2012年4月12日木曜日

痛み、神経ブロック、ペインクリニック

初期研修医勉強会   担当:M先生

「痛み、神経ブロック、ペインクリニック」

・痛みとは?国際疼痛学会の定義(1981年)
    →An unpleasant sensory and emotional experience
      associated with actual or potential tissue damage,
                   or described in terms of such damage
    →つまり、患者が「痛い」と言ったら痛みが存在する
・痛みの分類
  ・Nociceptive pain(侵害受容性)
  ・侵害刺激や炎症により活性化された発痛物質によるもの
  ・Neuropathic pain(神経障害性)
  ・神経損傷またはそれに伴う機能異常によるもの
  ・Psychogenic pain(心因性)
  ・Adaptive pain ≒ Acute
・障害から身を守ったり、治癒を促進することに寄与するもの
・Maladaptive pain ≒ Chronic
・神経系の病理的異常に基づく病的なもの
・鎮痛手段
  ・薬物
    →NSAIDs、オピオイド、向精神薬、局所麻酔薬、漢方薬、その他。
  ・物理的
  ・心理的
・神経ブロックとは?
    →比較的限局した範囲の痛みに対し、痛みの伝達を遮断する方法。
  ・鎮痛薬は疼痛を減弱するのみ。
     →神経ブロックは疼痛を消失させることができる。
・神経ブロックの目的
  ・痛みと神経との関連の証明
  ・根本的な治療
  ・感覚神経ブロックによる除痛効果
  ・交感神経ブロックによる血行改善・発汗抑制効果
  ・運動神経ブロックによる筋弛緩効果
  ・痛みの悪循環を断ち切る
・神経ブロックの歴史
  ・Guy de Chauliac (1300〜1368)
    →神経幹圧迫による麻痺効果を利用して、手術を行っていた。   
  ・Charles Gabriel Pravaz (1791〜1853)
    →1852年 注射器の発明       
  ・Theodor von Billroth (1829〜1894)
    →1872年    坐骨神経痛を牽引で治療
・実際に動画で見てみよう。
・神経ブロックの部位・・・50種類以上あるらしい。
・神経ブロックの方法
  ・ランドマーク、神経刺激、X線透視、CTガイド法、エコーガイドなど。
  ・神経を直接目標として刺入する
  ・神経の近傍に針を進め浸潤させる
  ・コンパートメントブロック
    →神経を含んだ鞘の中に局所麻酔薬を注入して、目的の神経を遮断する
・エコーガイドの利点
  ・失敗減る、時間短縮、持続時間延長、穿刺回数減少、血管穿刺減少
    →神経障害の発生率については優位差なし
・神経ブロックの方法
  →局所麻酔薬、ステロイド、神経破壊薬、熱凝固法、など。
                     ・アルコール(50〜99.5%)
                     ・フェノール
                     ・高濃度局所麻酔薬
・神経ブロックの利点
  ・全身麻酔と比べて気道合併症がない
  ・術後せん妄のリスクが低い
  ・術後の嘔気・嘔吐が少ない
  ・脊髄硬膜外麻酔と比べて
  ・低血圧がない
  ・呼吸抑制がない
  ・操作後の頭痛が少ない
  ・出血傾向に左右されにくい
・神経ブロックの弱点
  ・技術が必要
  ・時間がかかる
  ・前もってブロック位置を確認する必要がある
  ・不十分だった場合、追加の手技や鎮静、全身麻酔への移行が必要となる
  ・局所麻酔薬の用量が大きいため、けいれんの起こる確率が上昇する
・神経ブロックの合併症
  ・局所麻酔中毒、特に心毒性、アレルギー、神経障害、骨格筋障害、
   血腫、感染、習得、・・・
・何事も経験は大事
・腕神経叢ブロックの場合・・・
  →比較的簡単
  →しかし(従来法では)成功率80%に達するには55例の経験が必要
・ペインクリニックにおける神経ブロック
  ・ペインクリニックとは?
   →疼痛管理に特化した外来
   →様々な手段を用いて鎮痛をはかりQOLを改善させる
   →神経ブロックは、痛みを完全に消すことができるためかなり有用
・トリガーポイント注射
  ・適応
     ・筋筋膜性の疼痛
     ・線維筋痛症
     ・筋固縮があり圧痛・関連痛があるもの
    →圧痛のある部分に局所麻酔薬を注入する
  ・トリガーポイント
    ・体表面で、圧痛だけでなく関連痛を生じる部位。
    ・索状に触れることが多い
    ・東洋医学の経絡に一致することが多い
  ・手技
    ・痛む部位で硬結を探す
    ・消毒し、針を素早く刺す
    ・吸引して逆血のないことを確認
    ・筋膜直下に薬液を0.5〜1ml注入する
    ・抜針はできるだけ緩徐に行う
    ・エコーを用いてもよい