「麻酔科勉強会」 担当:O先生
「麻酔器、呼吸器について」
・麻酔器と人工呼吸器との違い
・麻酔器は呼気を再利用する閉鎖循環式(再呼吸)回路
・人工呼吸器ではCO2を排出する装置がないため、呼気を再利用しない。
・ジャクソン・リースとアンビューバッグ回路の違いに似ている。
・陽圧換気のモード
・量制御換気(volume-controlled ventilation:VCV)
・圧制御換気(pressure-controlled ventilation:PCV)
・どちらが優れた呼吸器設定であるかは画一した答えは無い
・いずれの換気設定にしても問題となるのは
人工呼吸器関連肺障害(ventilator-induced lung injury:VILI)
→空気を押し込む際の異常な圧力や張力により肺構造を損傷する。
→容量障害と圧障害の2つのタイプに分けられる。
・容量障害
・1980年代、高吸気圧よりも高吸気量が
肺血管外水分量を増加させるという研究が発表された。
・それ以降、容量障害という言葉が
人工呼吸による肺浸潤のメカニズムを説明するために使用された。
・肺胞の過膨張と肺胞-毛細管界面の破壊
→肺の炎症性浸潤を生じるというメカニズム。
・どの程度の容量設定にするか?
→ARDS患者を対象とした6ml/kgvs12ml/kgでのトライアルが示すのみ。
・圧障害
・陽圧換気
→気道や肺胞の破裂によってエアリークを生じる可能性。
・プラトー圧が30cmH2Oを超えないように設定する必要がある。
・無気肺損傷
・呼吸器使用中、細気道は呼気終末に虚脱する。
↑吸気量が陰圧と比較して圧倒的に少ないため。
・肺コンプライアンスが低下していると増悪
・呼吸器管理中、細気道の開通と虚脱を繰り返すことにより
過度の剪断力が発生し、気道上皮が損傷する。
→無気肺損傷と呼ばれる。
・VCVについて
・1回換気量をあらかじめ設定設定。
・設定した換気量まで気道内圧は一定速度で上昇。
・最高気道内圧(Ppeak)に達するのは、
気道、胸腔の抵抗及び弾性力の圧(Pres,Pel)に打ち勝つ瞬間。
・Ppeak=Pres+Pel
・Ppeak自体が肺およびその周囲に障害を与える直接的な因子ではない。
・VCVでのプラトー圧は?
・Pplateau(プラトー圧)は呼気終末の肺胞の最高圧(Palv)
・吸気ホールド(通常1秒)を行うことによって算出できる。
・Pplateauが肺障害と直接的に関連する。
・PCVについて
・吸気圧を前もって設定し、
望む1回換気量を得るために吸気時間を設定する。
・吸気流速は圧を一定に保つために、吸気開始時に早くその後減速。
・吸気終末気道内圧(Paw)とプラトー圧は理論的には一致する。
・呼吸器は診断補助ツール
・Ppeak(Paw)が高いとき何が起こっているのか、
診断補助ツールに使うことができる。
・2つの値を計算することで診断補助に使用できる。
①胸腔コンプライアンス(50-80)
②気道抵抗(3-7)
・胸郭コンプライアンス
・肺と胸壁の両方を含んだ値でCstatで表現される
・VCV:Cstat=Vt(1回換気量)/(Pplateau-Peep)
・PCV:Cstat=呼気Vt/(Paw-Peep)
・どちらのモードでも計算できるが、
1回換気量が変化することは計算上望ましくない。
・呼吸筋収縮の影響を受けるため、受動的呼吸時にのみ計算が有効。
・計算上の1回換気量は呼吸回路のコンプライアンスで補正する。
・気道抵抗
・吸気抵抗(Rinsp)と呼気抵抗(Rexp)の2つが存在する。
・流量が一定であること(VCVであること)、
短形波(漸減波ではない)であることが測定の条件。
・Rinsp=(Ppeak-Pplataeu)/Vinsp(吸気流速)
・Rexp=(Ppeak-peep)/PEFR(最高呼気流速)
・呼気抵抗はCOPDなど細気管支などの閉塞傾向を鋭敏に反映し
吸気抵抗より通常高くなる。
・最高呼気流量の計算が難しいため通常は吸気抵抗を計算する。
・気管チューブや呼気弁の影響を受けることに注意。