2012年4月20日金曜日

ICUと腸

麻酔科勉強会  担当:Y先生

「ICUと腸」

・最近の栄養に関するトピック
  ・早期経腸栄養
     →When the gut works use it!
  ・Overfeedingの回避
     →内因性エネルギーとか、Autophagyとか
・経腸栄養法の利点(静脈栄養と比較して)
  ・腸管粘膜の維持(腸管粘膜の萎縮の予防)
  ・免疫能の維持、bacterial translocationの回避
  ・代謝反応の亢進の抑制(侵襲からの早期回復)
  ・胆汁うっ滞の回避
  ・消化管の生理機能の維持(腸蠕動運動、消化管ホルモン分泌)
  ・カテーテル敗血症、気胸などのTPN時の合併症がない
  ・長期管理が容易である
  ・廉価である
・絶食期間が続くと…
 →腸管粘膜の廃用萎縮。
 →小腸微絨毛の短縮
 →粘膜萎縮
・早期経腸栄養による腸管内栄養で腸管粘膜の萎縮は防止される。
・ASPEN/SCCMの急性期栄養ガイドライン2009
  ・経腸栄養法は経静脈栄養法よりも好ましい。
  ・経腸栄養法は入院後24-48時間以内の早期に開始。
  ・血行動態が不安定な状態では安定化するまで経腸栄養中止。
  ・ICU患者における経腸栄養の開始
    →腸蠕動音や腸内ガス・便の通過の有無の確認は不必要。
  ・誤嚥の危険性が高い、胃残が多い
    →経小腸栄養。
・経胃vs経小腸
  →死亡率は差を認めず。
  →経小腸栄養で肺炎発生率低下を報告した文献あり。
     →メタ分析では有意差なし。
  →胃内投与群でICU在室日数短縮の報告あり。
・誤嚥の危険性を減らすために・・・
  ・ベッドの頭側を30-45度挙上する(Grade C)。
  ・誤嚥の危険大、経胃栄養不可能なら持続輸液に(Grade D)。
  ・腸管運動促進薬、麻薬拮抗薬の使用(Grade C)。
  ・幽門より肛門側にチューブ留置して注入量再評価(Grade C)。
・誤嚥リスクの評価
  ・腹部所見(腹痛、膨満感)
  ・胃残の量・性状
  ・画像検査
  ・原疾患
  ・手術要因
  ・第六感
・腸管虚血について
  ・上腸間膜動脈塞栓症:50%
  ・上腸間膜動脈血栓症:15~25%
  ・非閉塞性腸管虚血(NOMI):20~30%
・経腸栄養induced腸管虚血のメカニズム
  ・基本的にはmultifactorialだが…
    ・経腸栄養剤の高浸透圧による腸管傷害
    ・腸内細菌の異常活性化
    ・腸管虚血再灌流傷害
・腸管虚血のサイン
   ・臨床所見
        急性腹痛、腹部膨満、胃内容・胃残の増加、イレウス
        排便・排ガスの停止、乏尿、shock
   ・検査所見
        Lac上昇、代謝性acidosis、WBC上昇、胃内PCO2増加
   ・画像所見
       腸管拡大・腫大、小腸壁の嚢状気腫、門脈ガス、腹腔内ガス
・術後イレウス
   ・腹部手術以外での発生頻度は5%以下
   ・臨床的関連因子
      →不動、虚血再灌流障害、薬物(オピオイド等)、
      severe sepsis、multiple organ dysfunction、
      絶食により腸管が刺激されていない、など。
   ・病理学的関連因子
     →神経反射の抑制、炎症反応の活性化、
       オピオイド受容体の活性化、腸に対する外科的刺激、
      麻酔要因、神経・筋・ホルモン的な要因いろいろ
・術後消化管機能
  →胃24-48時間、小腸6-24時間、大腸72時間で回復。
・胃蠕動促進薬
  ・メトクロプラミド
    ・D2受容体拮抗薬
    ・消化管D2神経による平滑筋収縮抑制解除により蠕動亢進。
    ・錐体外路症状に注意(遅発性ジスキネジアなど)。
  ・エリスロマイシン
    ・マクロライド系抗菌薬
    ・モチリン受容体に作用し、消化管蠕動運動を亢進させる。
    ・QT延長、薬物相互作用に注意。
  ・六君子湯
・腸管運動促進のために
  ・ナロキソン
  ・ネオスチグミン
  ・ジノプロスト(PGF2α)
  ・大建中湯
  ・末梢性オピオイド受容体拮抗薬
  ・胸部硬膜外麻酔
  ・・・
・ジメチコン(dimethylpolysiloxane)
   →胃腸管内のガス気泡の表面張力を低下
   →遊離気体に合体
   →胃腸管内ガスをオクビや放屁として排泄されやすくする。
   →血流中にも吸収されやすくする。
   →Pubmedで「dimethylpolysiloxane  ileus」で検索するも該当なし。。。
・急性巨大結腸症
  ・巨大結腸の定義
    ・盲腸で12cm、上行結腸では8cm、直腸S状結腸で6.5cm以上
・急性大腸偽性腸閉塞症(Ogilvie症候群)
  ・機械的閉塞機転なく大腸が急速に拡大。
  ・全身疾患、特に術後に発生することが多い。
  ・急速な腹部膨満、腹痛を呈する。
  ・排ガスは停止しないことが多い。
  ・重篤な合併症は盲腸・右側結腸の穿孔。
  ・治療はネオスチグミン投与。
  ・内視鏡的減圧も有効。
  ・予後は原疾患の程度に依存。
  ・Ogilvie synd.の慢性版がCIPO。
・中毒性巨大結腸症
  ・炎症性腸疾患、感染性腸炎の致死的合併症。
  ・Clostridium difficileによる発生も報告あり。
  ・原因は炎症の腸管筋層波及に伴う腸管平滑筋弛緩。
  ・大腸の非閉塞性6cm以上の拡張と全身症状を伴うもの。
  ・全身症状として、発熱、脱水、精神症状など。
  ・内視鏡的減圧は禁忌(穿孔リスク)。
  ・外科的介入が必要となる。