2013年1月31日木曜日

術後呼吸不全とNIV

初期研修医勉強会  担当:H先生

「術後呼吸不全とNIV」

・術後呼吸器合併症
  →Postoperative Pulmonary Complications:PPC
・術後呼吸不全(Postoperative Respiratory Failure:PRF)
  →術後48時間以上にわたり人工呼吸器管理が必要なもの
  →抜管後に再挿管が必要になったもの。
      (Arouzullah et al. Ann Surg 2000;232:242-53)
・肺炎、sepsis、心停止の併発リスクが高く、予後不良。
・PRFをいかに予防・治療するかが周術期管理の重要な課題。
・術後呼吸機能低下
  ・機能的残気量の低下
  ・無気肺の形成
     ←横隔膜機能不全:麻酔、手術、術後疼痛の影響
     ←胸郭コンプライアンスの低下
   →換気血流不均衡により低酸素血症を来しやすい
・リスク因子
  ・患者因子
    ・年齢 (60歳より高齢ほどriskが上昇)
    ・ASA-PS分類
    ・COPD
    ・OSAS
    ・喫煙者
    ・低栄養 (Abl <3.0g/dl)
  ・手術因子
    ・胸部手術、腹部大動脈瘤、上腹部手術、
     頭頸部手術、長時間(3時間以上)、緊急手術
・PPCの予防
  ・術前
    ・禁煙指導
    ・COPD、喘息のコントロール
    ・呼吸筋トレーニング
  ・術中
    ・硬膜外麻酔による十分な鎮痛
    ・術中PEEP
  ・術後
    ・肺拡張法(深呼吸訓練、理学療法、NIV)

・NIVについて
  ・非侵襲的換気療法
  ・陽圧式、陰圧式を含む。
  ・気管挿管に伴う合併症がない。
  ・早期導入、早期離脱が可能。
・陰圧式呼吸器
  ・19世紀~20世紀の中頃までは陰圧式が主流
  ・1930- 「鉄の肺」
     →低い救命率
  ・現代の鉄の肺
     →陽陰圧式体外式人工呼吸器
     ・BCV RTX (IMI株式会社)
・陽圧式呼吸器
  ・NPPV: non-invasive positive pressure ventilation
  ・マスクにより非侵襲的に陽圧を用いて換気
  ・生理学的効果
    ・陽圧効果
      →肺胞を開存、上気道開大・虚脱を防止
    ・補助効果
      →呼吸仕事量、呼吸出力を減少
・推奨度A
  ・COPDの急性増悪
  ・急性心原性肺水腫
  ・免疫不全患者の呼吸不全
・NPPVの禁忌
  ・心停止、呼吸停止
  ・肺以外の重篤な呼吸不全
  ・顔面手術後、外傷、奇形
  ・上気道閉塞
  ・気道確保が困難
  ・気胸
  ・非協力的、不穏、意識障害
  ・誤嚥のリスク大
  ・痰の排出が困難
・Curative NIV
 ・術後呼吸不全の治療の有効性の報告
  ・肺切除後 (Am J Respir Crit Care Med 2001;164:1231-5)
  ・肺移植後(Intensive Care Med 2001;27:1622-6)
  ・臓器移植後 (JAMA 2000;283:235-41)
  ・腹部手術後 (JAMA 2005;293:589-95)
  ・胸腹部大動脈瘤手術後 (Chest 2005;128:821-8)
     →NIVの使用は再挿管率、死亡率を有意に減少させた。
・Priventive NIV
  ・術後呼吸不全の発症前にNIVを使用
    →PPCの予防や抜管後の再挿管回避を目的とする。
  ・予防的なNIV使用の十分なevidenceはない。
  ・リスク因子の高い症例(COPDなど)で
   低換気が予想される症例に対しNIVの導入を考慮する。


・論文読んできました。
Prophylactic nasal continuous positive airway pressure following cardiac surgery protects from postoperative pulmonary complications: a prospective, randomized, controlled trial in 500 patients.
Chest. 2009 May;135(5):1252-9.PMID:19017864