2013年1月20日日曜日

ヘスパンダー

初期研修医勉強会  担当:N先生

「ヘスパンダー」

・ヘスパンダーの構造式
・歴史
・特徴を決める因子
  ・6% HES ( 70 / 0.5 / 3 ) ならば
  ・[濃度]HES(分子量/置換度/[C2/C6 Ratio])
    ・濃度:浸透圧に影響
    ・分子量:大きいほど長く血管内に留まる
    ・置換度:高いほど分解が遅く、体内に留まる
    ・C2/C6:高いほど粘度が高く、血管内に留まる
・各国で使用されている製剤。

・SepsisにおけるHESの使用は?
Intensive Insulin Therapy and Pentastarch Resuscitation in Severe Sepsis
N Engl J Med 2008;358:125-39.

・Design / Setting: 多施設, RCT, Open-label
・Patients: Severe sepsis 患者 537人 (18 施設)
・乳酸リンゲル: 275人 HES: 262人
・Primary endpoint: 28日間の死亡とSOFA score
・Secondary endpoint: ARFの発生
・結果
 ・使えば使うだけ生存率は下がる。
 ・使えば使うだけAKIは増える。
   →Sepsisでの輸液療法で、HESの出番は無い

・術中の大量出血では?
Fluid therapy with hydroxyethyl starch for massive blood loss during surgery
 J Anesth 2010; 24:418–425

・Design: single center, uncontrolled retrospective
・Patient: 術中出血>5,000mlの31人
・AKI 13人  non-AKI 18人
・Outcome
 ・輸液バランス
 ・術前-直後のCr変化
 ・1か月後のCr変化
 ・AKI/non-AKIに分け比較検討
・AKI群をロジスティック回帰分析
・結果
  ・6%HES70/0.55
    →大量(平均3,065ml)に用いても腎機能障害は起こらない。
 ・nが少ない
 ・20,875例の手術症例から31例
 ・単一施設
 ・後ろ向き研究
 ・出血と共にヘスパンダーも血管外へ
   →何かを言うのは難しそうな印象

・ブレイク
・自己紹介。富山県について。

・術中HES使用とAKI
Intraoperative Hydroxyethyl Starch 70/0.5 Is Not Related to Acute Kidney Injury in Surgical Patients: Retrospective Cohort Study
Anesth Analg 2012;115:1309–14

・Design: single center, uncontrolled retrospective
・Patient: 術中出血>1,000mlの846 人
・HES使用: 635人 HES非使用:211人
・Primary endpoint: AKIの発生
・Secondary endpoint: 腎代替療法、ICU入室、入院期間、入院中死亡
・propensity score matchingを使用して解析
・生データ結果、HES使用群の方が、
  ・高血圧の既往が多い
  ・Alb、RCCを多く要した
  ・Pltは少なく済んだ
  ・出血量が多かった
  ・入院期間が長くなった
  ・腎代替療法を要することは少なかった
 →AKI発生率や死亡率に差はない
・matchedデータ結果、HES使用群の方が
  ・高血圧の既往が多い
  ・Alb、RCCを多く要した
  ・Pltは少なく済んだ
  ・出血量が多かった
  ・入院期間が長くなった
  ・腎代替療法を要することは少なかった
 →AKI発生率や死亡率に差はない

・常用量であれば、AKIのリスクは他の輸液製剤と変わらない
・Alb使用量、出血量、入院期間の増加
  →原因なのか結果なのかは不明
・単一施設、後ろ向き、観察研究
・propensity scoreを用い、選択バイアスを避けた
・そもそもAKIリスクが低い患者群かもしれない
・70%以上はASA PS1
・情報不足
・術後尿量情報が無く、CreのみでAKIを評価している

・まとめ
 ・HES製剤は組成により特徴が異なる
 ・Sepsisではもはや誰も使う気が起きない
 ・術中使用において常用量であればAKIの可能性は少ない。