麻酔科勉強会 担当:E先生
「脳神経外科手術の麻酔」
・脳血流量について
・脳血流量(CBF)=脳還流圧/脳血管抵抗
・脳還流圧(CPP)=平均血圧(MAP)-頭蓋内圧(ICP)
→MAP 50-100mmHgの範囲では自動調整される。
・脳血流量の平均は50ml/min
・ →血圧、代謝要求量、PaCO2、PaO2、
血液粘度、神経性調節に影響を受ける。
・脳虚血、外傷、低酸素症、高CO2血症、浮腫、
腫瘤による圧迫、揮発性麻酔薬、・・・
←自動調節能を抑制
→患部の血流は平均動脈圧に依存してしまう。
・動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)について
・20-80mmHgでは直線的に脳血流量が増加
・過換気は脳虚血の危険
→normocapnia(PaCO2=30-35mmHg)
・EtCO2でなく、PaCO2で評価
・動脈血酸素分圧(PaO2)について
・低酸素症により脳血管は拡張(酸素供給を代償する)
・PaO2=60-300mmHg
・脳酸素代謝率(CMRO2)について
・脳組織の酸素消費
・体温低下1℃に対してCMRO27%低下
・麻酔薬(↓)、体温(↑)、痙攣(↑)、疼痛(↑)
・頭蓋内圧(ICP)について
・正常値:5-15mmHg
・ICP上昇
→脳灌流圧が低下
→脳ヘルニアや神経学的合併症を引き起こす
・臨床的徴候
→頭痛、悪心、嘔吐、視力障害、うっ血乳頭、意識障害
・重篤な場合はCushingの3徴(高血圧、徐脈、不規則呼吸)
・生理学的に調節すべきもの
①脳血流量(CBF→MAP 50-150mmHg
②動脈血二酸化炭素分圧→PaCO2 30-35mmHg
③動脈血酸素分圧(PaO2)→PaO2 60-300mmHg
④脳酸素代謝率(CMRO2)→体温、疼痛、痙攣
⑤頭蓋内圧(ICP)→体位、PEEP、バッキング
・これらを調節して適切な脳内循環を維持する。
・麻酔薬
・吸入麻酔薬
・用量依存的にCMRO2減少(↓)、血管を拡張させCBF増加(↑)
・ただし亜酸化窒素はCMRO2(↑)、CBF(↑)となる
・1MAC以下では影響は少ない。
※頭蓋内コンプライアンスの低下した患者では注意
・利点として覚醒良好なことがある
・静脈麻酔薬
・用量依存的にCBFとCMRO2を減少させる。
・ただしケタミンはCBF(↑)
・麻薬、筋弛緩薬は脳血流量とCMRO2を変化させない。
・TIVA vs吸入麻酔に関しては議論が分かれる。
←多くの場合では少量の吸入麻酔を使用した
バランス麻酔に加えて筋弛緩薬やオピオイドを併用する。
・ICPが上昇している患者に対しては静脈麻酔が有用。
・術中の麻酔管理
・前述の呼吸・循環管理
・脳の緊張緩和(relax brain)
→硬膜を切開する前に脳が緊張していないように。
→切開前にPaCO2 33-35mmHg
→マンニトール、フロセミドの投与(高浸透圧の維持)
・過剰投与は反跳現象を引き起こし脳浮腫を助長する可能性。
・水分管理はevenバランスで適切な脳灌流と脳浮腫を予防
→正常の血管内容量を保ち、高浸透圧状態にする。
・ステロイド×(脳卒中や脳外傷における有用性はない、浮腫は軽減)
・正常体温
・高血糖の予防(<170mg/dl)
・痙攣予防
・座位手術の場合は?
・メリット:良い視野、ドレナージが良好、出血量の減少
・デメリット:空気塞栓の可能性
→術野が心臓より高い位置にある。
→開放された静脈から空気を引き込み空気塞栓発生。
→低酸素症、高CO2血症、気管支収縮、低血圧、循環虚脱など。
・特に右左シャントあるときは要注意。
・空気塞栓のリスクのある症例では中心静脈カテーテル、TEEも。
・モニタはカプノグラム、TEEなど。
・術後管理
・抜管・覚醒
・テント下(気道反射に影響を与える)の手術後や、
長時間腹臥位の患者では慎重に。
・理想的には咳・筋緊張・高血圧を避ける。
・覚醒後の神経学的評価を行う。
(従命、四肢の動き・視野の評価)
・術後鎮痛
・オピオイドは術後鎮痛目的に覚醒前に投与するべきではない?
→覚醒・抜管後に評価したあとに投与する?
→術後鎮痛や終盤の血圧管理のための気前の良いオピオイド投与は
十分な神経学的評価を行えなくする可能性。
・PONV予防は必要。
・頭部外傷患者の麻酔
・traumatic brain injury(TBI)の患者の麻酔では、
二次的脳障害を予防することが目的である。
・急性期にはCBFの自動調節能は破綻しており血圧の増減に応じて変化する。
・血圧低下→CBF減少→脳虚血
・血圧上昇→CBF増加→脳浮腫
・気道評価が重要(頚椎損傷の可能性も)
・フルストマックとして迅速導入。
(→気道評価の上意識下挿管も)
・腹部・整形損傷などがマスクされていることがある。
・ICP上昇していたらTIVAがよい。