2013年1月10日木曜日

POAF

初期研修医勉強会  担当:N先生

「POAF:Post Operative A-Fib」

・POAFの頻度
  ・冠動脈バイパス術:15~40%
  ・弁膜症手術:37~50%
  ・冠動脈バイパス術+弁膜症手術:60%
  ・心臓手術以外:4.1%
・POAFの自然歴
  ・多くは術後5日以内に発症
  ・発症ピークは術後2日目
  ・2時間以内に15~30%は自然消失
  ・24時間以内に80%は自然消失
  ・6~8週間以内に90%以上は自然消失
・POAFの影響
  ・脳梗塞のリスク増加:3.5倍
  ・入院中の死亡率が増加(7.4% vs 3.4%)
  ・入院期間が延長:中央値の差2日間
  ・長期死亡率も増加(4年間;26% vs 13%)
・POAFの危険因子
 ・高齢
 ・AFの既往
 ・心臓手術の既往
 ・弁膜症の既往
 ・末梢動脈疾患の既往
 ・左房径
 ・心膜の炎症
 ・慢性呼吸器疾患
 ・β遮断薬の中断
 ・交感神経の緊張状態
        などなど…
・POAFの予防は?
 ・薬剤
   ・β遮断薬
   ・アミオダロン
   ・ソタロール
   ・その他
 ・ペーシング
・β遮断薬
  ・ACCF/AHA/HRS2011ガイドライン
    →推奨レベル:ClassⅠ/A
  ・効果は最もエビデンスあり
  ・使いやすい(副作用少ない)
  ・しかも安い
・アミオダロン
  ・ACCF/AHA/HRS2011ガイドライン
    →推奨レベル:ClassⅡa/A
  ・Ⅲ群抗不整脈薬
  ・効果は証明されている
  ・β遮断薬より徐脈とQT延長の可能性が上がる
・ソタロール
  ・ACCF/AHA/HRS2011ガイドライン
    →推奨レベル:ClassⅡb/B
  ・Ⅲ群抗不整脈薬
  ・一部の研究ではβ遮断薬より効果あり
  ・徐脈とtorsade de pointesのリスクあり
・その他の薬剤
  ・マグネシウム
    ・あるメタ解析でPOAF発症率を減少
    ・しかし入院期間や死亡率には影響なし
  ・Ca拮抗薬:予防効果はない
  ・ジゴキシン:予防効果はない
  ・Naチャネル拮抗薬:データが少ない
・ペーシング
  ・あるRCT:両心房ペーシングで有意にPOAF減少
  ・あるメタ解析でも両心房ペーシングで有意にPOAF減少
  ・ただエビデンスがまだ少ない…
・予防は結局どうする?
  ・まずはβ遮断薬を選択
  ・β遮断薬の禁忌があればアミオダロンやソタロールを考慮
  ・あれば心房ペーシングも活用
  ・低カリウム血症・低マグネシウム血症があれば補正
・POAFになってしまったら?
  ・まずは誘発因子の対処を
  ・次に薬剤・除細動・抗凝固を考慮
・薬剤を選ぶ前に
  ・Rate control vs Rhythm control
    ・心臓手術後にAF発症した50人の患者を対象
      ・レートコントロール(23人)
      ・電気的除細動(27人)
    ・洞調律に戻るまでの時間を比較
           →(11.8h vs 11.2h)で有意差なし
  ・レートコントロールなら
     →静注の短時間作用β遮断薬が便利
     →徐脈、低血圧、気管支攣縮には注意!
  ・非ジヒドロピリジン系のCa拮抗薬も使用可能
・除細動のタイミングは
  ・症状がある場合
  ・レートコントロールが困難な場合
  ・無症状でもAFが24時間以上続いている場合
             →抗凝固療法を避けられる
  ・アミオダロンなどの抗不整脈薬の使用もあり
・抗凝固を始めるタイミングは
  ・術後出血のリスクも考えて
  ・24~48時間AFが続く場合は内服抗凝固薬を開始
  ・ワーファリンならINR2.0~3.0を目標
  ・洞調律復帰後も4週間続ける
  ・AFが4週間後もあれば長期的な抗凝固療法を検討