2012年4月19日木曜日

無痛分娩

麻酔科勉強会   担当:H先生

「無痛分娩」

・分娩経過の復習・・・第一期、第二期、第三期
・分娩の痛み
  →痛みの程度・持続時間と部位は、陣痛経過により変化する
  →鎮痛もそれに合わせて調整する
・第一期~全開大
  ・子宮頸部の拡張に伴う内蔵痛
  ・下腹部から腰背部への関連痛を伴う
  ・傍子宮頚管部
    →下腹神経叢→腰部交感神経鎖→T10〜L1
・第二期
  ・会陰部・産道の拡張による体性痛
  ・会陰部の知覚神経
    →陰部神経→S2/3/4
・陣痛を和らげることへの反論
  ・産科医・・・分娩経過が遅れるのでは?
      →むしろ促進される可能性
  ・小児科医・・・胎児への影響は?
      →麻酔薬の移行はごくわずか。明らかな臨床的影響なし。
  ・助産師・・・良好な母子関係が築けない?
      →明らかに否定
  ・日本人の国民性も関与
      →痛みに耐えてこそ、より一層、子への愛情が湧くはず
      →赤ちゃんだけを頑張らせるなんて…
・無痛分娩いろいろ
  ・精神予防性無痛分娩
  ・ラマーズ法     
  ・ソフロロジー法
  ・水中出産、アロマテラピー
  ・鍼などの薬物を使用しない和痛分娩
  ・ガス麻酔、静脈麻酔での分娩
  ・硬膜外鎮痛/CSEA を用いた分娩
    →欧米では一般的な医療行為として普及60〜70%
    →日本ではイマイチ浸透せず5%程度
       ・普及しない理由
          →物理的・資源的な制約
          →Labor analgesiaへの患者の誤解と国民性
          →Labor analgesiaへの医師・助産師の誤解
・無痛分娩の実際
  ・穿刺:L2/3、3/4から硬膜外に留置 
  ・局所麻酔薬と少量の麻薬で行う
  ・Single catheter が一般的
  ・CSEAも考慮しても良い
  ・十分なモニター下で行う
     ・Partogram
     ・VAS score
     ・Dermatome
     ・運動麻痺の程度
     ・胎児心拍数
     ・子宮収縮計
     ・触診・内診
・理想的な麻酔薬は?
  ・確実な鎮痛効果
  ・運動神経遮断の程度が軽い
  ・効果持続時間が長い
  ・母体への副作用が少ない
  ・児への移行・影響が少ない(UV/M ratio小)
  ・乳汁移行が少ない
・成育医療センターメニュー
  ・予定日前日入院、エピ留置
  ・翌日分娩誘発、鎮痛開始は産婦の要求で
  ・初期投与
     →0.2% Ropivacaine  or  0.125% Bupivacaine   
     →18ml+フェンタニル100μg少量ずつ
  ・追加投与
     →1時間に1回ほど医者が評価して投与
  ・PCEA、CEIも行われる
・硬膜外麻酔時の注意
  ・妊婦は血管内・くも膜下腔への迷入のリスクが元々高い
  ・側臥位で、頻繁に体位交換をするため硬膜外カテの位置が変わりやすい
  ・高位脊麻・局麻中毒の発現に注意
  ・胎児一過性所脈の頻度が高い
  ・挿入後、すぐに硬膜外カテの先端の位置を判断できない
  ・硬膜外鎮痛が無効の可能性
     →胎児ジストレスで緊急CS時に、エピが効いていないとピンチ!
・常に観察、緊急帝王切開の用意を!
・胎児一過性徐脈
  ・原因は明らかではない
  ・硬膜外鎮痛(特に、脊髄くも膜下麻酔による急激な鎮痛)
    →母体カテコラミン濃度低下
    →β2受容体刺激の低下
    →子宮収縮増強
・分娩経過に及ぼす影響
  ・第一期は延長しない
  ・第二期は延長し、器械分娩率は上昇する可能性が示唆
  ・怒責のタイミングがとれないため
     →介助者の指導が重要
・母体や胎児に悪影響を及ぼさなければ問題ない
・帝王切開率は上昇させない
・胎盤血流上昇
  →痛みによる過換気と、その反動による間歇期の低換気
  →痛みによる母体血中カテコラミン濃度の上昇で、子宮血流減少
  →これを無痛分娩でブロック
  →PIHなどでは特に有効
・無痛分娩の今後
 ・今後増加してくるといわれる無痛分娩
 ・無痛分娩に携わるには
 ・産科的基礎知識
 ・麻酔技術
 ・スタッフ教育
 ・妊産婦緊急時の対応
 ・新生児蘇生・・・に精通しなければならない