2012年12月19日水曜日

周術期心筋虚血とβblocker

初期研修医勉強会  担当:Y先生

「周術期心筋虚血とβblocker」

・周術期心筋虚血
 ・発生頻度
   ・非心臓手術:major cardiac eventの発生率:3.9%
          周術期心筋梗塞:3.1%
・予後について
 ・非心臓手術の死亡:周術期心筋梗塞が原因の10~40%を占める
 ・発症後の院内死亡率は15~25%

・予防の考え方の違い
 ・非手術患者の心筋梗塞予防では…
    ・冠動脈内血栓の構成要素
      (血小板、フィブリン、トロンビン)への治療
      →アスピリン、ヘパリン
    ・HT,HL,DMの管理    
  ・周術期心筋梗塞発症予防では…
    ・手術、麻酔による交感神経活性制御
    ・酸素需要供給バランスの適正化
・周術期心筋梗塞予防には酸素需要バランスの評価が必要
  ・Rate pressure product(RPP) =BP×HR
     →心筋酸素需要と相関するが煩雑
  ・心拍数(HR)
    ・心拍数単独で虚血予防のパラメーターとして使用される
     →HR60~80
・周術期βblockerの歴史
  ・1990年代Manganoらの報告が最初
       Mangano et al.:effect of atenolol
       on mortality and cardiovascular morbidity
       after noncardiac surgery.NEJM335:1713-1720,1996 

  ・対象:200人の非心臓手術患者
  ・β blocker(アテノロール)静脈内投与群とプラセボ投与群
  ・outcome:長期予後
  ・結果:
    ・2年後の全死亡率:10% vs 21%
    ・心臓合併症発症率:17% vs 32%
   ・術前、術中、術後の心拍数コントロールの重要性を指摘
・その後反論多数。。。
  ・Lindenauerら
    ・βblocker投与群と患者の心血管リスクの相関を調査    
      Lindenauer et al:perioperative beta blocker therapy
       and mortality after major noncardiac surgery.
            NEJM 2005;53:349-61)
・2007 AHA/ACC周術期ガイドライン
 ・β blocker 使用推奨クラスⅠ:
 ・冠動脈疾患、心筋虚血が明らかな患者                                       
 ・既にβblocker使用していた患者
 ・高心血管リスクを有する中等度リスク手術や血管手術        
・この後POISE trialが発表される
・POISE trial
  ・POISE study et al;Lancet 2008;371:1839-47
 ・対象:8351人、心血管合併症のリスクファクターあり
 ・介入:メトプロロール100㎎とプラセボ
     手術の2-4時間前に開始、術後1か月間
 ・結果
   ・心筋梗塞発症率:4.2% vs 5.7%
   ・死亡率:3.1% vs 2.3%
   ・脳梗塞発症率:1.0% vs 0.5%
・2009 AHA/ACC周術期ガイドライン
 ・クラスⅠは手術前からの継続投与のみへ
  ・除外:術前に明らかな心筋虚血がある患者
         高心血管リスクを有する患者
 ・クラスⅡ以下
   →心拍数と血圧管理の目的でβblockerの容量調節すべき
・どのβblockerがよい?
 ・エスモロールの有効性
    →短時間作用型、β1選択性
 ・The Safety of Perioperative Esmolol:
  A Systematic Review and Meta-Analysis of
  Randomized Controlled Trials
  Anesthesia & Analgesia vol. 112 no. 2 267-281
 ・エスモロールは容量依存性に心拍数と血圧を減少させる
  ・予期しない低血圧の発生頻度を優位に増加させる
 ・持続静注であれば予期しない低血圧は減少
 ・目標とする血行動態に対してて滴定して用いると…
    →心筋虚血発症率を優位に減少させる

・βblocker投与の注意点
 ・ACC/AHAガイドライン2009に準じた投与患者の選定
 ・目標心拍数に到達するように容量調整が必要
 ・術前から投与されている人には継続を
 ・新規投与であれば急速大量投与にならないように注意
 ・どのβ blockerを使用するのかは未確定