2017年9月2日土曜日

麻酔器、呼吸器について

「麻酔科勉強会」 担当:O先生

「麻酔器、呼吸器について」

・麻酔器と人工呼吸器との違い
 ・麻酔器は呼気を再利用する閉鎖循環式(再呼吸)回路
 ・人工呼吸器ではCO2を排出する装置がないため、呼気を再利用しない。
 ・ジャクソン・リースとアンビューバッグ回路の違いに似ている。
・陽圧換気のモード
  ・量制御換気(volume-controlled ventilation:VCV)
  ・圧制御換気(pressure-controlled ventilation:PCV)
 ・どちらが優れた呼吸器設定であるかは画一した答えは無い
 ・いずれの換気設定にしても問題となるのは
  人工呼吸器関連肺障害(ventilator-induced lung injury:VILI)
   →空気を押し込む際の異常な圧力や張力により肺構造を損傷する。
   →容量障害と圧障害の2つのタイプに分けられる。
 ・容量障害
  ・1980年代、高吸気圧よりも高吸気量が
   肺血管外水分量を増加させるという研究が発表された。
  ・それ以降、容量障害という言葉が
   人工呼吸による肺浸潤のメカニズムを説明するために使用された。
  ・肺胞の過膨張と肺胞-毛細管界面の破壊
    →肺の炎症性浸潤を生じるというメカニズム。
  ・どの程度の容量設定にするか?
    →ARDS患者を対象とした6ml/kgvs12ml/kgでのトライアルが示すのみ。
 ・圧障害
  ・陽圧換気
    →気道や肺胞の破裂によってエアリークを生じる可能性。
  ・プラトー圧が30cmH2Oを超えないように設定する必要がある。
 ・無気肺損傷
  ・呼吸器使用中、細気道は呼気終末に虚脱する。
   ↑吸気量が陰圧と比較して圧倒的に少ないため。
  ・肺コンプライアンスが低下していると増悪
  ・呼吸器管理中、細気道の開通と虚脱を繰り返すことにより
   過度の剪断力が発生し、気道上皮が損傷する。
   →無気肺損傷と呼ばれる。
・VCVについて
 ・1回換気量をあらかじめ設定設定。
 ・設定した換気量まで気道内圧は一定速度で上昇。
 ・最高気道内圧(Ppeak)に達するのは、
  気道、胸腔の抵抗及び弾性力の圧(Pres,Pel)に打ち勝つ瞬間。
 ・Ppeak=Pres+Pel
 ・Ppeak自体が肺およびその周囲に障害を与える直接的な因子ではない。
 ・VCVでのプラトー圧は?
   ・Pplateau(プラトー圧)は呼気終末の肺胞の最高圧(Palv)
   ・吸気ホールド(通常1秒)を行うことによって算出できる。
   ・Pplateauが肺障害と直接的に関連する。
・PCVについて
 ・吸気圧を前もって設定し、
  望む1回換気量を得るために吸気時間を設定する。
 ・吸気流速は圧を一定に保つために、吸気開始時に早くその後減速。
 ・吸気終末気道内圧(Paw)とプラトー圧は理論的には一致する。
・呼吸器は診断補助ツール
 ・Ppeak(Paw)が高いとき何が起こっているのか、
  診断補助ツールに使うことができる。
 ・2つの値を計算することで診断補助に使用できる。
  ①胸腔コンプライアンス(50-80)
  ②気道抵抗(3-7)
・胸郭コンプライアンス
 ・肺と胸壁の両方を含んだ値でCstatで表現される
  ・VCV:Cstat=Vt(1回換気量)/(Pplateau-Peep)
  ・PCV:Cstat=呼気Vt/(Paw-Peep)
 ・どちらのモードでも計算できるが、
  1回換気量が変化することは計算上望ましくない。
 ・呼吸筋収縮の影響を受けるため、受動的呼吸時にのみ計算が有効。
 ・計算上の1回換気量は呼吸回路のコンプライアンスで補正する。
・気道抵抗
 ・吸気抵抗(Rinsp)と呼気抵抗(Rexp)の2つが存在する。
 ・流量が一定であること(VCVであること)、
  短形波(漸減波ではない)であることが測定の条件。
  ・Rinsp=(Ppeak-Pplataeu)/Vinsp(吸気流速)
  ・Rexp=(Ppeak-peep)/PEFR(最高呼気流速)
 ・呼気抵抗はCOPDなど細気管支などの閉塞傾向を鋭敏に反映し
  吸気抵抗より通常高くなる。
 ・最高呼気流量の計算が難しいため通常は吸気抵抗を計算する。
 ・気管チューブや呼気弁の影響を受けることに注意。