2012年12月28日金曜日

鎮静薬いろいろ

初期研修医勉強会  担当:H先生

「鎮静薬いろいろ」

・鎮静は眠らせることではない。
・RASS Scale
  ・Richmond Agitation-Sedation Scale
  ・+4~-5までのScale
  ・浅い鎮静
    ・刺激によって覚醒し認知機能が回復する状態
    ・RASS -1, -2, -3
  ・深い鎮静
    ・刺激にて開眼しない、全身麻酔に準じた状態
    ・RASS -4, -5
・最も優れた鎮静薬とは
 ・退薬症状、幻覚、せん妄がない
 ・深い鎮静が容易
 ・呼吸抑制作用が少ない
 ・気道確保が不要
 ・循環抑制作用が少ない
 ・鎮痛作用を併せ持つ
 ・効果の発現・消失が速い
 ・急性耐性がない
 ・水溶性で投与が容易
 ・要薬液量が少量

・鎮静薬いろいろ

・ミダゾラム(ドルミカム)
 ・中枢神経のGABA受容体に作用する。
 ・作用発現は速やか(0.5-5min)で、作用時間は短い。
 ・0.03-0.06mg/kgのbolus投与。
 ・48-72時間の持続投与
   →蓄積した代謝産物により覚醒が遷延する可能性。
 ・薬価:138.00円 (10mg 2mL)
 ・依存性:幻覚、せん妄、痙攣などの離断症状
 ・深い鎮静が容易
 ・呼吸抑制作用がある
 ・気道確保が必要
 ・循環抑制作用は少ない
 ・鎮痛作用がない
 ・効果の発現が速い
 ・急性耐性あり
 ・水溶性で投与が容易、必要薬液量が少量

・プロポフォール
 ・中枢神経のGABA受容体に作用する。
 ・静注すると1-2分で効果が発現し、10-15分持続する。
 ・0.5mg/kg/hより投与を開始
   →維持量は0.5-3mg/kg/hrで調節する。
 ・脂肪製剤なので細菌感染のリスクがある。
 ・Propofol infusion syndrome
 ・薬価:1344円(50mg 50mL)
 ・投与中止後のせん妄頻度は少ない
 ・深い鎮静が容易
 ・呼吸抑制作用を有する
 ・気道確保は必須
 ・循環:血管拡張作用による血圧低下
 ・鎮痛作用はない
 ・効果の発現・消失が速い
 ・急性耐性あり
 ・脂溶性、血管痛あり
 ・1%製剤では大量投与が必要

・デキサメデトミジン(プレセデックス)
 ・選択的α2受容体作動薬。
 ・青斑核の中枢性α2A受容体を介してNA放出を抑制
   →上位中枢の覚醒レベルを抑える。
 ・適応:集中治療における人工呼吸及び離脱後の鎮静
 ・初期負荷投与 6μg/kg/hで10分間持続静注
 ・維持投与 0.2-0.7μg/kg/h
 ・薬価:5,077円 (200μg 2mL)
 ・脊髄α2A受容体刺激による鎮痛作用
 ・交感神経の抑制により心拍数減少、血管拡張作用
 ・血管収縮による血圧上昇
 ・認知障害なし。せん妄の頻度は少ない。
 ・深い鎮静は困難。
 ・呼吸抑制作用はない。
 ・気道確保が不要
 ・循環:心拍数低下、血管拡張による血圧低下
 ・鎮痛作用を併せ持つ
 ・効果の発現・消失が速い
 ・急性耐性はほとんどない
 ・水溶性で投与が容易、必要薬液量が少量

・デキサメデトミジンについて論文読みました。
 ・Can dexmedetomidine be a safe and efficacious
    sedative agent in post-cardiac surgery patients?
              YY Lin et al. Critical Care 2012;16:R169
  ・心臓外科手術後の鎮静におけるDEX使用の安全性を評価
 ・meta analysis
 ・DEX群は人工呼吸期間を有意に減少した。
 ・DEX群は徐脈を発現する割合が高かった
   →低血圧には差は認めなかった。
 →心臓外科術後の鎮静において、DEXは安全かつ有効である可能性。

・もうひとつ論文読みました。
 ・Dexmedetomidine vs Midazolam or Propofol
    for Sadation During Prolonged Mechanical Ventilation
          MJ Stephan et al. JAMA 2012;307:1151-60
 ・人工呼吸時の鎮静
 ・DexmedetomidineとMidazolam or Propofolを比較
 ・初の大規模第III相前向きランダム化試験
 ・MIDEX: 欧州9カ国44施設
 ・PRODEX: 欧州6カ国31施設とロシアの2施設
 ・Method、Outcome:省略
 ・結果
   ・長期人工呼吸管理の鎮静薬として
    DEXはMDZやPROに比べて非劣勢であった。
   人工呼吸期間やICU滞在期間において有意差はなかった。
   DEX使用にて抜管期間が短かった。
         →意思疎通疎通良好であることに起因するかもしれない。
   鎮静効果不十分の症例がDEXで多い。
     →投与量が少ない可能性。
 ・Adverse effect
   低血圧と徐脈の発現
     →MIDEXにおいてDEX群で有意に多かった。
      不穏、不安、せん妄の発現
     →PRODEXにおいてDEX群の頻度が低かった。
   投与中止後48時間の時点でのせん妄発症の割合
     →両群において有意差はなかった。

・レミマゾラム
 ・短時間作用型ベンゾジアゼピン系鎮静剤
 ・半減期が非常に短い
    →調節性に優れる
 ・拮抗薬が存在する
    →緊急時の対応が容易
 ・GABA-A受容体に高い親和性を有する
 ・組織エステラーゼにより速やかに代謝されて不活性化
     →BZOのアルチバ!
 ・ONO-2745
    ・本邦、全身麻酔を施行する手術患者を対象とした第II相試験
     →麻酔導入、麻酔維持において全85名に有効性あり。
   循環抑制作用が少なく、安全である可能性。
   現在は人工呼吸管理での鎮静において第II相試験が進行中。

・まとめ
 ・DEXは呼吸抑制をきたさず鎮静において優れた薬剤である。
 ・DEXはMDZやPROに比べて鎮静作用は非劣勢である。
  しかし、現用量では効果不十分になる可能性がある。
 ・他の鎮静薬に比べ徐脈の発現頻度が高いが比較的安全。
 ・レミマゾラムは新規の鎮静薬である。