麻酔科勉強会 担当:I先生
「冠動脈のまとめ」
・機能的冠血管分類
・太い伝導血管系
・冠動脈造影で見える。
・心外膜冠状動脈は太さ約300~5000μm。抵抗は少ない。
・細い抵抗血管系
・小動脈は太さ約100~250μm。心筋内を走行する。
・細動脈は太さ約10~100μm。最も抵抗が高い。
→毛細血管へ
・静脈系→冠静脈洞へ
・安静時の冠血流量は75〜80ml/100g/分(心拍出量の5%)
・心臓の酸素利用率は70〜80 %と高い
→腎臓・肝臓・脳の酸素利用率は10〜20%
・心筋酸素消費量が最大となる運動時,
→冠血流量は4〜5倍に達し 酸素利用率も90%近くになる
・心筋酸素需要バランス
・心筋酸素供給
・主に動脈血の酸素含量と
冠血流量(coronary blood flow:CBF)により規定される。
・酸素含量(mg/dl)
=Hb濃度×1.34×酸素飽和度/100+0.003×酸素分圧
・冠血流量
=冠血管床の圧較差(coronary perfusion pressure:CPP)
/冠血流抵抗(coronary vascular resistance:CVR)
・左室と右室への冠血流
→収縮期と拡張期の優位性に違いがある。
・左心室
→心筋壁が厚い。
→収縮期には心筋収縮により心筋内の小動脈や細動脈、
毛細血管が圧迫され血流が途絶する。
→拡張期には心筋の弛緩によりこれらの血管に対する
圧迫が解除され、急速に血流が再開する。
・右冠動脈は収縮期と拡張期どちらも血流が維持されている。
・冠血管床の圧格差
・左冠動脈の血流……拡張期優位のパターン
・大動脈拡張期圧が冠動脈の灌流圧として重要
・動脈硬化に伴う大動脈コンプライアンスの低下や大動脈閉鎖不全では
大動脈拡張期圧が低下し左冠動脈の循環に悪影響を及ぼす
・心拍数の増加により拡張期の著しい短縮が生じ、左室心筋への
灌流に大きな影響を及ぼす。
・右冠動脈の血流……収縮期と拡張期の両相パターン
・重篤な肺動脈高血圧など右室圧の上昇に伴い
収縮期の灌流圧は縮小し右冠動脈の収縮期血流は低下する。
・冠血管抵抗
・血液粘稠度
・冠動脈の収縮・拡張→①代謝性調節
②筋性調節
③血流調節・・・ここまで自己調節能
④自律神経系因子
⑤内分泌性因子
⑥血管内皮依存性調節因子
・冠動脈の血管外圧縮力による調整
・代謝性調節について
・アデノシン↑
・心筋内酸素分圧↓、二酸化炭素分圧↑
・乳酸↑
→冠血管抵抗を低下させる。
・冠動脈の血管外圧縮力による調整
・心内膜は収縮期に血管系が小さくなりやすい。
→心内膜の方が虚血に陥りやすい
・心筋酸素需要
・心拍数
・1心拍ごとに消費される酸素消費量に変化がない
→毎分の酸素需要量は心拍数の増加に比例して増加する
・交感神経系の亢進により心拍数が増加
→同時に心収縮力も増加する
→心拍数の増加以上に酸素消費量が増加している
・心収縮力
・壁応力
・Laplaceの法則
→球体の壁にかかる応力は内圧と球の半径に比例し、
壁厚に反比例する
→壁応力=圧×半径/(2×壁厚)
・これを心臓に置き換えると…
・壁応力=収縮期心室にかかる後負荷
・圧=収縮期に心室壁にかかるピークの貫壁性圧較差
・半径=拡張終期の心腔内の半径
・例えば左室肥大→壁厚↑→壁応力↓するが
心筋重量の増加で酸素消費量は増加
・例えば左室瘤→左室径↑+壁厚↓で
壁応力↑し酸素消費量は増加
・冠動脈疾患に対する治療
・安定冠動脈疾患に対する冠血行再建術
・初期積極的薬物治療
・経皮的冠動脈インターベンション(PCI)
・冠動脈バイパス術(CABG)
・PCI or CABG?
・SYTAX試験(2009年)
・冠動脈3枝病変または左冠動脈主幹部病変LMT(またはその両方)
を有する患者1800人を対象に、無作為割り付けでPCIとCABGを比較。
・術後1年時の死亡・心筋梗塞・脳梗塞・
再血行再建術の複合エンドポイント発生が、
PCIよりもCABGの方が低く、
3枝病変あるいは左冠動脈主幹部病変の
標準治療はCABGであると結論。
・OPCABGは有利か?
・OPCABからCCABへ移行例では30日死亡率4~7%と不良
・OPCABに優位に腎保護効果があるとする報告は少ない