初期研修医勉強会 担当:H先生
「術後呼吸不全とNIV」
・術後呼吸器合併症
→Postoperative Pulmonary Complications:PPC
・術後呼吸不全(Postoperative Respiratory Failure:PRF)
→術後48時間以上にわたり人工呼吸器管理が必要なもの
→抜管後に再挿管が必要になったもの。
(Arouzullah et al. Ann Surg 2000;232:242-53)
・肺炎、sepsis、心停止の併発リスクが高く、予後不良。
・PRFをいかに予防・治療するかが周術期管理の重要な課題。
・術後呼吸機能低下
・機能的残気量の低下
・無気肺の形成
←横隔膜機能不全:麻酔、手術、術後疼痛の影響
←胸郭コンプライアンスの低下
→換気血流不均衡により低酸素血症を来しやすい
・リスク因子
・患者因子
・年齢 (60歳より高齢ほどriskが上昇)
・ASA-PS分類
・COPD
・OSAS
・喫煙者
・低栄養 (Abl <3.0g/dl)
・手術因子
・胸部手術、腹部大動脈瘤、上腹部手術、
頭頸部手術、長時間(3時間以上)、緊急手術
・PPCの予防
・術前
・禁煙指導
・COPD、喘息のコントロール
・呼吸筋トレーニング
・術中
・硬膜外麻酔による十分な鎮痛
・術中PEEP
・術後
・肺拡張法(深呼吸訓練、理学療法、NIV)
・NIVについて
・非侵襲的換気療法
・陽圧式、陰圧式を含む。
・気管挿管に伴う合併症がない。
・早期導入、早期離脱が可能。
・陰圧式呼吸器
・19世紀~20世紀の中頃までは陰圧式が主流
・1930- 「鉄の肺」
→低い救命率
・現代の鉄の肺
→陽陰圧式体外式人工呼吸器
・BCV RTX (IMI株式会社)
・陽圧式呼吸器
・NPPV: non-invasive positive pressure ventilation
・マスクにより非侵襲的に陽圧を用いて換気
・生理学的効果
・陽圧効果
→肺胞を開存、上気道開大・虚脱を防止
・補助効果
→呼吸仕事量、呼吸出力を減少
・推奨度A
・COPDの急性増悪
・急性心原性肺水腫
・免疫不全患者の呼吸不全
・NPPVの禁忌
・心停止、呼吸停止
・肺以外の重篤な呼吸不全
・顔面手術後、外傷、奇形
・上気道閉塞
・気道確保が困難
・気胸
・非協力的、不穏、意識障害
・誤嚥のリスク大
・痰の排出が困難
・Curative NIV
・術後呼吸不全の治療の有効性の報告
・肺切除後 (Am J Respir Crit Care Med 2001;164:1231-5)
・肺移植後(Intensive Care Med 2001;27:1622-6)
・臓器移植後 (JAMA 2000;283:235-41)
・腹部手術後 (JAMA 2005;293:589-95)
・胸腹部大動脈瘤手術後 (Chest 2005;128:821-8)
→NIVの使用は再挿管率、死亡率を有意に減少させた。
・Priventive NIV
・術後呼吸不全の発症前にNIVを使用
→PPCの予防や抜管後の再挿管回避を目的とする。
・予防的なNIV使用の十分なevidenceはない。
・リスク因子の高い症例(COPDなど)で
低換気が予想される症例に対しNIVの導入を考慮する。
・論文読んできました。
Prophylactic nasal continuous positive airway pressure following cardiac surgery protects from postoperative pulmonary complications: a prospective, randomized, controlled trial in 500 patients.
Chest. 2009 May;135(5):1252-9.PMID:19017864