初期研修医勉強会 担当:Y先生
「周術期心筋虚血とβblocker」
・周術期心筋虚血
・発生頻度
・非心臓手術:major cardiac eventの発生率:3.9%
周術期心筋梗塞:3.1%
・予後について
・非心臓手術の死亡:周術期心筋梗塞が原因の10~40%を占める
・発症後の院内死亡率は15~25%
・予防の考え方の違い
・非手術患者の心筋梗塞予防では…
・冠動脈内血栓の構成要素
(血小板、フィブリン、トロンビン)への治療
→アスピリン、ヘパリン
・HT,HL,DMの管理
・周術期心筋梗塞発症予防では…
・手術、麻酔による交感神経活性制御
・酸素需要供給バランスの適正化
・周術期心筋梗塞予防には酸素需要バランスの評価が必要
・Rate pressure product(RPP) =BP×HR
→心筋酸素需要と相関するが煩雑
・心拍数(HR)
・心拍数単独で虚血予防のパラメーターとして使用される
→HR60~80
・周術期βblockerの歴史
・1990年代Manganoらの報告が最初
Mangano et al.:effect of atenolol
on mortality and cardiovascular morbidity
after noncardiac surgery.NEJM335:1713-1720,1996
・対象:200人の非心臓手術患者
・β blocker(アテノロール)静脈内投与群とプラセボ投与群
・outcome:長期予後
・結果:
・2年後の全死亡率:10% vs 21%
・心臓合併症発症率:17% vs 32%
・術前、術中、術後の心拍数コントロールの重要性を指摘
・その後反論多数。。。
・Lindenauerら
・βblocker投与群と患者の心血管リスクの相関を調査
Lindenauer et al:perioperative beta blocker therapy
and mortality after major noncardiac surgery.
NEJM 2005;53:349-61)
・2007 AHA/ACC周術期ガイドライン
・β blocker 使用推奨クラスⅠ:
・冠動脈疾患、心筋虚血が明らかな患者
・既にβblocker使用していた患者
・高心血管リスクを有する中等度リスク手術や血管手術
・この後POISE trialが発表される
・POISE trial
・POISE study et al;Lancet 2008;371:1839-47
・対象:8351人、心血管合併症のリスクファクターあり
・介入:メトプロロール100㎎とプラセボ
手術の2-4時間前に開始、術後1か月間
・結果
・心筋梗塞発症率:4.2% vs 5.7%
・死亡率:3.1% vs 2.3%
・脳梗塞発症率:1.0% vs 0.5%
・2009 AHA/ACC周術期ガイドライン
・クラスⅠは手術前からの継続投与のみへ
・除外:術前に明らかな心筋虚血がある患者
高心血管リスクを有する患者
・クラスⅡ以下
→心拍数と血圧管理の目的でβblockerの容量調節すべき
・どのβblockerがよい?
・エスモロールの有効性
→短時間作用型、β1選択性
・The Safety of Perioperative Esmolol:
A Systematic Review and Meta-Analysis of
Randomized Controlled Trials
Anesthesia & Analgesia vol. 112 no. 2 267-281
・エスモロールは容量依存性に心拍数と血圧を減少させる
・予期しない低血圧の発生頻度を優位に増加させる
・持続静注であれば予期しない低血圧は減少
・目標とする血行動態に対してて滴定して用いると…
→心筋虚血発症率を優位に減少させる
・βblocker投与の注意点
・ACC/AHAガイドライン2009に準じた投与患者の選定
・目標心拍数に到達するように容量調整が必要
・術前から投与されている人には継続を
・新規投与であれば急速大量投与にならないように注意
・どのβ blockerを使用するのかは未確定