2012年12月8日土曜日

膠質液いろいろ

麻酔科勉強会  担当:S先生

「膠質液いろいろ」

・輸液製剤
  ・晶質液:リンゲル液、生理食塩水
  ・膠質液:
    ・アルブミン製剤:
       ・4-5%:hypooncotic
       ・20-25%:hyperoncotic
    ・合成膠質液
       ・HES
       ・ゼラチン
       ・デキストラン
・HES:① HES (②/③) 』
  ・① : concentration (%)
  ・② : molecular weight (kDa)
  ・③ : degree of substitution
         (DS ; 2nd generation HES = 0.5)
  ・例:HespanderTM = 6% HES (70/0.5)
・Boldt scandal
  ・ドイツの麻酔科医Joachim Boldt。
    →colloidの世界的権威。
  ・102本中89の研究が倫理委員会の認可なしに行われた。
  ・少なくとも10本の論文はfalse dataであった。

・膠質液 vs 晶質液
  ・Perel P,et al. Cochrane Database Syst Rev 2012;6
  ・(Boldtを含む)66 RCTのメタ解析。
  ・outcome:mortality
    ・アルブミン vs 晶質液:Risk ratio 1.01
    ・HES vs 晶質液:Risk ratio 1.10

・アルブミン vs HES
  ・Bunn F, et al Cocherane Database Syst Rev 2012;7
  ・(Boldtを含む)86 RCT(n=5,484)のメタ解析。
  ・surgical ICU入院患者
  ・outcome:mortality
    ・Risk Radio 1.06

・hypooncotic vs hyperoncotic
  ・Schortgen F, et al. Intensive Care Med 2008;34:2157-68.
  ・MC-cohort study
  ・shockの患者(n=1,013)。
  ・outcome:①腎合併症、②ICU death。
    ・晶質液でのodds ratio 1.00
    ・人工高張膠質液:①1.16(0.52-2.57) ②1.76(1.00-3.11)
    ・高張アルブミン:①5.99(2.75-13.08)②2.79(1.42-5.47)

・アルブミン vs 晶質液
  ・Finfer S, et al. NEJM 2004;350:2247-56
  ・SAFE study。
  ・4%アルブミン vs 生食
  ・ICU入室患者(n=6,997)
    ・probability of survival:p=0.96
    ・Severe sepsis患者:Relative Risk 0.87(0.74-1.02)

・HES vs 晶質液
  ・Myburgh JA, et al. NEJM 2012;367:1901-11
  ・CHEST trial。
  ・ICU入室患者(n=6,742)
  ・6% HES(130/0.4) vs 生食
    ・90日死亡:p=0.26
    ・RRT使用:HES群で高い。

・心臓手術における膠質液
  ・Novickis RJ, et al. Thorac Cadiovasc Surg 2012;144:223-30
  ・(Boldtを含まない)18 RCT(n=970)のメタ解析。
  ・人工心肺を使用した心臓手術患者。
    ・水分バランス、ICU滞在期間、死亡率に有意差なし。

・頭部外傷におけるアルブミン
  ・Myburgh J, et al. NEJM 2007;357:874-84
  ・ICU入室の頭部外傷患者(n=460)
  ・4%アルブミン vs 生食
    ・probabillity of survival:生食群が有意に高い。
    ・GOSe(Extended Glasgow Outcome Scale)
      →生食群で有意に高い。

・sepsisにおけるアルブミン使用
  ・Delaney AP, et al. Crit Care Med 2011;39:386-91
  ・sepsis患者
  ・アルブミン vs その他の製剤
    ・死亡率:アルブミン群のほうが低い。

・sepsisにおけるHESその1
  ・Schortgen F, et al. Lancet 2001;357:911-6
  ・severe sepsisまたはseptic shockの患者(n=129)
  ・6% HES(200/0.6) vs 3% fluid-modified gelatin
    ・HES群でARFリスクが高い。

・sepsisにおけるHESその2
  ・Bayer O, et al. Crit Care Med 2011;39:1335-42
  ・surgical ICUのsevere sepsisまたはseptic shock患者(n=346)。
    ・HES群、ゼラチン群でRRT実施が多くなる。

・sepsisにおけるHESその3
  ・Guidet B, et al. Crit Care 2012;16:R94
  ・multi center RCT
  ・CRYSTMAS study。
  ・severe sepsis患者(n=196)
  ・6% HES(130/0.4) vs 生食
    ・輸液使用量は生食群が多い。

・sepsisにおけるHESその4
  ・Perner A, et al. NEJM 2012;367:124-34
  ・multi center RCT
  ・6S trial
  ・severe sepsisまたはseptic shock患者(n=798)
  ・6% HES(130/0.42)+必要なら晶質液 vs リンゲル。
    ・HES群でprobabillity of survivalは低い。
    ・ショック群ではリンゲルの方がいい。

・6% HESは本当に安全か。
  ・Suzuki T, et al. j Anesth 2010;24:418-25
  ・SC-retrospective cohort study
  ・5,000ml以上出血した手術患者。
  ・6% HES(70/0.55)(n=31)
  ・術後AKI vs 術後non-AKI
    ・差はなし。

・ATS consensus statement for colloid in ICU
  ・Am J Respir Crit Care Med 2004;170:1247-59
    ・頭部外傷には膠質液は控えるべき。
    ・全ての膠質液は凝固系に影響を与える。
    ・HESはsepsis患者ではAKIリスクを高める。
    ・透析関連の低血圧には膠質液が晶質液より優れる。
    ・高張アルブミンは腹水大量吸引後には投与するべき。
    ・血行動態的に安定期のARDSには輸液制限が適す。

・ESICM consensus statement for colloid in ICU
  ・Reinhart K, et al. Intensive Care Med 2012;38:368-83
    ・推奨(recommend)
      ・severe sepsis、AKIハイリスク
                 →HES(>200/>0.4)使わない。
      ・頭部外傷には膠質液を使わない。
      ・臓器移植ドナーにはHESを使わない。
    ・提案(suggest)
      ・severe sepsisにはアルブミンを使ってもいい。
      ・AKIハイリスクにはHES(130/0.4)を使わない。
      ・輸液蘇生に高張膠質液を使わない。