麻酔科勉強会 担当:Y先生
「ICUと腸」
・最近の栄養に関するトピック
・早期経腸栄養
→When the gut works use it!
・Overfeedingの回避
→内因性エネルギーとか、Autophagyとか
・経腸栄養法の利点(静脈栄養と比較して)
・腸管粘膜の維持(腸管粘膜の萎縮の予防)
・免疫能の維持、bacterial translocationの回避
・代謝反応の亢進の抑制(侵襲からの早期回復)
・胆汁うっ滞の回避
・消化管の生理機能の維持(腸蠕動運動、消化管ホルモン分泌)
・カテーテル敗血症、気胸などのTPN時の合併症がない
・長期管理が容易である
・廉価である
・絶食期間が続くと…
→腸管粘膜の廃用萎縮。
→小腸微絨毛の短縮
→粘膜萎縮
・早期経腸栄養による腸管内栄養で腸管粘膜の萎縮は防止される。
・ASPEN/SCCMの急性期栄養ガイドライン2009
・経腸栄養法は経静脈栄養法よりも好ましい。
・経腸栄養法は入院後24-48時間以内の早期に開始。
・血行動態が不安定な状態では安定化するまで経腸栄養中止。
・ICU患者における経腸栄養の開始
→腸蠕動音や腸内ガス・便の通過の有無の確認は不必要。
・誤嚥の危険性が高い、胃残が多い
→経小腸栄養。
・経胃vs経小腸
→死亡率は差を認めず。
→経小腸栄養で肺炎発生率低下を報告した文献あり。
→メタ分析では有意差なし。
→胃内投与群でICU在室日数短縮の報告あり。
・誤嚥の危険性を減らすために・・・
・ベッドの頭側を30-45度挙上する(Grade C)。
・誤嚥の危険大、経胃栄養不可能なら持続輸液に(Grade D)。
・腸管運動促進薬、麻薬拮抗薬の使用(Grade C)。
・幽門より肛門側にチューブ留置して注入量再評価(Grade C)。
・誤嚥リスクの評価
・腹部所見(腹痛、膨満感)
・胃残の量・性状
・画像検査
・原疾患
・手術要因
・第六感
・腸管虚血について
・上腸間膜動脈塞栓症:50%
・上腸間膜動脈血栓症:15~25%
・非閉塞性腸管虚血(NOMI):20~30%
・経腸栄養induced腸管虚血のメカニズム
・基本的にはmultifactorialだが…
・経腸栄養剤の高浸透圧による腸管傷害
・腸内細菌の異常活性化
・腸管虚血再灌流傷害
・腸管虚血のサイン
・臨床所見
急性腹痛、腹部膨満、胃内容・胃残の増加、イレウス
排便・排ガスの停止、乏尿、shock
・検査所見
Lac上昇、代謝性acidosis、WBC上昇、胃内PCO2増加
・画像所見
腸管拡大・腫大、小腸壁の嚢状気腫、門脈ガス、腹腔内ガス
・術後イレウス
・腹部手術以外での発生頻度は5%以下
・臨床的関連因子
→不動、虚血再灌流障害、薬物(オピオイド等)、
severe sepsis、multiple organ dysfunction、
絶食により腸管が刺激されていない、など。
・病理学的関連因子
→神経反射の抑制、炎症反応の活性化、
オピオイド受容体の活性化、腸に対する外科的刺激、
麻酔要因、神経・筋・ホルモン的な要因いろいろ
・術後消化管機能
→胃24-48時間、小腸6-24時間、大腸72時間で回復。
・胃蠕動促進薬
・メトクロプラミド
・D2受容体拮抗薬
・消化管D2神経による平滑筋収縮抑制解除により蠕動亢進。
・錐体外路症状に注意(遅発性ジスキネジアなど)。
・エリスロマイシン
・マクロライド系抗菌薬
・モチリン受容体に作用し、消化管蠕動運動を亢進させる。
・QT延長、薬物相互作用に注意。
・六君子湯
・腸管運動促進のために
・ナロキソン
・ネオスチグミン
・ジノプロスト(PGF2α)
・大建中湯
・末梢性オピオイド受容体拮抗薬
・胸部硬膜外麻酔
・・・
・ジメチコン(dimethylpolysiloxane)
→胃腸管内のガス気泡の表面張力を低下
→遊離気体に合体
→胃腸管内ガスをオクビや放屁として排泄されやすくする。
→血流中にも吸収されやすくする。
→Pubmedで「dimethylpolysiloxane ileus」で検索するも該当なし。。。
・急性巨大結腸症
・巨大結腸の定義
・盲腸で12cm、上行結腸では8cm、直腸S状結腸で6.5cm以上
・急性大腸偽性腸閉塞症(Ogilvie症候群)
・機械的閉塞機転なく大腸が急速に拡大。
・全身疾患、特に術後に発生することが多い。
・急速な腹部膨満、腹痛を呈する。
・排ガスは停止しないことが多い。
・重篤な合併症は盲腸・右側結腸の穿孔。
・治療はネオスチグミン投与。
・内視鏡的減圧も有効。
・予後は原疾患の程度に依存。
・Ogilvie synd.の慢性版がCIPO。
・中毒性巨大結腸症
・炎症性腸疾患、感染性腸炎の致死的合併症。
・Clostridium difficileによる発生も報告あり。
・原因は炎症の腸管筋層波及に伴う腸管平滑筋弛緩。
・大腸の非閉塞性6cm以上の拡張と全身症状を伴うもの。
・全身症状として、発熱、脱水、精神症状など。
・内視鏡的減圧は禁忌(穿孔リスク)。
・外科的介入が必要となる。