初期研修医勉強会 担当:H先生
「鎮静薬いろいろ」
・鎮静は眠らせることではない。
・RASS Scale
・Richmond Agitation-Sedation Scale
・+4~-5までのScale
・浅い鎮静
・刺激によって覚醒し認知機能が回復する状態
・RASS -1, -2, -3
・深い鎮静
・刺激にて開眼しない、全身麻酔に準じた状態
・RASS -4, -5
・最も優れた鎮静薬とは
・退薬症状、幻覚、せん妄がない
・深い鎮静が容易
・呼吸抑制作用が少ない
・気道確保が不要
・循環抑制作用が少ない
・鎮痛作用を併せ持つ
・効果の発現・消失が速い
・急性耐性がない
・水溶性で投与が容易
・要薬液量が少量
・鎮静薬いろいろ
・ミダゾラム(ドルミカム)
・中枢神経のGABA受容体に作用する。
・作用発現は速やか(0.5-5min)で、作用時間は短い。
・0.03-0.06mg/kgのbolus投与。
・48-72時間の持続投与
→蓄積した代謝産物により覚醒が遷延する可能性。
・薬価:138.00円 (10mg 2mL)
・依存性:幻覚、せん妄、痙攣などの離断症状
・深い鎮静が容易
・呼吸抑制作用がある
・気道確保が必要
・循環抑制作用は少ない
・鎮痛作用がない
・効果の発現が速い
・急性耐性あり
・水溶性で投与が容易、必要薬液量が少量
・プロポフォール
・中枢神経のGABA受容体に作用する。
・静注すると1-2分で効果が発現し、10-15分持続する。
・0.5mg/kg/hより投与を開始
→維持量は0.5-3mg/kg/hrで調節する。
・脂肪製剤なので細菌感染のリスクがある。
・Propofol infusion syndrome
・薬価:1344円(50mg 50mL)
・投与中止後のせん妄頻度は少ない
・深い鎮静が容易
・呼吸抑制作用を有する
・気道確保は必須
・循環:血管拡張作用による血圧低下
・鎮痛作用はない
・効果の発現・消失が速い
・急性耐性あり
・脂溶性、血管痛あり
・1%製剤では大量投与が必要
・デキサメデトミジン(プレセデックス)
・選択的α2受容体作動薬。
・青斑核の中枢性α2A受容体を介してNA放出を抑制
→上位中枢の覚醒レベルを抑える。
・適応:集中治療における人工呼吸及び離脱後の鎮静
・初期負荷投与 6μg/kg/hで10分間持続静注
・維持投与 0.2-0.7μg/kg/h
・薬価:5,077円 (200μg 2mL)
・脊髄α2A受容体刺激による鎮痛作用
・交感神経の抑制により心拍数減少、血管拡張作用
・血管収縮による血圧上昇
・認知障害なし。せん妄の頻度は少ない。
・深い鎮静は困難。
・呼吸抑制作用はない。
・気道確保が不要
・循環:心拍数低下、血管拡張による血圧低下
・鎮痛作用を併せ持つ
・効果の発現・消失が速い
・急性耐性はほとんどない
・水溶性で投与が容易、必要薬液量が少量
・デキサメデトミジンについて論文読みました。
・Can dexmedetomidine be a safe and efficacious
sedative agent in post-cardiac surgery patients?
YY Lin et al. Critical Care 2012;16:R169
・心臓外科手術後の鎮静におけるDEX使用の安全性を評価
・meta analysis
・DEX群は人工呼吸期間を有意に減少した。
・DEX群は徐脈を発現する割合が高かった
→低血圧には差は認めなかった。
→心臓外科術後の鎮静において、DEXは安全かつ有効である可能性。
・もうひとつ論文読みました。
・Dexmedetomidine vs Midazolam or Propofol
for Sadation During Prolonged Mechanical Ventilation
MJ Stephan et al. JAMA 2012;307:1151-60
・人工呼吸時の鎮静
・DexmedetomidineとMidazolam or Propofolを比較
・初の大規模第III相前向きランダム化試験
・MIDEX: 欧州9カ国44施設
・PRODEX: 欧州6カ国31施設とロシアの2施設
・Method、Outcome:省略
・結果
・長期人工呼吸管理の鎮静薬として
DEXはMDZやPROに比べて非劣勢であった。
人工呼吸期間やICU滞在期間において有意差はなかった。
DEX使用にて抜管期間が短かった。
→意思疎通疎通良好であることに起因するかもしれない。
鎮静効果不十分の症例がDEXで多い。
→投与量が少ない可能性。
・Adverse effect
低血圧と徐脈の発現
→MIDEXにおいてDEX群で有意に多かった。
不穏、不安、せん妄の発現
→PRODEXにおいてDEX群の頻度が低かった。
投与中止後48時間の時点でのせん妄発症の割合
→両群において有意差はなかった。
・レミマゾラム
・短時間作用型ベンゾジアゼピン系鎮静剤
・半減期が非常に短い
→調節性に優れる
・拮抗薬が存在する
→緊急時の対応が容易
・GABA-A受容体に高い親和性を有する
・組織エステラーゼにより速やかに代謝されて不活性化
→BZOのアルチバ!
・ONO-2745
・本邦、全身麻酔を施行する手術患者を対象とした第II相試験
→麻酔導入、麻酔維持において全85名に有効性あり。
循環抑制作用が少なく、安全である可能性。
現在は人工呼吸管理での鎮静において第II相試験が進行中。
・まとめ
・DEXは呼吸抑制をきたさず鎮静において優れた薬剤である。
・DEXはMDZやPROに比べて鎮静作用は非劣勢である。
しかし、現用量では効果不十分になる可能性がある。
・他の鎮静薬に比べ徐脈の発現頻度が高いが比較的安全。
・レミマゾラムは新規の鎮静薬である。