麻酔科勉強会 担当:K先生
「胸腹部大動脈瘤の麻酔」
・胸腹部大動脈瘤(TAAA)の麻酔のイメージ
・とりあえず長い(手術まで、心肺、止血)
・やることが多い(CSFドレナージ、分離換気、側臥位)
・やたら出血する(凝固が狂う、術野が広い、血を吐く)
・心肺を回してもボーっとできない(部分循環の場合)
・合併症が多い(対麻痺、腎障害、死亡率)
・数が少ない(一期一会)
・Crawford classification
・TAAA
・平均すると、毎年0.1cmずつ大きくなる
・瘤のサイズと、破裂・解離・死亡には直接相関がある
・高血圧、男性、70歳以上、喫煙、診断時に5cm以上
→急速拡大の独立因子
・一般的に手術推奨(特に6cm以上)
・待機手術の死亡率は5~25%
・合併症・死亡率は、施設や術者に依存する
・症状
→背部痛、心窩部痛、嗄声、息切れ、咳、喀血)
・心機能
・心臓合併症・死亡率は10~15%以上
・約30%の症例で、術後24時間以内に心機能障害
・呼吸機能
・術後合併症・死亡率の主な要因は呼吸不全
・腎機能
・術前腎機能低下は術後腎不全と死亡率の独立因子
・13~24%は術前腎機能低下(Cr>1.5)
・緊急手術、術前腎機能低下、大動脈遮断時間、高齢
→術後急性腎不全の独立因子(7~40%)
・画像評価
・CT、血管造影、MRA
・50~80%の症例で、Artery of Adamkiewiczが見つかる
・Artery of Adamkiewiczの同定・再建で、対麻痺は50%→5%
・術前・モニタリングについて
・導入前の鎮静(破裂、解離のリスク)
・右橈骨動脈圧ライン(左鎖骨下動脈近位でのクランプ)
・大腿動脈圧ライン(足背動脈、LHB灌流圧)
・中心静脈ライン(“double-stick” technique)
・rapid infusion device(レベル1)
・TEE
・左心バイパス
→Crawford Ⅰ/Ⅱでは有効性が証明
→Ⅲ/Ⅳでは確実な有効性は示されていない
・腎保護
・大動脈遮断遠位側の灌流圧を維持する
・虚血期間に、腎動脈に冷やした灌流液を流す
・冷やした晶質液>等温血
→4℃の晶質液で腎臓を28℃以下に保ったところ、腎保護効果あり
・マンニトールとドパミンは議論中
・尿流出確認のため、インジゴカルミンやフロセミドを用いることもある
・脊髄保護
・対麻痺の発生率は2.7~20%
・死亡率にも関連がある
・脳脊髄液ドレナージ
・平均動脈圧の維持
・左心バイパス
・低体温
・肋間/根動脈の再建
・SEP(somatosensory-evoked potentials)
・MEP(motor-evoked potentials)
・CSF Drainage
・凝固能について
・低分子へパリン:24時間(高用量)/12時間(低用量)休薬
・クロピドグレル(プラビックス):7日休薬
・チクロピジン(パナルジン):10(~14)日休薬
・アブシキシマブ:24~48時間休薬
・エプチフィバチド/チロフィバン:4~8時間休薬
・血小板>10万、INR>1.3、APTT正常
・局所感染部位を避ける
・頭蓋内圧が上昇している場合、ドレーン留置は避ける
・無菌化
・クロルヘキシジン、ドレープ、手洗い、アクセサリーを外す、グローブ、マスク、ガウン
・アウェイクでの挿入を推奨
・入院後、手術の24時間前に、ドレーンを挿入
・外傷性/血性穿刺
・抗凝固と60分以上あける
・24時間の手術延期
・術後脳脊髄血腫のリスクについて考慮
・術中のCSFモニタリング
・血行動態
・低血圧を避ける
・SCPP>60mmHgとなるよう、MAP/MAPdを維持
・CVPを上げすぎない
・ゼロ点は、Phlebostatic Axis
・ドレナージ
・CSFP<10mmHg or SCPP>60mmHgとなるように排液
・10~15ml/h以上は排液しない
・オピオイドのクモ膜下投与は行わない
・術後モニタリング
・低血圧を避ける
・ドレナージ/モニタリング期間は、72時間をめどに
・血性髄液が見られればICHの可能性を考え、画像評価を考慮
・新たな下肢の脱落症状
→虚血か血腫を考える。
→SCPPを上昇させて(MAP↑/CSFP↓)、画像評価を考慮する
・ドレーン抜去の凝固能
・血小板>10万、INR<1.3、APTT正常
・抜去前2~4時間はヘパリン中止
・抜去後1時間はヘパリン中止
・まとめ
・TAAA repairの麻酔は、手技が多いだけではなさそう
・やっぱり対麻痺と腎障害は避けたい
Level1 system 1000。