初期研修医勉強会 担当:N先生
「POAF:Post Operative A-Fib」
・POAFの頻度
・冠動脈バイパス術:15~40%
・弁膜症手術:37~50%
・冠動脈バイパス術+弁膜症手術:60%
・心臓手術以外:4.1%
・POAFの自然歴
・多くは術後5日以内に発症
・発症ピークは術後2日目
・2時間以内に15~30%は自然消失
・24時間以内に80%は自然消失
・6~8週間以内に90%以上は自然消失
・POAFの影響
・脳梗塞のリスク増加:3.5倍
・入院中の死亡率が増加(7.4% vs 3.4%)
・入院期間が延長:中央値の差2日間
・長期死亡率も増加(4年間;26% vs 13%)
・POAFの危険因子
・高齢
・AFの既往
・心臓手術の既往
・弁膜症の既往
・末梢動脈疾患の既往
・左房径
・心膜の炎症
・慢性呼吸器疾患
・β遮断薬の中断
・交感神経の緊張状態
などなど…
・POAFの予防は?
・薬剤
・β遮断薬
・アミオダロン
・ソタロール
・その他
・ペーシング
・β遮断薬
・ACCF/AHA/HRS2011ガイドライン
→推奨レベル:ClassⅠ/A
・効果は最もエビデンスあり
・使いやすい(副作用少ない)
・しかも安い
・アミオダロン
・ACCF/AHA/HRS2011ガイドライン
→推奨レベル:ClassⅡa/A
・Ⅲ群抗不整脈薬
・効果は証明されている
・β遮断薬より徐脈とQT延長の可能性が上がる
・ソタロール
・ACCF/AHA/HRS2011ガイドライン
→推奨レベル:ClassⅡb/B
・Ⅲ群抗不整脈薬
・一部の研究ではβ遮断薬より効果あり
・徐脈とtorsade de pointesのリスクあり
・その他の薬剤
・マグネシウム
・あるメタ解析でPOAF発症率を減少
・しかし入院期間や死亡率には影響なし
・Ca拮抗薬:予防効果はない
・ジゴキシン:予防効果はない
・Naチャネル拮抗薬:データが少ない
・ペーシング
・あるRCT:両心房ペーシングで有意にPOAF減少
・あるメタ解析でも両心房ペーシングで有意にPOAF減少
・ただエビデンスがまだ少ない…
・予防は結局どうする?
・まずはβ遮断薬を選択
・β遮断薬の禁忌があればアミオダロンやソタロールを考慮
・あれば心房ペーシングも活用
・低カリウム血症・低マグネシウム血症があれば補正
・POAFになってしまったら?
・まずは誘発因子の対処を
・次に薬剤・除細動・抗凝固を考慮
・薬剤を選ぶ前に
・Rate control vs Rhythm control
・心臓手術後にAF発症した50人の患者を対象
・レートコントロール(23人)
・電気的除細動(27人)
・洞調律に戻るまでの時間を比較
→(11.8h vs 11.2h)で有意差なし
・レートコントロールなら
→静注の短時間作用β遮断薬が便利
→徐脈、低血圧、気管支攣縮には注意!
・非ジヒドロピリジン系のCa拮抗薬も使用可能
・除細動のタイミングは
・症状がある場合
・レートコントロールが困難な場合
・無症状でもAFが24時間以上続いている場合
→抗凝固療法を避けられる
・アミオダロンなどの抗不整脈薬の使用もあり
・抗凝固を始めるタイミングは
・術後出血のリスクも考えて
・24~48時間AFが続く場合は内服抗凝固薬を開始
・ワーファリンならINR2.0~3.0を目標
・洞調律復帰後も4週間続ける
・AFが4週間後もあれば長期的な抗凝固療法を検討