、筋弛緩薬は脳血流量とCMRO2を変化させない。
・TIVA vs吸入麻酔に関しては議論が分かれる。
←多くの場合では少量の吸入麻酔を使用した
バランス麻酔に加えて筋弛緩薬やオピオイドを併用する。
・ICPが上昇している患者に対しては静脈麻酔が有用。
・術中の麻酔管理
・前述の呼吸・循環管理
・脳の緊張緩和(relax brain)
→硬膜を切開する前に脳が緊張していないように。
→切開前にPaCO2 33-35mmHg
→マンニトール、フロセミドの投与(高浸透圧の維持)
・過剰投与は反跳現象を引き起こし脳浮腫を助長する可能性。
・水分管理はevenバランスで適切な脳灌流と脳浮腫を予防
→正常の血管内容量を保ち、高浸透圧状態にする。
・ステロイド×(脳卒中や脳外傷における有用性はない、浮腫は軽減)
・正常体温
・高血糖の予防(<170mg/dl)
・痙攣予防
・座位手術の場合は?
・メリット:良い視野、ドレナージが良好、出血量の減少
・デメリット:空気塞栓の可能性
→術野が心臓より高い位置にある。
→開放された静脈から空気を引き込み空気塞栓発生。
→低酸素症、高CO2血症、気管支収縮、低血圧、循環虚脱など。
・特に右左シャントあるときは要注意。
・空気塞栓のリスクのある症例では中心静脈カテーテル、TEEも。
・モニタはカプノグラム、TEEなど。
・術後管理
・抜管・覚醒
・テント下(気道反射に影響を与える)の手術後や、
長時間腹臥位の患者では慎重に。
・理想的には咳・筋緊張・高血圧を避ける。
・覚醒後の神経学的評価を行う。
(従命、四肢の動き・視野の評価)
・術後鎮痛
・オピオイドは術後鎮痛目的に覚醒前に投与するべきではない?
→覚醒・抜管後に評価したあとに投与する?
→術後鎮痛や終盤の血圧管理のための気前の良いオピオイド投与は
十分な神経学的評価を行えなくする可能性。
・PONV予防は必要。
・頭部外傷患者の麻酔
・traumatic brain injury(TBI)の患者の麻酔では、
二次的脳障害を予防することが目的である。
・急性期にはCBFの自動調節能は破綻しており血圧の増減に応じて変化する。
・血圧低下→CBF減少→脳虚血
・血圧上昇→CBF増加→脳浮腫
・気道評価が重要(頚椎損傷の可能性も)
・フルストマックとして迅速導入。
(→気道評価の上意識下挿管も)
・腹部・整形損傷などがマスクされていることがある。
・ICP上昇していたらTIVAがよい。
「脳神経外科手術の麻酔」
・脳血流量について
・脳血流量(CBF)=脳還流圧/脳血管抵抗
・脳還流圧(CPP)=平均血圧(MAP)-頭蓋内圧(ICP)
→MAP 50-100mmHgの範囲では自動調整される。
・脳血流量の平均は50ml/min
・ →血圧、代謝要求量、PaCO2、PaO2、
血液粘度、神経性調節に影響を受ける。
・脳虚血、外傷、低酸素症、高CO2血症、浮腫、
腫瘤による圧迫、揮発性麻酔薬、・・・
←自動調節能を抑制
→患部の血流は平均動脈圧に依存してしまう。
・動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)について
・20-80mmHgでは直線的に脳血流量が増加
・過換気は脳虚血の危険
→normocapnia(PaCO2=30-35mmHg)
・EtCO2でなく、PaCO2で評価
・動脈血酸素分圧(PaO2)について
・低酸素症により脳血管は拡張(酸素供給を代償する)
・PaO2=60-300mmHg
・脳酸素代謝率(CMRO2)について
・脳組織の酸素消費
・体温低下1℃に対してCMRO27%低下
・麻酔薬(↓)、体温(↑)、痙攣(↑)、疼痛(↑)
・頭蓋内圧(ICP)について
・正常値:5-15mmHg
・ICP上昇
→脳灌流圧が低下
→脳ヘルニアや神経学的合併症を引き起こす
・臨床的徴候
→頭痛、悪心、嘔吐、視力障害、うっ血乳頭、意識障害
・重篤な場合はCushingの3徴(高血圧、徐脈、不規則呼吸)
・生理学的に調節すべきもの
①脳血流量(CBF→MAP 50-150mmHg
②動脈血二酸化炭素分圧→PaCO2 30-35mmHg
③動脈血酸素分圧(PaO2)→PaO2 60-300mmHg
④脳酸素代謝率(CMRO2)→体温、疼痛、痙攣
⑤頭蓋内圧(ICP)→体位、PEEP、バッキング
・これらを調節して適切な脳内循環を維持する。
・麻酔薬
・吸入麻酔薬
・用量依存的にCMRO2減少(↓)、血管を拡張させCBF増加(↑)
・ただし亜酸化窒素はCMRO2(↑)、CBF(↑)となる
・1MAC以下では影響は少ない。
※頭蓋内コンプライアンスの低下した患者では注意
・利点として覚醒良好なことがある
・静脈麻酔薬
・用量依存的にCBFとCMRO2を減少させる。
・ただしケタミンはCBF(↑)
・麻薬、筋弛緩薬は脳血流量とCMRO2を変化させない。
・TIVA vs吸入麻酔に関しては議論が分かれる。
←多くの場合では少量の吸入麻酔を使用した
バランス麻酔に加えて筋弛緩薬やオピオイドを併用する。
・ICPが上昇している患者に対しては静脈麻酔が有用。
・術中の麻酔管理
・前述の呼吸・循環管理
・脳の緊張緩和(relax brain)
→硬膜を切開する前に脳が緊張していないように。
→切開前にPaCO2 33-35mmHg
→マンニトール、フロセミドの投与(高浸透圧の維持)
・過剰投与は反跳現象を引き起こし脳浮腫を助長する可能性。
・水分管理はevenバランスで適切な脳灌流と脳浮腫を予防
→正常の血管内容量を保ち、高浸透圧状態にする。
・ステロイド×(脳卒中や脳外傷における有用性はない、浮腫は軽減)
・正常体温
・高血糖の予防(<170mg/dl)
・痙攣予防
・座位手術の場合は?
・メリット:良い視野、ドレナージが良好、出血量の減少
・デメリット:空気塞栓の可能性
→術野が心臓より高い位置にある。
→開放された静脈から空気を引き込み空気塞栓発生。
→低酸素症、高CO2血症、気管支収縮、低血圧、循環虚脱など。
・特に右左シャントあるときは要注意。
・空気塞栓のリスクのある症例では中心静脈カテーテル、TEEも。
・モニタはカプノグラム、TEEなど。
・術後管理
・抜管・覚醒
・テント下(気道反射に影響を与える)の手術後や、
長時間腹臥位の患者では慎重に。
・理想的には咳・筋緊張・高血圧を避ける。
・覚醒後の神経学的評価を行う。
(従命、四肢の動き・視野の評価)
・術後鎮痛
・オピオイドは術後鎮痛目的に覚醒前に投与するべきではない?
→覚醒・抜管後に評価したあとに投与する?
→術後鎮痛や終盤の血圧管理のための気前の良いオピオイド投与は
十分な神経学的評価を行えなくする可能性。
・PONV予防は必要。
・頭部外傷患者の麻酔
・traumatic brain injury(TBI)の患者の麻酔では、
二次的脳障害を予防することが目的である。
・急性期にはCBFの自動調節能は破綻しており血圧の増減に応じて変化する。
・血圧低下→CBF減少→脳虚血
・血圧上昇→CBF増加→脳浮腫
・気道評価が重要(頚椎損傷の可能性も)
・フルストマックとして迅速導入。
(→気道評価の上意識下挿管も)
・腹部・整形損傷などがマスクされていることがある。
・ICP上昇していたらTIVAがよい。
2017年11月4日土曜日
経皮的気管切開ハンズオンセミナー
「経皮的気管切開ハンズオンセミナー」
麻酔科医師(GICU、麻酔部門)・初期臨床研修医を対象として、ブタの気管および肺検体を用いた経皮的気管切開のWetLabが開催されました。(以下の写真で検体部分には黒塗りをかけてあります)
麻酔科医師(GICU、麻酔部門)・初期臨床研修医を対象として、ブタの気管および肺検体を用いた経皮的気管切開のWetLabが開催されました。(以下の写真で検体部分には黒塗りをかけてあります)
麻酔科医にとっては知っておかなければならない技術でありながらハンズオンの機会が少ない手技でもあり、参加者の先生方には大いに勉強になり、盛り上がったようです。
今後ともこのようなハンズオン教育セミナーを企画していきたいと思います。
2017年10月29日日曜日
ASAボストン
「ASAボストン」
2017年度ASA、The ANESTHESIOLOGY annual meetingが10月21-25日、アメリカ合衆国、ボストンにて開催されました。当院からは過去最多の4演題を発表して参りました。
中央市民病院麻酔科では、ASAでの発表を「基幹学会での発表」と位置付け、今後とも若手の先生方の国際学会での発表を応援していく予定です。
2017年度ASA、The ANESTHESIOLOGY annual meetingが10月21-25日、アメリカ合衆国、ボストンにて開催されました。当院からは過去最多の4演題を発表して参りました。
学会3日目には、アメリカ合衆国で麻酔科医師として働く日本人医師が集まってのお食事会に、中央市民病院組も招いて頂きました。
特に若手の先生方にとっては米国の麻酔科事情を知る貴重な機会となり、大きな刺激になったようです。
中央市民病院麻酔科では、ASAでの発表を「基幹学会での発表」と位置付け、今後とも若手の先生方の国際学会での発表を応援していく予定です。
2017年10月10日火曜日
専攻医登録システムへの情報入力の開始
【専攻医登録システムへの情報入力の開始】
10/10(火)正午より、専門医の一次登録が開始になります。
また、当院プログラムの二次審査が通過した旨の通知もあわせてありました。
機構から、以下のファイルをご参照くださいとのことです。
専攻医登録システム操作マニュアル(専攻医向け)
https://senkoi-support.jmsb.jp/files/senkoi_manual.pdf
各学会のホームページからのアクセスになります。
日本麻酔科学会ホームページ
http://www.anesth.or.jp/
全国の麻酔科専門医を目指されるみなさん、
登録作業を忘れないよう気を付けてください!
10/10(火)正午より、専門医の一次登録が開始になります。
また、当院プログラムの二次審査が通過した旨の通知もあわせてありました。
機構から、以下のファイルをご参照くださいとのことです。
専攻医登録システム操作マニュアル(専攻医向け)
https://senkoi-support.jmsb.jp/files/senkoi_manual.pdf
各学会のホームページからのアクセスになります。
日本麻酔科学会ホームページ
http://www.anesth.or.jp/
全国の麻酔科専門医を目指されるみなさん、
登録作業を忘れないよう気を付けてください!
2017年9月30日土曜日
SSI予防、FiO2いくらにする?
麻酔科勉強会 担当:H先生
「SSI予防、FiO2いくらにする?」
・CDC 2017より
・周術期の血糖コントロールを実施し、糖尿病の有無にかかわらず
血糖の目標レベルを200 mg/dL未満にする。(カテゴリー IA)
・周術期の正常体温を維持する。(カテゴリー IA)
・気管内挿管されている全身麻酔の正常肺機能の患者では、
手術中および手術直後の抜管のあとはFIO2 を増加させる。
組織の酸素輸送を最適にするために、
周術期の正常体温と十分な体液補充を維持する。(カテゴリー IA)
・禁忌でなければ、アルコールベースの消毒薬にて
皮膚を消毒する。(カテゴリー IA)
・SSIの予防のためにヨードホール水溶液にて深部
もしくは皮下組織を術中に潅流することを考慮にいれる。
不潔もしくは汚染の腹部手術において
ヨードホール水溶液での術中潅流は必要ない。(カテゴリーII)
・WHOのガイドライン
・術中はFiO2 80%、術後2-6hも継続を推奨。
・今までのガイドラインでは?
・SHEA/IDSA (2014)
・術中、術後も十分な酸素を投与すること。
・NICE (2008), The Royal College of Physicians of Lreland (2012),
Health Protection Scotland bundle (2013),
UK High impact intervention bundle (2011)
→Haemoglobin Satを95%以上に保つことを推奨。
・2013 Anesthesiology
→FiO2高い方がSSIを減らすとのメタがあった。
(FiO2 0.5より上か下かで比較)
・酸素の害と利益
• Paule Bert(1878)
→動物で痙攣発作,
人間では視野狭窄、めまい、頭痛、耳鳴、
嘔気、嘔吐、けいれん
• Smith(1898)
→100% O2を24時間
→呼吸苦、胸痛、無気肺、気管支炎、肺水腫
• hyperoxic acute lung injury: ←ROSによる。
• ROSは病原菌も正常組織も傷害する
・FiO2
• FiO2 28%を1時間→ROS,IL-6増加
• FiO2 40%炎症惹起、apoptosis,細胞死(全身の組織に影響)
• 中等度、軽度の脳卒中後の酸素は
ADLの低下につながる。(Stroke. 1999 Oct;30(10):2033-7.)
・Crit Care Med. 2015;43:1508-19
→Hyperoxiaはpoor hospital outcomeと関連する。
・JAMA. 2009;302:1543-50.
→腹部手術においてFiO2 80%はFiO2 30%と比較して
SSIのリスクに有意差はない。
→2年後のfollow upではFiO2 0.8、Hazard 比1.3で死亡率増大。
・Br J Anaesth. 2015;115:434-43
→FiO2 80%にしてもSSIリスクを減らさない。
・さあ、どうしましょうか。
「SSI予防、FiO2いくらにする?」
・CDC 2017より
・周術期の血糖コントロールを実施し、糖尿病の有無にかかわらず
血糖の目標レベルを200 mg/dL未満にする。(カテゴリー IA)
・周術期の正常体温を維持する。(カテゴリー IA)
・気管内挿管されている全身麻酔の正常肺機能の患者では、
手術中および手術直後の抜管のあとはFIO2 を増加させる。
組織の酸素輸送を最適にするために、
周術期の正常体温と十分な体液補充を維持する。(カテゴリー IA)
・禁忌でなければ、アルコールベースの消毒薬にて
皮膚を消毒する。(カテゴリー IA)
・SSIの予防のためにヨードホール水溶液にて深部
もしくは皮下組織を術中に潅流することを考慮にいれる。
不潔もしくは汚染の腹部手術において
ヨードホール水溶液での術中潅流は必要ない。(カテゴリーII)
・WHOのガイドライン
・術中はFiO2 80%、術後2-6hも継続を推奨。
・今までのガイドラインでは?
・SHEA/IDSA (2014)
・術中、術後も十分な酸素を投与すること。
・NICE (2008), The Royal College of Physicians of Lreland (2012),
Health Protection Scotland bundle (2013),
UK High impact intervention bundle (2011)
→Haemoglobin Satを95%以上に保つことを推奨。
・2013 Anesthesiology
→FiO2高い方がSSIを減らすとのメタがあった。
(FiO2 0.5より上か下かで比較)
・酸素の害と利益
• Paule Bert(1878)
→動物で痙攣発作,
人間では視野狭窄、めまい、頭痛、耳鳴、
嘔気、嘔吐、けいれん
• Smith(1898)
→100% O2を24時間
→呼吸苦、胸痛、無気肺、気管支炎、肺水腫
• hyperoxic acute lung injury: ←ROSによる。
• ROSは病原菌も正常組織も傷害する
・FiO2
• FiO2 28%を1時間→ROS,IL-6増加
• FiO2 40%炎症惹起、apoptosis,細胞死(全身の組織に影響)
• 中等度、軽度の脳卒中後の酸素は
ADLの低下につながる。(Stroke. 1999 Oct;30(10):2033-7.)
・Crit Care Med. 2015;43:1508-19
→Hyperoxiaはpoor hospital outcomeと関連する。
・JAMA. 2009;302:1543-50.
→腹部手術においてFiO2 80%はFiO2 30%と比較して
SSIのリスクに有意差はない。
→2年後のfollow upではFiO2 0.8、Hazard 比1.3で死亡率増大。
・Br J Anaesth. 2015;115:434-43
→FiO2 80%にしてもSSIリスクを減らさない。
・さあ、どうしましょうか。
2017年9月26日火曜日
平成30年度採用 専攻医(後期研修医)募集その2
専攻医の募集要項が正式に掲示されました。
インターネット出願も可能です。
http://chuo.kcho.jp/recruit/late_resident/medical/guideline
見学に来られた皆様、アンケートへのご協力をありがとうございました。
この場を借りて御礼申し上げます。
インターネット出願も可能です。
http://chuo.kcho.jp/recruit/late_resident/medical/guideline
見学に来られた皆様、アンケートへのご協力をありがとうございました。
この場を借りて御礼申し上げます。
2017年9月16日土曜日
平成30年度採用 専攻医(後期研修医)募集
今年度は18人の先生方が、麻酔科専攻医またはICUフェローの病院見学に来ていただきました。(現在、ICUフェローの募集はすでに始まっています。~9/22まで)
このたび新専門医機構の方針決定を受けて、14日、当院の専攻医の選考試験日程が変更、決定されました。
選考試験日: 11月3日(金・祝)
試験方法:小論文(事前提出)、面接
今後のスケジュール
1次募集 9/25-10/20
採用試験 11/3
結果通知 11/6~
2次募集 11月中旬以降(選考試験随時)
参考URL
http://chuo.kcho.jp/recruit/late_resident/medical
応募される先生方にとっては受難の年としか言いようがありませんが、
随時、必要情報を公開していきますので、よろしくお願いします。
このたび新専門医機構の方針決定を受けて、14日、当院の専攻医の選考試験日程が変更、決定されました。
選考試験日: 11月3日(金・祝)
試験方法:小論文(事前提出)、面接
今後のスケジュール
1次募集 9/25-10/20
採用試験 11/3
結果通知 11/6~
2次募集 11月中旬以降(選考試験随時)
参考URL
http://chuo.kcho.jp/recruit/late_resident/medical
応募される先生方にとっては受難の年としか言いようがありませんが、
随時、必要情報を公開していきますので、よろしくお願いします。
2017年9月6日水曜日
2017年9月2日土曜日
麻酔器、呼吸器について
「麻酔科勉強会」 担当:O先生
「麻酔器、呼吸器について」
・麻酔器と人工呼吸器との違い
・麻酔器は呼気を再利用する閉鎖循環式(再呼吸)回路
・人工呼吸器ではCO2を排出する装置がないため、呼気を再利用しない。
・ジャクソン・リースとアンビューバッグ回路の違いに似ている。
・陽圧換気のモード
・量制御換気(volume-controlled ventilation:VCV)
・圧制御換気(pressure-controlled ventilation:PCV)
・どちらが優れた呼吸器設定であるかは画一した答えは無い
・いずれの換気設定にしても問題となるのは
人工呼吸器関連肺障害(ventilator-induced lung injury:VILI)
→空気を押し込む際の異常な圧力や張力により肺構造を損傷する。
→容量障害と圧障害の2つのタイプに分けられる。
・容量障害
・1980年代、高吸気圧よりも高吸気量が
肺血管外水分量を増加させるという研究が発表された。
・それ以降、容量障害という言葉が
人工呼吸による肺浸潤のメカニズムを説明するために使用された。
・肺胞の過膨張と肺胞-毛細管界面の破壊
→肺の炎症性浸潤を生じるというメカニズム。
・どの程度の容量設定にするか?
→ARDS患者を対象とした6ml/kgvs12ml/kgでのトライアルが示すのみ。
・圧障害
・陽圧換気
→気道や肺胞の破裂によってエアリークを生じる可能性。
・プラトー圧が30cmH2Oを超えないように設定する必要がある。
・無気肺損傷
・呼吸器使用中、細気道は呼気終末に虚脱する。
↑吸気量が陰圧と比較して圧倒的に少ないため。
・肺コンプライアンスが低下していると増悪
・呼吸器管理中、細気道の開通と虚脱を繰り返すことにより
過度の剪断力が発生し、気道上皮が損傷する。
→無気肺損傷と呼ばれる。
・VCVについて
・1回換気量をあらかじめ設定設定。
・設定した換気量まで気道内圧は一定速度で上昇。
・最高気道内圧(Ppeak)に達するのは、
気道、胸腔の抵抗及び弾性力の圧(Pres,Pel)に打ち勝つ瞬間。
・Ppeak=Pres+Pel
・Ppeak自体が肺およびその周囲に障害を与える直接的な因子ではない。
・VCVでのプラトー圧は?
・Pplateau(プラトー圧)は呼気終末の肺胞の最高圧(Palv)
・吸気ホールド(通常1秒)を行うことによって算出できる。
・Pplateauが肺障害と直接的に関連する。
・PCVについて
・吸気圧を前もって設定し、
望む1回換気量を得るために吸気時間を設定する。
・吸気流速は圧を一定に保つために、吸気開始時に早くその後減速。
・吸気終末気道内圧(Paw)とプラトー圧は理論的には一致する。
・呼吸器は診断補助ツール
・Ppeak(Paw)が高いとき何が起こっているのか、
診断補助ツールに使うことができる。
・2つの値を計算することで診断補助に使用できる。
①胸腔コンプライアンス(50-80)
②気道抵抗(3-7)
・胸郭コンプライアンス
・肺と胸壁の両方を含んだ値でCstatで表現される
・VCV:Cstat=Vt(1回換気量)/(Pplateau-Peep)
・PCV:Cstat=呼気Vt/(Paw-Peep)
・どちらのモードでも計算できるが、
1回換気量が変化することは計算上望ましくない。
・呼吸筋収縮の影響を受けるため、受動的呼吸時にのみ計算が有効。
・計算上の1回換気量は呼吸回路のコンプライアンスで補正する。
・気道抵抗
・吸気抵抗(Rinsp)と呼気抵抗(Rexp)の2つが存在する。
・流量が一定であること(VCVであること)、
短形波(漸減波ではない)であることが測定の条件。
・Rinsp=(Ppeak-Pplataeu)/Vinsp(吸気流速)
・Rexp=(Ppeak-peep)/PEFR(最高呼気流速)
・呼気抵抗はCOPDなど細気管支などの閉塞傾向を鋭敏に反映し
吸気抵抗より通常高くなる。
・最高呼気流量の計算が難しいため通常は吸気抵抗を計算する。
・気管チューブや呼気弁の影響を受けることに注意。
「麻酔器、呼吸器について」
・麻酔器と人工呼吸器との違い
・麻酔器は呼気を再利用する閉鎖循環式(再呼吸)回路
・人工呼吸器ではCO2を排出する装置がないため、呼気を再利用しない。
・ジャクソン・リースとアンビューバッグ回路の違いに似ている。
・陽圧換気のモード
・量制御換気(volume-controlled ventilation:VCV)
・圧制御換気(pressure-controlled ventilation:PCV)
・どちらが優れた呼吸器設定であるかは画一した答えは無い
・いずれの換気設定にしても問題となるのは
人工呼吸器関連肺障害(ventilator-induced lung injury:VILI)
→空気を押し込む際の異常な圧力や張力により肺構造を損傷する。
→容量障害と圧障害の2つのタイプに分けられる。
・容量障害
・1980年代、高吸気圧よりも高吸気量が
肺血管外水分量を増加させるという研究が発表された。
・それ以降、容量障害という言葉が
人工呼吸による肺浸潤のメカニズムを説明するために使用された。
・肺胞の過膨張と肺胞-毛細管界面の破壊
→肺の炎症性浸潤を生じるというメカニズム。
・どの程度の容量設定にするか?
→ARDS患者を対象とした6ml/kgvs12ml/kgでのトライアルが示すのみ。
・圧障害
・陽圧換気
→気道や肺胞の破裂によってエアリークを生じる可能性。
・プラトー圧が30cmH2Oを超えないように設定する必要がある。
・無気肺損傷
・呼吸器使用中、細気道は呼気終末に虚脱する。
↑吸気量が陰圧と比較して圧倒的に少ないため。
・肺コンプライアンスが低下していると増悪
・呼吸器管理中、細気道の開通と虚脱を繰り返すことにより
過度の剪断力が発生し、気道上皮が損傷する。
→無気肺損傷と呼ばれる。
・VCVについて
・1回換気量をあらかじめ設定設定。
・設定した換気量まで気道内圧は一定速度で上昇。
・最高気道内圧(Ppeak)に達するのは、
気道、胸腔の抵抗及び弾性力の圧(Pres,Pel)に打ち勝つ瞬間。
・Ppeak=Pres+Pel
・Ppeak自体が肺およびその周囲に障害を与える直接的な因子ではない。
・VCVでのプラトー圧は?
・Pplateau(プラトー圧)は呼気終末の肺胞の最高圧(Palv)
・吸気ホールド(通常1秒)を行うことによって算出できる。
・Pplateauが肺障害と直接的に関連する。
・PCVについて
・吸気圧を前もって設定し、
望む1回換気量を得るために吸気時間を設定する。
・吸気流速は圧を一定に保つために、吸気開始時に早くその後減速。
・吸気終末気道内圧(Paw)とプラトー圧は理論的には一致する。
・呼吸器は診断補助ツール
・Ppeak(Paw)が高いとき何が起こっているのか、
診断補助ツールに使うことができる。
・2つの値を計算することで診断補助に使用できる。
①胸腔コンプライアンス(50-80)
②気道抵抗(3-7)
・胸郭コンプライアンス
・肺と胸壁の両方を含んだ値でCstatで表現される
・VCV:Cstat=Vt(1回換気量)/(Pplateau-Peep)
・PCV:Cstat=呼気Vt/(Paw-Peep)
・どちらのモードでも計算できるが、
1回換気量が変化することは計算上望ましくない。
・呼吸筋収縮の影響を受けるため、受動的呼吸時にのみ計算が有効。
・計算上の1回換気量は呼吸回路のコンプライアンスで補正する。
・気道抵抗
・吸気抵抗(Rinsp)と呼気抵抗(Rexp)の2つが存在する。
・流量が一定であること(VCVであること)、
短形波(漸減波ではない)であることが測定の条件。
・Rinsp=(Ppeak-Pplataeu)/Vinsp(吸気流速)
・Rexp=(Ppeak-peep)/PEFR(最高呼気流速)
・呼気抵抗はCOPDなど細気管支などの閉塞傾向を鋭敏に反映し
吸気抵抗より通常高くなる。
・最高呼気流量の計算が難しいため通常は吸気抵抗を計算する。
・気管チューブや呼気弁の影響を受けることに注意。
2017年8月19日土曜日
亜酸化窒素について
麻酔科勉強会 担当:O先生
「亜酸化窒素について」
・吸入麻酔の歴史
1779年 笑気の麻酔効果を発見
1842年 エーテル麻酔による抜歯成功
1844年 笑気麻酔による抜歯成功
1847年 クロロホルム麻酔の臨床応用開始
1956年 ハロタンの合成
1959年 メトキシフルランの使用開始
1965年 イソフルランの合成
1966年 デスフルランの合成
1968年 セボフルランの合成
・亜酸化窒素のメリット
・鎮痛効果
・併用薬剤の減量
・コスト減?
・低血圧が減る?
・150年の使用経験
・導入・覚醒が速い
・術中覚醒の減少
・亜酸化窒素のデメリット
・PONV
・VitB12欠乏
・免疫抑制
・心筋虚血
・低酸素血症
・神経毒性
・催奇形性
・閉鎖腔の拡張
・頭蓋内圧亢進
・助燃焼性
・温室効果
・単剤で使用不可
・鎮静作用
・NMDA型グルタミン酸受容体の阻害。
→グルタミン酸を介する興奮性神経伝達を抑制。
・GABA受容体には作用しない。
・ちなみに静脈麻酔薬・他の吸入麻酔薬は
主にGABA受容体を介する神経抑制作用を増強する。
・鎮痛効果
・亜酸化窒素のMACは104%→単独使用は不可
・あくまでも補助的な使用
・鎮痛のメカニズムは???
・亜酸化窒素が青斑核でNA作動性ニューロンを活性化
→NMDA受容体の阻害
→視床下部でのCRFの放出促進
→中脳中心灰白質でOpioid作動性ニューロンを活性化
→脳幹でのOpioid放出はGABA作動性介在ニューロンを阻害
→脊髄のNA作動性抑制性介在ニューロンの脱抑制
→脊髄後角で一次求心性ニューロンから
二次求心性ニューロンへ痛み刺激が伝達されるのを阻害
・NA受容体(α2B-R)欠損マウスや
脊髄切断した動物では亜酸化窒素の鎮痛効果はみられない
→上記の下行性抑制系が主な機序であることを示唆
・ちなみに静脈麻酔薬・吸入麻酔薬によるGABA受容体活性化は
下行性抑制系を阻害する方向に働く
・理論上、他剤との併用で亜酸化窒素の鎮痛効果は減弱することになる。
・しかし実際には・・・
・亜酸化窒素の併用でセボフルランのMACは20-30%減少する。
→下行抑制系以外の経路の関与を示唆
・MAC sparing effect
→セボフルランの使用量を減少させる。
・フェンタニルで十分鎮痛された状況では、
亜酸化窒素を併用してもMAC sparing effectはみられない。
・レミフェンタニルの併用
・鎮痛効果を増強する可能性も。
・レミフェンタニルの使用による持続的なNMDA受容体刺激は
術後痛覚過敏の原因となる。
→亜酸化窒素との併用で術後痛覚過敏を抑制する可能性。
・代謝、排泄
・生体内での代謝率は0.004%と極めて低い
・ほぼ呼気中に排出される
・肝障害・腎障害に影響されない
・麻酔効果は可逆的、残存しない
・作用発現
・血液/ガス分配係数が0.47と低い
→作用発現・消失が迅速
・ただしデスフルランも同等に血液/ガス分配係数は低い。
・亜酸化窒素だけの特性ではなくなってきている。
・二次ガス効果
・亜酸化窒素が速やかに肺胞から組織へ移行する。
→他の吸入麻酔薬(=二次ガス)と併用すると、
肺胞内での二次ガスが濃縮され濃度が上昇していく。
→二次ガスの効果発現が早まる。
・術中覚醒への影響
・他の吸入麻酔薬より健忘作用が強い。
・亜酸化窒素の併用で術中覚醒が減少する。
・呼吸への影響
・呼吸抑制
→一回換気量は低下するが
呼吸数上昇で換気が代償されるためPaCO2は上昇しない。
・セボフルランとの併用時にセボの濃度を下げることができる。
→セボフルランによる呼吸抑制を起こりにくくする。
→自発呼吸が残しやすくなる。
・循環への影響
・軽度の陰性変力作用があるが、交感神経刺激作用もある。
→互いに相殺するため他の吸入麻酔薬に比べて循環抑制が乏しい。
・左室機能低下症例
→もともと内因性の交感神経が緊張しているため、
陰性変力作用が出現する。
・閉鎖腔の増大
・閉鎖腔は窒素で満たされている。
・亜酸化窒素は窒素よりも血液に溶けやすい。
→亜酸化窒素の流入が窒素の流出速度を上回るため閉鎖腔が膨張。
・気胸、イレウス、肺気腫、空気塞栓で問題になる
・中耳内圧上昇
→鼓室形成での移植片の移動
・気管チューブやLMAのカフ
→カフ圧チェックの必要性
・拡散性低酸素血症
・亜酸化窒素を投与終了した直後に十分な酸素投与をしなかった場合に発生
・亜酸化窒素の吸入中止
→亜酸化窒素が血液から肺胞へ大量に移行。
→肺胞の酸素分圧が低下。
・亜酸化窒素の投与終了後には
・高濃度酸素投与
・呼気中酸素濃度やPaO2のモニターを考慮。
・PONVの頻度の増加
・催不整脈作用
→交感神経亢進作用による
・神経毒性
→長時間の使用でミエリンの変性を来し脊髄を障害。
・ビタミンB12欠乏患者でハイリスク
→健常者では大量の亜酸化窒素を投与しないと起こらない。
「亜酸化窒素について」
・吸入麻酔の歴史
1779年 笑気の麻酔効果を発見
1842年 エーテル麻酔による抜歯成功
1844年 笑気麻酔による抜歯成功
1847年 クロロホルム麻酔の臨床応用開始
1956年 ハロタンの合成
1959年 メトキシフルランの使用開始
1965年 イソフルランの合成
1966年 デスフルランの合成
1968年 セボフルランの合成
・亜酸化窒素のメリット
・鎮痛効果
・併用薬剤の減量
・コスト減?
・低血圧が減る?
・150年の使用経験
・導入・覚醒が速い
・術中覚醒の減少
・亜酸化窒素のデメリット
・PONV
・VitB12欠乏
・免疫抑制
・心筋虚血
・低酸素血症
・神経毒性
・催奇形性
・閉鎖腔の拡張
・頭蓋内圧亢進
・助燃焼性
・温室効果
・単剤で使用不可
・鎮静作用
・NMDA型グルタミン酸受容体の阻害。
→グルタミン酸を介する興奮性神経伝達を抑制。
・GABA受容体には作用しない。
・ちなみに静脈麻酔薬・他の吸入麻酔薬は
主にGABA受容体を介する神経抑制作用を増強する。
・鎮痛効果
・亜酸化窒素のMACは104%→単独使用は不可
・あくまでも補助的な使用
・鎮痛のメカニズムは???
・亜酸化窒素が青斑核でNA作動性ニューロンを活性化
→NMDA受容体の阻害
→視床下部でのCRFの放出促進
→中脳中心灰白質でOpioid作動性ニューロンを活性化
→脳幹でのOpioid放出はGABA作動性介在ニューロンを阻害
→脊髄のNA作動性抑制性介在ニューロンの脱抑制
→脊髄後角で一次求心性ニューロンから
二次求心性ニューロンへ痛み刺激が伝達されるのを阻害
・NA受容体(α2B-R)欠損マウスや
脊髄切断した動物では亜酸化窒素の鎮痛効果はみられない
→上記の下行性抑制系が主な機序であることを示唆
・ちなみに静脈麻酔薬・吸入麻酔薬によるGABA受容体活性化は
下行性抑制系を阻害する方向に働く
・理論上、他剤との併用で亜酸化窒素の鎮痛効果は減弱することになる。
・しかし実際には・・・
・亜酸化窒素の併用でセボフルランのMACは20-30%減少する。
→下行抑制系以外の経路の関与を示唆
・MAC sparing effect
→セボフルランの使用量を減少させる。
・フェンタニルで十分鎮痛された状況では、
亜酸化窒素を併用してもMAC sparing effectはみられない。
・レミフェンタニルの併用
・鎮痛効果を増強する可能性も。
・レミフェンタニルの使用による持続的なNMDA受容体刺激は
術後痛覚過敏の原因となる。
→亜酸化窒素との併用で術後痛覚過敏を抑制する可能性。
・代謝、排泄
・生体内での代謝率は0.004%と極めて低い
・ほぼ呼気中に排出される
・肝障害・腎障害に影響されない
・麻酔効果は可逆的、残存しない
・作用発現
・血液/ガス分配係数が0.47と低い
→作用発現・消失が迅速
・ただしデスフルランも同等に血液/ガス分配係数は低い。
・亜酸化窒素だけの特性ではなくなってきている。
・二次ガス効果
・亜酸化窒素が速やかに肺胞から組織へ移行する。
→他の吸入麻酔薬(=二次ガス)と併用すると、
肺胞内での二次ガスが濃縮され濃度が上昇していく。
→二次ガスの効果発現が早まる。
・術中覚醒への影響
・他の吸入麻酔薬より健忘作用が強い。
・亜酸化窒素の併用で術中覚醒が減少する。
・呼吸への影響
・呼吸抑制
→一回換気量は低下するが
呼吸数上昇で換気が代償されるためPaCO2は上昇しない。
・セボフルランとの併用時にセボの濃度を下げることができる。
→セボフルランによる呼吸抑制を起こりにくくする。
→自発呼吸が残しやすくなる。
・循環への影響
・軽度の陰性変力作用があるが、交感神経刺激作用もある。
→互いに相殺するため他の吸入麻酔薬に比べて循環抑制が乏しい。
・左室機能低下症例
→もともと内因性の交感神経が緊張しているため、
陰性変力作用が出現する。
・閉鎖腔の増大
・閉鎖腔は窒素で満たされている。
・亜酸化窒素は窒素よりも血液に溶けやすい。
→亜酸化窒素の流入が窒素の流出速度を上回るため閉鎖腔が膨張。
・気胸、イレウス、肺気腫、空気塞栓で問題になる
・中耳内圧上昇
→鼓室形成での移植片の移動
・気管チューブやLMAのカフ
→カフ圧チェックの必要性
・拡散性低酸素血症
・亜酸化窒素を投与終了した直後に十分な酸素投与をしなかった場合に発生
・亜酸化窒素の吸入中止
→亜酸化窒素が血液から肺胞へ大量に移行。
→肺胞の酸素分圧が低下。
・亜酸化窒素の投与終了後には
・高濃度酸素投与
・呼気中酸素濃度やPaO2のモニターを考慮。
・PONVの頻度の増加
・催不整脈作用
→交感神経亢進作用による
・神経毒性
→長時間の使用でミエリンの変性を来し脊髄を障害。
・ビタミンB12欠乏患者でハイリスク
→健常者では大量の亜酸化窒素を投与しないと起こらない。
2017年8月18日金曜日
筋弛緩の拮抗
初期研修医勉強会 担当:M先生
「筋弛緩の拮抗」
・ネオスチグミン
→抗コリンエステラーゼ薬
・コリンエステラーゼを阻害し
→神経筋接合部でのACh濃度を高める。
→非脱分極性筋弛緩薬に拮抗
・副交感神経でのムスカリン作用を拮抗するためにアトロピンを併用。
・副作用
・コリン作動性クリーゼ、不整脈(徐脈)、
腹痛、唾液分泌過多、流涙、気管支痙攣、・・・
・ネオスチグミンの問題点
・効果発現まで10〜15分ほどかかる
・深い筋弛緩状態ではネオスチグミンを増量しても
効果が出ない(天井効果 ceiling effect)
・筋弛緩からの自然回復が進んだ状態で
高用量のネオスチグミンを投与すると
かえって神経筋伝達が阻害される(逆説的な筋力低下)。
・スガマデクス
・効果発現は迅速
・浅い筋弛緩(TOFでT2発現時)では1.4分、
深い筋弛緩(PTC1 ~2)では2.7分でTOF比0.9まで回復する。
・健康成人に96mg/kgに達するスガマデクスを投与しても
いかなる有害事象も出現しなかったという報告もある。
・小児に対するスガマデクスの使用
・studyはほとんどない
・成人に対するスガマデクスの推奨量と同等量で
十分なリバースが得られる。
→しかしリバースまでの時間は短くなる
・2歳以上の小児における適度な筋弛緩の場合は
2mg/kgの量でリバースができる
・病的肥満の患者
・理想体重で算出した投与量では不十分
→理想体重で算出した投与量の+40%で
臨床的に有効な拮抗(平均回復時間<2分)ありとの報告。
・投与量に関して最終的なコンセンサスはない。
・妊婦
・妊婦に対するstudyはない。
・乳汁中に移行するかどうかは知られていない。
・妊産婦・授乳婦に対する影響はないと考えられている。
・ロクロニウムアレルギーに対する使用
・有効とする報告例はいくつかある。
・しかし明確に有効性を示した文献はまだない。
・もし考慮するのであれば早期に高用量(16mg/kg)での投与を。
・RSIにおいては?
・RSIにおいてロクロニウム−スガマデクス複合体は
サクシニルコリンよりも安全である。(Cochrane review)
・スガマデクスの臨床的な副作用(>2%)
・早期拮抗により
・浅麻酔時の咳き込みや体動、苦悶表情。
・気管内チューブによる嘔吐。
・QT延長、AV blockの可能性(研究により様々)。
・アレルギー反応(初回投与でも起こりうる)。
・筋弛緩の再出現(投与量が不十分な患者での報告)。
・禁忌
・絶対的禁忌
→スガマデクスに対するアレルギーのみと考えて良い
・相対的禁忌
・出血性疾患
・腎機能不全
・トレミフェンやフィジン酸の使用
・筋弛緩のモニタリング
・TOF(Train-of-four;4連刺激)
・2Hz(0.5秒間隔)で4回連続の最大上刺激を与える。
・TOFは第1刺激による反応(T1)と
第4刺激による反応(T4)の比(T4/T1)を%で表示する。
・麻酔導入時:気管挿管のタイミング: TOF=0%(反応数 0/4)
・麻酔維持中:適切な維持状態 TOF=0%(反応数 1〜2/4)
追加投与のタイミング TOF=0%(反応数 3〜4/4)
・覚醒時期 :拮抗薬投与のタイミング TOF=25-35%以上
抜管時期 TOF=80-90%以上
・TOF比>0.9
→残存筋弛緩からの回復を示唆する一般的な指標。
・TOF刺激による2回目の収縮反応(T2)の再出現を
「浅い筋弛緩状態」と呼ぶ。
・PTC(Post-tetanic count)
・深い筋弛緩時のモニター。
・5秒間50Hzの刺激を与えて3秒間休止。
・引き続き15回1Hzの刺激を与え検知された反応数を表示。
・PTCが1なら10分以内にTOFのT1が出現する。
・PTCが5なら3-4分で、7ならまもなくT1が出現する。
・筋弛緩の再出現
・末梢分画のロクロニウムが中枢分画(血中)に戻る。
→肝臓での代謝能力、または血中での包接可能量を超える。
→神経筋接合部に移行。
→再び筋弛緩状態となる。
・完全な筋収縮(TOF=100%)
→75%のACh受容体が筋弛緩薬で占められている場合にも起こる。
→循環によって増加した少量のロクロニウムでも
再び筋弛緩を引き起こすのに十分な量になりうる。
「筋弛緩の拮抗」
・ネオスチグミン
→抗コリンエステラーゼ薬
・コリンエステラーゼを阻害し
→神経筋接合部でのACh濃度を高める。
→非脱分極性筋弛緩薬に拮抗
・副交感神経でのムスカリン作用を拮抗するためにアトロピンを併用。
・副作用
・コリン作動性クリーゼ、不整脈(徐脈)、
腹痛、唾液分泌過多、流涙、気管支痙攣、・・・
・ネオスチグミンの問題点
・効果発現まで10〜15分ほどかかる
・深い筋弛緩状態ではネオスチグミンを増量しても
効果が出ない(天井効果 ceiling effect)
・筋弛緩からの自然回復が進んだ状態で
高用量のネオスチグミンを投与すると
かえって神経筋伝達が阻害される(逆説的な筋力低下)。
・スガマデクス
・効果発現は迅速
・浅い筋弛緩(TOFでT2発現時)では1.4分、
深い筋弛緩(PTC1 ~2)では2.7分でTOF比0.9まで回復する。
・健康成人に96mg/kgに達するスガマデクスを投与しても
いかなる有害事象も出現しなかったという報告もある。
・小児に対するスガマデクスの使用
・studyはほとんどない
・成人に対するスガマデクスの推奨量と同等量で
十分なリバースが得られる。
→しかしリバースまでの時間は短くなる
・2歳以上の小児における適度な筋弛緩の場合は
2mg/kgの量でリバースができる
・病的肥満の患者
・理想体重で算出した投与量では不十分
→理想体重で算出した投与量の+40%で
臨床的に有効な拮抗(平均回復時間<2分)ありとの報告。
・投与量に関して最終的なコンセンサスはない。
・妊婦
・妊婦に対するstudyはない。
・乳汁中に移行するかどうかは知られていない。
・妊産婦・授乳婦に対する影響はないと考えられている。
・ロクロニウムアレルギーに対する使用
・有効とする報告例はいくつかある。
・しかし明確に有効性を示した文献はまだない。
・もし考慮するのであれば早期に高用量(16mg/kg)での投与を。
・RSIにおいては?
・RSIにおいてロクロニウム−スガマデクス複合体は
サクシニルコリンよりも安全である。(Cochrane review)
・スガマデクスの臨床的な副作用(>2%)
・早期拮抗により
・浅麻酔時の咳き込みや体動、苦悶表情。
・気管内チューブによる嘔吐。
・QT延長、AV blockの可能性(研究により様々)。
・アレルギー反応(初回投与でも起こりうる)。
・筋弛緩の再出現(投与量が不十分な患者での報告)。
・禁忌
・絶対的禁忌
→スガマデクスに対するアレルギーのみと考えて良い
・相対的禁忌
・出血性疾患
・腎機能不全
・トレミフェンやフィジン酸の使用
・筋弛緩のモニタリング
・TOF(Train-of-four;4連刺激)
・2Hz(0.5秒間隔)で4回連続の最大上刺激を与える。
・TOFは第1刺激による反応(T1)と
第4刺激による反応(T4)の比(T4/T1)を%で表示する。
・麻酔導入時:気管挿管のタイミング: TOF=0%(反応数 0/4)
・麻酔維持中:適切な維持状態 TOF=0%(反応数 1〜2/4)
追加投与のタイミング TOF=0%(反応数 3〜4/4)
・覚醒時期 :拮抗薬投与のタイミング TOF=25-35%以上
抜管時期 TOF=80-90%以上
・TOF比>0.9
→残存筋弛緩からの回復を示唆する一般的な指標。
・TOF刺激による2回目の収縮反応(T2)の再出現を
「浅い筋弛緩状態」と呼ぶ。
・PTC(Post-tetanic count)
・深い筋弛緩時のモニター。
・5秒間50Hzの刺激を与えて3秒間休止。
・引き続き15回1Hzの刺激を与え検知された反応数を表示。
・PTCが1なら10分以内にTOFのT1が出現する。
・PTCが5なら3-4分で、7ならまもなくT1が出現する。
・筋弛緩の再出現
・末梢分画のロクロニウムが中枢分画(血中)に戻る。
→肝臓での代謝能力、または血中での包接可能量を超える。
→神経筋接合部に移行。
→再び筋弛緩状態となる。
・完全な筋収縮(TOF=100%)
→75%のACh受容体が筋弛緩薬で占められている場合にも起こる。
→循環によって増加した少量のロクロニウムでも
再び筋弛緩を引き起こすのに十分な量になりうる。
2017年8月8日火曜日
留学通信1
神戸市立医療センター中央市民病院では規定を満たしたスタッフ医師に対して研究休職(サバティカル)を認めており、現在当科K医師がこの制度を利用してUniversity of Pittsburgh Medical Center(UPMC)麻酔科に留学しています。
以下、K医師からの留学通信です。
*******************************
私は現在、中央市民病院の研究休職制度を利用して、UPMC麻酔科において麻酔科領域におけるレジデント教育とシミュレーション教育について主に勉強させて頂いております。
日米医療体制の違いを感じつつ、病院の規模や医療体制はもちろんのことながら、システマティックに構築された教育体制や、先進的なシミュレーション教育に常に刺激を受けながら毎日を過ごしています。
臨床留学が資格などの面でなかなか難しい中、大学院で博士号を取得してから研究留学というのが医師の留学の一般的な道筋であることを考えると、市中病院で長らく臨床を続ける医師がそのまま留学を目指すというのはなかなか難しいことだと思っていました。それに対して「市中病院の臨床医にも留学の道を与える」ということでこの研究休職制度が作られ、今回認めて頂いたことは大変な喜びです。
こちらでしっかり勉強して医学教育、シミュレーション教育について知識と経験を積んで、帰国後に麻酔科のレジデント教育はもちろん、中央市民病院全体でのスタッフ教育のさらなる充実につなげて、神戸市の医療をよりよいものにしていく一助となればと思います。また時折現状を報告させて頂きます。
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以下、K医師からの留学通信です。
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私は現在、中央市民病院の研究休職制度を利用して、UPMC麻酔科において麻酔科領域におけるレジデント教育とシミュレーション教育について主に勉強させて頂いております。
日米医療体制の違いを感じつつ、病院の規模や医療体制はもちろんのことながら、システマティックに構築された教育体制や、先進的なシミュレーション教育に常に刺激を受けながら毎日を過ごしています。
UPMC Presbyterian Hospital
UPMC Montefiore Hospital (私の主な勤務場所)
シミュレーション教育センター:WISER
臨床留学が資格などの面でなかなか難しい中、大学院で博士号を取得してから研究留学というのが医師の留学の一般的な道筋であることを考えると、市中病院で長らく臨床を続ける医師がそのまま留学を目指すというのはなかなか難しいことだと思っていました。それに対して「市中病院の臨床医にも留学の道を与える」ということでこの研究休職制度が作られ、今回認めて頂いたことは大変な喜びです。
こちらでしっかり勉強して医学教育、シミュレーション教育について知識と経験を積んで、帰国後に麻酔科のレジデント教育はもちろん、中央市民病院全体でのスタッフ教育のさらなる充実につなげて、神戸市の医療をよりよいものにしていく一助となればと思います。また時折現状を報告させて頂きます。
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2017年7月19日水曜日
酸素化戦略
麻酔科勉強会 担当:O先生
「酸素化戦略」
・人間には約60兆個の細胞が存在
・各細胞は食物から得られるADPをATPに変換し、ATPをエネルギーとして全身で利用
・その際に酸素を利用することで、効率的にATPを産生
・ADP1単位から好気性代謝でATP36単位、嫌気性代謝で2単位生成
・輸液療法も輸血療法も酸素化療法(人工呼吸管理)
→最大の目標は『全身の酸素化』
・酸素供給
・酸素需要
・酸素利用率
・血液中の酸素
・酸素を運搬しているのはHb
・SO2=酸素Hb/総Hb
・酸素解離曲線の存在
・溶存酸素(ml/dL)=0.03(ml/L)×0.1×PO2(mmHg)
・動脈血酸素含有量(CaO2;ml/dL)
=1.34×Hb×SaO2+0.003×PaO2;正常値:20
・静脈血酸素含有量(CvO2;ml/dL)
=1.34×Hb×SvO2+0.003×PvO2;正常値15
・溶存酸素は非常に小さい値なので(<0.3ml)
→簡易酸素含量=1.34×Hb×SO2
・酸素を細胞内に取り入れる最大の組織は肺
・肺は肺胞/肺血管を通じて、CO2とO2を交換
・O2は血液に取り込まれHbに結合することで血中へ(わずかに溶存もする)
・ポンプ機能を持つ心臓によって全身に送られる(心拍出量に依存)
・酸素の供給
・酸素供給量はDO2(mL/min)で計算
・DO2=CO×1.34×Hb×SaO2×10
・正常値は900-1100mL/min、体格補正(体表面積;BSAで割ったもの)で520-600
→250を下回ると組織の低酸素に至る
・輸液やカテコラミンは主にCOに影響
・酸素摂取量(VO2)
・組織内には酸素を貯蔵されない
・酸素摂取量=酸素消費量の包括的測定値
・酸素摂取量はVO2で計算
→COを求めるFickの式を使用して計算
VO2=CO×1.34×Hb×(SaO2-SvO2)×10
・限界もある。
・VO2の計算に必要な測定項目であるCO,Hb,SO2,血中酸素含量には
測定誤差(内因性の変動)があり、最大で18%もの誤差がある
・肺の酸素摂取量が計算値に含まれていないため
厳密には『全身の酸素摂取量』ではない
・肺のVO2は5%程だが炎症で20%まで変化
・全身のVO2の計算式:VO2=VE(分時換気量)×(FiO2-FeO2)
・VO2低下の原因
・代謝の異常(低代謝)と嫌気性代謝をもたらす組織酸素化の不足
・低代謝の原因
・全身麻酔薬の存在(鎮静、麻薬、筋弛緩)
・低体温
・低活動、高齢者
・敗血症(全身の炎症反応)
・VO2の正常値は200~270、体格補正後は110-160
・VO2/BSAから110を引いた値に時間をかけたものが『酸素負債』
・酸素負債と多臓器不全のリスクは直接関係する。
・酸素摂取率(O2ER)
・O2ER=O2ER=VO2/DO2
・溶存酸素を無視し、共通項(CO,1.34,Hb,10)を消して簡易化する
→O2ER=(SaO2-SvO2)/SaO2
・正常値は0.20-0.30
・0.30を超える場合はDO2の低下を意味する(貧血や低心機能など)
・0.50(嫌気性代謝閾値)を超えると組織の低酸素になる(後述)
・0.20未満では組織の酸素利用障害を示す
・DO2が減少しても初期にはVO2に変化はない
・DO2が下がりすぎるとある一点でVO2が低下する。
・この点が嫌気性代謝の閾値
・これらを見るために必要なモニターは?
・SaO2にはパルスオキシメーター(Aガス)
・HbにはABG or VBG
・COはPAC、CV(プリセップ)、エコーで測定もしくは推測可能
・SvO2はPACのみ・・・
→ScvO2でも推測可能
・混合静脈血
・上大静脈』『下大静脈』『冠静脈』の3つの静脈血、
すなわち肺を除く静脈血の混合(合流)した静脈血の酸素飽和度
・3つの静脈の合流場所は右心房。測定場所は通常肺動脈
・混合静脈血酸素飽和度(SvO2)
・65%-75%が正常値
・呼吸器の使用や酸素化されてSaO2が一定であれば
その変化はERの逆に捉えることができる
=ER=(SaO2-SvO2)/SaO2
・SvO2<65%は酸素供給量の低下(貧血、低心拍出量)
・SvO2<50%は組織低酸素
・SVO2>75%は組織の酸素利用障害
・中心静脈血酸素飽和度(ScvO2)
・CVカテが留置されていれば測定可能
・先端が留置されている場所での静脈血のガス測定が可能。
→『上大静脈』or『下大静脈』
・酸素が極端に少ない冠静脈は含まれない
・SvO2とScvO2の間には差がある(ScvO2の方が高い)
・ScvO2の変化は一般的に有意である
・正常値は70-89%
・SvO2とScvO2の解離
・正常でもScvO2はSvO2よりも3-11%程度高い。
・この差は心不全、心原性ショック、敗血症で大きくなる
・上大静脈にカテ先端が留置されている場合
・心不全、心原性ショックなどで低心拍出量
→末梢血管抵抗の増大により脳血流が保たれる。
→ScvO2は相対的に高い値を示す
・敗血症性ショックでScvO2がSvO2よりも比較的高い場合
→腹部での酸素消費量の増加を示唆する
・乳酸値
・乳酸は嫌気性解糖の最終産物
・高乳酸値は低酸素状態(および脱水)を必ずしも反映しない
・低酸素状態になればlacは上昇するがVO2の低下から数時間遅れる
・これは乳酸が負に帯電しており細胞膜通過に時間がかかるため
・組織低酸素ではない高乳酸血症
・全身性炎症反応症候群
・チアミン欠乏(原因不明の高lac血症)
・薬物
・アドレナリン、メトホルミン
抗レトロウィルス薬、リネゾリド
プロピレングリコール
→プロピレングリコールを含む薬剤
・ロラゼパム
・ジアゼパム
・エスモロール
・ニトログリセリン
・フェニトイン
・アルカローシス
・痙攣
・肝機能障害
・喘息発作
・悪性腫瘍
・シアン化合物
・一酸化炭素など
・乳酸そのものは有害なのか
・敗血症性ショックでは心臓における乳酸の酸化が亢進している
・低酸素状態の神経組織では乳酸の酸化が重要なエネルギー源である
・乳酸アシドーシスの治療は原因となった代謝異常を是正することが第一
・重症敗血症と高乳酸値
・細菌のエンドトキシン
→ピルビン酸からアセチルコエンザイムAに変換される過程を障害
→ピルビン酸の蓄積による高乳酸血症になる
・敗血症において高乳酸血症=酸素化の不足は一対一対応ではない
「酸素化戦略」
・人間には約60兆個の細胞が存在
・各細胞は食物から得られるADPをATPに変換し、ATPをエネルギーとして全身で利用
・その際に酸素を利用することで、効率的にATPを産生
・ADP1単位から好気性代謝でATP36単位、嫌気性代謝で2単位生成
・輸液療法も輸血療法も酸素化療法(人工呼吸管理)
→最大の目標は『全身の酸素化』
・酸素供給
・酸素需要
・酸素利用率
・血液中の酸素
・酸素を運搬しているのはHb
・SO2=酸素Hb/総Hb
・酸素解離曲線の存在
・溶存酸素(ml/dL)=0.03(ml/L)×0.1×PO2(mmHg)
・動脈血酸素含有量(CaO2;ml/dL)
=1.34×Hb×SaO2+0.003×PaO2;正常値:20
・静脈血酸素含有量(CvO2;ml/dL)
=1.34×Hb×SvO2+0.003×PvO2;正常値15
・溶存酸素は非常に小さい値なので(<0.3ml)
→簡易酸素含量=1.34×Hb×SO2
・酸素を細胞内に取り入れる最大の組織は肺
・肺は肺胞/肺血管を通じて、CO2とO2を交換
・O2は血液に取り込まれHbに結合することで血中へ(わずかに溶存もする)
・ポンプ機能を持つ心臓によって全身に送られる(心拍出量に依存)
・酸素の供給
・酸素供給量はDO2(mL/min)で計算
・DO2=CO×1.34×Hb×SaO2×10
・正常値は900-1100mL/min、体格補正(体表面積;BSAで割ったもの)で520-600
→250を下回ると組織の低酸素に至る
・輸液やカテコラミンは主にCOに影響
・酸素摂取量(VO2)
・組織内には酸素を貯蔵されない
・酸素摂取量=酸素消費量の包括的測定値
・酸素摂取量はVO2で計算
→COを求めるFickの式を使用して計算
VO2=CO×1.34×Hb×(SaO2-SvO2)×10
・限界もある。
・VO2の計算に必要な測定項目であるCO,Hb,SO2,血中酸素含量には
測定誤差(内因性の変動)があり、最大で18%もの誤差がある
・肺の酸素摂取量が計算値に含まれていないため
厳密には『全身の酸素摂取量』ではない
・肺のVO2は5%程だが炎症で20%まで変化
・全身のVO2の計算式:VO2=VE(分時換気量)×(FiO2-FeO2)
・VO2低下の原因
・代謝の異常(低代謝)と嫌気性代謝をもたらす組織酸素化の不足
・低代謝の原因
・全身麻酔薬の存在(鎮静、麻薬、筋弛緩)
・低体温
・低活動、高齢者
・敗血症(全身の炎症反応)
・VO2の正常値は200~270、体格補正後は110-160
・VO2/BSAから110を引いた値に時間をかけたものが『酸素負債』
・酸素負債と多臓器不全のリスクは直接関係する。
・酸素摂取率(O2ER)
・O2ER=O2ER=VO2/DO2
・溶存酸素を無視し、共通項(CO,1.34,Hb,10)を消して簡易化する
→O2ER=(SaO2-SvO2)/SaO2
・正常値は0.20-0.30
・0.30を超える場合はDO2の低下を意味する(貧血や低心機能など)
・0.50(嫌気性代謝閾値)を超えると組織の低酸素になる(後述)
・0.20未満では組織の酸素利用障害を示す
・DO2が減少しても初期にはVO2に変化はない
・DO2が下がりすぎるとある一点でVO2が低下する。
・この点が嫌気性代謝の閾値
・これらを見るために必要なモニターは?
・SaO2にはパルスオキシメーター(Aガス)
・HbにはABG or VBG
・COはPAC、CV(プリセップ)、エコーで測定もしくは推測可能
・SvO2はPACのみ・・・
→ScvO2でも推測可能
・混合静脈血
・上大静脈』『下大静脈』『冠静脈』の3つの静脈血、
すなわち肺を除く静脈血の混合(合流)した静脈血の酸素飽和度
・3つの静脈の合流場所は右心房。測定場所は通常肺動脈
・混合静脈血酸素飽和度(SvO2)
・65%-75%が正常値
・呼吸器の使用や酸素化されてSaO2が一定であれば
その変化はERの逆に捉えることができる
=ER=(SaO2-SvO2)/SaO2
・SvO2<65%は酸素供給量の低下(貧血、低心拍出量)
・SvO2<50%は組織低酸素
・SVO2>75%は組織の酸素利用障害
・中心静脈血酸素飽和度(ScvO2)
・CVカテが留置されていれば測定可能
・先端が留置されている場所での静脈血のガス測定が可能。
→『上大静脈』or『下大静脈』
・酸素が極端に少ない冠静脈は含まれない
・SvO2とScvO2の間には差がある(ScvO2の方が高い)
・ScvO2の変化は一般的に有意である
・正常値は70-89%
・SvO2とScvO2の解離
・正常でもScvO2はSvO2よりも3-11%程度高い。
・この差は心不全、心原性ショック、敗血症で大きくなる
・上大静脈にカテ先端が留置されている場合
・心不全、心原性ショックなどで低心拍出量
→末梢血管抵抗の増大により脳血流が保たれる。
→ScvO2は相対的に高い値を示す
・敗血症性ショックでScvO2がSvO2よりも比較的高い場合
→腹部での酸素消費量の増加を示唆する
・乳酸値
・乳酸は嫌気性解糖の最終産物
・高乳酸値は低酸素状態(および脱水)を必ずしも反映しない
・低酸素状態になればlacは上昇するがVO2の低下から数時間遅れる
・これは乳酸が負に帯電しており細胞膜通過に時間がかかるため
・組織低酸素ではない高乳酸血症
・全身性炎症反応症候群
・チアミン欠乏(原因不明の高lac血症)
・薬物
・アドレナリン、メトホルミン
抗レトロウィルス薬、リネゾリド
プロピレングリコール
→プロピレングリコールを含む薬剤
・ロラゼパム
・ジアゼパム
・エスモロール
・ニトログリセリン
・フェニトイン
・アルカローシス
・痙攣
・肝機能障害
・喘息発作
・悪性腫瘍
・シアン化合物
・一酸化炭素など
・乳酸そのものは有害なのか
・敗血症性ショックでは心臓における乳酸の酸化が亢進している
・低酸素状態の神経組織では乳酸の酸化が重要なエネルギー源である
・乳酸アシドーシスの治療は原因となった代謝異常を是正することが第一
・重症敗血症と高乳酸値
・細菌のエンドトキシン
→ピルビン酸からアセチルコエンザイムAに変換される過程を障害
→ピルビン酸の蓄積による高乳酸血症になる
・敗血症において高乳酸血症=酸素化の不足は一対一対応ではない
術後心房細動
後期研修医勉強会 担当:E先生
「術後心房細動」
・術後不整脈は周術期に頻度の高い合併症のひとつ。
・最も代表的な術後心房細動(POAF)は30-50%と高率に発症。
・冠動脈バイパス術後:30%
・弁置換術:30-40%,
・複合手術:40-50%
・肺手術(葉切除):10-20%
(全摘術):40%
・術後1週間以内に起こりやすい
・術後2日目が最も多い
・43%の患者が最低1回AFのエピソード
・新規発症のPOAFは、自然に洞調律化
・15-30%は2時間以内、80%以上が24時間以内、
・90%以上が術後6-8週間に洞調律化する
・発症機序
・トリガーとなる局所的な異常興奮
→心房頻拍や心房期外収縮など
・電気的・構造的変化によるリエントリー
・術後急性期の一過性因子
→血中カテコラミンの増加、炎症、心膜炎、
電気的リモデリング、自律神経障害、心房の伸展、
低酸素、電解質異常、代謝異常
・詳しいメカニズムは解明されていない
・リスク因子
・術前リスク因子
→高齢(>75歳)、遺伝、高血圧、糖尿病、肥満、COPD、
左房・左室肥大、僧帽弁疾患
・術中リスク因子
→術中侵襲(ベント・脱血管挿入)、心筋障害(虚血・低血圧)、
急激な循環血液量の増減(拡張・虚脱)
→人工心肺を使用した開心術では発症しやすい
・術後リスク因子
→急激な循環血液量の増減、電解質異常(Mg、K)、
交感神経系亢進(疼痛、貧血、発熱、炎症、カテコラミンの投与)
・合併症
・一次的合併症:
→自覚症状(動悸)
血行動態の破綻(心不全、血圧低下)
・二次的合併症:
→周術期脳梗塞(発症率は3倍)
ICU滞在日数・入院期間の延長→医療費の増大
周術期・長期の死亡率の上昇
・発症予防
・ACCF/AHA/HRS心房細動患者管理ガイドライン(2014年)
・ESC心房細動治療ガイドライン(2010、2016年)
→POAFの発症予防を推奨 (Grade1B)
・β遮断薬>アミオダロン、ソタロール(Grade1B)
・低コスト、重篤な副作用が少ない
・β遮断薬は可能であれば術前から開始し、術後も継続する。
・β遮断薬を使用できない患者
→アミオダロン・ソタロールの使用を考慮。
・ソタロール副作用
→TdP、徐脈、β遮断作用、腎不全患者には禁忌、QT延長
・アミオダロン副作用
→徐脈、ペーシング使用の上昇、QT延長、
肺合併症(間質性肺炎)を考慮、重症例には慎重
・メトプロロール(セロケン)<カルベジロール(アーチスト)
・ビソプロロール(メインテート)
・心房ペーシング△
・抗酸化ビタミンはβブロッカーに併用して使用する。(Grade2C)
→術前から開始し退院まで継続。
・ビタミンC(1g)、ビタミンE(400IU)/日。
・管理、治療
・循環動態が安定した患者
①循環血液量の是正、電解質異常(Mg、K)の補正、
低酸素・疼痛・貧血等のコントロール、カテコラミン減量・中止
②レートコントロール(<110/min)
③リズムコントロール
・レートコントロールvsリズムコントロール
→抗不整脈薬による洞調律維持より、心拍数調節と抗凝固療法
・24時間以上持続する場合は、薬物的除細動を考慮する。
・循環動態が不安定な患者
→除細動
・まとめると、最初は、低酸素、電解質異常、循環不安定の是正や、
疼痛、カテコラミンの中止
→そこからレートorリズム、除細動、抗凝固
・洞調律に復帰した患者でも、少なくとも4週間抗凝固療法を開始する。
(CHADS2DS2-VASc score高値、HASBLED score低値)
・フル抗凝固になるまで静注のヘパリンは使用しない。
↑術後の出血リスク>脳梗塞リスク
ただしPEや機械弁の患者には考慮してよいかもしれない。
・抗凝固療法
・複数回のAFエピソードのある患者、48時間以上持続している患者
→周術期出血リスクが許容できるなら経口抗凝固薬が推奨される。
・高リスク患者(CHA2DS2-VASc score>2点)には48時間以内でも推奨される。
・ワーファリン(INR;2-3)>直接抗トロンビン・Xa因子薬 (Grade2C)
・抗凝固薬療法は、洞調律復帰後も最低4週間の投与継続が推奨される。(Grade2C)
「術後心房細動」
・術後不整脈は周術期に頻度の高い合併症のひとつ。
・最も代表的な術後心房細動(POAF)は30-50%と高率に発症。
・冠動脈バイパス術後:30%
・弁置換術:30-40%,
・複合手術:40-50%
・肺手術(葉切除):10-20%
(全摘術):40%
・術後1週間以内に起こりやすい
・術後2日目が最も多い
・43%の患者が最低1回AFのエピソード
・新規発症のPOAFは、自然に洞調律化
・15-30%は2時間以内、80%以上が24時間以内、
・90%以上が術後6-8週間に洞調律化する
・発症機序
・トリガーとなる局所的な異常興奮
→心房頻拍や心房期外収縮など
・電気的・構造的変化によるリエントリー
・術後急性期の一過性因子
→血中カテコラミンの増加、炎症、心膜炎、
電気的リモデリング、自律神経障害、心房の伸展、
低酸素、電解質異常、代謝異常
・詳しいメカニズムは解明されていない
・リスク因子
・術前リスク因子
→高齢(>75歳)、遺伝、高血圧、糖尿病、肥満、COPD、
左房・左室肥大、僧帽弁疾患
・術中リスク因子
→術中侵襲(ベント・脱血管挿入)、心筋障害(虚血・低血圧)、
急激な循環血液量の増減(拡張・虚脱)
→人工心肺を使用した開心術では発症しやすい
・術後リスク因子
→急激な循環血液量の増減、電解質異常(Mg、K)、
交感神経系亢進(疼痛、貧血、発熱、炎症、カテコラミンの投与)
・合併症
・一次的合併症:
→自覚症状(動悸)
血行動態の破綻(心不全、血圧低下)
・二次的合併症:
→周術期脳梗塞(発症率は3倍)
ICU滞在日数・入院期間の延長→医療費の増大
周術期・長期の死亡率の上昇
・発症予防
・ACCF/AHA/HRS心房細動患者管理ガイドライン(2014年)
・ESC心房細動治療ガイドライン(2010、2016年)
→POAFの発症予防を推奨 (Grade1B)
・β遮断薬>アミオダロン、ソタロール(Grade1B)
・低コスト、重篤な副作用が少ない
・β遮断薬は可能であれば術前から開始し、術後も継続する。
・β遮断薬を使用できない患者
→アミオダロン・ソタロールの使用を考慮。
・ソタロール副作用
→TdP、徐脈、β遮断作用、腎不全患者には禁忌、QT延長
・アミオダロン副作用
→徐脈、ペーシング使用の上昇、QT延長、
肺合併症(間質性肺炎)を考慮、重症例には慎重
・メトプロロール(セロケン)<カルベジロール(アーチスト)
・ビソプロロール(メインテート)
・心房ペーシング△
・抗酸化ビタミンはβブロッカーに併用して使用する。(Grade2C)
→術前から開始し退院まで継続。
・ビタミンC(1g)、ビタミンE(400IU)/日。
・管理、治療
・循環動態が安定した患者
①循環血液量の是正、電解質異常(Mg、K)の補正、
低酸素・疼痛・貧血等のコントロール、カテコラミン減量・中止
②レートコントロール(<110/min)
③リズムコントロール
・レートコントロールvsリズムコントロール
→抗不整脈薬による洞調律維持より、心拍数調節と抗凝固療法
・24時間以上持続する場合は、薬物的除細動を考慮する。
・循環動態が不安定な患者
→除細動
・まとめると、最初は、低酸素、電解質異常、循環不安定の是正や、
疼痛、カテコラミンの中止
→そこからレートorリズム、除細動、抗凝固
・洞調律に復帰した患者でも、少なくとも4週間抗凝固療法を開始する。
(CHADS2DS2-VASc score高値、HASBLED score低値)
・フル抗凝固になるまで静注のヘパリンは使用しない。
↑術後の出血リスク>脳梗塞リスク
ただしPEや機械弁の患者には考慮してよいかもしれない。
・抗凝固療法
・複数回のAFエピソードのある患者、48時間以上持続している患者
→周術期出血リスクが許容できるなら経口抗凝固薬が推奨される。
・高リスク患者(CHA2DS2-VASc score>2点)には48時間以内でも推奨される。
・ワーファリン(INR;2-3)>直接抗トロンビン・Xa因子薬 (Grade2C)
・抗凝固薬療法は、洞調律復帰後も最低4週間の投与継続が推奨される。(Grade2C)
2017年7月17日月曜日
ステロイドカバー
初期研修医勉強会 担当:K先生
「ステロイドカバーについて」
・ステロイド使用患者における注意点
・ステロイドが適応となる原疾患に対する麻酔計画
→例えば・・・
・関節リウマチ患者の挿管困難に対する気道確保
・気管支喘息に対する発作予防
・血液疾患による汎血球減少に対する対策
・ステロイド長期投与に伴う副作用の管理
→例えば・・・
・耐糖能異常
・易感染性
・ステロイド分泌抑制に対する補充(ステロイドカバー)
・まずは床下部-下垂体-副腎系(HPA系)を復習
・ストレスによりHPA系はpositive feedbackでcortisolを産生
・産生されるcortisolは8-10mg/day程度。
・cortisolは内因性も外因性も含めてHPA系にnegative feedbackをかける。
・ストレス下でのcortisol分泌量
・minor surgery→50mg/day
・greater surgical stress→75-150mg/day、まれに200mg/day以上
・二次性副腎機能低下症
・ステロイドはnegative feedbackによりHPA系を抑制する。
→CRH、ACTHの分泌が抑制される。
→それらの刺激を受けなくなった副腎皮質は萎縮する。
→何らかのストレスを受けてCRHやACTHが分泌されても
委縮した副腎皮質からは十分量のコルチゾールが分泌されないため、
副腎不全を呈することがある。
・周術期の二次性副腎不全の報告(1950年代)
・34歳男性。関節リウマチに対して
50mg/dayのコルチゾンを8ヶ月にわたり投与。
股関節形成術後ショックに陥り、術後3時間で死亡。
・20歳女性。関節リウマチに対して
75mg/dayのプレドニゾンを8ヶ月にわたり投与。
膝関節の術後ショックに陥り、術後6時間で死亡。
→いずれも病理学的所見で両副腎の萎縮、腺組織の顕著な変性を認めた。
→副腎不全が死因と考えられた。
→ステロイドカバーの必要性が提唱されるようになった。
・HPA系の評価
・intermediate patientsにはHPA系の評価を行うことを推奨する
・まず早朝コルチゾール基礎値でスクリーニングを行う。
・cortisol<5μg/dL
→HPA系抑制の可能性が高いためステロイドカバー行う
・cortisol>10μg/dL
→HPA系抑制の可能性は低いため常用量のみで可
・cortisol 5 to 10μg/dL
→追加検査を行うかempiricにステロイドカバーを行う
・早朝コルチゾール基礎値でグレーゾーンと判定された場合
→追加検査として迅速ACTH負荷試験を行う。
・迅速ACTH負荷試験
→ACTHを投与することでHPA系の下流にある副腎皮質の機能を調べる
・ACTH製剤(コートロシン®)250μg投与
→30分後 cortisol<18μg/dL→副腎機能低下あり
cortisol>18μg/dL→副腎機能正常
・ステロイドの内服期間が3w未満の患者
→用量にかかわらずステロイドカバーは必要ない。
・3w以上、PSL換算で1日20mg以上内服
→ステロイドカバーが必要。
・3w以上、1日5-20mg内服
→HPA系の抑制状態を評価するための検査を行うか、
empiricにステロイドカバーを行う。
・吸入ステロイドは?
・吸入ステロイドを使用中の患者の早朝コルチゾール基礎値(13研究)や
尿中コルチゾール(21研究)について調べた研究のメタアナリシス
(Arch Intern Med 1999; 159:941.)
→750μg/day以上のフルチカゾン(フルタイド)、
1500μg/day以上のブデソニド(パルミコート)、べクロメタゾン、
トリアムシノロンの吸入でHPA系の抑制が確認された。
・UpToDateでは?
→750μg/day以上のフルチカゾンや
1500μg/day以上のフルチカゾン以外の吸入ステロイドを
3週間以上使用している患者
→術前にHPA系の評価を行うよう勧めている。
・外用ステロイドは?
・Class Iの外用ステロイドを2g/day以上使うとHPA系が抑制される可能性。
(J Am Acad Dermatol. 2006; 54:1.)
・UpToDateではClass I-IIIの外用ステロイドを2g/day以上、
3週間以上使用した場合は術前にHPA系の評価を行うことを勧めている。
・ちなみに0.5gで両手掌に塗布する分量に相当するため、
体幹等にも塗るのであれば2g/dayはそれほど多い量ではなさそう。
・何をどれだけ投与するか?
・かつてはヒドロコルチゾンを術前、術中、術後に100mgずつ計300mgを
手術当日に投与しその後徐々に減量。
→この投与量は大手術を受けた正常患者の血中コルチゾール最高値を
上回るように設定
→多くの患者にとっては過量投与。
・副作用として血圧上昇、水分貯留、消化性潰瘍、
創傷治癒遅延、感染の増加などが多数報告された。
・周術期のステロイド補充量
・一般的に手術侵襲の大きさによって決めることが多い。
・健常人でのコルチゾール分泌量を参考とする。
・小手術では健常人ではコルチゾールの分泌はおよそ50mg/dayまで増加し、
24時間以内に平常値まで戻る。
・より大きな手術(例えば結腸切除術)では75-100mg/dayまで増加し、
24時間から48時間で正常化する。
・さらに大きな手術(例えば食道手術や心臓手術)では、
200-500mg/dayまで増加する。
・ただし術翌日には200mg/day未満となることが多い。
・そもそもステロイドカバーは必要か。
・侵襲の大きな手術を受ける患者でも常用量のステロイドで十分?
・炎症性腸疾患に対する手術を受ける患者に
常用量のステロイドのみを投与した後向きコホート研究
(Surgery 2012; 152:158.)
→血管作動薬や追加ステロイドの投与を必要とするような
循環変動は生じなかった。
・同じグループが2014年に発表したRCT(N=92)(Ann Surg 2014; 259:32.)
→常用量のみを投与した群とヒドロコルチゾン100mg×3回/dayを投与した群で
循環動態に差はなかった。
→現時点では周術期のステロイド投与による副作用よりも、
副腎不全のリスクを考慮してステロイドカバーは必要であるという意見の方が多い。
「ステロイドカバーについて」
・ステロイド使用患者における注意点
・ステロイドが適応となる原疾患に対する麻酔計画
→例えば・・・
・関節リウマチ患者の挿管困難に対する気道確保
・気管支喘息に対する発作予防
・血液疾患による汎血球減少に対する対策
・ステロイド長期投与に伴う副作用の管理
→例えば・・・
・耐糖能異常
・易感染性
・ステロイド分泌抑制に対する補充(ステロイドカバー)
・まずは床下部-下垂体-副腎系(HPA系)を復習
・ストレスによりHPA系はpositive feedbackでcortisolを産生
・産生されるcortisolは8-10mg/day程度。
・cortisolは内因性も外因性も含めてHPA系にnegative feedbackをかける。
・ストレス下でのcortisol分泌量
・minor surgery→50mg/day
・greater surgical stress→75-150mg/day、まれに200mg/day以上
・二次性副腎機能低下症
・ステロイドはnegative feedbackによりHPA系を抑制する。
→CRH、ACTHの分泌が抑制される。
→それらの刺激を受けなくなった副腎皮質は萎縮する。
→何らかのストレスを受けてCRHやACTHが分泌されても
委縮した副腎皮質からは十分量のコルチゾールが分泌されないため、
副腎不全を呈することがある。
・周術期の二次性副腎不全の報告(1950年代)
・34歳男性。関節リウマチに対して
50mg/dayのコルチゾンを8ヶ月にわたり投与。
股関節形成術後ショックに陥り、術後3時間で死亡。
・20歳女性。関節リウマチに対して
75mg/dayのプレドニゾンを8ヶ月にわたり投与。
膝関節の術後ショックに陥り、術後6時間で死亡。
→いずれも病理学的所見で両副腎の萎縮、腺組織の顕著な変性を認めた。
→副腎不全が死因と考えられた。
→ステロイドカバーの必要性が提唱されるようになった。
・HPA系の評価
・intermediate patientsにはHPA系の評価を行うことを推奨する
・まず早朝コルチゾール基礎値でスクリーニングを行う。
・cortisol<5μg/dL
→HPA系抑制の可能性が高いためステロイドカバー行う
・cortisol>10μg/dL
→HPA系抑制の可能性は低いため常用量のみで可
・cortisol 5 to 10μg/dL
→追加検査を行うかempiricにステロイドカバーを行う
・早朝コルチゾール基礎値でグレーゾーンと判定された場合
→追加検査として迅速ACTH負荷試験を行う。
・迅速ACTH負荷試験
→ACTHを投与することでHPA系の下流にある副腎皮質の機能を調べる
・ACTH製剤(コートロシン®)250μg投与
→30分後 cortisol<18μg/dL→副腎機能低下あり
cortisol>18μg/dL→副腎機能正常
・ステロイドの内服期間が3w未満の患者
→用量にかかわらずステロイドカバーは必要ない。
・3w以上、PSL換算で1日20mg以上内服
→ステロイドカバーが必要。
・3w以上、1日5-20mg内服
→HPA系の抑制状態を評価するための検査を行うか、
empiricにステロイドカバーを行う。
・吸入ステロイドは?
・吸入ステロイドを使用中の患者の早朝コルチゾール基礎値(13研究)や
尿中コルチゾール(21研究)について調べた研究のメタアナリシス
(Arch Intern Med 1999; 159:941.)
→750μg/day以上のフルチカゾン(フルタイド)、
1500μg/day以上のブデソニド(パルミコート)、べクロメタゾン、
トリアムシノロンの吸入でHPA系の抑制が確認された。
・UpToDateでは?
→750μg/day以上のフルチカゾンや
1500μg/day以上のフルチカゾン以外の吸入ステロイドを
3週間以上使用している患者
→術前にHPA系の評価を行うよう勧めている。
・外用ステロイドは?
・Class Iの外用ステロイドを2g/day以上使うとHPA系が抑制される可能性。
(J Am Acad Dermatol. 2006; 54:1.)
・UpToDateではClass I-IIIの外用ステロイドを2g/day以上、
3週間以上使用した場合は術前にHPA系の評価を行うことを勧めている。
・ちなみに0.5gで両手掌に塗布する分量に相当するため、
体幹等にも塗るのであれば2g/dayはそれほど多い量ではなさそう。
・何をどれだけ投与するか?
・かつてはヒドロコルチゾンを術前、術中、術後に100mgずつ計300mgを
手術当日に投与しその後徐々に減量。
→この投与量は大手術を受けた正常患者の血中コルチゾール最高値を
上回るように設定
→多くの患者にとっては過量投与。
・副作用として血圧上昇、水分貯留、消化性潰瘍、
創傷治癒遅延、感染の増加などが多数報告された。
・周術期のステロイド補充量
・一般的に手術侵襲の大きさによって決めることが多い。
・健常人でのコルチゾール分泌量を参考とする。
・小手術では健常人ではコルチゾールの分泌はおよそ50mg/dayまで増加し、
24時間以内に平常値まで戻る。
・より大きな手術(例えば結腸切除術)では75-100mg/dayまで増加し、
24時間から48時間で正常化する。
・さらに大きな手術(例えば食道手術や心臓手術)では、
200-500mg/dayまで増加する。
・ただし術翌日には200mg/day未満となることが多い。
・そもそもステロイドカバーは必要か。
・侵襲の大きな手術を受ける患者でも常用量のステロイドで十分?
・炎症性腸疾患に対する手術を受ける患者に
常用量のステロイドのみを投与した後向きコホート研究
(Surgery 2012; 152:158.)
→血管作動薬や追加ステロイドの投与を必要とするような
循環変動は生じなかった。
・同じグループが2014年に発表したRCT(N=92)(Ann Surg 2014; 259:32.)
→常用量のみを投与した群とヒドロコルチゾン100mg×3回/dayを投与した群で
循環動態に差はなかった。
→現時点では周術期のステロイド投与による副作用よりも、
副腎不全のリスクを考慮してステロイドカバーは必要であるという意見の方が多い。
硬膜外麻酔について
初期研修医勉強会 担当:K先生
「硬膜外麻酔について」
・August Karl Gustav Bier
(24 November 1861 – 12 March 1949)
・コカインによる脊髄くも膜下麻酔を世界で初めて外科手術に(1898年)
・脊麻と硬麻
・世界初の硬膜外麻酔はスペインのFide Pagesによる腰部硬膜外麻酔(1921)
・脊麻も硬麻も局所麻酔の一種(区域麻酔)
・背中からの麻酔であることは似ているが違いを把握することが大事
・局所麻酔薬と神経線維
・ブロックされる順番は
→交感神経>温覚>痛覚>触覚>圧覚>運動繊維
・神経線維のブロックはその太さやミエリン鞘の有無に影響される。
・局所麻酔薬によるブロックされやすさは原則、
・有髄神経<無髄神経
・神経線維が太い<細い
・運動をつかさどるA-α繊維
→髄性で繊維も太いためブロックされにくい。
・位置覚などの固有知覚を司るA-α、A-β繊維
→太いのでブロックされにくい。
・痛覚は有髄性で比較的細いA-δデルタ繊維と無髄で細いC繊維が司っている
→ブロックされやすい。
・神経線維でもっともブロックされやすいのは?
→自律神経節前繊維であるB繊維。
・ただし文献によってはC繊維よりも
Aδ、Aβ繊維の方がブロックされやすいとしているものもある。
・分離麻酔と分節麻酔
・硬膜外麻酔において
・分離麻酔:麻酔薬の濃度を変えて遮断する神経種類(太さ)を変える
Ex)リドカインは0.5%で交感神経、1%で知覚神経、
1.5-2%で運動神経を遮断(筋弛緩)
・分節麻酔:麻酔薬の容量を変えて遮断する神経レベル(範囲)を変える
Ex)1分節0.5mL~2mLと人によって異なる
・脊麻、硬麻の合併症
・血圧低下、徐脈、硬膜穿刺、局所麻酔薬中毒、くも膜下腔注入、血管内注入など。
・血圧低下や徐脈
→起きてから対処するのではなく起きるものとして考える。
→施行前の十分な輸液と昇圧薬とアトロピンの準備、酸素投与が重要。
・硬膜外カテーテル挿入後にテストドーズ
→1-2%リドカイン3mLを試しに注入
→くも膜下投与でないことを確かめる。
・この時に20万倍アドレナリンを添加したものを入れた場合に
心拍数が20/分増加すれば血管内投与であることが確認できる。
・術後合併症
・頭痛(硬膜穿刺後頭痛)、馬尾症候群、脳神経麻痺、硬膜外血腫、
硬膜外膿瘍、神経損傷、髄膜刺激症状、髄膜炎、尿閉など
・硬膜穿刺後頭痛頭痛
→脊麻後頭痛と呼ばれ術後1~2日ごろに発症します。
・硬膜外麻酔の硬膜の誤穿刺では必発で若年女性に多い。
・安静臥床、輸液負荷が必要。
・難治性の場合は自己血パッチ。
・馬尾症候群
→脊髄くも膜下麻酔後の歌詞運動麻痺、会陰部の知覚異常、
膀胱直腸障害を症状とする。
・局所麻酔薬の神経毒性が主な病因とされる。
・近年は毒性が低いものを使うようになり頻度は減少している。
・その他低髄液圧によって外転神経麻痺による複視を起こすことも。
・硬膜外血腫は近年抗凝固療法の広まりと共に増加している、
・古いデータでは十万例に一人というデータもあるが、
実際には最も多いと推測されている。
・遷延する尿閉は一過性の無菌性髄膜炎によるものとされ
2~3日で軽快することが多い。
・硬膜外麻酔の利点
・持続投与が可能で長時間手術も可能
・術後疼痛管理が可能
・ブロックの範囲の調節性が高い
→他のオピオイド全身投与よりも優れた疼痛管理
→交感神経系ブロックや周術期免疫能の維持により患者の予後を改善?
「硬膜外麻酔について」
・August Karl Gustav Bier
(24 November 1861 – 12 March 1949)
・コカインによる脊髄くも膜下麻酔を世界で初めて外科手術に(1898年)
・脊麻と硬麻
・世界初の硬膜外麻酔はスペインのFide Pagesによる腰部硬膜外麻酔(1921)
・脊麻も硬麻も局所麻酔の一種(区域麻酔)
・背中からの麻酔であることは似ているが違いを把握することが大事
・局所麻酔薬と神経線維
・ブロックされる順番は
→交感神経>温覚>痛覚>触覚>圧覚>運動繊維
・神経線維のブロックはその太さやミエリン鞘の有無に影響される。
・局所麻酔薬によるブロックされやすさは原則、
・有髄神経<無髄神経
・神経線維が太い<細い
・運動をつかさどるA-α繊維
→髄性で繊維も太いためブロックされにくい。
・位置覚などの固有知覚を司るA-α、A-β繊維
→太いのでブロックされにくい。
・痛覚は有髄性で比較的細いA-δデルタ繊維と無髄で細いC繊維が司っている
→ブロックされやすい。
・神経線維でもっともブロックされやすいのは?
→自律神経節前繊維であるB繊維。
・ただし文献によってはC繊維よりも
Aδ、Aβ繊維の方がブロックされやすいとしているものもある。
・分離麻酔と分節麻酔
・硬膜外麻酔において
・分離麻酔:麻酔薬の濃度を変えて遮断する神経種類(太さ)を変える
Ex)リドカインは0.5%で交感神経、1%で知覚神経、
1.5-2%で運動神経を遮断(筋弛緩)
・分節麻酔:麻酔薬の容量を変えて遮断する神経レベル(範囲)を変える
Ex)1分節0.5mL~2mLと人によって異なる
・脊麻、硬麻の合併症
・血圧低下、徐脈、硬膜穿刺、局所麻酔薬中毒、くも膜下腔注入、血管内注入など。
・血圧低下や徐脈
→起きてから対処するのではなく起きるものとして考える。
→施行前の十分な輸液と昇圧薬とアトロピンの準備、酸素投与が重要。
・硬膜外カテーテル挿入後にテストドーズ
→1-2%リドカイン3mLを試しに注入
→くも膜下投与でないことを確かめる。
・この時に20万倍アドレナリンを添加したものを入れた場合に
心拍数が20/分増加すれば血管内投与であることが確認できる。
・術後合併症
・頭痛(硬膜穿刺後頭痛)、馬尾症候群、脳神経麻痺、硬膜外血腫、
硬膜外膿瘍、神経損傷、髄膜刺激症状、髄膜炎、尿閉など
・硬膜穿刺後頭痛頭痛
→脊麻後頭痛と呼ばれ術後1~2日ごろに発症します。
・硬膜外麻酔の硬膜の誤穿刺では必発で若年女性に多い。
・安静臥床、輸液負荷が必要。
・難治性の場合は自己血パッチ。
・馬尾症候群
→脊髄くも膜下麻酔後の歌詞運動麻痺、会陰部の知覚異常、
膀胱直腸障害を症状とする。
・局所麻酔薬の神経毒性が主な病因とされる。
・近年は毒性が低いものを使うようになり頻度は減少している。
・その他低髄液圧によって外転神経麻痺による複視を起こすことも。
・硬膜外血腫は近年抗凝固療法の広まりと共に増加している、
・古いデータでは十万例に一人というデータもあるが、
実際には最も多いと推測されている。
・遷延する尿閉は一過性の無菌性髄膜炎によるものとされ
2~3日で軽快することが多い。
・硬膜外麻酔の利点
・持続投与が可能で長時間手術も可能
・術後疼痛管理が可能
・ブロックの範囲の調節性が高い
→他のオピオイド全身投与よりも優れた疼痛管理
→交感神経系ブロックや周術期免疫能の維持により患者の予後を改善?
2017年6月7日水曜日
専攻医(後期研修医)募集!
神戸市立医療センター中央市民病院・麻酔科では、新・麻酔科専門医研修プログラムに対応した平成30年度採用の専攻医(後期研修医)を募集しています。
研修プログラムにおいて責任基幹施設である神戸市立医療センター中央市民病院は神戸市の基幹病院であると同時に、救急救命センターを併設する救急病院であり、小児外科・小児心臓外科を除くほぼ全科の麻酔管理に対応しています。麻酔科専攻医は現在12名であり、当院の手術室、集中治療室の実働部隊としての中央診療部門の核心を担っています。時にはハードな日々もあるとは思いますが、経験可能症例数、指導体制の充実度は国内有数の研修施設であり、麻酔科医としての臨床能力をつけるには最適の病院であると自負しています。なお、神戸市立医療センター中央市民病院・麻酔科専門医研修プログラムにおける病院群は以下の通りです。
責任基幹施設
・神戸市立医療センター中央市民病院(神戸市中央区)
基幹研修施設
・神戸市立医療センター西市民病院(神戸市長田区)
・西神戸医療センター(神戸市西区)
・岐阜県総合医療センター
関連研修施設
・兵庫県立こども病院
・神戸大学医学部附属病院(神戸市中央区)
・京都大学医学部附属病院
希望があれば研修の全てを神戸市内で完結することが可能であるのが当院プログラムの特徴です。4年間の研修期間を神戸市在住のまま、引っ越しや長距離通勤なしで過ごすことができるのは大きなメリットと思います。
また当院麻酔科の特徴として、手術部門に隣接して麻酔科管理型ICU(G-ICU)を有しており、心臓大血管手術をはじめとする大手術の術後管理、内科的重症患者、院内急変患者の治療を麻酔科主体で行なっている点があります。専攻医は2年次、および3年次に集中治療部に専従し、集中治療を学び、経験することとなります。当院麻酔科における集中治療研修で、集中治療専門医の習得に必要な集中治療勤務歴を満たすことが可能です。
朝の麻酔科ミーティングも当院麻酔科の特徴です。毎朝、日々の業務が始まる前に全員集合での勉強会が開催され、麻酔、集中治療、TEE、神経ブロック、症例フィードバックなど、麻酔科ローテーション中の研修医の先生も加えて発表&質疑応答が行われ、全員で知識を深め、共有しています。
充実したスタッフ構成のため、オンオフがはっきりしていることも当科の特徴です。夜間は麻酔科当直(麻酔部門2人、集中治療部門1人)が緊急手術、集中治療に対応するため、非当直日は仕事が終われば完全duty freeです。夜間呼び出されることはありません。また当直明けも可能な限り早く帰れるよう努力しています(だいたい午前中には解放です)。
忙しい病院ですが、麻酔科スタッフ29名、協力して、お互いから刺激を受けながら日々の業務に勤しんでいます。神戸市の高度医療、救急医療の第一線を担う当院麻酔科で研鑽を担いたいという志の高い先生方の応募を期待しています。是非一度見学にお越しください。
研修医の先生の見学は随時受け付けています。麻酔部門中心、集中治療部門中心、どちらも、など希望があればお伝え下さい。もちろん医学生、後期研修医の先生、その他ベテランの先生方の見学も歓迎しています。お待ちしております。
■見学申し込みなど、お問い合せはこちらへ。
麻酔科部長 美馬 裕之
hmima■kcho.jp (■を@に変換してご送信ください。)
研修プログラムにおいて責任基幹施設である神戸市立医療センター中央市民病院は神戸市の基幹病院であると同時に、救急救命センターを併設する救急病院であり、小児外科・小児心臓外科を除くほぼ全科の麻酔管理に対応しています。麻酔科専攻医は現在12名であり、当院の手術室、集中治療室の実働部隊としての中央診療部門の核心を担っています。時にはハードな日々もあるとは思いますが、経験可能症例数、指導体制の充実度は国内有数の研修施設であり、麻酔科医としての臨床能力をつけるには最適の病院であると自負しています。なお、神戸市立医療センター中央市民病院・麻酔科専門医研修プログラムにおける病院群は以下の通りです。
責任基幹施設
・神戸市立医療センター中央市民病院(神戸市中央区)
基幹研修施設
・神戸市立医療センター西市民病院(神戸市長田区)
・西神戸医療センター(神戸市西区)
・岐阜県総合医療センター
関連研修施設
・兵庫県立こども病院
・神戸大学医学部附属病院(神戸市中央区)
・京都大学医学部附属病院
希望があれば研修の全てを神戸市内で完結することが可能であるのが当院プログラムの特徴です。4年間の研修期間を神戸市在住のまま、引っ越しや長距離通勤なしで過ごすことができるのは大きなメリットと思います。
また当院麻酔科の特徴として、手術部門に隣接して麻酔科管理型ICU(G-ICU)を有しており、心臓大血管手術をはじめとする大手術の術後管理、内科的重症患者、院内急変患者の治療を麻酔科主体で行なっている点があります。専攻医は2年次、および3年次に集中治療部に専従し、集中治療を学び、経験することとなります。当院麻酔科における集中治療研修で、集中治療専門医の習得に必要な集中治療勤務歴を満たすことが可能です。
朝の麻酔科ミーティングも当院麻酔科の特徴です。毎朝、日々の業務が始まる前に全員集合での勉強会が開催され、麻酔、集中治療、TEE、神経ブロック、症例フィードバックなど、麻酔科ローテーション中の研修医の先生も加えて発表&質疑応答が行われ、全員で知識を深め、共有しています。
充実したスタッフ構成のため、オンオフがはっきりしていることも当科の特徴です。夜間は麻酔科当直(麻酔部門2人、集中治療部門1人)が緊急手術、集中治療に対応するため、非当直日は仕事が終われば完全duty freeです。夜間呼び出されることはありません。また当直明けも可能な限り早く帰れるよう努力しています(だいたい午前中には解放です)。
忙しい病院ですが、麻酔科スタッフ29名、協力して、お互いから刺激を受けながら日々の業務に勤しんでいます。神戸市の高度医療、救急医療の第一線を担う当院麻酔科で研鑽を担いたいという志の高い先生方の応募を期待しています。是非一度見学にお越しください。
研修医の先生の見学は随時受け付けています。麻酔部門中心、集中治療部門中心、どちらも、など希望があればお伝え下さい。もちろん医学生、後期研修医の先生、その他ベテランの先生方の見学も歓迎しています。お待ちしております。
■見学申し込みなど、お問い合せはこちらへ。
麻酔科部長 美馬 裕之
hmima■kcho.jp (■を@に変換してご送信ください。)
超緊急帝王切開シミュレーション
当院で年に2度開催されている
超緊急帝王切開シミュレーションが先日開催されました。
今回は病棟の双胎妊娠の妊婦さんに対して、
超緊急帝王切開が発令されたとの想定で、
産婦人科、麻酔科、新生児科、手術室が合同で
シミュレーションに臨みました。
超緊急帝王切開シミュレーションが先日開催されました。
今回は病棟の双胎妊娠の妊婦さんに対して、
超緊急帝王切開が発令されたとの想定で、
産婦人科、麻酔科、新生児科、手術室が合同で
シミュレーションに臨みました。
手術室入室
物品も開封しています。
産婦人科病棟からも多数の見学者
手術室看護師も多数参加しました。
終了後は検討会。
担当された先生、お疲れ様でした。
2017年4月19日水曜日
Postoperative Nausea and Vomiting
初期研修医勉強会 担当:H先生
「Postoperative Nausea and Vomiting」
・術後嘔吐の発生率は約30%、術後嘔気の発生率は50%
→高リスク患者においてはPONVの発生率は80%!
・PONVは患者にとって不快
→さらに早期離床を妨げ退院の遅れや再入院の原因となる。
→PONVの発生率を低下させることが医療費の削減にまでつながる。
・嘔吐中枢は延髄網様体にある。
→種々の求心性刺激に対して嘔吐を起こす。
・嘔吐を引き起こす求心路にはおよそ5つの経路がある。
①セロトニン(5-HT)によって活性化される化学受容器
または機械的受容器から入り迷走神経を介する経路
②前庭迷路系から第Ⅷ脳神経を介する経路
③視覚中枢からの経路
④辺縁系を介する経路
⑤延髄の最後野にある化学受容器引金帯(CTZ)を介する経路
・PONV予防
・PONVのメカニズムは明らかにされていない。
・複数の受容体が関わっていることが考えられる。
・患者要因
・女性 (OR:2.57)
・PONVの既往 (OR:2.09)
・非喫煙者 (OR:1.82)
・乗り物酔いしやすい (OR:1.77)
・年齢 (OR:0.88,10歳上がるごとに)
・手術因子
・一般的にPONVのリスクとなる手術と言われている手術
→腹腔鏡下手術、開腹/開胸術、形成、婦人科、脳外科、
眼科(特に斜視手術)、泌尿器科、頭頸部手術など
・腹腔鏡下手術、婦人科手術、胆嚢摘出術は独立したPONVのrisk factor
・手術所要時間>60分でPONV発生率が上昇
・麻酔因子
・全身麻酔
・吸入麻酔;容量依存性に発症率が上昇
・亜酸化窒素(笑気)
・術後のオピオイド使用
(術中のオピオイド使用は要因とはならない)
→麻酔方法を工夫してみる
・全身麻酔
→可能な症例は局所麻酔下で手術を行う;発生率1/9に
・吸入(揮発性)麻酔
→プロポフォールによるTIVAを行う
高リスク群において、PONVの発生率が約25%低下
・亜酸化窒素(笑気)
→使用しない
・術後のオピオイド使用
→使用量を最小限に留める
・NSAIDsによる鎮痛、局所麻酔薬のみによる硬膜外鎮痛など
・予防薬
・セロトニン受容体拮抗薬
・腸管からの迷走神経刺激に基づく
セロトニン分泌による嘔吐中枢の刺激を遮断
・嘔気よりも嘔吐に対してより効果を持つ
(POV;NNT=6、PON;NNT=7)
・副作用
・セロトニン症候群
・QT延長作用
→容量依存性。
先天性QT延長症候群の患者では避けるべき。
不整脈のリスクが高い患者においてはECGモニターを。
・5-HT3拮抗薬は最もcommonなPONV対策である@アメリカ
→しかし、薬価が高価(\4,290/4mg)であり、
その上日本では抗がん剤投与時以外は保険適応外である
・手術終了時に4mg投与することが推奨されている
・デキサメタゾン
・PONVの発生を約25%予防する (NNT=4)
・この結果はどの手術様式や全身/脊髄麻酔のいずれにもあてはまる
・PONV予防のメカニズムははっきりとはわかっていない。
・おそらくは手術に起因する炎症を減らすためであると言われている。
・日本では保険適応外=適応外使用 (cf. \97/1A)
・経静脈的に4~5mgを麻酔導入時に投与する。
→4~5mgの投与と8~10mg投与はPONV予防の有効性は同等であった。
・副作用について
→臨床的に重度な高血糖や創部感染の頻度は増加しない
→しかしIGTやDM、肥満患者では8mg投与で
投与後6~12時間に高血糖が生じるという研究があり、
糖尿病の患者に投与するのは相対的禁忌である
(4~5mgの投与が推奨されているのは、上記も要因となっている。)
・一度生じたPONVの治療には予防投与時ほど有効ではない
・ドロペリドール
・中枢神経系においてドパミン、GABAの伝達を阻害。
・CTZにおいて受容体を遮断することにより、制吐作用を発現。
・オンダンセトロンと有効性は同等(NNT=5)
・手術の最後に投与することが推奨されている:0.625~1.25mg IV
・日本では保険適応外=適応外使用
・副作用
・QT延長作用:QT延長症候群の患者ではTdPに至る可能性あり
→2001年にFDAで警告が発せられて以降、
第一選択ではなくなった
→短時間での使用なら問題ない、
オンダンセトロンとQT延長作用について
差異はないなどの見解もある。
→現在も多くの国で用いられている
・間代性けいれん
・ニューロキニン受容体拮抗薬
・ニューロキニンは前嘔吐(pro-emetic)物質である
・術後~24時間のPONV予防効果ではオンダンセトロンと同等である。
・術後24~48時間では、嘔吐予防にオンダンセトロンより有用である。
・新しい薬剤のため、他の薬剤と比較し研究が少ない??
・日本において抗癌剤使用患者に用いられることはあるが、
PONVに対しては保険適応外である。
・抗コリン薬
・正確な機序は判明していない。
・経皮スコポラミンがPONVの予防に用いられている。
・作用発現が遅いため、PONVの治療には適さない。
・効果発現までに2~4時間かかるため、麻酔開始の2~4時間前に貼る
・オンダンセトロン、ドロペリドールと同等の効果をもつという研究あり
・副作用
→鎮静、視覚異常、ドライマウス、めまい
→閉塞性緑内障の患者への使用は禁忌
・やはり、日本での保険適応はない…
・ドパミン受容体拮抗薬
・嘔気時に10mg(1A) IVが適応となっている
→メトクロプラミドは制吐作用が弱く、
10mgの投与ではPONVの発症率の低下につながらないという研究も。
・20mg以上の投与で効果が認められ、容量依存性に効果が上昇する。
→しかし大量投与については疑問が残る。
→これに代わる薬剤がないので日本では依然用いられている
・非薬物療法
・輸液
→適切量の輸液がPONVの発生を減少させる!?
→晶質液と膠質液との間に差異はない
→全身状態や手術法など全般を考慮して行うかを決定する。
・ツボ刺激
→P6(Pericardium 6;内関)というツボに
針刺激や圧迫刺激を加えるとPONVの予防効果がある。
・P6;長掌筋腱と橈側手根屈筋腱の間で
手首のしわから3 横指(2インチ)中枢側にある。
・麻酔導入前後のいずれに刺激しても効果に差異はない
・リスクに対する介入
・risk factorなし
・PONV予防薬の投与は必要ない
・しかし嘔吐の合併の可能性の手術を行う場合は予防薬の適応
・risk factor1つ
・予防薬の単一剤投与
・デキサメサゾン、アプレピタント、経皮スコポラミンは
長時間作用効果がありPONVの発生を減少させる
・risk factor複数
・2,3の薬剤を併用。
・可能であれば吸入麻酔薬の使用を回避=TIVA
・術後のオピオイド使用を最小限にとどめる
・発症後の治療について
・予防ほどの有効性はない。
・セロトニン受容体拮抗薬が最も一般的に用いられており、
十分な研究が行われている唯一の有効な治療薬と言われている。
・デキサメサゾン、ドロペリドールも一定の効果がある。
・日本では適応がなくメトクロプラミドが用いられている。
・予防治療を行ったのにも関わらずPONVが進行した場合は、
別の作用機序の薬剤を選択することが推奨されている。
「Postoperative Nausea and Vomiting」
・術後嘔吐の発生率は約30%、術後嘔気の発生率は50%
→高リスク患者においてはPONVの発生率は80%!
・PONVは患者にとって不快
→さらに早期離床を妨げ退院の遅れや再入院の原因となる。
→PONVの発生率を低下させることが医療費の削減にまでつながる。
・嘔吐中枢は延髄網様体にある。
→種々の求心性刺激に対して嘔吐を起こす。
・嘔吐を引き起こす求心路にはおよそ5つの経路がある。
①セロトニン(5-HT)によって活性化される化学受容器
または機械的受容器から入り迷走神経を介する経路
②前庭迷路系から第Ⅷ脳神経を介する経路
③視覚中枢からの経路
④辺縁系を介する経路
⑤延髄の最後野にある化学受容器引金帯(CTZ)を介する経路
・PONV予防
・PONVのメカニズムは明らかにされていない。
・複数の受容体が関わっていることが考えられる。
・患者要因
・女性 (OR:2.57)
・PONVの既往 (OR:2.09)
・非喫煙者 (OR:1.82)
・乗り物酔いしやすい (OR:1.77)
・年齢 (OR:0.88,10歳上がるごとに)
・手術因子
・一般的にPONVのリスクとなる手術と言われている手術
→腹腔鏡下手術、開腹/開胸術、形成、婦人科、脳外科、
眼科(特に斜視手術)、泌尿器科、頭頸部手術など
・腹腔鏡下手術、婦人科手術、胆嚢摘出術は独立したPONVのrisk factor
・手術所要時間>60分でPONV発生率が上昇
・麻酔因子
・全身麻酔
・吸入麻酔;容量依存性に発症率が上昇
・亜酸化窒素(笑気)
・術後のオピオイド使用
(術中のオピオイド使用は要因とはならない)
→麻酔方法を工夫してみる
・全身麻酔
→可能な症例は局所麻酔下で手術を行う;発生率1/9に
・吸入(揮発性)麻酔
→プロポフォールによるTIVAを行う
高リスク群において、PONVの発生率が約25%低下
・亜酸化窒素(笑気)
→使用しない
・術後のオピオイド使用
→使用量を最小限に留める
・NSAIDsによる鎮痛、局所麻酔薬のみによる硬膜外鎮痛など
・予防薬
・セロトニン受容体拮抗薬
・腸管からの迷走神経刺激に基づく
セロトニン分泌による嘔吐中枢の刺激を遮断
・嘔気よりも嘔吐に対してより効果を持つ
(POV;NNT=6、PON;NNT=7)
・副作用
・セロトニン症候群
・QT延長作用
→容量依存性。
先天性QT延長症候群の患者では避けるべき。
不整脈のリスクが高い患者においてはECGモニターを。
・5-HT3拮抗薬は最もcommonなPONV対策である@アメリカ
→しかし、薬価が高価(\4,290/4mg)であり、
その上日本では抗がん剤投与時以外は保険適応外である
・手術終了時に4mg投与することが推奨されている
・デキサメタゾン
・PONVの発生を約25%予防する (NNT=4)
・この結果はどの手術様式や全身/脊髄麻酔のいずれにもあてはまる
・PONV予防のメカニズムははっきりとはわかっていない。
・おそらくは手術に起因する炎症を減らすためであると言われている。
・日本では保険適応外=適応外使用 (cf. \97/1A)
・経静脈的に4~5mgを麻酔導入時に投与する。
→4~5mgの投与と8~10mg投与はPONV予防の有効性は同等であった。
・副作用について
→臨床的に重度な高血糖や創部感染の頻度は増加しない
→しかしIGTやDM、肥満患者では8mg投与で
投与後6~12時間に高血糖が生じるという研究があり、
糖尿病の患者に投与するのは相対的禁忌である
(4~5mgの投与が推奨されているのは、上記も要因となっている。)
・一度生じたPONVの治療には予防投与時ほど有効ではない
・ドロペリドール
・中枢神経系においてドパミン、GABAの伝達を阻害。
・CTZにおいて受容体を遮断することにより、制吐作用を発現。
・オンダンセトロンと有効性は同等(NNT=5)
・手術の最後に投与することが推奨されている:0.625~1.25mg IV
・日本では保険適応外=適応外使用
・副作用
・QT延長作用:QT延長症候群の患者ではTdPに至る可能性あり
→2001年にFDAで警告が発せられて以降、
第一選択ではなくなった
→短時間での使用なら問題ない、
オンダンセトロンとQT延長作用について
差異はないなどの見解もある。
→現在も多くの国で用いられている
・間代性けいれん
・ニューロキニン受容体拮抗薬
・ニューロキニンは前嘔吐(pro-emetic)物質である
・術後~24時間のPONV予防効果ではオンダンセトロンと同等である。
・術後24~48時間では、嘔吐予防にオンダンセトロンより有用である。
・新しい薬剤のため、他の薬剤と比較し研究が少ない??
・日本において抗癌剤使用患者に用いられることはあるが、
PONVに対しては保険適応外である。
・抗コリン薬
・正確な機序は判明していない。
・経皮スコポラミンがPONVの予防に用いられている。
・作用発現が遅いため、PONVの治療には適さない。
・効果発現までに2~4時間かかるため、麻酔開始の2~4時間前に貼る
・オンダンセトロン、ドロペリドールと同等の効果をもつという研究あり
・副作用
→鎮静、視覚異常、ドライマウス、めまい
→閉塞性緑内障の患者への使用は禁忌
・やはり、日本での保険適応はない…
・ドパミン受容体拮抗薬
・嘔気時に10mg(1A) IVが適応となっている
→メトクロプラミドは制吐作用が弱く、
10mgの投与ではPONVの発症率の低下につながらないという研究も。
・20mg以上の投与で効果が認められ、容量依存性に効果が上昇する。
→しかし大量投与については疑問が残る。
→これに代わる薬剤がないので日本では依然用いられている
・非薬物療法
・輸液
→適切量の輸液がPONVの発生を減少させる!?
→晶質液と膠質液との間に差異はない
→全身状態や手術法など全般を考慮して行うかを決定する。
・ツボ刺激
→P6(Pericardium 6;内関)というツボに
針刺激や圧迫刺激を加えるとPONVの予防効果がある。
・P6;長掌筋腱と橈側手根屈筋腱の間で
手首のしわから3 横指(2インチ)中枢側にある。
・麻酔導入前後のいずれに刺激しても効果に差異はない
・リスクに対する介入
・risk factorなし
・PONV予防薬の投与は必要ない
・しかし嘔吐の合併の可能性の手術を行う場合は予防薬の適応
・risk factor1つ
・予防薬の単一剤投与
・デキサメサゾン、アプレピタント、経皮スコポラミンは
長時間作用効果がありPONVの発生を減少させる
・risk factor複数
・2,3の薬剤を併用。
・可能であれば吸入麻酔薬の使用を回避=TIVA
・術後のオピオイド使用を最小限にとどめる
・発症後の治療について
・予防ほどの有効性はない。
・セロトニン受容体拮抗薬が最も一般的に用いられており、
十分な研究が行われている唯一の有効な治療薬と言われている。
・デキサメサゾン、ドロペリドールも一定の効果がある。
・日本では適応がなくメトクロプラミドが用いられている。
・予防治療を行ったのにも関わらずPONVが進行した場合は、
別の作用機序の薬剤を選択することが推奨されている。
GICUで使うお薬あれこれ
ICU勉強会 担当 M先生
「GICUで使うお薬あれこれ」
・GICUでよく使うお薬を改めてまとめてみました。
・アセトアミノフェン
・50%鎮痛力価:NNT 3.5(NSAIDsは2-3程度)
・1回1,000mgまで、4-6時間おきに投与、最大4g/日まで投与可能
(アルコール依存症、低栄養患者には投与量1日2g以下にする)
・天井効果があり1回量1,000mg以上を投与しても効果は増大しない
→天井効果がないのは強オピオイドのみである。
・POAF予防薬
・POAFについて
・開心術後の20-50%に発症(CABG:約30%,弁置換術:約40%)
・胸部外科手術でも0.6-3.6%程度は生じる
・術後死亡率の増加につながる
・周術期脳血管障害、急性腎障害、心不全のリスク
・POAFリスク
・高齢者
・COPD
・弁膜症手術
・緊急手術
・低心機能(EF<30%)
・IABP挿入
・腎機能障害(eGFR<15ml/min/1.73m2)
・使われるお薬として・・・
・βブロッカー
→ACCP 2005, CCS2010, ACCF/AHA/HRS2011の
いずれのガイドラインでも第1選択となっている。
→術前に投与されている場合は術後も継続する。
・アミオダロン
→HR<60, sBP<100, 徐脈性不整脈など
βブロッカーが使いにくい場合に考慮される。
・術後抗血小板薬
・アスピリン
・CABGにおいて・・・
・SVGグラフトの開存率を有意に改善する。
・内胸動脈グラフトの開存率の改善は示されていない。
→もともと10年開存率≧90%と高いため
・術後イベント(心筋梗塞・脳梗塞・腎不全)の抑制が示されている。
・術後24時間以内には再開すべき。
・TAVI後はDAPTを導入する。
・スタチン
・適応は?
・ASCVD(atherosclerotic cardiovascular disease)既往
・LDL-C≧190mg/dL
・40-75歳のDM患者
・10年-ASCVDリスク≧7.5%以上
・鼻腔MRSA治療薬
・術前鼻腔MRSA検査の適応
→ルーチンでの検査は推奨されない
・MRSAハイリスク患者
→MRSA感染既往、最近の医療・福祉施設の入院・入所歴、
血液透析など
・重篤・難治性感染のハイリスク手術
(心臓手術・人工関節置換術)を施行する患者
・バンコマイシン(VCM)のSSI予防効果
(vs. βラクタム抗菌薬)
・MRSA→0.44(p=0.05)
・MSSA→2.79(p<0 .001="" p=""> ・緑膿菌→0.96(P=0.95
→MRSA陰性ならCEZのみ(VCMは不要)
→MRSA陽性ならVCMは有効だが抗MSSAにCEZも必要
・ストレス潰瘍の予防
・潰瘍を予防する目的
→ICU患者の75%-100%は入室後24時間以内に粘膜病変をきたし、
自然経過ではその5-25%が出血に発展する。
→重症患者において消化管出血が起きた場合、
致死率は20-30%に達すると言われる。
→しかし胃酸を抑制することにより感染症を発症しやすくなる
・潰瘍予防を推奨
・凝固異常(PLT<50,000/mm3, PT-INR>1.5)
・48時間以上の人工呼吸器管理
・1年以内に消化管潰瘍・出血をきたしている
・GCS≦10
・熱傷面積>35%
・肝部分切除
・多発外傷(injury severity score≧16)、
・肝不全
・脊髄外傷
・肝・腎移植、
・敗血症
・1週間以上のICU入室
・6日以上の潜血
・ヒドロコルチゾン250mg/day以上のステロイド投与
・H2RA vs PPI
・PPIの方が臨床的に重要な消化管出血を減少させるという研究が多い。
・医療関連肺炎の発生率はPPIの方が多いとされる研究が多い。
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「GICUで使うお薬あれこれ」
・GICUでよく使うお薬を改めてまとめてみました。
・アセトアミノフェン
・50%鎮痛力価:NNT 3.5(NSAIDsは2-3程度)
・1回1,000mgまで、4-6時間おきに投与、最大4g/日まで投与可能
(アルコール依存症、低栄養患者には投与量1日2g以下にする)
・天井効果があり1回量1,000mg以上を投与しても効果は増大しない
→天井効果がないのは強オピオイドのみである。
・POAF予防薬
・POAFについて
・開心術後の20-50%に発症(CABG:約30%,弁置換術:約40%)
・胸部外科手術でも0.6-3.6%程度は生じる
・術後死亡率の増加につながる
・周術期脳血管障害、急性腎障害、心不全のリスク
・POAFリスク
・高齢者
・COPD
・弁膜症手術
・緊急手術
・低心機能(EF<30%)
・IABP挿入
・腎機能障害(eGFR<15ml/min/1.73m2)
・使われるお薬として・・・
・βブロッカー
→ACCP 2005, CCS2010, ACCF/AHA/HRS2011の
いずれのガイドラインでも第1選択となっている。
→術前に投与されている場合は術後も継続する。
・アミオダロン
→HR<60, sBP<100, 徐脈性不整脈など
βブロッカーが使いにくい場合に考慮される。
・術後抗血小板薬
・アスピリン
・CABGにおいて・・・
・SVGグラフトの開存率を有意に改善する。
・内胸動脈グラフトの開存率の改善は示されていない。
→もともと10年開存率≧90%と高いため
・術後イベント(心筋梗塞・脳梗塞・腎不全)の抑制が示されている。
・術後24時間以内には再開すべき。
・TAVI後はDAPTを導入する。
・スタチン
・適応は?
・ASCVD(atherosclerotic cardiovascular disease)既往
・LDL-C≧190mg/dL
・40-75歳のDM患者
・10年-ASCVDリスク≧7.5%以上
・鼻腔MRSA治療薬
・術前鼻腔MRSA検査の適応
→ルーチンでの検査は推奨されない
・MRSAハイリスク患者
→MRSA感染既往、最近の医療・福祉施設の入院・入所歴、
血液透析など
・重篤・難治性感染のハイリスク手術
(心臓手術・人工関節置換術)を施行する患者
・バンコマイシン(VCM)のSSI予防効果
(vs. βラクタム抗菌薬)
・MRSA→0.44(p=0.05)
・MSSA→2.79(p<0 .001="" p=""> ・緑膿菌→0.96(P=0.95
→MRSA陰性ならCEZのみ(VCMは不要)
→MRSA陽性ならVCMは有効だが抗MSSAにCEZも必要
・ストレス潰瘍の予防
・潰瘍を予防する目的
→ICU患者の75%-100%は入室後24時間以内に粘膜病変をきたし、
自然経過ではその5-25%が出血に発展する。
→重症患者において消化管出血が起きた場合、
致死率は20-30%に達すると言われる。
→しかし胃酸を抑制することにより感染症を発症しやすくなる
・潰瘍予防を推奨
・凝固異常(PLT<50,000/mm3, PT-INR>1.5)
・48時間以上の人工呼吸器管理
・1年以内に消化管潰瘍・出血をきたしている
・GCS≦10
・熱傷面積>35%
・肝部分切除
・多発外傷(injury severity score≧16)、
・肝不全
・脊髄外傷
・肝・腎移植、
・敗血症
・1週間以上のICU入室
・6日以上の潜血
・ヒドロコルチゾン250mg/day以上のステロイド投与
・H2RA vs PPI
・PPIの方が臨床的に重要な消化管出血を減少させるという研究が多い。
・医療関連肺炎の発生率はPPIの方が多いとされる研究が多い。
臨床工学技士さん主催、人工心肺ハンズオン
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2017年4月12日水曜日
2017年度新体制
当院麻酔科・集中治療部は新たに美馬部長の下、
新体制となって2017年度を迎えることとなりました。
今年も東は京都、西は沖縄から、
新たに5名の専攻医(後期研修医)を迎えることとなりました。
新専攻医たちもスタッフ医師の指導の下、
すでに手術室で活躍しています。
新たに来て頂いた2名のスタッフに加え、
西市民病院から研修に来られた後期研修医の先生1名、
および産休から復帰された2名のドクターを加えて、
さらに強力な体制となりました。
今後ともスタッフ一同、
若手ドクターの教育にはさらに力を入れていこうと思います。
新体制となって2017年度を迎えることとなりました。
今年も東は京都、西は沖縄から、
新たに5名の専攻医(後期研修医)を迎えることとなりました。
新専攻医たちもスタッフ医師の指導の下、
すでに手術室で活躍しています。
新たに来て頂いた2名のスタッフに加え、
西市民病院から研修に来られた後期研修医の先生1名、
および産休から復帰された2名のドクターを加えて、
さらに強力な体制となりました。
今後ともスタッフ一同、
若手ドクターの教育にはさらに力を入れていこうと思います。
2017年3月25日土曜日
NCPRアルゴリズム2015年ガイドラインを復習
麻酔科勉強会 担当:M先生
「NCPRアルゴリズム2015年ガイドラインを復習」
・JRCガイドラインでの初期評価
・早期産であるか
・呼吸・啼泣の消失
・筋緊張の低下
→いずれも認めない場合はルーチンケアへ移行する。
→清拭・保温しカンガルーケアなどへ
・蘇生行為の介入及び評価
・基本はABCアプローチ
・Air way
・Breathing
・Circulation
・評価は自発呼吸の出現と心拍数>100
・新生児の蘇生が必要となる頻度
・正期産時では誕生後10-30秒後に自発呼吸が開始される。
・85%が自然発生し
・10%が刺激により開始され
・3%に陽圧呼吸が必要となり
・2%に挿管管理が必要となり
・0.1%に胸骨圧迫や薬剤投与を要する
→約15%が何らかの補助が必要で5%では陽圧呼吸以上の介入が必要
・Apgar Score
・1952年ヴァージニア・アプガーにより考案されたスコア
・5つの項目×0-2点でスコアリング
・7点以上が正常
・4-6点が軽度仮死
・3点以下が重症仮死と判断される。
・出生後1分時および5分時に評価
・1分時スコアは出生時の仮死の有無の評価
・5分時は神経学的予後の判断指標。(<7 p=""> ・児の評価として簡便に使用できるが・・・
・チアノーゼはそもそも正期産時でも回復に数分かかる。
・神経学的予後の指標となるが個々の症例でかなり振れ幅が多い
・JRCおよびAHA/AAP/ILCORのガイドライン
→Apgar scoreのみで新生児の蘇生の評価を行うべきではない。
・1分値と5分値の比較による蘇生行為に対する反応性の評価としては有能
・蘇生行為のSTEP
・呼吸
・清拭・保温・刺激・吸引・気道確保
・羊水の清拭・保温による低体温の予防
・上気道吸引
・刺激
→足底をさする・背中をさするなど
→これ以上の刺激はかえって児に損傷をきたすため避ける。
・呼吸補助
・PEEP/IPAPを適宜行いサポートする。
・蘇生の介入は自発呼吸の有無と
中心性チアノーゼの有無および心拍数で判断
・その後のモニタリングはチアノーゼの度合いよりも
SpO2および自発呼吸の出現の有無および心拍数で評価する。
・目標等すべきSpO2
・出生後30秒の時点での自発呼吸の有無を評価
・心拍数>100で
・1分値>60
・3分値>70
・5分値>80
・10分値>90
・あくまで目標でありSpO2がうまく測定できない場合や
この値以上でも自発呼吸がなく
PR<100 p=""> ・呼吸回数は40-60/minを目標とする。
・FiO2は前述のSpO2を目標としつつ
・正期産であればRA
・早期産であれば 0.21-0.3で開始する。
→なるべく高濃度酸素は避けて開始。
自発呼吸の回復などがみられなければ適宜FiO2をup。
・圧は25-30前後までで
・挿管
・循環
・胸骨圧迫
・心拍数60/min 以下でcpr開始
・3:1で1サイクル2秒
・胸郭包み込み両拇指圧迫法にて行う
・胸骨下1/3を1/3へこませる
・薬剤投与
・Epinephrine 0.01mg-0.03mg/kg iv
・もしくは0.05mg-0.10mg/kg 気管内投与
・アルゴリズムで変わったこと
・評価に皮膚の色調がなくなった。
・心拍数の評価にパルスオキシメーターだけでなく
ECGモニタリングが加わった。
・パルスだと徐脈をオーバートリアージする可能性がある。
・ECGのほうが情報量が多い
・その情報を活用できるか不明
100>7>
「NCPRアルゴリズム2015年ガイドラインを復習」
・JRCガイドラインでの初期評価
・早期産であるか
・呼吸・啼泣の消失
・筋緊張の低下
→いずれも認めない場合はルーチンケアへ移行する。
→清拭・保温しカンガルーケアなどへ
・蘇生行為の介入及び評価
・基本はABCアプローチ
・Air way
・Breathing
・Circulation
・評価は自発呼吸の出現と心拍数>100
・新生児の蘇生が必要となる頻度
・正期産時では誕生後10-30秒後に自発呼吸が開始される。
・85%が自然発生し
・10%が刺激により開始され
・3%に陽圧呼吸が必要となり
・2%に挿管管理が必要となり
・0.1%に胸骨圧迫や薬剤投与を要する
→約15%が何らかの補助が必要で5%では陽圧呼吸以上の介入が必要
・Apgar Score
・1952年ヴァージニア・アプガーにより考案されたスコア
・5つの項目×0-2点でスコアリング
・7点以上が正常
・4-6点が軽度仮死
・3点以下が重症仮死と判断される。
・出生後1分時および5分時に評価
・1分時スコアは出生時の仮死の有無の評価
・5分時は神経学的予後の判断指標。(<7 p=""> ・児の評価として簡便に使用できるが・・・
・チアノーゼはそもそも正期産時でも回復に数分かかる。
・神経学的予後の指標となるが個々の症例でかなり振れ幅が多い
・JRCおよびAHA/AAP/ILCORのガイドライン
→Apgar scoreのみで新生児の蘇生の評価を行うべきではない。
・1分値と5分値の比較による蘇生行為に対する反応性の評価としては有能
・蘇生行為のSTEP
・呼吸
・清拭・保温・刺激・吸引・気道確保
・羊水の清拭・保温による低体温の予防
・上気道吸引
・刺激
→足底をさする・背中をさするなど
→これ以上の刺激はかえって児に損傷をきたすため避ける。
・呼吸補助
・PEEP/IPAPを適宜行いサポートする。
・蘇生の介入は自発呼吸の有無と
中心性チアノーゼの有無および心拍数で判断
・その後のモニタリングはチアノーゼの度合いよりも
SpO2および自発呼吸の出現の有無および心拍数で評価する。
・目標等すべきSpO2
・出生後30秒の時点での自発呼吸の有無を評価
・心拍数>100で
・1分値>60
・3分値>70
・5分値>80
・10分値>90
・あくまで目標でありSpO2がうまく測定できない場合や
この値以上でも自発呼吸がなく
PR<100 p=""> ・呼吸回数は40-60/minを目標とする。
・FiO2は前述のSpO2を目標としつつ
・正期産であればRA
・早期産であれば 0.21-0.3で開始する。
→なるべく高濃度酸素は避けて開始。
自発呼吸の回復などがみられなければ適宜FiO2をup。
・圧は25-30前後までで
・挿管
・循環
・胸骨圧迫
・心拍数60/min 以下でcpr開始
・3:1で1サイクル2秒
・胸郭包み込み両拇指圧迫法にて行う
・胸骨下1/3を1/3へこませる
・薬剤投与
・Epinephrine 0.01mg-0.03mg/kg iv
・もしくは0.05mg-0.10mg/kg 気管内投与
・アルゴリズムで変わったこと
・評価に皮膚の色調がなくなった。
・心拍数の評価にパルスオキシメーターだけでなく
ECGモニタリングが加わった。
・パルスだと徐脈をオーバートリアージする可能性がある。
・ECGのほうが情報量が多い
・その情報を活用できるか不明
100>7>
胸骨正中切開後の心肺蘇生
麻酔科勉強会 担当:O先生
「胸骨正中切開術後の心肺蘇生」
・心臓手術後の心停止は原因が限定されていることが多い
・Ope室では道具、薬剤が揃っている
→以上2つの理由により蘇生の可能性が高い
・しかし胸郭内構造物(胸骨ワイヤーなど)や心血管縫合部の脆弱性のため、
外傷リスク(二次性外傷)が高いことを念頭に置く
・通常のCPRとは蘇生方法が異なることを知っておく必要がある。
・心停止、蘇生の頻度
・入院患者における予期せぬ心停止の頻度は術後、非術後問わず0.4~0.5%
・心臓手術後は0.7~2.9%と心停止の頻度が高い
・非心臓手術後の心停止後の死亡率は70~80%
・心臓手術後の心停止後の死亡率は20%~60%←低い
・症例数が少ない(150症例/年)病院では死亡率が高い傾向にある。
・当院の症例数:開心術300症例/年
→心臓手術後の心停止患者は蘇生できる可能性が十分にある。
・心臓手術後の心停止のタイミング
・術後24時間以内に起こる。
・ICUで起こることがほとんどである。
→ICUのスタッフ、麻酔科医は対応に慣れている。
・搬送中の心停止は比較的稀(時間が短いから)。
→手術室のスタッフ、麻酔科医は対応に慣れていない。
・当院においても数年に1度の頻度でope室で起こる。
・手術室プロトコールの作成、シミュレーショントレーニングの必要がある。
・心停止の原因
・VFおよびVT:約70%
・Asys(心静止):約17%
・PEA(無脈性電気活動):約13%
・除細動で2分以内に心拍再開した場合の生存率は39%、
それ以降は22%まで低下する。
→VF,VTの場合は速やかに除細動を行うべき。
・心停止の原因(非VT/VF)
・nonVF/VTの心停止の原因4Hs4Ts
・4Hs
→hypoxia、hypovolemia、hypo/hyperkalemia、hypothermia
・4Ts
→tamponade、tension pneumothorax、thromboembolism、toxin
・EACTSガイドライン
・通常のCPRとの違い
・VT/VFの場合
→1分以内に除細動が行える場合は胸骨圧迫を即座に行うべきではない
・徐脈性不整脈から心停止になった場合まずはペーシング。
・ルーチンにアドレナリン(ボスミン)の投与を行うべきではない。
・蘇生の見込みが乏しい場合は再開胸を行う。
・PCPS(V-A ECMO)の使用も考慮。
・胸骨圧迫すると・・・
・心臓血管外科手術では二次性外傷のリスクが高い
・致死的頻度を検討した研究はない
・ただし・・・
・ペーシングで蘇生の見込みが乏しい場合
・ただちに除細動やペーシングができない場合、
・除細動やペーシングの適応ではない場合
→すみやかに胸骨圧迫を行う
・手術室での対応
・手の空いている人はCPA call。
・再開胸の準備は速やかにしておく。
・除細動、ペーシングが遅れるなら胸骨圧迫、BLSを開始する。
・再開胸の準備
・再開胸の準備は、なるべく速やかに開始する。
・再開胸に最低限必要な道具5つは以下のとおりである
①胸部外科用一体型滅菌ドレープ
②メス
③ワイヤーカッター
④ワイヤー持針器または鉗子
⑤開胸器
・これらの道具はICUにあるミニ再開胸セットに全て含まれている。
・その他吸引器、吸引チューブ、滅菌ガーゼも有用、ほぼ必須
・再開胸までの時間を短縮
・心停止後再開胸までの時間が10分未満の場合
→10分以上の症例と比較して生存率が48%vs12%(P≦0.001)と
優位に高いとする報告がある。
・再開胸までの時間を短縮することは非常に重要である。
・特に再開胸の準備は再開胸するしないに関わらず行っておくことが重要。
・機械的循環補助の考慮
・再開胸時には機械時補助循環が必要である可能性
→人工心肺とV-A ECMOが選択肢にある。
・ブラッドアクセスのことを考慮するとV-A ECMOが第一選択肢として挙がりそう。
・少なくとも手術室蘇生には6人必要
①胸骨圧迫係
・胸骨圧迫をA-line波形を見ながら100回/minで行う。
心臓血管外科医が行うことが望ましいかもしれない。
②気道、呼吸管理係
・純酸素にしpeepをoff。バックマスクに切り替え、
呼吸音(特に気胸)をcheck。チューブや回路に異常がないか確認。
特別な理由がない限り、麻酔科医が担当。
③除細動係
・除細動を接続・設定し、実行する。
④チームリーダー係
・CPRがプロトコールに従って行われていること、
各役割に人が割り当てられ、
適切に動いているかを確認、指示出しを行う。麻酔科指導医?
⑤薬剤、シリンジを運ぶ人
⑥コーディネーター(調整役)
・VT/VFの場合
・まずは2相性(当院ope室の除細動は全て2相性)で
150Jで連続3回除細動を行う。
※連続3回とあるが、1回ごとに心電図波形checkを行い、
心拍再開時にはもちろん、除細動は終了する。(続けない)
・1分以内に除細動が行える場合は胸骨圧迫を即座に行うべきではない
・3回の除細動後も心拍再開しない場合は
2分ごとに除細動、波形checkを行い、BLSをただちに開始する。
・1分以内に除細動ができない場合は胸骨圧迫をためらうべきではない。
・除細動は単相性より二相性が安全かつ効果が同等もしくは高い
・除細動による成功率は1、2、3回目で78%,35%,14%と低下していく。
4回目以降は5%を切る。
→3回の除細動後は蘇生の見込みが乏しく再開胸が必要。
・Asysまたは高度徐脈の場合
・直ちにペーシングを行う。
→出力は最大。可能であれば設定はDDDもしくはDOO90bpm
・上記無効例もしくはすぐにペーシングできない場合は、BLSを直ちに開始する。
・続いてアトロピン3mg(←!)投与。
・ワイヤペーシングがない場合や無効例では体外式を考慮。
・心拍再開もしくは再開胸が始まるまでBLSを続ける。
・PEAの場合
・ペーシングを行っている場合は直ちにペーシングをOFFにし波形をcheck。
←VFがペーシングによって隠れている場合がある
・VFだった場合には除細動から始まるプロトコールへ。
・PEAだった場合はただちにBLSを開始。
→心拍再開もしくは再開胸が始まるまで続ける。
・補足
・再開胸時には開胸心臓マッサージも考慮してよい
→A-lineで確認しながら100bpmで収縮期血圧>60mmHg
・AHAにアトロピンの記載なし
・アドレナリン使用する場合は100μg-300μg
・胸骨部分切開、小開胸ポートアクセス手術、低侵襲冠動脈バイパス術後でも
本プロトコールでCPRを行うべきである。
・TAVIでも本プロトコールに従ってCPRを行った方がいいかもしれない。
・気道と換気について
・もし人工呼吸器で管理されている場合はFiO2:100%、PEEPはoff
・100%酸素のBVMに変更し、挿管チューブの位置とカフ圧をcheck。
←そのまま気胸や血胸の除外目的で両側の呼吸音を聴取
・緊張性気胸が疑われたら第2肋間鎖骨中線に太いカニューレを留置
・上級医の指示なしにアドレナリンを投与しない
・IABPが留置されている場合は圧トリガーに変更する
・除細動やペーシングが1分以内に開始できなければBLS
「胸骨正中切開術後の心肺蘇生」
・心臓手術後の心停止は原因が限定されていることが多い
・Ope室では道具、薬剤が揃っている
→以上2つの理由により蘇生の可能性が高い
・しかし胸郭内構造物(胸骨ワイヤーなど)や心血管縫合部の脆弱性のため、
外傷リスク(二次性外傷)が高いことを念頭に置く
・通常のCPRとは蘇生方法が異なることを知っておく必要がある。
・心停止、蘇生の頻度
・入院患者における予期せぬ心停止の頻度は術後、非術後問わず0.4~0.5%
・心臓手術後は0.7~2.9%と心停止の頻度が高い
・非心臓手術後の心停止後の死亡率は70~80%
・心臓手術後の心停止後の死亡率は20%~60%←低い
・症例数が少ない(150症例/年)病院では死亡率が高い傾向にある。
・当院の症例数:開心術300症例/年
→心臓手術後の心停止患者は蘇生できる可能性が十分にある。
・心臓手術後の心停止のタイミング
・術後24時間以内に起こる。
・ICUで起こることがほとんどである。
→ICUのスタッフ、麻酔科医は対応に慣れている。
・搬送中の心停止は比較的稀(時間が短いから)。
→手術室のスタッフ、麻酔科医は対応に慣れていない。
・当院においても数年に1度の頻度でope室で起こる。
・手術室プロトコールの作成、シミュレーショントレーニングの必要がある。
・心停止の原因
・VFおよびVT:約70%
・Asys(心静止):約17%
・PEA(無脈性電気活動):約13%
・除細動で2分以内に心拍再開した場合の生存率は39%、
それ以降は22%まで低下する。
→VF,VTの場合は速やかに除細動を行うべき。
・心停止の原因(非VT/VF)
・nonVF/VTの心停止の原因4Hs4Ts
・4Hs
→hypoxia、hypovolemia、hypo/hyperkalemia、hypothermia
・4Ts
→tamponade、tension pneumothorax、thromboembolism、toxin
・EACTSガイドライン
・通常のCPRとの違い
・VT/VFの場合
→1分以内に除細動が行える場合は胸骨圧迫を即座に行うべきではない
・徐脈性不整脈から心停止になった場合まずはペーシング。
・ルーチンにアドレナリン(ボスミン)の投与を行うべきではない。
・蘇生の見込みが乏しい場合は再開胸を行う。
・PCPS(V-A ECMO)の使用も考慮。
・胸骨圧迫すると・・・
・心臓血管外科手術では二次性外傷のリスクが高い
・致死的頻度を検討した研究はない
・ただし・・・
・ペーシングで蘇生の見込みが乏しい場合
・ただちに除細動やペーシングができない場合、
・除細動やペーシングの適応ではない場合
→すみやかに胸骨圧迫を行う
・手術室での対応
・手の空いている人はCPA call。
・再開胸の準備は速やかにしておく。
・除細動、ペーシングが遅れるなら胸骨圧迫、BLSを開始する。
・再開胸の準備
・再開胸の準備は、なるべく速やかに開始する。
・再開胸に最低限必要な道具5つは以下のとおりである
①胸部外科用一体型滅菌ドレープ
②メス
③ワイヤーカッター
④ワイヤー持針器または鉗子
⑤開胸器
・これらの道具はICUにあるミニ再開胸セットに全て含まれている。
・その他吸引器、吸引チューブ、滅菌ガーゼも有用、ほぼ必須
・再開胸までの時間を短縮
・心停止後再開胸までの時間が10分未満の場合
→10分以上の症例と比較して生存率が48%vs12%(P≦0.001)と
優位に高いとする報告がある。
・再開胸までの時間を短縮することは非常に重要である。
・特に再開胸の準備は再開胸するしないに関わらず行っておくことが重要。
・機械的循環補助の考慮
・再開胸時には機械時補助循環が必要である可能性
→人工心肺とV-A ECMOが選択肢にある。
・ブラッドアクセスのことを考慮するとV-A ECMOが第一選択肢として挙がりそう。
・少なくとも手術室蘇生には6人必要
①胸骨圧迫係
・胸骨圧迫をA-line波形を見ながら100回/minで行う。
心臓血管外科医が行うことが望ましいかもしれない。
②気道、呼吸管理係
・純酸素にしpeepをoff。バックマスクに切り替え、
呼吸音(特に気胸)をcheck。チューブや回路に異常がないか確認。
特別な理由がない限り、麻酔科医が担当。
③除細動係
・除細動を接続・設定し、実行する。
④チームリーダー係
・CPRがプロトコールに従って行われていること、
各役割に人が割り当てられ、
適切に動いているかを確認、指示出しを行う。麻酔科指導医?
⑤薬剤、シリンジを運ぶ人
⑥コーディネーター(調整役)
・VT/VFの場合
・まずは2相性(当院ope室の除細動は全て2相性)で
150Jで連続3回除細動を行う。
※連続3回とあるが、1回ごとに心電図波形checkを行い、
心拍再開時にはもちろん、除細動は終了する。(続けない)
・1分以内に除細動が行える場合は胸骨圧迫を即座に行うべきではない
・3回の除細動後も心拍再開しない場合は
2分ごとに除細動、波形checkを行い、BLSをただちに開始する。
・1分以内に除細動ができない場合は胸骨圧迫をためらうべきではない。
・除細動は単相性より二相性が安全かつ効果が同等もしくは高い
・除細動による成功率は1、2、3回目で78%,35%,14%と低下していく。
4回目以降は5%を切る。
→3回の除細動後は蘇生の見込みが乏しく再開胸が必要。
・Asysまたは高度徐脈の場合
・直ちにペーシングを行う。
→出力は最大。可能であれば設定はDDDもしくはDOO90bpm
・上記無効例もしくはすぐにペーシングできない場合は、BLSを直ちに開始する。
・続いてアトロピン3mg(←!)投与。
・ワイヤペーシングがない場合や無効例では体外式を考慮。
・心拍再開もしくは再開胸が始まるまでBLSを続ける。
・PEAの場合
・ペーシングを行っている場合は直ちにペーシングをOFFにし波形をcheck。
←VFがペーシングによって隠れている場合がある
・VFだった場合には除細動から始まるプロトコールへ。
・PEAだった場合はただちにBLSを開始。
→心拍再開もしくは再開胸が始まるまで続ける。
・補足
・再開胸時には開胸心臓マッサージも考慮してよい
→A-lineで確認しながら100bpmで収縮期血圧>60mmHg
・AHAにアトロピンの記載なし
・アドレナリン使用する場合は100μg-300μg
・胸骨部分切開、小開胸ポートアクセス手術、低侵襲冠動脈バイパス術後でも
本プロトコールでCPRを行うべきである。
・TAVIでも本プロトコールに従ってCPRを行った方がいいかもしれない。
・気道と換気について
・もし人工呼吸器で管理されている場合はFiO2:100%、PEEPはoff
・100%酸素のBVMに変更し、挿管チューブの位置とカフ圧をcheck。
←そのまま気胸や血胸の除外目的で両側の呼吸音を聴取
・緊張性気胸が疑われたら第2肋間鎖骨中線に太いカニューレを留置
・上級医の指示なしにアドレナリンを投与しない
・IABPが留置されている場合は圧トリガーに変更する
・除細動やペーシングが1分以内に開始できなければBLS
全身麻酔後の視機能障害
麻酔科勉強会 担当:O先生
「全身麻酔後の視機能障害」
・postoperative visual dysfunction:POVD
・非眼科手術後の視機能障害
・脊髄脊椎手術で0.03~0.2%、心臓血管外科手術で0.06~0.33%の発症率
・この発症率に含まれるのは失明および重度の視機能障害のみ
・無自覚や無症候性の視機能障害も含めるとさらに増える可能性もある
・POVDがなぜ問題か
・一度発生するとQOLの低下やリハビリの開始困難
→予後に影響しかねない
・症状の現れ方が軽微なことが多い
・麻酔科医や外科医がPOVDに精通していない
→診断が困難もしくは遅れる可能性がある
・発症機序
・実はあまり詳しくはわかっていない
・以前は眼圧の上昇が主な原因と考えられていた
・現在では
①外科的損傷
②虚血
③梗塞
の3つが主な原因と考えられている
・眼圧との関係
・眼圧の上昇とPOVDとの直接的な因果関係は
明らかになっていない
・頻度の最も多い虚血性視神経症では眼圧上昇や
網膜、脈絡膜の異常を認めないことが多い。
・しかし緑内障はPOVDのリスクファクターであるため、
眼圧を全く気にしなくても良いわけではない。
・POVDの分類
・原因によって、大きく3つに分けられ、更に細かく5つに分類
a)虚血性視神経症
①前部虚血性視神経症(AION)
②後部虚血性視神経症(PION)
b)網膜動脈閉塞症
③網膜中心動脈閉塞症
④網膜動脈分枝閉塞症
C)皮質盲
a)虚血性視神経症
・前部か後部かの他に動脈炎性か非動脈炎性かに分類。
・大半は非動脈炎性。腹臥位や脊髄脊椎手術に多い。
・症状は水平半盲、失明、中心暗点、対光反射の減弱、欠如など
①前部虚血性視神経症(AION)
・視神経乳頭や強膜管内の視神経が虚血になり発症
・視神経乳頭が障害
→眼底所見で視神経乳頭の蒼白や浮腫、視神経周囲の出血
・心臓血管手術ではPIONより多い
②後部虚血性視神経症(PION)
・脊髄脊椎手術後ではAIONより起こりやすい
・後部視神経は軟膜循環によって栄養
・PIONの病変部位は視神経乳頭より後ろに存在するため、
初期の眼底所見は正常である。
b)網膜動脈閉塞症
・心臓血管外科手術後に起こることがある。
・人工心肺後の塞栓も原因になる
・中心動脈型と動脈分枝型が存在する。
・対光反射の欠如もしくは減弱が起こることがある
・眼球筋機能不全などの眼球運動障害が起こることもある。
③網膜中心動脈閉塞症
・網膜全体の虚血により視力低下や失明が起こる。
・眼底検査では蒼白な網膜やチェリーレッド斑、
網脈動脈の狭小化が特徴的
・視機能の予後は悪く、視力の改善はほとんどない。
④網膜動脈分枝閉塞症
・塞栓などで閉塞した箇所から先の網膜だけ障害
・それ以外の網膜は正常に機能
・眼底検査では塞栓の存在や部分的な網膜の蒼白化を認める
・症状は虚血部分に相当する部位の視野欠損
・黄斑が正常であれば視力低下は起こりにくい
c)皮質盲
・外側膝状体、視放線、後頭葉の大脳視覚領に至る視経路の損傷に起因
・脳腫瘍(下垂体腫瘍、後頭葉腫瘍)、外科的損傷、虚血や梗塞が原因
・網膜~外側膝状体までの視経路は正常
→対光反射や眼底検査は正常
・空間認知および大きさと距離の関連性感覚の障害、
注視力の制限、視覚的威嚇への無反応が特徴的
・両側の後頭葉の損傷で完全盲、局所的な損傷で同側性半盲
・POVD発症後の対応
・初期の訴えは視野のぼやけと視力異常
・原則すぐに眼科医へコンサルトする。
・瞳孔反射、眼球運動、視野の確認を行っておく。
眼底検査、遠近調節反射、眼圧も可能であれば。
・麻薬によって瞳孔症状は見落とされる危険性あり
・皮質盲にはCTおよびMRIが有用
・治療
・虚血性視神経炎
→アセタゾラミド(網膜血流の増加)、
マンニトール、フロセミド
・網膜動脈閉塞症
→眼球マッサージ(緑内障で禁忌)、
アセタゾラミド、二酸化炭素吸入(血管拡張)
・皮質盲
→有用な薬物はない。進行の予防のみ
・これらはすべて十分な効果は立証されていない。
・視機能の予後は全体的に不良である。
→つまり最も重要なのはPOVDの予防にある。
・予防
・眼球への外的圧力を排除
・マスク換気時のマスクによる圧迫に気を付ける
・腹臥位手術でのヘッドレストの使用時に眼球位置確認
・眼球付近での外科医の腕の圧迫に気を付ける
・モニター類およびコードによる圧迫に気を付ける
・POVD予防のASA提言
・6.5時間以上の長時間手術、循環血液量の44.7%以上の出血を認める
手術の患者を高リスク患者と認める。
・高リスク患者では動脈圧モニタリング、
および中心静脈圧モニタリングが推奨される。
・眼球への直接的圧迫を回避し、
高リスク患者では頭を心臓より高い位置で
ニュートラルポジションを維持。
眼球に圧迫がないか、15分毎に確認する。
・複雑な脊椎手術を高リスク患者に施行する場合は
段階的手術法にすることも考慮
・高リスク患者の血圧管理は術前の24%以内の平均血圧、
または84mmHg以上の収縮期血圧を維持する。
・高リスク患者では輸液に関して血管内容量維持のため、
晶質液に加え、膠質液も使用する。
・高リスク患者ではHb>9.4g/dL、Ht>28%を維持する。
「全身麻酔後の視機能障害」
・postoperative visual dysfunction:POVD
・非眼科手術後の視機能障害
・脊髄脊椎手術で0.03~0.2%、心臓血管外科手術で0.06~0.33%の発症率
・この発症率に含まれるのは失明および重度の視機能障害のみ
・無自覚や無症候性の視機能障害も含めるとさらに増える可能性もある
・POVDがなぜ問題か
・一度発生するとQOLの低下やリハビリの開始困難
→予後に影響しかねない
・症状の現れ方が軽微なことが多い
・麻酔科医や外科医がPOVDに精通していない
→診断が困難もしくは遅れる可能性がある
・発症機序
・実はあまり詳しくはわかっていない
・以前は眼圧の上昇が主な原因と考えられていた
・現在では
①外科的損傷
②虚血
③梗塞
の3つが主な原因と考えられている
・眼圧との関係
・眼圧の上昇とPOVDとの直接的な因果関係は
明らかになっていない
・頻度の最も多い虚血性視神経症では眼圧上昇や
網膜、脈絡膜の異常を認めないことが多い。
・しかし緑内障はPOVDのリスクファクターであるため、
眼圧を全く気にしなくても良いわけではない。
・POVDの分類
・原因によって、大きく3つに分けられ、更に細かく5つに分類
a)虚血性視神経症
①前部虚血性視神経症(AION)
②後部虚血性視神経症(PION)
b)網膜動脈閉塞症
③網膜中心動脈閉塞症
④網膜動脈分枝閉塞症
C)皮質盲
a)虚血性視神経症
・前部か後部かの他に動脈炎性か非動脈炎性かに分類。
・大半は非動脈炎性。腹臥位や脊髄脊椎手術に多い。
・症状は水平半盲、失明、中心暗点、対光反射の減弱、欠如など
①前部虚血性視神経症(AION)
・視神経乳頭や強膜管内の視神経が虚血になり発症
・視神経乳頭が障害
→眼底所見で視神経乳頭の蒼白や浮腫、視神経周囲の出血
・心臓血管手術ではPIONより多い
②後部虚血性視神経症(PION)
・脊髄脊椎手術後ではAIONより起こりやすい
・後部視神経は軟膜循環によって栄養
・PIONの病変部位は視神経乳頭より後ろに存在するため、
初期の眼底所見は正常である。
b)網膜動脈閉塞症
・心臓血管外科手術後に起こることがある。
・人工心肺後の塞栓も原因になる
・中心動脈型と動脈分枝型が存在する。
・対光反射の欠如もしくは減弱が起こることがある
・眼球筋機能不全などの眼球運動障害が起こることもある。
③網膜中心動脈閉塞症
・網膜全体の虚血により視力低下や失明が起こる。
・眼底検査では蒼白な網膜やチェリーレッド斑、
網脈動脈の狭小化が特徴的
・視機能の予後は悪く、視力の改善はほとんどない。
④網膜動脈分枝閉塞症
・塞栓などで閉塞した箇所から先の網膜だけ障害
・それ以外の網膜は正常に機能
・眼底検査では塞栓の存在や部分的な網膜の蒼白化を認める
・症状は虚血部分に相当する部位の視野欠損
・黄斑が正常であれば視力低下は起こりにくい
c)皮質盲
・外側膝状体、視放線、後頭葉の大脳視覚領に至る視経路の損傷に起因
・脳腫瘍(下垂体腫瘍、後頭葉腫瘍)、外科的損傷、虚血や梗塞が原因
・網膜~外側膝状体までの視経路は正常
→対光反射や眼底検査は正常
・空間認知および大きさと距離の関連性感覚の障害、
注視力の制限、視覚的威嚇への無反応が特徴的
・両側の後頭葉の損傷で完全盲、局所的な損傷で同側性半盲
・POVD発症後の対応
・初期の訴えは視野のぼやけと視力異常
・原則すぐに眼科医へコンサルトする。
・瞳孔反射、眼球運動、視野の確認を行っておく。
眼底検査、遠近調節反射、眼圧も可能であれば。
・麻薬によって瞳孔症状は見落とされる危険性あり
・皮質盲にはCTおよびMRIが有用
・治療
・虚血性視神経炎
→アセタゾラミド(網膜血流の増加)、
マンニトール、フロセミド
・網膜動脈閉塞症
→眼球マッサージ(緑内障で禁忌)、
アセタゾラミド、二酸化炭素吸入(血管拡張)
・皮質盲
→有用な薬物はない。進行の予防のみ
・これらはすべて十分な効果は立証されていない。
・視機能の予後は全体的に不良である。
→つまり最も重要なのはPOVDの予防にある。
・予防
・眼球への外的圧力を排除
・マスク換気時のマスクによる圧迫に気を付ける
・腹臥位手術でのヘッドレストの使用時に眼球位置確認
・眼球付近での外科医の腕の圧迫に気を付ける
・モニター類およびコードによる圧迫に気を付ける
・POVD予防のASA提言
・6.5時間以上の長時間手術、循環血液量の44.7%以上の出血を認める
手術の患者を高リスク患者と認める。
・高リスク患者では動脈圧モニタリング、
および中心静脈圧モニタリングが推奨される。
・眼球への直接的圧迫を回避し、
高リスク患者では頭を心臓より高い位置で
ニュートラルポジションを維持。
眼球に圧迫がないか、15分毎に確認する。
・複雑な脊椎手術を高リスク患者に施行する場合は
段階的手術法にすることも考慮
・高リスク患者の血圧管理は術前の24%以内の平均血圧、
または84mmHg以上の収縮期血圧を維持する。
・高リスク患者では輸液に関して血管内容量維持のため、
晶質液に加え、膠質液も使用する。
・高リスク患者ではHb>9.4g/dL、Ht>28%を維持する。
2017年3月16日木曜日
冠動脈まとめ
麻酔科勉強会 担当:I先生
「冠動脈のまとめ」
・機能的冠血管分類
・太い伝導血管系
・冠動脈造影で見える。
・心外膜冠状動脈は太さ約300~5000μm。抵抗は少ない。
・細い抵抗血管系
・小動脈は太さ約100~250μm。心筋内を走行する。
・細動脈は太さ約10~100μm。最も抵抗が高い。
→毛細血管へ
・静脈系→冠静脈洞へ
・安静時の冠血流量は75〜80ml/100g/分(心拍出量の5%)
・心臓の酸素利用率は70〜80 %と高い
→腎臓・肝臓・脳の酸素利用率は10〜20%
・心筋酸素消費量が最大となる運動時,
→冠血流量は4〜5倍に達し 酸素利用率も90%近くになる
・心筋酸素需要バランス
・心筋酸素供給
・主に動脈血の酸素含量と
冠血流量(coronary blood flow:CBF)により規定される。
・酸素含量(mg/dl)
=Hb濃度×1.34×酸素飽和度/100+0.003×酸素分圧
・冠血流量
=冠血管床の圧較差(coronary perfusion pressure:CPP)
/冠血流抵抗(coronary vascular resistance:CVR)
・左室と右室への冠血流
→収縮期と拡張期の優位性に違いがある。
・左心室
→心筋壁が厚い。
→収縮期には心筋収縮により心筋内の小動脈や細動脈、
毛細血管が圧迫され血流が途絶する。
→拡張期には心筋の弛緩によりこれらの血管に対する
圧迫が解除され、急速に血流が再開する。
・右冠動脈は収縮期と拡張期どちらも血流が維持されている。
・冠血管床の圧格差
・左冠動脈の血流……拡張期優位のパターン
・大動脈拡張期圧が冠動脈の灌流圧として重要
・動脈硬化に伴う大動脈コンプライアンスの低下や大動脈閉鎖不全では
大動脈拡張期圧が低下し左冠動脈の循環に悪影響を及ぼす
・心拍数の増加により拡張期の著しい短縮が生じ、左室心筋への
灌流に大きな影響を及ぼす。
・右冠動脈の血流……収縮期と拡張期の両相パターン
・重篤な肺動脈高血圧など右室圧の上昇に伴い
収縮期の灌流圧は縮小し右冠動脈の収縮期血流は低下する。
・冠血管抵抗
・血液粘稠度
・冠動脈の収縮・拡張→①代謝性調節
②筋性調節
③血流調節・・・ここまで自己調節能
④自律神経系因子
⑤内分泌性因子
⑥血管内皮依存性調節因子
・冠動脈の血管外圧縮力による調整
・代謝性調節について
・アデノシン↑
・心筋内酸素分圧↓、二酸化炭素分圧↑
・乳酸↑
→冠血管抵抗を低下させる。
・冠動脈の血管外圧縮力による調整
・心内膜は収縮期に血管系が小さくなりやすい。
→心内膜の方が虚血に陥りやすい
・心筋酸素需要
・心拍数
・1心拍ごとに消費される酸素消費量に変化がない
→毎分の酸素需要量は心拍数の増加に比例して増加する
・交感神経系の亢進により心拍数が増加
→同時に心収縮力も増加する
→心拍数の増加以上に酸素消費量が増加している
・心収縮力
・壁応力
・Laplaceの法則
→球体の壁にかかる応力は内圧と球の半径に比例し、
壁厚に反比例する
→壁応力=圧×半径/(2×壁厚)
・これを心臓に置き換えると…
・壁応力=収縮期心室にかかる後負荷
・圧=収縮期に心室壁にかかるピークの貫壁性圧較差
・半径=拡張終期の心腔内の半径
・例えば左室肥大→壁厚↑→壁応力↓するが
心筋重量の増加で酸素消費量は増加
・例えば左室瘤→左室径↑+壁厚↓で
壁応力↑し酸素消費量は増加
・冠動脈疾患に対する治療
・安定冠動脈疾患に対する冠血行再建術
・初期積極的薬物治療
・経皮的冠動脈インターベンション(PCI)
・冠動脈バイパス術(CABG)
・PCI or CABG?
・SYTAX試験(2009年)
・冠動脈3枝病変または左冠動脈主幹部病変LMT(またはその両方)
を有する患者1800人を対象に、無作為割り付けでPCIとCABGを比較。
・術後1年時の死亡・心筋梗塞・脳梗塞・
再血行再建術の複合エンドポイント発生が、
PCIよりもCABGの方が低く、
3枝病変あるいは左冠動脈主幹部病変の
標準治療はCABGであると結論。
・OPCABGは有利か?
・OPCABからCCABへ移行例では30日死亡率4~7%と不良
・OPCABに優位に腎保護効果があるとする報告は少ない
「冠動脈のまとめ」
・機能的冠血管分類
・太い伝導血管系
・冠動脈造影で見える。
・心外膜冠状動脈は太さ約300~5000μm。抵抗は少ない。
・細い抵抗血管系
・小動脈は太さ約100~250μm。心筋内を走行する。
・細動脈は太さ約10~100μm。最も抵抗が高い。
→毛細血管へ
・静脈系→冠静脈洞へ
・安静時の冠血流量は75〜80ml/100g/分(心拍出量の5%)
・心臓の酸素利用率は70〜80 %と高い
→腎臓・肝臓・脳の酸素利用率は10〜20%
・心筋酸素消費量が最大となる運動時,
→冠血流量は4〜5倍に達し 酸素利用率も90%近くになる
・心筋酸素需要バランス
・心筋酸素供給
・主に動脈血の酸素含量と
冠血流量(coronary blood flow:CBF)により規定される。
・酸素含量(mg/dl)
=Hb濃度×1.34×酸素飽和度/100+0.003×酸素分圧
・冠血流量
=冠血管床の圧較差(coronary perfusion pressure:CPP)
/冠血流抵抗(coronary vascular resistance:CVR)
・左室と右室への冠血流
→収縮期と拡張期の優位性に違いがある。
・左心室
→心筋壁が厚い。
→収縮期には心筋収縮により心筋内の小動脈や細動脈、
毛細血管が圧迫され血流が途絶する。
→拡張期には心筋の弛緩によりこれらの血管に対する
圧迫が解除され、急速に血流が再開する。
・右冠動脈は収縮期と拡張期どちらも血流が維持されている。
・冠血管床の圧格差
・左冠動脈の血流……拡張期優位のパターン
・大動脈拡張期圧が冠動脈の灌流圧として重要
・動脈硬化に伴う大動脈コンプライアンスの低下や大動脈閉鎖不全では
大動脈拡張期圧が低下し左冠動脈の循環に悪影響を及ぼす
・心拍数の増加により拡張期の著しい短縮が生じ、左室心筋への
灌流に大きな影響を及ぼす。
・右冠動脈の血流……収縮期と拡張期の両相パターン
・重篤な肺動脈高血圧など右室圧の上昇に伴い
収縮期の灌流圧は縮小し右冠動脈の収縮期血流は低下する。
・冠血管抵抗
・血液粘稠度
・冠動脈の収縮・拡張→①代謝性調節
②筋性調節
③血流調節・・・ここまで自己調節能
④自律神経系因子
⑤内分泌性因子
⑥血管内皮依存性調節因子
・冠動脈の血管外圧縮力による調整
・代謝性調節について
・アデノシン↑
・心筋内酸素分圧↓、二酸化炭素分圧↑
・乳酸↑
→冠血管抵抗を低下させる。
・冠動脈の血管外圧縮力による調整
・心内膜は収縮期に血管系が小さくなりやすい。
→心内膜の方が虚血に陥りやすい
・心筋酸素需要
・心拍数
・1心拍ごとに消費される酸素消費量に変化がない
→毎分の酸素需要量は心拍数の増加に比例して増加する
・交感神経系の亢進により心拍数が増加
→同時に心収縮力も増加する
→心拍数の増加以上に酸素消費量が増加している
・心収縮力
・壁応力
・Laplaceの法則
→球体の壁にかかる応力は内圧と球の半径に比例し、
壁厚に反比例する
→壁応力=圧×半径/(2×壁厚)
・これを心臓に置き換えると…
・壁応力=収縮期心室にかかる後負荷
・圧=収縮期に心室壁にかかるピークの貫壁性圧較差
・半径=拡張終期の心腔内の半径
・例えば左室肥大→壁厚↑→壁応力↓するが
心筋重量の増加で酸素消費量は増加
・例えば左室瘤→左室径↑+壁厚↓で
壁応力↑し酸素消費量は増加
・冠動脈疾患に対する治療
・安定冠動脈疾患に対する冠血行再建術
・初期積極的薬物治療
・経皮的冠動脈インターベンション(PCI)
・冠動脈バイパス術(CABG)
・PCI or CABG?
・SYTAX試験(2009年)
・冠動脈3枝病変または左冠動脈主幹部病変LMT(またはその両方)
を有する患者1800人を対象に、無作為割り付けでPCIとCABGを比較。
・術後1年時の死亡・心筋梗塞・脳梗塞・
再血行再建術の複合エンドポイント発生が、
PCIよりもCABGの方が低く、
3枝病変あるいは左冠動脈主幹部病変の
標準治療はCABGであると結論。
・OPCABGは有利か?
・OPCABからCCABへ移行例では30日死亡率4~7%と不良
・OPCABに優位に腎保護効果があるとする報告は少ない
2017 SCCM/JSICM参加報告
ICU勉強会 担当:N先生
「2017 SCCM/JSICM参加報告」
・ハワイにて開催された2017 SCCM/JSICM
・1月21日-25日
・Research Snapshot Theaterは22日-24日
・Educational Sessionsは前後に多い!
・朝はそこそこ早い
・終わりはめちゃ早い!!
・Research Snapshot Theaterとは?
・スライドは事前登録制
・発表4分+質問→実際には時間は適当
・スライドは10-15枚
・should provide a summary of your abstract research
・beyond the 2,200 characters
・スライドを閲覧できる場所はない
・周囲がうるさい
・数字で見るSCCM
・RST9題×20ブース×4コマ×3日≒2000題
・Japan 80題 ≒ 4%
→Kobe City Medical Center General Hospital 5題
→日本の6%が当院!!
・Korea 37題
・China 32題
・Mexico 7題
・演題登録
・2016年8月上旬 演題締め切り
・2016年9月中旬 採択通知
・2016年12月下旬 当院予演会
・2017年1月2日 スライド登録締め切り
・2017年1月21日-25日 46th SCCM
・採択率は20-25% (by Dr. Brown)
・日本の応募数は500題ほど??
・80/500 →16%
・冬のハワイはアメリカ人にも大人気。例年の倍の演題応募
・来年は半減するでしょう
・感じたこと
・エビデンスのタネが2000題はある
・日々の回診で議論にあがるようなネタも多い
・うまい切り口を見つければ当院の臨床現場から発信できるはず
・確固たるエビデンスが示されているのは極々一部のみ
・極めてニッチな領域なら、
現代の医療の最前線に参加することも可能かも。
「2017 SCCM/JSICM参加報告」
・ハワイにて開催された2017 SCCM/JSICM
・1月21日-25日
・Research Snapshot Theaterは22日-24日
・Educational Sessionsは前後に多い!
・朝はそこそこ早い
・終わりはめちゃ早い!!
・Research Snapshot Theaterとは?
・スライドは事前登録制
・発表4分+質問→実際には時間は適当
・スライドは10-15枚
・should provide a summary of your abstract research
・beyond the 2,200 characters
・スライドを閲覧できる場所はない
・周囲がうるさい
・数字で見るSCCM
・RST9題×20ブース×4コマ×3日≒2000題
・Japan 80題 ≒ 4%
→Kobe City Medical Center General Hospital 5題
→日本の6%が当院!!
・Korea 37題
・China 32題
・Mexico 7題
・演題登録
・2016年8月上旬 演題締め切り
・2016年9月中旬 採択通知
・2016年12月下旬 当院予演会
・2017年1月2日 スライド登録締め切り
・2017年1月21日-25日 46th SCCM
・採択率は20-25% (by Dr. Brown)
・日本の応募数は500題ほど??
・80/500 →16%
・冬のハワイはアメリカ人にも大人気。例年の倍の演題応募
・来年は半減するでしょう
・感じたこと
・エビデンスのタネが2000題はある
・日々の回診で議論にあがるようなネタも多い
・うまい切り口を見つければ当院の臨床現場から発信できるはず
・確固たるエビデンスが示されているのは極々一部のみ
・極めてニッチな領域なら、
現代の医療の最前線に参加することも可能かも。
2017年2月22日水曜日
星状神経節ブロック
麻酔科勉強会 担当:T先生
「星状神経節ブロック」
・星状神経節とは
・交感神経節の1つ
・C7レベルにある。
・下頚神経節と第1胸神経節は80%の患者で癒合
→“星状神経節”
・長2.5cm、幅1cm、厚0.5cm。
・周辺組織
①前方
・頚動脈鞘、胸鎖乳突筋、鎖骨下動脈
②後方
・椎骨動脈、腕神経叢、頚長筋、横突起
③内側
・下甲状腺動脈、食道、椎前筋膜、椎体、胸管
④尾側
・肺
・何に効くのか
・疼痛
・Chronic regional pain syndrome
・幻肢痛
・ヘルペス後神経痛
・三叉神経痛
・群発頭痛、偏頭痛
・神経障害性疼痛
・狭心痛
・血管
・Raynaud病
・血栓症、塞栓症
・血管閉塞症
・脳梗塞
・凍傷
・その他
・多汗症
・ホットフラッシュ (乳癌)
・PTSD
・突発性難聴
・Bell麻痺
・不整脈 (QT延長症候群)
・手技
・頚部はやや伸展、少し対側に向ける
・胸鎖乳突筋、頚動脈を側方に寄せつつ、
Chassaignac結節 (輪状軟骨レベル、C6横突起)を触知する。
・気管-頚動脈鞘の間から針を刺入。
・C6 or C7に針を当て、1-2mm針を引いたところで薬液注入。
・Test dose (0.5-1mL程度の局所麻酔薬)
→0.2%ロピバカイン 5-10mL
・効果判定
・Horner徴候: 縮瞳、眼瞼下垂、眼球陥凹、発汗↓
・鼻づまり
・皮膚温度上昇 (1-3℃以上)
・皮膚電気抵抗上昇
・血流増加 (ドプラー法)
・注意
・上肢の交感神経ブロックは不完全になりやすい
・頭頚部への交感神経遠心性線維
→ほぼ全て星状神経節を通る
・上肢への交感神経遠心性線維
→T2-3から直接腕神経叢に入る繊維もある
・安全に施行するために
・透視下で施行。
・もし造影剤広がらないならば→筋内
・造影剤すぐ消える→血管内
・エコーガイド下
・神経刺激装置
・会話、嚥下禁止
・合併症
・血気胸
・気管穿刺
・食道穿刺
・椎骨動脈、頚動静脈、下甲状腺動脈の損傷や血管内投与
・胸管損傷→乳び胸
・感染
・横隔神経麻痺
・反回神経麻痺
・腕神経叢ブロック
・髄腔内、硬膜外に誤投与 →高位脊椎麻酔
・局所麻酔薬中毒
・徐脈や低血圧
・禁忌
・出血傾向、横隔神経麻痺、反回神経麻痺、両側ブロック、敗血症
・postsympathectomy syndrome
・30-50% (CRPS患者では40-50%)
・交感神経ブロック後に神経障害性疼痛出現、増悪
・ブロック手技時に内臓神経障害→体性痛として感作?
・治療
・抗てんかん薬
・三環系抗うつ薬
・硬膜外ブロックなど併用
・交感神経ブロックを繰り返す
・外科的交感神経遮断
「星状神経節ブロック」
・星状神経節とは
・交感神経節の1つ
・C7レベルにある。
・下頚神経節と第1胸神経節は80%の患者で癒合
→“星状神経節”
・長2.5cm、幅1cm、厚0.5cm。
・周辺組織
①前方
・頚動脈鞘、胸鎖乳突筋、鎖骨下動脈
②後方
・椎骨動脈、腕神経叢、頚長筋、横突起
③内側
・下甲状腺動脈、食道、椎前筋膜、椎体、胸管
④尾側
・肺
・何に効くのか
・疼痛
・Chronic regional pain syndrome
・幻肢痛
・ヘルペス後神経痛
・三叉神経痛
・群発頭痛、偏頭痛
・神経障害性疼痛
・狭心痛
・血管
・Raynaud病
・血栓症、塞栓症
・血管閉塞症
・脳梗塞
・凍傷
・その他
・多汗症
・ホットフラッシュ (乳癌)
・PTSD
・突発性難聴
・Bell麻痺
・不整脈 (QT延長症候群)
・手技
・頚部はやや伸展、少し対側に向ける
・胸鎖乳突筋、頚動脈を側方に寄せつつ、
Chassaignac結節 (輪状軟骨レベル、C6横突起)を触知する。
・気管-頚動脈鞘の間から針を刺入。
・C6 or C7に針を当て、1-2mm針を引いたところで薬液注入。
・Test dose (0.5-1mL程度の局所麻酔薬)
→0.2%ロピバカイン 5-10mL
・効果判定
・Horner徴候: 縮瞳、眼瞼下垂、眼球陥凹、発汗↓
・鼻づまり
・皮膚温度上昇 (1-3℃以上)
・皮膚電気抵抗上昇
・血流増加 (ドプラー法)
・注意
・上肢の交感神経ブロックは不完全になりやすい
・頭頚部への交感神経遠心性線維
→ほぼ全て星状神経節を通る
・上肢への交感神経遠心性線維
→T2-3から直接腕神経叢に入る繊維もある
・安全に施行するために
・透視下で施行。
・もし造影剤広がらないならば→筋内
・造影剤すぐ消える→血管内
・エコーガイド下
・神経刺激装置
・会話、嚥下禁止
・合併症
・血気胸
・気管穿刺
・食道穿刺
・椎骨動脈、頚動静脈、下甲状腺動脈の損傷や血管内投与
・胸管損傷→乳び胸
・感染
・横隔神経麻痺
・反回神経麻痺
・腕神経叢ブロック
・髄腔内、硬膜外に誤投与 →高位脊椎麻酔
・局所麻酔薬中毒
・徐脈や低血圧
・禁忌
・出血傾向、横隔神経麻痺、反回神経麻痺、両側ブロック、敗血症
・postsympathectomy syndrome
・30-50% (CRPS患者では40-50%)
・交感神経ブロック後に神経障害性疼痛出現、増悪
・ブロック手技時に内臓神経障害→体性痛として感作?
・治療
・抗てんかん薬
・三環系抗うつ薬
・硬膜外ブロックなど併用
・交感神経ブロックを繰り返す
・外科的交感神経遮断
顎関節脱臼
初期研修医勉強会 担当:初期研修医 H先生
「顎関節脱臼について」
・顎関節とは?
・下顎頭、下顎窩、関節結節によって構成される。
・開口時の顎関節の運動
→回転運動と滑走運動が組み合わさったもの。
・開口量が小さい場合
→下顎頭の回転運動が主体
・開口量が大きい場合
→前下方への滑走運動が組み合わさる。
・顎関節脱臼とは?
・下顎頭が下顎窩から外に出て顎関節運動範囲外にあり、
もとに戻らない状態。
・脱臼の分類
・両側性、片側性
・前方、後方、側方
・完全、不完全
・新鮮、陳旧性
・単純性、習慣性
・外傷性、非外傷性
・ほとんどが前方脱臼、それ以外は外傷により生じる。
→全身麻酔での挿管時に生じるのは前方脱臼。
・素因
・浅い下顎窩、平坦な下顎頭、
関節結節前方部の急な傾斜、下顎角の開大(long face)
・女性は男性に比べ下顎窩が浅いため脱臼しやすい。
・誘因
・欠伸、歯科治療時や麻酔挿管時の過度の開口、
外傷、咬合不全状態、下顎頸骨折…
・神経内科、精神科的疾患や脳腫瘍、向精神薬の服用、
パーキンソン病、脳血管疾患による運動麻痺、てんかん
→錐体外路症状を誘発し咀嚼筋の協調不全を引き起こすため。
・前方脱臼時の症状
・顎関節部疼痛
・顎運動制限
・閉口不能による咀嚼、発音、嚥下障害
・両側前方脱臼時の顔貌
・面長顔貌、両側耳前部の陥没、両側鼻唇溝の消失、
閉口不能による流唾(りゅうだ)。
・片側前方脱臼時の顔貌
・患側の耳前部の陥没、オトガイ部の健側偏位、
交叉咬合、開咬、患側鼻唇溝の消失。
・開口時の衝突、打撃などの下顎側方からの外力で発生する。
・診断
・ほとんどの場合X線撮影は行わない。
・顔貌所見のみで診断することが多い。
・診断が遅れる場合→陳旧性となる
・無歯顎など脱臼症状が著明でない場合
・全身状態の不良(意識障害等)
・精神障害
・他に優先すべき治療がある場合
・脱臼に気づいたら?
→まずは徒手整復
・関節結節の前上方に偏位した下顎頭を結節より下方へ押し下げる。
・Hippocrates法:患者の前方に立つ。
・Borchers法:患者の後方に立つ。
・陳旧性で徒手的整復が困難な場合は顎間ゴム牽引療法
・それでも整復不可能なら全身麻酔下に外科的治療が必要。
・下顎頭切除術が行われることもあるが、
術後顎変形症や顎関節強直症へ移行することがある。
・習慣性脱臼の治療法
・咬合療法
・スプリント療法
・チンキャップ
・顎間ゴム牽引法または顎間固定法
・関節腔内自己血注入法
・関節制動術
・軟組織に瘢痕を作って開口制限を図る。
・関節結節を高くして脱臼しにくくする。
→軟組織に瘢痕を作って開口制限を図る。
「顎関節脱臼について」
・顎関節とは?
・下顎頭、下顎窩、関節結節によって構成される。
・開口時の顎関節の運動
→回転運動と滑走運動が組み合わさったもの。
・開口量が小さい場合
→下顎頭の回転運動が主体
・開口量が大きい場合
→前下方への滑走運動が組み合わさる。
・顎関節脱臼とは?
・下顎頭が下顎窩から外に出て顎関節運動範囲外にあり、
もとに戻らない状態。
・脱臼の分類
・両側性、片側性
・前方、後方、側方
・完全、不完全
・新鮮、陳旧性
・単純性、習慣性
・外傷性、非外傷性
・ほとんどが前方脱臼、それ以外は外傷により生じる。
→全身麻酔での挿管時に生じるのは前方脱臼。
・素因
・浅い下顎窩、平坦な下顎頭、
関節結節前方部の急な傾斜、下顎角の開大(long face)
・女性は男性に比べ下顎窩が浅いため脱臼しやすい。
・誘因
・欠伸、歯科治療時や麻酔挿管時の過度の開口、
外傷、咬合不全状態、下顎頸骨折…
・神経内科、精神科的疾患や脳腫瘍、向精神薬の服用、
パーキンソン病、脳血管疾患による運動麻痺、てんかん
→錐体外路症状を誘発し咀嚼筋の協調不全を引き起こすため。
・前方脱臼時の症状
・顎関節部疼痛
・顎運動制限
・閉口不能による咀嚼、発音、嚥下障害
・両側前方脱臼時の顔貌
・面長顔貌、両側耳前部の陥没、両側鼻唇溝の消失、
閉口不能による流唾(りゅうだ)。
・片側前方脱臼時の顔貌
・患側の耳前部の陥没、オトガイ部の健側偏位、
交叉咬合、開咬、患側鼻唇溝の消失。
・開口時の衝突、打撃などの下顎側方からの外力で発生する。
・診断
・ほとんどの場合X線撮影は行わない。
・顔貌所見のみで診断することが多い。
・診断が遅れる場合→陳旧性となる
・無歯顎など脱臼症状が著明でない場合
・全身状態の不良(意識障害等)
・精神障害
・他に優先すべき治療がある場合
・脱臼に気づいたら?
→まずは徒手整復
・関節結節の前上方に偏位した下顎頭を結節より下方へ押し下げる。
・Hippocrates法:患者の前方に立つ。
・Borchers法:患者の後方に立つ。
・陳旧性で徒手的整復が困難な場合は顎間ゴム牽引療法
・それでも整復不可能なら全身麻酔下に外科的治療が必要。
・下顎頭切除術が行われることもあるが、
術後顎変形症や顎関節強直症へ移行することがある。
・習慣性脱臼の治療法
・咬合療法
・スプリント療法
・チンキャップ
・顎間ゴム牽引法または顎間固定法
・関節腔内自己血注入法
・関節制動術
・軟組織に瘢痕を作って開口制限を図る。
・関節結節を高くして脱臼しにくくする。
→軟組織に瘢痕を作って開口制限を図る。
2017年1月23日月曜日
CRRTについて
ICU勉強会 担当:初期研修医S先生
「CRRTについて」
・RRTとは?
→Renal Replacement Therapy
→腎機能を代替する治療
→電解質補正、体液量調整、有害物質の除去etc
・RRTの原理
①拡散(diffusion)
→溶質の濃度差での移動
→主に小分子の移動に有用
※拡散の規定因子
①溶質の分子量
②溶質の濃度勾配
③膜の要素(厚さ/膜孔/面積)
②濾過(ultrafiltration)
→半透膜の片方に陰圧をかけ、膜孔より小さい物質を通過させる
→中分子・小分子の移動に有用
※濾過の規定因子
①膜間圧力差(TMP)
②ふるい係数
③膜の性能(限外濾過率:UFR)
・RRTの適応
①乏尿
②尿毒症(高尿素窒素、クレアチニン血症)
③高カリウム血症
④溢水
⑤代謝性アシドーシス
⑥中毒 etc..
・RRTの種類
・IRRT (Intermittent Renal Replacement Therapy)
→短時間で生体腎の何十倍もの効率で浄化
→3-4時間/回のRRTを週 3-4回(通常の維持透析患者の透析)
・CRRT(Continuous Renal Replacement Therapy )
→大幅に透析効率を落とし、24時間持続緩徐に施行
→循環動態が不安定な患者や,頭蓋内圧上昇や
脳浮腫を有している患者(KDIGOガイドライン)
・SLED(Sustained Low Efficiency Dialysis)
→透析効率をIRRTの1/2程度に減らし、
2倍の治療時間(8~12時間)で行う
→IRRTとCRRTの中間
・CRRTの種類
・CHD:持続的血液透析
・CHF:持続的血液濾過
・CHDF:持続的血液濾過透析
・クリアランス
・QD+QF=QE(排液流量)を一定とした場合
・小分子ではCHF≧CHDF≧CHD
・中分子ではCHF≫CHDF>CHD
・CRRTに関する様々な疑問
・CRRT/IRRTどちらを選択すべきか?
・導入、終了のタイミングは?
・抗凝固薬は何を選択すべきか?
・適切な血液浄化量は?
→AKIに対するCRRTの適切な血液浄化量
・Roncoらの研究(2000年)
・ICUにおいてAKIを発症した 425例にCHFを施行する際に
QFを20ml, 35, 45 ml/kg/hrの 3 群に割り付け、
治療 15 日後の生存率を検討
→生存率は 41%,57%,58%
・20ml/kg/hr群が他の 2 群と比較して有意に低値。
・35 ml/kg/hr群と 45 ml/kg/hr群では有意差は認めず。
・AKIに対する浄化量は少なくとも35 ml/kg/hrが望ましいと結論。
(※血液浄化量=QD(透析液流量)+QF(濾過流量)=QE(排液流量))
・ATN study(2000年)
→RRTが必要なAKI症例 1,124例を無作為に
intensive therapy群(n=563)
→循環動態の安定している患者に対しては週6回のHD、
不安定な患者では35ml/kg/hrのCHDFあるいは週6回のSLED
less-intensive therapy群(n=561)
→循環動態が安定していれば週3回のHD、
不安定な場合には 20ml/kg/hrのCHDFあるいは週3回のSLED
→全死亡率、腎機能の回復率等を検討。
→全死亡率,腎機能の回復率で両群間で有意差なし。
・RENAL study(2009年)
→1,508例のAKI患者
higher intensity therapy群(n=747:35ml/kg/hr CHDF)と
lower intensity therapy群(n=761:25ml/kg/hr CHDF)に割り付ける。
→全死亡率,腎機能回復率で両群間で有意差なし。
・KDIGOガイドライン
→AKIに対するCHDFの血液浄化量として
20~25ml/kg/hrを推奨量としている。
・日本における保険制限
・現在のDPC制度においてCRRTの血液浄化量が15-20L/日に制限。
→15-20L/日=10-16ml/㎏/hr(体重60㎏の場合)
・諸外国におけるlow dose 20ml/kg/hr>10-16ml/kg/hr
・日本のCRRTのdoseは他国より圧倒的に低い。
・そもそも予後や腎機能を改善するエビデンスのないCRRTが
これほどまでに普及しているのはなぜか?
・CRRTの役割
①Renal indication(AKIに対するCRRT)
②Non-renal indication
→病態に関わる物質の除去により病態の改善を期待する治療法。
→例:敗血症性ショックにおける過剰な炎症性サイトカイン除去。
・CHDFがサイトカインに及ぼす影響
①濾過原理
・血液浄化量を上げると効率Up
→欧米では高血液浄化量に関する研究が進行。
→日本では保険による血液浄化量の制限があり研究は進まず。
②吸着原理
・血液浄化膜への炎症性サイトカインの吸着により物質を除去するとの考え。
・血液浄化量に制限のある日本での主流な考え方に
→様々な膜の開発(AN69ST膜、PMMA膜など)につながった
・Non-renal indicationのエビデンス
・血液浄化療法のnon-renal indicationに関する様々なStudy
・通常のCRRTvs保存療法のRCT
・高流量CRRTvs通常流量CRRTのRCT
・大孔径膜vs通常膜のRCT
→血中炎症性サイトカイン濃度の減少を示したものはあっても、
死亡率等の予後の改善を示したものは一切なし。
・RoncoのReview (2015)
「CRRTは炎症性サイトカインを取り除き、
血漿サイトカイン濃度を一部低下させるが、
血液浄化量にかかわらず予後には影響を受けないようである。」
・血液浄化推進派の意見
・敗血症の診断基準が2016年に変更されたため、
予後を改善する治療としてのCRRTが有用である可能性がある。
・CRRTのサイトカイン吸着能は膜面積に依存するので、
より広範囲の膜、あるいは2ユニットCHDFでの検討が必要である。
・PMMA膜などより吸着能の高い膜が開発されており、
それらが炎症性サイトカインを減少させ予後を改善する可能性がある。
麻酔科朝の勉強会
「CRRTについて」
・RRTとは?
→Renal Replacement Therapy
→腎機能を代替する治療
→電解質補正、体液量調整、有害物質の除去etc
・RRTの原理
①拡散(diffusion)
→溶質の濃度差での移動
→主に小分子の移動に有用
※拡散の規定因子
①溶質の分子量
②溶質の濃度勾配
③膜の要素(厚さ/膜孔/面積)
②濾過(ultrafiltration)
→半透膜の片方に陰圧をかけ、膜孔より小さい物質を通過させる
→中分子・小分子の移動に有用
※濾過の規定因子
①膜間圧力差(TMP)
②ふるい係数
③膜の性能(限外濾過率:UFR)
・RRTの適応
①乏尿
②尿毒症(高尿素窒素、クレアチニン血症)
③高カリウム血症
④溢水
⑤代謝性アシドーシス
⑥中毒 etc..
・RRTの種類
・IRRT (Intermittent Renal Replacement Therapy)
→短時間で生体腎の何十倍もの効率で浄化
→3-4時間/回のRRTを週 3-4回(通常の維持透析患者の透析)
・CRRT(Continuous Renal Replacement Therapy )
→大幅に透析効率を落とし、24時間持続緩徐に施行
→循環動態が不安定な患者や,頭蓋内圧上昇や
脳浮腫を有している患者(KDIGOガイドライン)
・SLED(Sustained Low Efficiency Dialysis)
→透析効率をIRRTの1/2程度に減らし、
2倍の治療時間(8~12時間)で行う
→IRRTとCRRTの中間
・CRRTの種類
・CHD:持続的血液透析
・CHF:持続的血液濾過
・CHDF:持続的血液濾過透析
・クリアランス
・QD+QF=QE(排液流量)を一定とした場合
・小分子ではCHF≧CHDF≧CHD
・中分子ではCHF≫CHDF>CHD
・CRRTに関する様々な疑問
・CRRT/IRRTどちらを選択すべきか?
・導入、終了のタイミングは?
・抗凝固薬は何を選択すべきか?
・適切な血液浄化量は?
→AKIに対するCRRTの適切な血液浄化量
・Roncoらの研究(2000年)
・ICUにおいてAKIを発症した 425例にCHFを施行する際に
QFを20ml, 35, 45 ml/kg/hrの 3 群に割り付け、
治療 15 日後の生存率を検討
→生存率は 41%,57%,58%
・20ml/kg/hr群が他の 2 群と比較して有意に低値。
・35 ml/kg/hr群と 45 ml/kg/hr群では有意差は認めず。
・AKIに対する浄化量は少なくとも35 ml/kg/hrが望ましいと結論。
(※血液浄化量=QD(透析液流量)+QF(濾過流量)=QE(排液流量))
・ATN study(2000年)
→RRTが必要なAKI症例 1,124例を無作為に
intensive therapy群(n=563)
→循環動態の安定している患者に対しては週6回のHD、
不安定な患者では35ml/kg/hrのCHDFあるいは週6回のSLED
less-intensive therapy群(n=561)
→循環動態が安定していれば週3回のHD、
不安定な場合には 20ml/kg/hrのCHDFあるいは週3回のSLED
→全死亡率、腎機能の回復率等を検討。
→全死亡率,腎機能の回復率で両群間で有意差なし。
・RENAL study(2009年)
→1,508例のAKI患者
higher intensity therapy群(n=747:35ml/kg/hr CHDF)と
lower intensity therapy群(n=761:25ml/kg/hr CHDF)に割り付ける。
→全死亡率,腎機能回復率で両群間で有意差なし。
・KDIGOガイドライン
→AKIに対するCHDFの血液浄化量として
20~25ml/kg/hrを推奨量としている。
・日本における保険制限
・現在のDPC制度においてCRRTの血液浄化量が15-20L/日に制限。
→15-20L/日=10-16ml/㎏/hr(体重60㎏の場合)
・諸外国におけるlow dose 20ml/kg/hr>10-16ml/kg/hr
・日本のCRRTのdoseは他国より圧倒的に低い。
・そもそも予後や腎機能を改善するエビデンスのないCRRTが
これほどまでに普及しているのはなぜか?
・CRRTの役割
①Renal indication(AKIに対するCRRT)
②Non-renal indication
→病態に関わる物質の除去により病態の改善を期待する治療法。
→例:敗血症性ショックにおける過剰な炎症性サイトカイン除去。
・CHDFがサイトカインに及ぼす影響
①濾過原理
・血液浄化量を上げると効率Up
→欧米では高血液浄化量に関する研究が進行。
→日本では保険による血液浄化量の制限があり研究は進まず。
②吸着原理
・血液浄化膜への炎症性サイトカインの吸着により物質を除去するとの考え。
・血液浄化量に制限のある日本での主流な考え方に
→様々な膜の開発(AN69ST膜、PMMA膜など)につながった
・Non-renal indicationのエビデンス
・血液浄化療法のnon-renal indicationに関する様々なStudy
・通常のCRRTvs保存療法のRCT
・高流量CRRTvs通常流量CRRTのRCT
・大孔径膜vs通常膜のRCT
→血中炎症性サイトカイン濃度の減少を示したものはあっても、
死亡率等の予後の改善を示したものは一切なし。
・RoncoのReview (2015)
「CRRTは炎症性サイトカインを取り除き、
血漿サイトカイン濃度を一部低下させるが、
血液浄化量にかかわらず予後には影響を受けないようである。」
・血液浄化推進派の意見
・敗血症の診断基準が2016年に変更されたため、
予後を改善する治療としてのCRRTが有用である可能性がある。
・CRRTのサイトカイン吸着能は膜面積に依存するので、
より広範囲の膜、あるいは2ユニットCHDFでの検討が必要である。
・PMMA膜などより吸着能の高い膜が開発されており、
それらが炎症性サイトカインを減少させ予後を改善する可能性がある。
麻酔科朝の勉強会
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