2017年7月17日月曜日

硬膜外麻酔について

初期研修医勉強会  担当:K先生

「硬膜外麻酔について」

・August Karl Gustav Bier
 (24 November 1861 – 12 March 1949)
・コカインによる脊髄くも膜下麻酔を世界で初めて外科手術に(1898年)
・脊麻と硬麻
 ・世界初の硬膜外麻酔はスペインのFide Pagesによる腰部硬膜外麻酔(1921)
 ・脊麻も硬麻も局所麻酔の一種(区域麻酔)
 ・背中からの麻酔であることは似ているが違いを把握することが大事
・局所麻酔薬と神経線維
 ・ブロックされる順番は
   →交感神経>温覚>痛覚>触覚>圧覚>運動繊維
・神経線維のブロックはその太さやミエリン鞘の有無に影響される。
 ・局所麻酔薬によるブロックされやすさは原則、
   ・有髄神経<無髄神経
   ・神経線維が太い<細い
  ・運動をつかさどるA-α繊維
    →髄性で繊維も太いためブロックされにくい。
  ・位置覚などの固有知覚を司るA-α、A-β繊維
    →太いのでブロックされにくい。
  ・痛覚は有髄性で比較的細いA-δデルタ繊維と無髄で細いC繊維が司っている
    →ブロックされやすい。
  ・神経線維でもっともブロックされやすいのは?
    →自律神経節前繊維であるB繊維。
  ・ただし文献によってはC繊維よりも
   Aδ、Aβ繊維の方がブロックされやすいとしているものもある。
・分離麻酔と分節麻酔
 ・硬膜外麻酔において
   ・分離麻酔:麻酔薬の濃度を変えて遮断する神経種類(太さ)を変える
     Ex)リドカインは0.5%で交感神経、1%で知覚神経、
       1.5-2%で運動神経を遮断(筋弛緩)
      ・分節麻酔:麻酔薬の容量を変えて遮断する神経レベル(範囲)を変える
     Ex)1分節0.5mL~2mLと人によって異なる
・脊麻、硬麻の合併症
 ・血圧低下、徐脈、硬膜穿刺、局所麻酔薬中毒、くも膜下腔注入、血管内注入など。
 ・血圧低下や徐脈
   →起きてから対処するのではなく起きるものとして考える。
   →施行前の十分な輸液と昇圧薬とアトロピンの準備、酸素投与が重要。
 ・硬膜外カテーテル挿入後にテストドーズ
   →1-2%リドカイン3mLを試しに注入
   →くも膜下投与でないことを確かめる。
   ・この時に20万倍アドレナリンを添加したものを入れた場合に
    心拍数が20/分増加すれば血管内投与であることが確認できる。
・術後合併症
 ・頭痛(硬膜穿刺後頭痛)、馬尾症候群、脳神経麻痺、硬膜外血腫、
  硬膜外膿瘍、神経損傷、髄膜刺激症状、髄膜炎、尿閉など
 ・硬膜穿刺後頭痛頭痛
   →脊麻後頭痛と呼ばれ術後1~2日ごろに発症します。
   ・硬膜外麻酔の硬膜の誤穿刺では必発で若年女性に多い。
   ・安静臥床、輸液負荷が必要。
   ・難治性の場合は自己血パッチ。
 ・馬尾症候群
   →脊髄くも膜下麻酔後の歌詞運動麻痺、会陰部の知覚異常、
    膀胱直腸障害を症状とする。
   ・局所麻酔薬の神経毒性が主な病因とされる。
   ・近年は毒性が低いものを使うようになり頻度は減少している。
 ・その他低髄液圧によって外転神経麻痺による複視を起こすことも。
 ・硬膜外血腫は近年抗凝固療法の広まりと共に増加している、
   ・古いデータでは十万例に一人というデータもあるが、
    実際には最も多いと推測されている。
 ・遷延する尿閉は一過性の無菌性髄膜炎によるものとされ
  2~3日で軽快することが多い。
・硬膜外麻酔の利点
 ・持続投与が可能で長時間手術も可能
 ・術後疼痛管理が可能
 ・ブロックの範囲の調節性が高い
   →他のオピオイド全身投与よりも優れた疼痛管理
   →交感神経系ブロックや周術期免疫能の維持により患者の予後を改善?