2014年1月30日木曜日

ロボット支援下前立腺全摘術の麻酔

麻酔科勉強会  担当:Y先生

「ロボット支援下前立腺全摘術の麻酔」

・ロボット支援下前立腺全摘術(RALP)
・da Vinciを使用。
  →手術支援ロボット
   ・Surgeon Console
   ・Patient Cart
     ・Vision Cartの3つからなる。
・手術室のセッティング。
・手術の流れ
  ・麻酔導入、動脈ライン1本静脈ライン2本
    →体位固定(砕石位)
    →ヘッドダウンテスト(頭低位30度)
    →砕石位で手術開始
    →ポート挿入、気腹
    →ポート挿入後、頭低位30度、da Vinciロールイン
    →コンソール操作開始(気腹圧10)。
    →DVC処理で一時的に気腹圧15に。
    →コンソール操作終了
    →ヘッドアップ、da Vinciロールアウト
    →ポート抜去、手術終了
    →抜管。
・全身麻酔と気腹
  ・呼吸:PaCO2増加、CO2塞栓、皮下気腫
  ・循環:CO増加、末梢血管抵抗増加、肺血管抵抗増加
・頭低位(Steep Trendelenburg position)
 ・頭低位における循環
  ・上肢
    →血管内圧増加
     ・頭蓋内圧上昇、眼圧上昇、上気道浮腫・・・
     ・CO増加、CVP上昇
  ・下肢
    →下腿灌流低下
     ・下腿虚血、コンパートメント症候群
    →骨盤内圧低下
     ・CO2塞栓
 ・頭低位における呼吸
  ・腹腔内圧の上昇→横隔膜の圧迫
    ・肺コンプライアンス低下
    ・気道内圧上昇
    ・無気肺形成
    ・V/Q mismatch・・・
  ・挿管チューブの変位
    ・頭部後屈→事故抜管
    ・気管の頭側変位→片肺換気
・頭低位の影響について論文いろいろ
  ・頭低位の角度に関して標準化された基準はない。
  ・角度に依存して血圧、気道内圧は上昇、肺comliance低下。
   ・CO2気腹を伴う40°頭低位に患者は十分耐えうる。
  ・年長者ではPaCO2-EtCo2 gapが広がる可能性。
  ・ST位においてはVCMでもPCVでも臨床的問題となる差はない。
・頭低位における眼合併症について
  ・ST位が長引けば眼灌流圧維持の自動能が保持されなくなる可能性
  ・頭低位手術の患者
    ・術中パラメータ観察&術後眼科診察の報告
                →視力検査、RNFLを評価
    ・IOPは時間毎に上昇傾向(max 36 mmHg)。
    ・視力検査、RNFLは全例術前術後で変化なし。
    ・眼合併症もなし。
       術前眼合併症がないならば・・・
        →数時間のST位によるIOP上昇は問題ない。
  ・IOP上昇のリスク因子
    →①手術時間、②EtCO2増加
  ・IOP上昇の予測因子
    →眼瞼浮腫、結膜浮腫の存在がIOP>40mmHgの予測因子
  ・麻酔科専用眼圧計があるので術中計測しましょう。
・下腿コンパートメント症候群
  ・頭低位で下腿が心臓よりも上方へ
    →下腿灌流低下+レビテータによる圧迫
    →下腿虚血、再灌流、コンパートメント症候群
  ・英国の報告では9/3110(0.29%)。
    ・リスク因子は
      ①ST位時間>4h
      ②early learning curve段階
      ③肥満(BMI>30kg/m2)
      ④末梢血管疾患の合併
      ⑤不適切な体位
・その他の合併症報告
  ・腕神経叢麻痺
    ・肩への圧迫刺激によるもの
      →当院ではHUG-U-VAC使用で圧の分散化を狙う。
    ・上気道浮腫
      →抜管後、再挿管になる可能性。
・その他トピックスいろいろ
  ・術中脳酸素飽和度に臨床的変化なし。
  ・予防的抗生剤投与はST合剤か、第二第三世代セフェム。
  ・DVTハイリスク手術ではない。
  ・SVVが輸液反応性の指標になるかも。
  ・体温が下がります。保温&室温upを!
  ・フェイスガードで顔面保護を。
    →カメラコード、助手の腕が顔面に当たるため。
・術後鎮痛
  ・硬膜外麻酔は必要なさそう
  ・アナペイン局所麻酔注射は効果あり。
  ・IV-PCA、フェンタニル精密持続、NSAIDS、アセトアミノフェンなど。
  ・トラマールを使用する施設も。



       頭低位シミュレーション