ICU勉強会 担当:K先生
「結核診療の基礎知識」
・結核
・世界三大感染症の1つ
・世界で年間880万人発病、175万人が死亡
・日本は先進国中でも結核が多い。
→年間約3万人が罹患し、2300人以上が死亡
→罹患率は1997年から微増、2000年以降は減少
・高齢者の比率が多く70歳以上が約4割を占める
・日本の罹患率のワースト3は大阪、東京、兵庫
・結核の約8-9割は肺結核
・2007年4月から結核予防法が感染症法に統合
→結核は二類感染症に分類された
・結核菌
・抗酸菌(Acid-fast bacillus)(好気性桿菌)
・ミコール酸などのワックス状の細胞壁成分を持つ。
→毒や乾燥に強い
・分裂速度が遅い(15-24時間)
・塗抹陽性患者の咳、くしゃみ
→飛沫が 放出、飛沫核となる。
→これを吸引することが感染の契機となる
・結核は飛沫核(空気)感染
・吸引された結核菌がマクロファージに貪食
→一部が処理しきれず増殖(感染成立)
→細胞性免疫が成立すると・・・
→特徴的な壊死を伴った(乾酪性)肉芽組織に封入
・結核の感染様式
・結核の感染と発病
・一次結核と二次結核について
→結核に感染しても約1割の人しか発病しない
・結核を疑うべき状況
・慢性(2週間以上)の咳、痰(血痰)、発熱
・全身倦怠感、体重減少、寝汗、胸痛、呼吸苦
→結核に特有の症状はない。
→結核を疑うことが大切
・発症リスク要因
・高齢者、糖尿病、免疫抑制治療中、
悪性腫瘍、透析患者、濃厚接触、・・・
・一般の抗菌剤でよくならない肺炎
・胸部単純写真
・典型的には上葉(S1,2)及びS6に好発する
辺縁不整な浸潤影や結節影で空洞形成を伴う。
・但し、空洞を伴わない孤立性結節影、広範な浸潤影など
多彩な陰影を呈し、典型的でなくても否定できない。
・栗粒結核では両側肺野全体にびまん性の粒状影を呈する。
・胸部CT所見
・感染を疑ったら・・・
→まずは三連痰
・喀痰抗酸菌塗抹検査が1回陰性
→排菌(塗抹陽性)は否定できない!
→3回実施して塗抹陽性患者の80-90%が検出できる
・喀痰が出ない人は
①胃液採取 ②気管支鏡検査
・喀痰の肉眼的品質評価
→Miller&Jones分類
・喀痰の顕微鏡的品質評価
→Geckler分類
・抗酸菌検査結果の解釈のポイント
・喀痰の性状に注意 (M&J分類のM1,2では再提出)
・抗酸菌塗沫陽性でも結核とは限らない(NTMもある)
・結核菌と同定したら、薬剤感受性検査を必ず行う
・薬剤感受性検査の結果に数週間かかる
→一般に治療は薬剤感受性結果を待たずに開始する
・陳旧性結核所見のある人の結核菌PCR陽性に注意
→死菌をみている可能性があり培養検査を必ず併用する
・気管支洗浄液、胃液の塗抹陽性は排菌を意味しない
・肺結核以外の結核(喀痰塗抹陰性)は隔離不要
・ツベルクリン反応
・ツ反陰性だった人が陽転化した場合には結核感染を示唆する
→栗粒結核などの重症例やHIV感染などではツ反陰性となる
・結核の主要な感染源
・クォンティフェロン
・結核患者への対応
・喀痰結核菌塗沫陽性(排菌)患者の場合
・患者にサージカルマスク、医療従事者にN95マスクを装着
入院が必要な場合は陰圧個室で。
・結核病棟のある専門施設に連絡
→近隣なら西神戸医療センター、兵庫中央病院など
・専門施設への入院までの間は、自宅待機
→乳幼児や免疫力が低下した人への接触は避ける
・塗沫陰性、培養陽性患者の場合
・隔離は不要であり外来で加療可能(呼吸器内科へ紹介)
・結核患者の届け出について
・結核患者の鑑別診断
・肺炎
・肺真菌症(アスペルギルスなど)
・肺癌
・非結核性抗酸菌症
・サルコイドーシス
・結核治療の原則
・原則1:感性薬剤の使用
・原則2:併用療法の原則
・原則3:初期強化療法と維持療法を分けて考える
・原則4:薬剤変更の時、1剤ずつの変更はしない
・原則5:完全服薬の励行(DOTSの実施)
・結核の標準治療
・非定型抗酸菌症(NTM)1
・日本のNTMの70%以上を占める。
①中年女性に多い「中葉・舌区型」
②男性に多い「空洞形成型(結核症類似型)
③HIV感染者でみられる「全身播種型」
・非定型抗酸菌症(NTM)2
・MACについで2番目に多いNTM
・男性が多い(80%)
・症状、画像所見ともに結核に類似(結核に比べて散布影が少ない)
・抗結核薬の効果が期待できる
・結核を見逃さないために
・慢性の咳、痰があれば胸部Xpを撮る
・肺炎の影をみたら結核の可能性を考える
・陳旧性の陰影と決めつけず以前と比較する
・喀痰検査では痰の性状も確認する
・胸水をみたら結核性胸膜炎も考慮する